2015年はどうなる?

メーカー直撃インタビュー:リコーイメージング編

フルサイズ機が近い将来出る可能性も

トピックの多かった2014年のデジタルカメラ業界だが、早くも気になるのは翌2015年の動向。変化する市場の変化に、デジタルカメラメーカー各社はどう動くのか。

現在発売中のデジタルカメラマガジン2015年1月号では、「8メーカー直撃! 2015年はどうなる? 168の質問」と題した特集を掲載。各社のキーマンに、今後の展開をインタビューしている。その内容に誌面で未掲載の回答を加え、デジカメ Watchで再構成したのがこの連載だ。各社の回答から、メーカーそれぞれの考え方を読み取ってほしい。

リコーイメージング編では、リコーイメージング株式会社 開発統括部 第1開発部 部長の山元康裕氏、開発統括部 第2開発部 部長の小迫幸聖氏、開発統括部 第3開発部 部長の小林智晶氏、マーケティング統括部 商品戦略部 部長の遠藤浩平氏に話を聞いた。(編集部)

聞き手:田中希美男氏

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2015年はどうなる?メーカー直撃インタビュー バックナンバー

リコーイメージング株式会社 開発統括部 第1開発部 部長 山元康裕氏(撮影:田中希美男氏)
リコーイメージング株式会社 開発統括部 第2開発部 部長 小迫幸聖氏(撮影:田中希美男氏)
リコーイメージング株式会社 開発統括部 第3開発部 部長 小林智晶氏(撮影:田中希美男氏)
リコーイメージング株式会社 マーケティング統括部 商品戦略部 部長 遠藤浩平氏(撮影:田中希美男氏)

Q:「写真とカメラ」でもっとも大切なことは?

A:写真の魅力は3つ。1つは今を記録し、未来に伝えるというアーカイブ性、2つめがコミュニケーション性、3つめが写真を撮るという行為そのものではないでしょうか。写真を撮って、それを残すこと、仲間や家族でそれを見て愉しんだりすることが写真の魅力だと思います。

いっぽう、カメラは「今見たものを忠実に残せること」が大切だと考えています。その時に見た(見えた)情報を正確に記録できることです。

Q:カメラを企画、開発するときに大切にしていることは?

A:私たちが開発するときにもっとも意識していることは、製品を使ってもらうお客さまに喜んでもらえることです。できあがったら、褒めてもらいたい、感動してもらいたい、とそんなことを考えながら企画したり開発を進めたりしています。

Q:レンズが交換できるカメラの魅力は?

A:レンズを交換することで撮影領域を広げることもできますし、自己表現もできます。ボディを買ってそのあとの愉しみが広がります。レンズをチョイスする愉しみもある。

さらに、自分の使っているカメラやレンズに似合ったアクセサリーを選んだりする広がり感もあります。それがレンズ交換式システムカメラのもうひとつの愉しみではないでしょうか。

Q:一眼レフカメラ、ミラーレスカメラの、それぞれの魅力と優れた点とは?

A:一眼レフカメラは、フィルム時代から写真を撮る道具として進化してきた、その完成度の高いシステムが魅力です。光の様子をリアルに確認できる光学ファインダーやストレスを感じさせない高速AFが優れた点になります。光学ファインダーは遅れがゼロに近いですから、ストレスフリーで撮りたいシーンを観察でき、撮影に集中することができます。この魅力は大きいですね。

ミラーレスカメラの魅力は、小型薄型です。他にはEVFのプレビュー機能、つまり撮影前に撮影後の画像を事前に確認できることなどでしょうか。新規にシステムを組み上げていけるので、最新技術を使った斬新なシステムを作りやすいのも魅力です。

Q:レンズ交換式カメラはこれからどのように変化し、進化していくでしょうか?

A:一眼レフカメラのほうは、そのスタイルの良さを守りながら、いままでにない新しい技術革新を模索していく方向です。私たちの製品でいえば、たとえばローパスセレクターのようないままでにどこにもなかったようなものを探し出していく。そうすればまだまだ一眼レフカメラは伸びていく可能性はありそうです。

ミラーレスカメラは小さなサイズを意識しながら、より一層の高画質化や操作性の向上を狙っていく方向ではないでしょうか。

Q:将来、いままでとは異なるまったく新しいタイプのカメラが出現する可能性はあるでしょうか?

A:私たちには、たとえばTHETAなどがありますね。そうした新しい提案はこれからもやっていきたいです。これは仮の話ですが、ウェアラブルのカメラなんてあるとおもしろいですね。シャッターはどうするかという課題はありますが、そうですね、動画を撮るぶんにはシャッターにこだわる必要もないですよね(笑)。いずれにしても新しい領域のカメラは広がりを見せていくと思われます。

1度に全周を撮影できるデジタルカメラTHETA

Q:モデルチェンジのサイクルは長くなっていくでしょうか? ファームウェアのアップデートや部品交換サービスが広まっていくでしょうか?

