【年末特別企画】知っておきたい「ミラーレスカメラ」の今とこれから

Reported by 本誌:折本幸治

 2010年のデジタルカメラ商戦で存在感を示したのが、レンズ交換式のいわゆるミラーレス機(メーカーや販売子会社により、デジタル一眼、ミラーレス一眼などと呼称)だ。既存のデジタル一眼レフカメラよりカジュアルで小型軽量、コンパクトデジタルカメラより本格的という絶妙なポジションを開拓。いまやレンズ交換式デジカメ市場において、無視できない勢力となっているのは周知の通りだ。

 きっかけは、オリンパスとパナソニックによるマイクロフォーサーズシステム規格の共同発表(2008年8月)までさかのぼる。レンズ交換式でありながらミラーボックスやペンタプリズムを省略するという、ライブビュー技術を核にした新製品の登場を両社が示唆。両社ともカメラそのもののコンセプトについて多くを語らなかったが、コンパクトデジカメからのステップアップ層を狙う意思を強調していた。

2008年10月にマイクロフォーサーズシステム規格を発表したオリンパスイメージングの大久保雅治社長と、パナソニックAVCネットワークス社の吉田守副社長

 その2カ月後(2008年10月)、はやくもパナソニックはマイクロフォーサーズ1号機のLUMIX DMC-G1を発売した。DMC-G1自体の完成度は高く、懸念とされていたコントラストAFの速度やEVFの画質については、明るい未来を予感させるものがあった。今思うと、この時点でミラーレスが、女性層と既存のカメラファンの両方から支持を得たことは大きな意義を感じる。

 翌2009年7月、マイクロフォーサーズ規格準拠のオリンパス・ペンE-P1が発売されたことで、ミラーレス市場はブレイクした。特に「カメラ女子」ブーム拡大を牽引した功績は大きく、E-P1発売以降、量販店の撮影用品売場が一変したこともからも、その影響力の一端がうかがえる。ボディケースや貼り革がここまで受けるとは、E-P1以前に誰が想像しただろうか。

パナソニックLUMIX DMC-G1オリンパス・ペンE-P1

 そして今年6月、ソニーが独自マウントのNEX-5とNEX-3を引っさげて参入、その後の快進撃は記憶に新しい。結果、2010年におけるミラーレスの台数シェアを「レンズ交換式デジタルカメラ全体の3割に達した」と伝える調査会社も出たほどだ。キヤノンとニコンで8割以上を占めていた世界において、エポックメイキングな出来事といえよう。

PMA 2010でミラーレス機の登場を予告した業務執行役員SVPパーソナルイメージング&サウンド事業本部長の今村昌志氏NEX-5を持つ浅野忠信さん(左)とNEX-3を持つ北川景子さん(右)。2010年5月の発表会で

 2010年の冬商戦では、オリンパスとパナソニックが新製品を投入。既存機種をあわせると、オリンパス3機種、パナソニック3機種、ソニー2機種が入り乱れての混戦となる。しかもソニーは現在、α55とα33という、これまた既存のデジタル一眼レフカメラとは別ジャンルの製品を展開中だ。

 ここでは各社のレンズ交換式ミラーレス機について、各社の戦略を俯瞰しながら紹介したい。


撮像素子とレンズのバリエーションに違いが

 現行ミラーレス機の撮像面積は、EマウントがAPS-Cサイズ相当、マイクロフォーサーズが4/3型となっている。Eマウントの方が撮像面積が大きく、ぼけ表現や高感度画質の面で有利。マウントアダプターを介したレンズ装着時に、焦点距離表記で1.5倍相当の画角を確保できる点にも注目したい(マイクロフォーサーズは2倍)。

マイクロフォーサーズとデジタル一眼レフカメラの違い(オリンパス提供)

