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連載バックナンバー
【Case-41】橋詰雅代の場合
[2007/03/19]

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[2007/03/05]

【Case-39】今泉麗香の場合
[2007/02/19]

【Case-38】朝日桂宜の場合
[2007/02/05]

【Case-37】佐藤恵子の場合
[2007/01/22]

【Case-36】足立浩美の場合
[2007/01/15]


2006年

【Case-14】三上彩の場合



 1986年4月8日、広島市に生誕。アルバイトやヘアショーのモデルなどもしながら、芝居をやっています。陶芸家の父を持ち、親子ほど歳の離れた2歳の弟もいる。牡羊座、血液型はA型。現在二十歳で身長162cm、体重45kg、スリーサイズは83-59-86で23.5cmの足を使って二足歩行をするヒト科の生物。

 魔法使いになりたい(笑)。蓮の花がパカッと開くようにトリップできる環境を探して旅をしている気分。人は誰でもそれぞれの魔法を持っていると思います。たぶんあたしはファンタジーと共存して生きていたい「妄想族」なんです。

 例えば、あたしが真っ黒い魔女のような格好で表を歩いたりすると、幼稚園児のような小さな子どもから見たあたしは、魔女なわけじゃないですかあ? そこで園児があたしなら、きっとあたしもいつか空が飛べるようになると希望を抱くわけですよ。人は実際には空は飛べないにしても、音楽やファッションや芝居を自分の魔法として持てれば、自分も夢見られるし、人に夢を与えられると思います。それは相当な使い手でないと、そこら辺の子どもすら騙せない。騙す、という言葉もどうかと思うけど、簡単に見破られるようじゃまだまだなんです。だからあたしの将来の夢は、未だに魔法使いになることです。


 あたしは陶芸家の父の男手ひとつで育てられたせいなのか、小学生の時は自分の世界にとじこもりがちで、好きな男子がいても話しかけるなんてできなかった。とっても内気な女の子でした。人前に立つのが嫌で嫌でしかたなくて、クラスでの自己紹介やスピーチもやる意味がまったくわからなくて、まるで駄目だった。クラスの女子との会話も苦手で、かといって男子とも遊ばなかったなあ。

 あの頃は周りに友達と呼べる子どもは少なかったかもしれないです。部屋にとじこもって1日中絵ばかり書いて、学校の休みの日には陶芸の仕事をする父の傍らで見よう見まねで一緒に粘土をこねて遊んでいました。自分の作ったものを気に入らなければ破り捨て、壁にぶつけて粉々に壊したりたり、踏み潰したりと結構直情的な子どもだったかも……。

 少女漫画に出てくるイケメンに恋するように、好きな男子と両想いになる空想を思い描くだけで、十分満足だった。そのくせ、彼に気軽に話しかけられるような性格の他の女の子たちのことが、あたしはすごく羨やましかったんです。



 中学校に上がってからは演劇部へ入りました。芝居の世界へ興味を持ったきっかけのひとつには、好きな男の子に注目してもらえたらというのもあったかな。文化祭の発表では、ずっと好きだった彼がこの体育館の客席のどこかであたしを見ていると思うと、嬉しくて出番が待ちどおしいほどだった。そうやって変わることができ、自分を見ていてほしかった。あたしの事を特別な存在だと思ってほしかったんでしょうね。

 テレビはあんまり見ないけど、シュールな芸風のお笑いユニット「ラーメンズ」が大好きです。絶妙な間合いや空気感。彼らにしか出せない味。時々手品めいた仕掛けをつくってくるところや、芝居の幅の広さ、ユルーい感じやシュールに真面目ぶってるとこ、突拍子のなさなどが好きです。熱狂的というわけではないけれど、ユルーイ感じで夜中にビデオ鑑賞なんかしています。

 中学生の頃から父に連れられてライブバーへ行ったりして、音楽や芸術(魔法)について語り合ったりもしてました。今でも実家に帰ったらいろんな相談ができる関係で、日本では珍しいくらいの仲良し親子なのが自慢です。もちろん喧嘩も絶えず、実家のトイレのドアにはあたしの足形の穴が無数に空いています。玄関の柱は腐りかけなので、さすがに蹴らずにおいたけど(笑)。父は50の今でも夢を捨てずにいます。

 この歳になって言うのはちょっと恥ずかしいけど、そんな父が大好きです。名前は「彩」と書いて「ひかり」と読みます。本名です。彩という漢字の意味は木漏れ陽をイメージして、父がつけてくれた名前なんです。


 広島の若き妄想族、ひかりちゃんにはどこかボクの若い頃と共通する何かを感じる。おそらくボクも妄想族のさきがけのひとりだったのかも知れない。同じ町の出身だしね。矢沢永吉、吉田拓郎、浜田省吾、奥田民生、ポルノグラフィティなどなど、多くのミュージシャンを輩出してきた広島。



 瀬戸内海の特徴的な気候に、朝や夕暮れのある時間パタリと風が止む「凪(なぎ)」という現象がある。海風と陸からの風がぶつかっては風が動かなくなってしまう。瀬戸内海は小さいけれど海だ。その海に波が消えてしまい、海面がシーンとしてしまう現象は子供の頃から毎日海を見ながら育ったボクには不思議でしかたがなかった。魔物が出てきそうな妄想を浮かべた経験も、何度もあった。だからこそ、この凪には彼女の言う「魔法」が潜んでいるんじゃないかと思う部分がある。広島あたりの瀬戸内海へ旅行する機会がある人は、これから良い季節なので夏の夕暮れ、四国方面へ沈む夕陽を見ながら「凪」を体験してもらいたい。想像力が豊かな人なら、何かの妄想が浮かぶかも(笑)。

使用機材
Nikon D2X
Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17~35mm F2.8D(IF)
Ai AF Nikkor 35mm F2D
Ai AF 50mm Ff1.4 D
Canon EOS 5D
EF28mm F1.8 USM
Sandisk Extreme III




HARUKI
(はるき)1959年広島市生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科卒業。広告、雑誌、音楽の媒体でポートレートを中心に活動。
1976年 個展「FIRST」を皮切りに、多数の個展、グループ展を開催。1987年朝日広告賞グループ入選、表現技術賞受賞。1991年パルコ期待される若手写真家展選出。コラボ作品がニューヨーク近代美術館に、「普通の人びと」シリーズ作品が神戸ファッション美術館に永久保存。
2005年に個展「Tokyo Girls♀彼女たちの居場所。」を東京 渋谷、2006年に京都で開催。

2006/07/03 00:02
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