A:必ずしも長くなるとは言い切れないでしょう。メーカーのそれぞれの事情によって短いモデルチェンジのカメラがあったり、長いモデルチェンジのカメラがあるのでは。商品のコンセプトにもよると思われます。

ファームウェアのアップデートによる機能拡張は、GRなどでだいぶ以前からやっています。そうした方法は、今後のレンズ交換式のカメラにも広げていきたいと考えています。

ただし、ファームアップだけの機能追加でできることは限られています。結局、ハードの変更をしなければならないときもあります。

Q:イメージセンサーのサイズ大型化や、さらなる高画素化に向かうでしょうか?

A:大型化(フルサイズ)は1つの方向性としてありますが、小さいサイズ(APS-C以下)には利点として、サイズが小型化できるということもあります。高画素化には向かうと思います。確かに高画素化すればノイズの問題も出てきますが、いままでもそれを抑える技術で進化してきましたから。

Q:大型化、高画素化すればどんなメリットがあるでしょうか?

A:部分的にトリミングしても、高精細な写真を得ることができるというメリットはあると思います。解像力、諧調描写力、グラデーションの向上に期待できますね。

ただし、高画素とは違う方法で高画質が得られるようなことにも期待したいですね。いや、具体的な策があるわけではないのですが。

Q:イメージセンサーにどのような「新しい機能」を望みますか?

A:ダイナミックレンジや入射角特性を広く、という要望は常にあると思います。広いダイナミックレンジの画像を得るために16bitに対応してほしいといったことも。表現できる諧調が広げられます。もちろん読み出しフレームレートの高速化にも期待します。

Q:従来とは構造が異なる新しいタイプのセンサーが出現する可能性は?

A:あるでしょうね、私たちの夢でもあります。たとえばFoveonのような垂直色分離型で、もっと色の分離が理想的にできればいいなあとか、画素をランダムに散りばめたものなどでしょうか。イメージセンサーのようなコアデバイスの技術革新があると市場ももっと活気づくのではないでしょうか。

Q:画像処理技術がさらに進化していけば、どんな“夢”が可能となるでしょうか?

A:とても暗かったり遠かったり、何らかの理由で今までは見えなかったものが見えるようになると思います。ノイズに埋もれているようなものも再現できるかもしれない。少ない画素数から高解像の画像を作り上げるようなこともできるかも。

今のところ解像感の高い画像を得るには高画素のセンサーを使うしかないですが、進化した画像処理を利用することで可能になるといいですね。

Q:積極的に画像処理を利用していくことは良いことでしょうか?

A:けっして悪い事だとは思いません。ただし、つねにそれだけに頼ろうとせずに、他のいろいろな手段についても同時に考えていくべきだと思います。いまは、できるだけ光学系でがんばって、より優れた製品を作る努力をすべきだとは思います。総合的に判断して、どの手段で、どこまでやるかを決めてやらないといけないですね。

Q:将来、メカニカルシャッターから電子式シャッターに代わる可能性はあるでしょうか? 電子式シャッターがメカニカルシャッターよりも優れた点は?

A:完璧なグローバルシャッターが出てくれば、メカシャッターはなくなるでしょうね。ただし、まったく問題のないグローバルシャッターができるのはそう簡単ではなさそうです。

Q:手ブレ補正が電子式(画像処理など)に替わる可能性は?

A:可能性は無いとは言えないと思いますが、電子式で画質劣化を起こさずに補正するのは現状では難しいのではないかと感じています。画質としてまったく遜色のないものができれば、切り替わる可能性があるでしょう。

Q:一眼レフカメラに像面位相差AFが必要だと考えますか?

A:動画撮影や、ライブビューからの静止画撮影をされる方のためにも、あった方がよいと思います。

Q:撮影時にピントも露出もまったく考えないで写せる「完全自動カメラ」は、ユーザーに利益をもたらすでしょうか?

A:これまでも様々な自動化が行われユーザーの利便性が向上してきていることを考えると、十分に利益をもたらすでしょう。フィルムカメラですが私たちの作った機種でファジー機能を持たせたカメラを製品化したことがあります。撮影する人のレンズ焦点距離や撮影距離、F値などをおぼえておいてそれを次の撮影の時に活用するというものでした。

そうした方法を現在のデジタルカメラに応用すれば、完全自動カメラも夢ではないでしょう。でも、仮にそんなカメラができたとしたら、写真を撮影するという愉しみが薄れてしまうかもしれませんね。

かつての銀塩カメラPENTAX Z-20は学習機能を備え、使用者のクセ、プログラムシフトラインを覚えてくれる

Q:2013年から一眼レフの売れ行きが鈍化してきている。その理由はなんでしょうか?

A:市場でミラーレスが伸びて一眼レフの市場を喰っているかというと、そうとも言えません。一眼レフで落ちているのはエントリーのほうです。ただ単に、写真を記録のためやコミュニケーションを目的にしている人たちがエントリー系の一眼レフから離れていっているようです。スマートフォンに取って代わられているという見方もできます。

Q:ミラーレスカメラが徐々に売れ行きを増してきている。その理由は?