 もっとも、ぼけについてはレンズの要因も大きく、F値の暗いズームレンズや広角レンズしかない今のEマウントシステムでは、本領を発揮できずにいるのが現状だ。順調にレンズバリエーションが増えているマイクロフォーサーズにしても、いまのところ大口径の望遠レンズがないなど、既存の一眼レフカメラシステムに比べると物足りない状況が続いている。両陣営とも、今後のレンズラインナップの充実に期待したいところだ。

 そのレンズラインナップだが、Eマウントが3本、マイクロフォーサーズが16本という状況(キット専用レンズを除く)。

 Eマウントは広角単焦点、標準ズーム、高倍率ズームの3本しかなく、広角単焦点の前面にとりつける魚眼アダプターとウルトラワイドアダプターを併せても5種類しかない。

 また、唯一の広角単焦点が28mm相当や35mm相当といった一般的な画角ではなく、24mm相当と広い点も留意したい。撮影者次第だが、使いこなすにはそれなりに慣れが必要だ。ただ、E 16mm F2.8とE 18-55mm F3.5-5.6 OSSの焦点域がかぶらない点は律儀なシステムといえる。


Eマウント用レンズの現行ラインナップ

 一方、登場から約2年たったマイクロフォーサーズは、ずいぶんラインナップが増えている。対角魚眼、超広角ズーム、広角単焦点、標準ズーム、準標準単焦点(40mm相当)、高倍率ズーム、望遠ズーム(80-400mm相当クラスと200-600mクラス)、中望遠マクロと充実してきた。

 さらにほかのマウントにない3D撮影用のレンズがあったりと、ぱっと見にはバラエティ豊かな布陣に見える。コシナの参入も2010年の話題のひとつだ。

マイクロフォーサーズマウント用レンズの現行ラインナップ

 ただしズームレンズに着目すると、オリンパスとパナソニックとで焦点域の重複が目立ち、無駄が多いように見える。

 オリンパスとパナソニック、それぞれのズームレンズの違いは、手ぶれ補正の有無が大きい。オリンパスだと非搭載、パナソニックだと搭載となる(超広角ズームレンズを除く)。つまり、パナソニックボディにオリンパスレンズをつけると、手ぶれ補正の恩恵を受けられない。これはオリンパスが、ボディ内手ぶれ補正を採用しているためだ。

 もちろん手ぶれ補正が必要ないなら、パナソニックユーザーがオリンパスレンズを選んでも問題ない。オリンパスレンズの方が、パナソニックのレンズより比較的小型であり、収納性や可搬性には優れているからだ。逆にオリンパスユーザーが、レンズ内手ぶれ補正を必要とする場合もあるだろう(撮影時のライブビューに補正が適用され、望遠レンズでのフレーミングで有利)。そういう意味で両社の焦点域が重複していることに、一定の意義はあるのかもしれない。

 次に両陣営のロードマップから、発売予定のレンズを見てみよう。いずれもイベントや発表会で開示されたもので、レンズ名の表記も開示時のものに従っている。あくまでも発表時の開発または発売予定であり、示された通りのスケジュールとラインナップになるとは限らないことをお断りしておきたい。また、いずれもレンズ名と発売時期以外、具体的な情報はない。

・発売予定のEマウントレンズ

  • カールツァイス広角単焦点レンズ(2011年発売予定)
  • 望遠ズームレンズ(2011年発売予定)
  • マクロレンズ(2011年発売予定)
  • ポートレートレンズ(2011年発売予定)
  • 高性能標準ズームGレンズ(2012年発売予定)
  • 広角ズームレンズ(2012年発売予定)
  • 中望遠レンズ(2012年発売予定)

 具体的な焦点距離やF値は不明ながらも、広角から望遠まで幅広い製品ラインナップが揃うようだ。特に、Aマウントの高級ブランドであるカールツァイスやGレンズを投入するというソニーの力の入れ具合が頼もしい。

左の7本が開発中のEマウントレンズ。9月のフォトキナ2010でソニーが開発発表した。右は発売済みの3本

 気になるのは小型で軽量なレンズが少ないことか。せっかく小さなボディなのに、比較的大柄になるであろう、ズームレンズや大口径望遠レンズが目立つ。開発発表時にソニーが公開した写真を見ても、すべてのレンズがそれなりに大きくなるように見受けられる。

