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【Case-41】橋詰雅代の場合
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三重県のごくごく普通の家庭に産まれ育ち、ある日突然東京に降り立つ……。
高校時代はファッションデザイナーに憧れて服飾を専攻。柔道アニメを見て柔道部に入門したり、空を飛ぶ女パイロットも素敵に思えて、航空自衛隊に憧れる日々が続く。でも防衛大学に行ける学力は持ってなかった。お金を稼げる歳になれば夜中までバイトに励んだりと、田舎では普通の日々を送ってた。
東京に出てきたのは高校を出て働いた後、少し経ってから。最初は、東京に用事のある知人の車に便乗して、遊びに来ただけだった。田舎から街へと、だんだん変わりゆく車窓からの景色に、眼と心を奪われました。十代の身体にはワクワクとドキドキが行き交ってた。修学旅行とは全然違う。あの頃の渋谷はなぜか夜で、夜なのに人だらけで。しかも御輿を担いで祭りしている?!
都会、渋谷で祭り?! もともと1一週間だけの滞在予定……が、お金をもらえなくてもいいからどこかで働いてみよう! とこんなバカな家なき子を雇ってもらい、1週間延び、それが1カ延び、と、しまいには楽しくなってきて、気がついたらこの町に住む方向に。
私が東京に残ることの理由のひとつは、BMXというチャリの存在が大きかったんだ。これは地元に居る頃に、たまたま乗っている人たちを発見したのがきっかけで始めた。女の子がコレやってたらカッコイイだろなぁ~って。でもやはり男の子たちにはかなわない。転んで顔から血を出してもアザだらけになってもかなわない。私の方が早く始めてるのに、乗り始めて間もない男の子たちが伸びていったり。
スゴくスゴく悔しいの。でもね、結構頑張って練習してて「女の子なのにスゴいねぇ」ってな事を言われて気付いた。あ、これか! って。少し認められたんじゃないかって自己満足。よく頑張ったじゃん、わたし。って、なんて単純。
東京にもチャリを持って行き、仲間ができたり色々なライダーに会えたりと楽しい生活が送れた。だから離れられない理由でもあった……。
このスポーツは個人競技だから中毒になりやすい。独りが好きな私は、自分の世界に入れるチャリばっかに夢中になっていた。そんなある日、練習中に大きな事故を起こしてしまった。「前十字靭帯断裂」は教えてくれた。怪我をする前は技術も伸びていたし、BMXの大きな大会に出るのも目前という思いはあったけど断念、それは怪我が教えてくれました。少し休もう。その間できなかったことや、今やれることをやろうって。しばらくの間は辛かったけど、チャリが視界から外れた途端色んなものが急に見えてきた。世界が広くなった気がして結構気持ち良いかも、なんて思っちゃった。
今は弟や妹も大学進学で上京したのをきっかけに姉弟一緒の東京暮らし。リラクゼーションサロンで、セラピストとしてお客さんにボディトリートメントを施術して働いている最近では、なかなか仕事も楽しいなと思えるようになった。お客に癒しを提供する仕事だけだけに、色々なことがある。中には対応に困るようなお客さんもいるけれど、なんとか楽しくやってるかなぁ。過去一番、仕事に関して責任を持ってやっているつもり。初めて責任者の立場として、仕事に励んでるから。
そのうち自分でサロンでも開けたらいいな~って思ったり、旅が好きだからバックパッカーでもいいかな、なんて思ったりと思いは色々あるけど、とりあえず眼の前にあるものを拒まずガツガツ受け止めていきたいな。もっともっと色んな人に会える、色んなことがあるこの街では不可能なんつう言葉は無いかもしれないね。
彼女の部屋にお邪魔して、撮影衣装を決めるのは大変困難な作業だった。予め電話でだいたいの方向性は話していたのだが、実際に訪れてみたら、あるはあるは……次から次から押し入れの奥から、衣装ケースの中から、尋常じゃない数の洋服が出てきて、もう決められないわからない。いつもは20分くらいあれば決定できるんだけど、いろんなタイプを見せてもらって、結局1時間以上もかかってしまった。そのあげくに結局、電話で話してたモノに落ち着く。久しぶりに古着屋さんへ買い物に行った気分を味わわせてもらった。腰より下まで伸びた彼女の長い髪の毛が風になびき、天気も良く、写真だけ見るとまるで初夏みたいだが、実は気温7~8度で風の強い3月の海辺での撮影に感謝。チャリで鍛えた身体と持ち前の明るさと根性で、頑張ってもらった。
横位置のクローズアップは、キヤノン EOS 5DにシグマのMacro 70mm F2.8 EX DGを装着して、開放で撮影。このシリーズ撮影では、自分のルールとして三脚を使用した事がこれまで1度も無い。が、マクロで至近距離でのAFになると、自分の身体やカメラが陰を作るうえに、レンズ繰り出しも相まって驚くほど有効EV値が低下する。ISO400に上げたのだが、さすがにブレや合焦がとても微妙になってくるので、これからはたまには三脚も使わなければならないのかと弱腰になった。こんなレンズにこそ是非とも手ブレ防止機構を組み込んで欲しい。
そんな状況の中で、ピシッとフォーカスがきている部分から、1cmも離れたらスーとボケていってくれる感じが気に入った。このところメインにワイド側が多かったので、海岸ではあえてニコンのAF-S VR Zoom Nikkor ED 70~200mm F2.8 G (IF)を200mm(300mm相当)で使ってみたところ、久しぶりのせいか予想以上の望遠効果に感じられた。こちらも開放近くでの撮影だったが、マクロで寄ってのボケ味とはまた違って面白い。
使用機材
Nikon D2X
Nikon D200
AF-S DX Zoom Nikkor ED 12~24mm F4 G (IF)
SIGMA 18~50mm F2.8 EX DC Macro
AF-S VR Zoom Nikkor ED 70~200mm F2.8 G (IF)
Canon EOS 5D
EF 24mm F1.4L USM
EF 35mm F1.4L USM
EF 50mm F1.4 USM
SIGMA Macro 70mm F2.8 EX DG
Sandisk Extreme IV
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■ URL
バックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/haruki_backnumber/
HARUKI (はるき)1959年広島市生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科卒業。広告、雑誌、音楽の媒体でポートレートを中心に活動。
1976年 個展「FIRST」を皮切りに、多数の個展、グループ展を開催。1987年朝日広告賞グループ入選、表現技術賞受賞。1991年パルコ期待される若手写真家展選出。コラボ作品がニューヨーク近代美術館に、「普通の人びと」シリーズ作品が神戸ファッション美術館に永久保存。
2005年に個展「Tokyo Girls♀彼女たちの居場所。」を東京 渋谷、2006年に京都で開催。
http://www.harukiphoto.com/ |
2007/03/19 00:05
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