A:サイズ感、価格にプラスして性能面の向上が大きいと思います。

PENTAXブランドでは1/1.7型センサーを使ったミラーレスカメラQ-S1をラインナップ。レンズも小型にできる

Q:今後コンパクトデジタルカメラはどうなっていくと予想しますか?

A:より特長が明確な商品のみが残っていくと思います。高倍率ズーム、高級コンパクト、防水カメラなどは伸びています。スマートフォンと距離感のあるカメラでしょうか。コンデジだからダメということはないと思います。

Q:デジタルカメラに動画撮影機能は必須でしょうか?

A:必須です。海外ではビデオカメラがなくなりつつありますから、一台のデジタルカメラで静止画と動画を使い分けているユーザーも多くなっています。動画機能を搭載するのが当然になっているのが現状だと思います。

どのクラスのカメラにも必要だとは思いますが、通常のビデオカメラではできないレンズ交換式のカメラの方が、より大きなセンサーでより綺麗な動画を撮影したり表現の幅を広げたりできる可能性もあります。

Q:交換レンズを開発するとき大切にしている点は?

A:画質と大きさ、価格のバランスです。交換レンズは長く使い続けられる財産ですから、世代を超えて長く使えるものということも考えておかなくてはなりません。画質を基本にして、大きさや価格なども考えながら後はどういう味つけをしていくかでしょうか。

Q:レンズの描写性能や機能は、さらなる進化が期待できますか?

A:まだまだ進化する可能性はありますし、そうしていかないといけません。機能的には高倍率もまだ広がるのではないでしょうか。レンズ性能は、基本的にはいままでの延長線上での進化、改善と思っています。

まずは、より高い解像力、耐ゴースト性といったところでしょう。画像処理の進化に著しいものがありますので、そのあたりに進化の新しい道筋があるかもしれません。

Q:画像処理を大いに活用してレンズの収差補正や描写の改良をおこなったほうが良いでしょうか?

A:自然な画像が得られるという条件付きですが、レンズの収差補正にはどんどん利用していくのが良いと思います。将来、画質の劣化を少なくするような画像処理があるかもしれません。

ただ、ながらく交換レンズ開発にいた者としては、画像処理で簡単にレンズの描写が変わるとすれば、思いは複雑です(笑)。

Q:メモリーカードは今後どのように変化していくと考えますか? 無線環境やクラウドなどのインフラが進化すればメモリーカードは不要になるでしょうか?

A:大容量化でしょうか。書き込み読み込みのスピード進化もあるでしょうけど、大きなブレイクスルーやフォーマットチェンジはないでしょう。だいぶ先の話になりますが、カードは内蔵型になってクラウドにいくかもしれません。

Q:スマートフォンとカメラとの「関係」は将来どのようになるでしょうか?

A:それぞれ用途が異なる部分においては、補完関係が続くと思います。

Q:レンズ交換式のフルサイズカメラの開発が進んでいると聞きますが、発表の予定は来年(2015年)中でしょうか?

A:現時点で具体的なお話はできませんが、開発は従来通り続けています。製品化するかどうかのジャッジは来年ぐらいにははっきりさせたいと考えています。「開発中」ということは近い将来に出てくる可能性があると考えてもらっていい。仮定の話ですが、もしやるとすればKマウントは大切にしていきたいし、レンズはきちんと揃えます。

フォトキナ2014に参考出品された「大口径望遠ズームレンズ」(左)および「超望遠ズームレンズ」(右)。詳細なスペックは不明だが、これはフルサイズ用か?

Q:APS-Cサイズまたはフルサイズセンサーを使ったミラーレスカメラについてリコーイメージングはどのように考えますか?

A:非常に高い市場性を感じております。ただし、私たちがやるかどうかは別です。申し上げられるようなレベルのものはありませんし、まだまだ研究中のレベルです。

Q:GRのズームレンズ化の予定はあるのでしょうか?

A:一部の方々からご要望があるのは事実ですが、GRの商品コンセプトにもかかわることですのでよく考えなくてはいけません。現時点で具体的な予定はありません。

デジタルのGRシリーズは、当初から35mm判換算28mm相当の単焦点レンズを搭載している

Q:PENTAX Q用のMACROレンズが望まれていますが予定はあるのでしょうか?

A:継続して検討をおこなっていますが、いくつか技術的なハードル、たとえばAFの高速化、などが残っていることと、Kシリーズや645シリーズで望まれているレンズを含め、開発を優先するレンズを検討しているところです。具体的な予定についてはまだ申し上げられる段階にありません。

Q:UHS-IIメモリーカードの採用の予定はありますか?

A:将来の製品では、対応する方向で考えています。

(了)

デジタルカメラマガジン2015年1月号(12月19日発売、インプレス刊)

田中希美男