・発売予定のパナソニックレンズ(マイクロフォーサーズマウント)

  • 25mm F1.4
  • 大口径ズームレンズ
  • 大口径広角レンズ

・発売予定のオリンパスレンズ(マイクロフォーサーズマウント)

  • 魚眼(2011年春までに)
  • 広角(2011年春までに)
  • マクロ(2011年春までに)
パナソニックがフォトキナ2010で示したロードマップ。25mm F1.4、大口径ズームレンズ、大口径ワイドレンズの登場を示唆したFotous感謝祭(2009年11月)で掲示されていたオリンパスのロードマップ。魚眼、広角、マクロの文字が読める

 マイクロフォーサーズ陣営のうち、パナソニックはこれまで手薄だった大口径レンズの投入を示唆している。また、オリンパスは広角、魚眼、マクロの3点を予告。広角は12mm前後、マクロは50mmになるようで、こちらも楽しみだ。


EVFの有無も製品コンセプトの違い

 ミラーレス機の選び方で重視したいのは、EVF(電子ビューファインダー)への対応だ。そもそもミラーレス機は背面液晶モニターのみで撮影できるため、EVFがなくても問題ない。しかし、カメラぶれの防止、強い日差しの中での撮影を考えると、EVFの有無を気にする人もいるだろう。また、現行の外付けEVFはすべて上下チルト式のため、ローアングル撮影用としての役割も考えられる。何よりも「のぞいて撮る」ことに意義を感じる写真ファンはまだ多い。

 現行ミラーレスのEVFは、内蔵タイプと外付けタイプにわけられる。内蔵タイプは、一眼レフカメラを模したスタイリングのDMC-GH2とDMC-G2のみ。外付けタイプは、E-PL1s、E-PL1、DMC-GF2。EマウントのNEXシリーズは、EVFを内蔵していない上に、オプションとして外付けタイプも用意されていない。

 内蔵と外付け、どちらが有利かは一概に決めつけられない。「普段は背面液晶モニター、日差しが強いときにEVF」というスタイルなら、外付けにすることでボディの収納性が高まる。「基本的にEVF、アングルによってたまに背面液晶モニター」という撮影者なら、着脱の面倒や紛失の心配がなく、追加投資のいらない内蔵タイプの優位性もわかるはずだ。

 もうひとつ各社で大きく違うのが、動画への考え方だ。コントラストAF前提で開発されたミラーレス機は、既存のデジタル一眼レフカメラより、動画記録中のAFで有利だ。それもあり、各社とも動画機能を大きく打ち出している。

 例えば、テレビ事業やビデオカメラ事業を持つソニーとパナソニックは、メインモデルで共通規格のAVCHDに準拠。テレビでの再生やレコーダーとの親和性は高く、もちろんフルHD(1,980×1,080ピクセル)での記録に対応している。もっともスペック的にはAVCHDの規格自体に縛られている側面もあり、せっかくの大判センサーを活かしきれていないと、ハイエンドユーザーからは不評もあがっているのは事実。両社とも同じマウントによる動画向けモデルを展開していく意向があり(ソニーは民生用としてNEX-VG10を発売済み)、今後は棲み分けが進むものと見られる。

Eマウントを採用するソニーのハンディカムNEX-VG10。9月に発売。11月にはスーパー35mmフォーマットの業務用Eマウントカメラも発表しているパナソニックもマイクロフォーサーズマウントを採用する業務用ビデオカメラを発表した。12月末に発売される見込み

 一方オリンパスは、圧縮方式にMotion JPEGを採用しており、記録ピクセル数も1,280×720ピクセルどまりだ(一部のアートフィルター動画をのぞく)。


世界最小ボディのソニーNEX(Eマウント)

