特別企画

キヤノン「PowerShot G1 X Mark II」の実力を探る

“最強のコンパクトデジカメ”を早春の被写体でチェック!

 プロユースなコンパクトデジタルカメラとはどのようなものだろうか。

 フィルム時代では一眼レフであってもコンパクトカメラであっても、装填するフィルムの種類が同じだったので、レンズ性能さえ要求を満たしていれば、基本的に撮れる写真は同様に高画質を保つことができた。現在、各社からレンズ交換式の一眼カメラと同等の撮像センサーを搭載したコンパクトデジタルカメラが発売されているものの、レンズが単焦点であったり開放F値が暗かったり、あるいは機能や操作性が不十分であったりと、何らかの制限の上に成り立っている状態だ。

 ところが、このたびキヤノンから発表された「PowerShot G1 X Mark II(以下G1 X Mark II)」は、キヤノンが持つ最高の技術を注入し、さまざまなシーンに対応できるオールラウンドなフラッグシップ・コンパクトデジタルカメラとして登場するという。

 幸運なことに、今回、発売を目前に控えたG1 X Mark IIを試用する機会に恵まれたので、その資質を探るべく早春のドライブの供となってもらった。

まずはスペックを見てみよう

 まずはG1 X Mark IIの基本的なスペックを確認しておこう。G1 X Mark IIは、2012年3月に発売された「PowerShot G1 X(以下G1 X)」の後継機にあたる。PowerShotシリーズ最上位モデルとして1.5型のCMOSセンサーを初めて搭載したモデルとして話題を呼んだ。

 G1 X Mark IIとなってもセンサーサイズは同じであるが、搭載するレンズは焦点距離28-112mm相当から24-120mm相当(ともに35mm判換算)へとズーム域が拡大され、開放F値もF2.8-5.8からF2-3.9へとズーム全域において大口径化が達成された。

電源をオンにしてレンズを伸ばしたところ(左)と電源をオフにしてレンズを収納したところ(右)。F2-3.9の大口径ズームレンズだけにボディに対して大きいことが判る。またレンズバリアが搭載され、レンズキャップの紛失やキズやホコリの防止に便利になった。

 また、映像エンジンにはレンズ交換式のEOSシリーズでは未だ採用されていない、最新設計のDIGIC 6が搭載されている。

 外形寸法は、116.3×74×66.2mm。G1 Xと比べると高さが6.5mm低くなっているのが特徴的。これはG1 Xに搭載されていた光学式ズームファインダーが、G1 X Mark IIでは省略されていることが主な理由だろう。その分、全体のデザインはG1 X Mark IIの方がスッキリとしており、これが後述する外付けEVFを装着した場合でも過剰にゴテゴテしたイメージになるのを防いでくれている。

 手にしたときのズッシリとした凝縮感は、大きさも含め、コンパクトデジタルカメラというには破格であるのは確かだが、表現力に富んだ大型センサーとレンズを搭載していることを考えれば、むしろ使いやすい妥当なサイズであることが理解できる。キヤノンのハイエンドカメラらしい存在感をシッカリと纏っており、コンパクトデジタルカメラとしての王者の風格を備えているといった印象だ。

手にもったイメージ。コンパクトデジタルカメラとしては大柄な印象であるが、手のひらへの収まりはよく、ホールディング性は高い。ズッシリとした凝縮感があり、フラッグシップらしい高級感も感じることができる。

広く明るい新設計ズームレンズ

レンズの性能進化が素晴らしい。特に24mm相当にまで広がった広角端は、レンズ先端から5cmの近接撮影が可能。しかも開放値はF2というズームレンズとしてはあるまじき大口径であるため、背景を大きくぼかした本格的ワイドマクロを楽しむことができる。

広角端ならこれくらいの距離の被写体でもピントが合う。

搭載するズームレンズの広角端は35mm判換算で焦点距離24mm相当と広くなり風景もひろびろ写すことができる。さらに広角端ではレンズ前5cmの本格的なワイドマクロ撮影が可能。開放値はF2の大口径なので、背景をぼかしたボケ表現も得意だ。開放の最短撮影付近ではソフトフォーカスのように柔らかな描写が優しい。

4,160×3,120(4:3) / F2 / 1/500 / +1.3EV / ISO100 / 12.5mm / WB:オート
4,352×2,904(3:2) / F2.2 / 1/2,000 / +0.7EV / ISO100 / 12.5mm / WB:オート

 広角端の最短撮影距離、絞り開放での描写は、ソフトフィルターをかけたかのように、ピント部の芯を残しながらもふんわり柔らかな印象。ただ、少し絞るか撮影距離を離しただけで、シャープネスとコントラストは復活する。

