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連載バックナンバー
【Case-41】橋詰雅代の場合
[2007/03/19]

【Case-40】廣瀬友香の場合
[2007/03/05]

【Case-39】今泉麗香の場合
[2007/02/19]

【Case-38】朝日桂宜の場合
[2007/02/05]

【Case-37】佐藤恵子の場合
[2007/01/22]

【Case-36】足立浩美の場合
[2007/01/15]


2006年

【Case-09】木村実樹の場合



 今はみんなそれぞれの暮らしですが、中学1年生の時に父が交通事故で亡くなってしまったので、それからはエアロビの先生をやっている母親と、年の離れてる2人の姉に囲まれて、4姉妹のようでもあり、まるでお母さんが3人いるような感覚で過ごしてきました。

 そんな家庭環境のせいなのか、行っていた高校が自由な校風っだたからかわからないけど、恋愛も学生生活もほんとに自由でのびのびしてました。子ども時代から男の子ばかりのグループで、ただ1人の女の子として木登りやゲームをして遊んでいたので人見知りはしないほうだったですね。

 その頃は歌うことが大好きで、歌手を目指して歌の専門学校へ2年間通ってたんだけど、たまたまヘアショーや撮影の現場を体験したのがきっかけで、モデル事務所に所属したり、なぜか焼き鳥バーの店員とかもやってた。歌って踊れるアイドルみたいなのをやろうって、チャイナドレスを着た3人組で映画のキャンペーンガールもやったし、有名な格闘家とCDを出したこともありますよ(笑)


 いろいろやってるうちに自分の方向性に疑問を感じてきて、去年の7月から独立して輸入雑貨の卸販売会社をしています。営業からスタートして、過去の仕事とのギャップ、自分自身の弱い部分にも気付き、いっぱい失敗を繰り返す中で、仕事仲間とのチームワークや家族の愛情の大切さを知りました。会社を立ち上げるまでは大変な苦労だったけど、それを逆手にとってバネにして、今ではやり甲斐を感じるくらいに頑張っています。最近では海外へも行けるようになりました。一生懸命努力すれば欲しいものは手にはいるんだってことを実感できたのが何よりも嬉しい!

 最近になって湘南エリアに引っ越したんだけど、ちょっと見栄はって広めの部屋を借りたもんだから、1人暮らしは若干寂しいです(笑)。海にも近いので、忙しい毎日だけどたまにはゆっくりと葉山あたりの海の家へ行き、良い音楽を聴きながら、いっぱいお酒を飲むぞおー! 早く夏が来ないかなあ。


 ふとしたキッカケで知り合った実樹ちゃん。寝不足での撮影の時、代わりに車の運転をしてもらったがボクよりははるかに運転も巧いし、道もよく知ってる。なんといっても仕事が多忙の中で、ものすごいパワフルで彼女の行動力には最初から圧倒され放しだった。

 アルバータ・ハンター(Aiberta Hunter)のアルバムCD数枚を何度も聴きながらセレクトした。残念ながらもう亡くなってしまったのだが、彼女は1920年代にはすでに人気ブルースシンガー兼ヒットコンポーザーとして活躍していたオバアチャンで、デビューは1912年というから100年近くになる。1度引退して看護婦になった後、82歳でカンバックした彼女の晩年のアルバムが発売された頃に偶然その存在を知った。その頃は確か90歳近くなっていたと思うが、そのスウィングするヴォーカル力に圧倒され「スーパーオバアチャンやなあ」と思い、落ち込んだ時などによく聴いては元気づけられていた。実樹ちゃんも、そんなおばあちゃんになるんじゃないかって気がした。A・ハンターについては「人生を三度生きた女」という本も出ているので、興味がある方は読んでみるといいだろう。

 そんな実樹ちゃんとの撮影は、横須賀と、引っ越しの荷物がまだ残っている彼女の新居で行った。横須賀で待ち合わせたのが午後遅い時間だったので、夕方近くの斜めの光線から、夜の蛍光灯を活かした撮影。そして彼女の部屋での撮影日はあいにくの天候だったので、いろんなタイプの光と影になり、それぞれが手強かったが、それもまた楽しんでの撮影をしてみた。


 今回はそれぞれのカットに使用したレンズを紹介してみよう。標準レンズのシンプルな描写が好きなのと、シリーズで統一するために冒頭のスタジオカットはいつもニッコール50mmと決めているが、今回は展示室ショーケースのガラス越しの後ろ姿、逆光のベランダ背景カットもにも使用した。後者は曇天の自然光線をメインに、離れた場所にレフを立てかけて撮影。紹介していないが、実は結構使用する機会は多いのだ。

 横位置写真のアップと緑背景の外でのカットは85mm。横位置写真は、下からのランプ光源だけで撮影している。髪の毛のトーンが完全に潰れるのを防ぐためとアイキャッチを入れるために、レンズまわりに小さな丸レフを使用している。畑でのショットは夕暮れギリギリの光で露出オーバー気味だったので、全体にコントラストがつきすぎてしまった。

 彼女の部屋での引いたカット、グレーの甲板に寄りかかっているカット、最後の横位置カットは12~24mmズーム。部屋カットは自然光+電球+蛍光灯の3色ミックスだがホワイトバランスはオート。Case-05でも書いたが、その場にある光線が好きなので、特別な場合を除いてはオートだ。この場合はその“特別”にあたる。でも迷ってる時間がないので“仕方なく”オートにしたのだが、神頼みのそれが正解だった(笑)。D2Xのオートはかなり信頼できると思う。


 その他の掲載カットに使用したレンズは、残りすべてがシグマの20mm。このレンズは35mm対応なのでやや大きいのだが、暗い場面での撮影が多いボクの場合にはやはりF1.8という開放値が強い味方になる。いざとなればISO感度を800にも1600にもして使うのだが、ノイズ発生の観点からなるべくなら100、それがキツイ時には400と決めている。200は使わない。それは銀塩時代からのクセになっているので変わらない。

 夜の撮影カット。マネキンと一緒の記念写真、旧繁華街で撮った「昔の娼婦風ポーズ」の2点、合計3点は店からもれてくる灯りや外の街灯や看板の光源がほとんど蛍光灯だったために、ホワイトバランスを蛍光灯モードに設定。顔の位置が光源から裏側になった場合などは影の部分が青みがかったりするので最終的には調整する。

 このレンズを使用する理由にはもうひとつ、近接撮影が可能であるというのも特徴だ。ニコンから純正の明るいDXレンズが発売されるまでは、ボクにとっては大きなサポートメンバーとして活躍してくれることだろう。

使用機材
Nikon D2X/D200
Sandisk Extreme III
AF-S DX Zoom Nikkor ED 12~24mm F4G(IF)
Ai AF Nikkor 50mm F1.4D
Ai AF Nikkor 85mm F1.8D
SIGMA 20mm F1.8 EX DG ASPHERICAL RF




HARUKI
(はるき)1959年広島市生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科卒業。広告、雑誌、音楽の媒体でポートレートを中心に活動。
1976年 個展「FIRST」を皮切りに、多数の個展、グループ展を開催。1987年朝日広告賞グループ入選、表現技術賞受賞。1991年パルコ期待される若手写真家展選出。コラボ作品がニューヨーク近代美術館に、「普通の人びと」シリーズ作品が神戸ファッション美術館に永久保存。
2005年に個展「Tokyo Girls♀彼女たちの居場所。」を東京 渋谷、2006年に京都で開催。

2006/05/29 02:02
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