 ユニークな見た目が話題を呼んだNEXシリーズだが、機能面の充実ぶりもさすがソニーといったところだ。とりわけ、APS-Cセンサーの搭載が大きなポイントだろう。レンズ交換式ミラーレス機の中でAPS-Cセンサーを条件に選ぶと、必然的に国内ではNEXシリーズに絞り込まれる。マイクロフォーサーズ勢よりぼけを使った表現に強く、高感度画質も優秀。マウントアダプターを介したオールドレンズの使用においても、センサーサイズの優位性は明らかだ。しかも本体は、マイクロフォーサーズ勢をしのぐ小ささに抑えた点に評価を集めている。

 反面、ボディに対してレンズの大きさが不釣り合いに感じられたり、独特のインターフェイスに慣れが必要なのも確かだ。一眼レフカメラに慣れたユーザーほど、強い癖を感じるだろう。また、ストロボが別付けになっている点や、EVFがオプションとしても存在しないことにも留意したい。

 また、まだレンズのラインナップが貧弱なことが気になる。APS-Cセンサーだからといって、一眼レフカメラのようなシステム性を求めると肩すかしを食うだろう。ただ、この大きさでAPS-C画質を携帯できる点や、焦点距離24mmの画角が好きなスナップ派には、これほど楽しめるシステムはないかもしれない。

 価格面では、夏発売のモデルということもあり、比較的廉価に購入できる。ここにきてさらに売価が下がっているため、特にNEX-3の買い得感は高い。


●NEX-5

 


ソニーNEX-5ブラック。レンズはE 16mm F2.8

・実勢価格

  • NEX-5A(本体+E 16mm F2.8):5万5,300円前後
  • NEX-5K(本体+E 18-55mm F3.5-5.6 OSS):6万4,800円
  • NEX-5D(本体+E 16mm F2.8+E 18-55mm F3.5-5.6 OSS):7万4800円前後

 ぎりぎりまで絞り込まれたボディにAPS-Cセンサーを搭載。ボディ、レンズとも金属外装で質感は高く、ほとんど隙間なくはめ込まれたチルト式液晶モニターの緻密なことだわりにもひかれる人は多いだろう。レンズ交換式カメラとして異質なデザインをどう受け取るかは購入者次第か。

 動画記録はAVCHD準拠。ただし60i記録30コマ/秒出力。ストロボを外付けとし、ボディに標準で同梱するのは珍しい。

 

●対応レンズ:Eマウントレンズ ●手ぶれ補正:レンズ内 ●撮像素子:APS-Cサイズ(23.4×15.6mm) ●有効画素数:約1,420万 ●アンチダスト:有 ●感度:ISO200-12800 ●記録メディア:SDXC/SCHC/SDメモリーカード、メモリースティックPRO-HGデュオ/PROデュオ ●動画記録:AVCHD(1,920×1,080/30fps/60i記録)など ●液晶モニター:3型92万ドット上下チルト式 ●シャッター速度:30-1/4,000、バルブ ●ストロボ:GN7(ISO100・m、外付け、付属) ●連写速度:約7枚/秒 ●撮影可能枚数:約330枚 ●外形寸法:約110×58.8×38.2mm ●重量:約229g(本体のみ)

 


●NEX-3

 


ソニーNEX-3レッド。レンズはE 16mm F2.8

・実勢価格

  • NEX-3A(本体+E 16mm F2.8):4万4,200円前後
  • NEX-3K(本体+E 18-55mm F3.5-5.6 OSS):4万9,800円前後
  • NEX-3D(本体+E 16mm F2.8+E 18-55mm F3.5-5.6 OSS):5万9,800円前後

 NEX-5との主な違いは本体のスタイリングと外装の素材(NEX-3は樹脂製)、動画記録。MP4記録になってしまうが、パソコンでの再生を考えているなら悪くない選択だ。

 またNEX-3の方がカジュアルな見た目であり、カラーバリエーションが豊富。何よりも価格が安く、特にE 16mm F2.8のみが付属するNEX-3Aは4万円台と手頃なのは魅力を覚える。

 

●対応レンズ:Eマウントレンズ ●手ぶれ補正:レンズ内 ●撮像素子:APS-Cサイズ(23.4×15.6mm) ●有効画素数:約1,420万 ●アンチダスト:有 ●感度:ISO200-12800 ●記録メディア:SDXC/SDHC/SDメモリーカード、メモリースティックPRO-HGデュオ/PROデュオ ●動画記録:MP4(1,280×720/29.97fps)など ●液晶モニター:3型92万ドット上下チルト式 ●EVF:なし ●シャッター速度:30-1/4,000、バルブ ●ストロボ:GN7(ISO100・m、外付け、付属) ●連写速度:約7枚/秒 ●撮影可能枚数:約330枚 ●外形寸法:約117.2×62.6×33.4mm ●重量:約239g(本体のみ)

 


「ペンスタイル」とEVFの組み合わせにこだわるオリンパス

 往年のペンFを思わせるスタイリングで衝撃的なデビューを飾ったE-P1。その後継機のE-P2が最上位機種だが、現在のイメージリーダーはE-PL1および最新モデルのE-PL1sだろう。軽さを使いやすさを追求、操作をよりわかりやすくするなど、E-P2/P1とは異なる価値観を作り出すことに成功している。

 機能面でのオリンパス機の特徴といえば、ボディ内手ぶれ補正が挙げられる。マウントアダプターを介したオールドレンズのマスターボディとして使用することを考えると、この機能の存在は大きい。

 また、現在最も画質が良い外付けEVF「VF-2」に対応。エプソン製の144万ドットHTPSユニットを採用し、精彩感と表示の滑らかさはこれまでのEVFと一線を画している。ただし、VF-2クラスのEVFを内蔵したボディはまだない。

 弱点を挙げるなら、現行ラインナップの全機種で、いまどき液晶モニターが2.7型約23万ドットであること(ただし屋外での視認性は悪くない)。フリーアングル液晶モニターを採用する機種もなく、ライブビュー機としての面白みに欠ける。フォーサーズとの棲み分けを考えてのことだろうか。また前述の通り、動画への注力度がいまひとつに感じられる。


●E-P2

 


オリンパス・ペンE-P2ブラック。レンズはプレミアムキットに付属するブラックカラーのM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8

・実勢価格

  • E-P2ボディ(本体のみ):8万9,800円前後
  • E-P2レンズキット(本体+M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm 14-42mm F3.5-5.6):9万6,100円前後
  • E-P2パンケーキキット(本体+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8):10万7,700円前後

 カメラ好きの心をとらえるスタイリングと表面仕上げの良さが特徴。E-P1になかったブラックボディが人気で、今冬からはレンズも黒仕上げの「プレミアムキット」が登場している。

 現行モデルで最も発売が古い機種だけに、下位モデルのE-PL1sやE-PL1に対しても、機能面で突き抜けた特徴はない。ただ、スタイリングの良さと質感の高さにより、いまだに一目置かれる存在だ。

 なお、シャッター速度が最高1/4,000秒のため、大口径のオールドレンズを扱う際、最高1/2,000秒のE-PL1sより有利。なおストロボを内蔵していないので、購入前に注意してほしい。

 

●対応レンズ:マイクロフォーサーズマウントレンズ ●手ぶれ補正:ボディ内 ●撮像素子:4/3型(17.3×13.0mm) ●有効画素数:約1,230万 ●アンチダスト:有 ●感度:ISO100-6400 ●記録メディア:SDHC/SDメモリーカード ●動画記録:AVI(1,280×720/30fps)など ●液晶モニター:3型23万ドット固定式 ●EVF:別売(VF-2、約144万ドット) ●シャッター速度:60-1/4,000秒、バルブ ●ストロボ:別売 ●連写速度:約3枚/秒 ●撮影可能枚数:約300枚 ●外形寸法:約120.5×70.0×35.0mm ●重量:約335g(本体のみ)

 

 

●E-PL1s


オリンパス・ペンライトE-PL1s。本体色はレッド。装着レンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 II

・実勢価格

  • E-PL1sレンズキット(本体+M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II):6万4,800円前後
  • E-PL1sダブルズームキット(本体+M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II+M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6):8万4,800円前後

 2010年のオリンパス機で主力を務めたE-PL1のマイナーチェンジモデル。E-PL1も店頭で入手できるが、ボディの機能面で大きな変化はない。E-PL1でISO3200だった最高感度がISO6400になった程度だ。

 それよりもレンズキットに付属する標準ズームレンズが、新型の「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 II」になったことが大きい。より軽量になりAFが高速化したことで、レンズキットで世界最軽量(約454g)を謳う。

 また、ダブルズームキットも進化した。フォーサーズ用のレンズ(ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6)が付属するE-PL1と違い、マイクロフォーサーズ用のM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6がつくのはおいしい。

 一方、E-PL1から機能面に大きな違いはないのは残念。どのレンズキットもE-PL1より2万円強ほど高価になることは覚悟しなければならない。

●対応レンズ:マイクロフォーサーズマウントレンズ ●手ぶれ補正:ボディ内 ●撮像素子:4/3型(17.3×13.0mm) ●有効画素数:約1,230万 ●アンチダスト:有 ●感度:ISO100-6400 ●記録メディア:SDHC/SDメモリーカード ●動画記録:AVI(1,280×720/30fps)など ●液晶モニター:3型23万ドット固定式 ●EVF:別売(VF-2、約144万ドット) ●シャッター速度:60-1/2,000、バルブ ●ストロボ:GN7(ISO100・m、内蔵) ●連写速度:約3枚/秒 ●撮影可能枚数:約290枚 ●外形寸法:約114.6×72.2×41.5mm ●重量:約296g(本体のみ)

 

高機能化をすすめるパナソニック

 前述の通りパナソニックのマイクロフォーサーズは、一眼レフカメラをコンパクトにしたようなサイズ感のLUMIX DMC-G1から出発した。そうしたEVF内蔵タイプに強いこだわりをみせると思いきや、2009年にはEVFを省略したLUMIX DMC-GF1を発売。その後はEVF内蔵のベーシックモデルであるG系、同じくEVF搭載の上級機GH系、EVFレスのGF系の3ラインを展開している。

 そのうちGH系とG系にはフリーアングル液晶モニターを備える。また、GH系とG系の売りである内蔵EVFは144万ドット相当と高精細で、かつ新製品のDMC-GH2では、カラーブレーキングだった色ずれを低減するなど改良を重ねており実用度は高い。オリンパスのVF-2と同様、エントリークラスのデジタル一眼レフカメラより、表示倍率が格段に広いのも特徴だ。反面、DMC-GF2用の外付けEVF「DMW-LVF1」が、凡庸なスペックとクオリティなのは残念。外付けタイプの考え方が、オリンパスと異なるようで興味深い。

 タッチパネルの積極的な搭載もパナソニックの特徴。年末商戦を戦う3機種とも、タッチパネルに対応している。初心者向けと考えられていたタッチパネルだが、スマーフォトフォンの影響からか、ここにきてずいぶんメジャーになった。デジタル一眼レフカメラを含め、パナソニック以外にレンズ交換式デジタルカメラでの採用メーカーはない。今後の動向に注目したい。

 また、専用レンズ(LUMIX G 12.5mm F12)で3D記録に対応するなど、家電メーカーらしいアプローチも面白い。インターフェイスでは、まわすだけでなく、押し込んで決定動作ができるダイヤルが特徴的だ。

 動画にも力を入れており、特にフラッグシップのDMC-GH2では、AVCHDの1080/60iに対応。センサー出力がDMC-GH1の24コマ/秒から60コマ/秒になり、新たに1080p/24p(24Mbps)での撮影が可能になるなど、徐々に進化してきた。カジュアルモデルのDMC-GF2でさえ、今季はAVCHDの60i記録(センサー出力30コマ/秒)に対応する(前モデルはAVCHD Lite)。

 オリンパス機に対して、ボディ内手ぶれ補正に対応していない。そのため、マウントアダプターを使ったオールドレンズ利用で、手ぶれ補正の恩恵が受けられない。その代わり、パナソニック純正の交換レンズは、超広角ズームレンズや薄型単焦点レンズをのぞき、レンズ内に手ぶれ補正機構を装備。望遠撮影時のフレーミングや動画対応の面で有利だ。


●LUMIX DMC-GH2

 


パナソニックLUMIX DMC-GH2。カラーはブラック。装着レンズはLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.

・実勢価格

  • DMC-GH2(本体):9万800円前後
  • DMC-GH2K(本体+LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.):9万9,700円前後
  • DMC-GH2H(本体+LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH.):13万1,100円前後

 パナソニックのフラッグシップモデルに恥じない高機能モデル。キットレンズのLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.を装着したときのAF速度が驚異的で、コントラストAFの可能性を感じさせる。EVFのクオリティも良くなり、フリーアングル液晶モニターも健在。ミラーレスとしては起動時間が速いのもうれしい。とにかく隙のない仕様が魅力的だ。

 ただし、ミラーレス機に携帯性を求めている人には、本体サイズがマイナスポイントだろう。実勢価格もミラーレスとしては飛び抜けて高価。サブカメラやマウントアダプター遊びではなく、一眼レフカメラを置き換えるものと考えている人向けといえる。

  

●対応レンズ:マイクロフォーサーズマウントレンズ ●手ぶれ補正:レンズ内 ●撮像素子:4/3型(17.3×13.0mm) ●有効画素数:約1,605万 ●アンチダスト:有 ●感度:ISO160-12800 ●記録メディア:SDXC/SDHC/SDメモリーカード ●動画記録:AVCHD(1,920×1,080/60i)など ●液晶モニター:タッチパネル式3型46万ドット フリーアングル式 ●EVF:約153万ドット相当 ●シャッター速度:60-1/4,000、バルブ ●ストロボ:GN13.9(ISO160・m、内蔵) ●連写速度:約5枚/秒 ●撮影可能枚数:約340枚(14-42mmレンズ、EVF撮影時) ●外形寸法:約124×89.6×75.8mm ●重量:約392g(本体のみ)

 


●LUMIX DMC-G2

 


パナソニックLUMIX DMC-G2。カラーはコンフォートブルー。装着レンズはLUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.

・実勢価格

  • DMC-G2(本体):5万9,700円前後
  • DMC-G2K(本体+LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.):5万4,300円前後
  • DMC-G2W(本体+LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.+LUMIX G VARIO 45-200mm F4-5.6 MEGA O.I.S.):6万6,300円前後

 EVF、フリーアングル液晶モニター、タッチパネル、パームグリップを装備。それでいて上位機種DMC-GH2よりも低価格なので、予算を抑えつつ「ミニ一眼レフカメラスタイル」にこだわる人には都合の良い機種だ。

 その代わり、高倍率ズームレンズのLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.がキットレンズ設定に含まれていなかったりと、いまひとつ中途半端な位置づけに感じられる。カスタマイズ性能についてもDMC-GH2に及ばない。また、動画記録がAVCHD Liteであるなど、後発のDMC-GF2に見劣りする部分が見受けられるのは、仕方がないとはいえ残念。

 

●対応レンズ:マイクロフォーサーズマウントレンズ ●手ぶれ補正:レンズ内 ●撮像素子:4/3型(17.3×13.0mm) ●有効画素数:約1,210万 ●アンチダスト:有 ●感度:ISO100-6400 ●記録メディア:SDXC/SDHC/SDメモリーカード ●動画記録:AVCHD Lite(1,280×720/60p記録)など ●液晶モニター:タッチパネル式3型46万ドット フリーアングル式 ●EVF:約144万ドット相当 ●シャッター速度:60-1/4,000、バルブ ●ストロボ:GN11(ISO100・m、内蔵) ●連写速度:約3.2枚/秒 ●撮影可能枚数:約390枚(14-42mmレンズ、EVF撮影時) ●外形寸法:約124×83.6×74mm ●重量:約371g(本体のみ)

 


●LUMIX DMC-GF2

 


パナソニックLUMIX DMC-GF2。カラーはホワイト。装着レンズはLUMIX G 14mm F2.5 ASPH.

・実勢価格

  • DMC-G2(本体):5万9,800円前後
  • DMC-G2C(本体+LUMIX G 14mm F2.5 ASPH.):7万9,800円前後
  • DMC-G2W(本体+LUMIX G 14mm F2.5 ASPH.+LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.):8万9,800円前後

 前モデルのDMC-GF1からさらなる小型化を実現。NEXシリーズほどではないにせよ、とにかく小さくてシンプルな外観が特徴的だ。金属外装の質感も良く、液晶モニターの画質も良い。

 小さいだけでなく、最新機種だけあって機能も充実している。タッチパネル、AVCHD、内蔵ストロボ、外付けEVF対応など、一通りの機能を網羅。上位機種との機能差が少ない点も評価できる。

 残念なのは、外付けEVFの性能が低いことと、家電製品のような「Full HD」の本体ロゴ。タッチパネルの採用と本体の小型化により、操作ボタンが少なくなっている点も留意したい。


●対応レンズ:マイクロフォーサーズマウントレンズ ●手ぶれ補正:レンズ内 ●撮像素子:4/3型(17.3×13.0mm) ●有効画素数:約1,210万 ●アンチダスト:有 ●感度:ISO100-6400 ●記録メディア:SDXC/SDHC/SDメモリーカード ●動画記録:AVCHD(1,920×1,080/60i記録)など ●液晶モニター:タッチパネル式3型46万ドット固定式 ●EVF:別売(DMW-LVF1、約20.2万ドット相当) ●シャッター速度:60-1/4,000、バルブ ●ストロボ:GN6(ISO100・m、内蔵) ●連写速度:約3.2枚/秒 ●撮影可能枚数:約320枚(14mmレンズ、液晶モニター撮影時) ●外形寸法:約112.8×67.8×32.8mm ●重量:約265g(本体のみ)

まとめ

 オリンパスとパナソニックが市場を徐々に盛り上げつつ、少ないシェアを奪い合う中、APS-Cセンサーを搭載したNEXが登場したことで、一気に認知が進んだのが2010年のミラーレス市場だった。3社とも勢いは衰えておらず、いまだキヤノンとニコンの影響力が大きなレンズ交換式デジタルカメラの世界に、来年はどんなトレンドをもたらすか楽しみだ。

 コントラストAFに頼るミラーレス機は、動く被写体に弱いという側面がある。一瞬のチャンスを捉えることについて、EVFは光学ファインダーにかなわない。また、シャッタータイムラグや撮影後の硬直時間も、一眼レフカメラに及ばないのが現状だ。レンズシステムもまだ貧弱。総合的に見て、ミドルクラスのデジタル一眼レフカメラのように、1台で何でもこなせるような汎用性は期待できないと見ていい。とはいえ、DMC-GH2のように高速レスポンスをテーマにした製品も出ており、以前より格段にパフォーマンスは上がりつつある。

 そもそもすべての人がデジタル一眼レフカメラの高機能を常に必要としているわけではなく、はからずもミラーレスがそのことを証明してしまった感がある。現在ミラーレス機が、コンパクトデジタルカメラからのステップアップにちょうど良い受け皿として機能している点を考えると、来年はカメラとしての性能はもちろん、低価格やネットワーク対応など、もっと別の方向への進化も考えられるだろう。

【2010年12月21日】「登場から約3年がたったマイクロフォーサーズ」という誤った記述を「登場から約2年がたった」に改めました。



本誌:折本幸治

2010/12/21 00:00