 本質的にはズーム全域、画面全体で高い描写性能を発揮するのがG1 X Mark II搭載レンズのもち味なので、わずかに残されたこの“ソフトな世界”を、絞りや撮影距離を調整することで作画に生かしてみるのも面白い。

少し絞るか撮影距離を離すとすぐにシャープネスとコントラストが復活する。この特性をいかして、絞りや撮影距離による描写の違いを楽しんでみるのも手だろう。絞り込むことによって、ワイドマクロらしく早咲きのサクラや満開のナノハナを周囲の状況とともに写し込むことができた。

4,352×2,904(3:2) / F4 / 1/640 / +0.7EV / ISO100 / 12.5mm / WB:オート
4,352×2,904(3:2) / F8 / 1/240 / +0.7EV / ISO100 / 12.5mm / WB:オート

 大型の撮像センサーを搭載するG1 X Mark IIにとって、画質の基準を満たしながらズーム域、開放値、最短撮影距離を全て向上させるのは、レンズの設計上、至難の技であるのは想像に難くない。

 だが、レンズ固定式の“一台完結型”であるコンパクトデジタルカメラにとって、光学能力の限界はすなわちカメラの限界となってしまうため、これはユーザーにとって大変重要でありがたい進化。逆をいえば、撮像センサーとのマッチングを完璧に図れるレンズ固定式だからこそ可能となったブレイクスルーであるともいえるだろう。

基本的に画面周辺まで破綻のない優れた描写性能のレンズである。乾いた壁の質感、壁を這う植物の解像感とも申し分なく、一般的なコンパクトデジタルカメラとはクラス違いの高画質を堪能することができる。

3,120×4,160(3:4) / F5.6 / 1/320 / 0EV / ISO100 / 14.6mm / WB:オート

デュアルベースマルチアスペクト対応の大型センサー

 G1 X Mark IIが搭載する1.5型CMOSセンサーは、APS-Cサイズの撮像センサーよりひと回り小さく、マイクロフォーサーズの4/3型センサーより少し大きい。つまりレンズ交換式の一眼カメラ同等の大型センサーを搭載しているという訳で、一般的なコンパクトデジタルカメラと比べると、階調性などの画質はもちろん、背景ボケなどによる表現力にも秀でている。

明部から暗部をなめらかにつなぐ豊かな階調性、被写体を浮き上がらせる大きな背景ボケは、1.5型の大型センサーを搭載するG1 X Mark IIらしい表現力だ。

2,904×4,352(2:3) / F4 / 1/500 / -0.3EV / ISO100 / 62.5mm / WB:オート

 ところで、ここまでに掲載した作例に、アスペクト比が4:3の写真と3:2の写真が混在していることに「おや?」と思った人もいるのではないだろうか。

 実は、G1 X Mark IIはG1 Xと同じ総画素数1,500万画素の1.5型センサーを搭載するが、G1 Xとは違い、4:3と3:2の異なるアスペクト比でも画角(対角線長)の変わらない「デュアルベースマルチアスペクト」を採用しているのである。

 RAWデータも設定したアスペクト比で記録される仕様で、こうした地味ながら本物志向の機能を搭載しているというだけで、自分の中でカメラの価値観が高まり、もつ喜びが倍増するというものである。

デュアルベースマルチアスペクトは、アスペクト比が4:3でも3:2でも画角(対角線長)を変えずに撮影することができる本物のマルチアスペクトだ。広角端と望遠端でアスペクト比を変えて撮影してみたが、画面に写った風景の範囲から、4:3の写真を単にトリミングしただけでないことが判る。被写体によってアスペクト比の効果を使い分けることのできる嬉しい機能だ。

4,160×3,120(4:3) / F8 / 1/250 / -0.3EV / ISO100 / 12.5mm / WB:オート
4,352×2,904(3:2) / F8 / 1/250 / -0.3EV / ISO100 / 13.2mm / WB:オート
4,160×3,120(4:3) / F8 / 1/320 / -0.3EV / ISO100 / 62.5mm / WB:オート
4,352×2,904(3:2) / F8 / 1/320 / -0.3EV / ISO100 / 62.5mm / WB:オート

独創的かつ秀逸な操作性

 レンズ鏡胴には「デュアルコントロールリング」と呼ばれる2つのリングが設けられ、新たな操作系を形成している。

 鏡筒基部側のリングがカチカチとクリックのある「クリックリング」、鏡筒前方側のリングがクリックのない「スムーズリング」として設定されており、あたかも往年の一眼レフ用MFレンズのピントリングと絞りリングのような関係になっている。実際に、スムーズリングはMF時のピント操作が、クリックリングは絞り値やシャッター速度の設定が主な役割である。

 特徴的なのは、これらのリングには露出補正やアスペクト比、ステップズームなどの機能を別途割り当てることで、自分好みにカスタマイズできる点である。露出に関する操作系がデュアルコントロールリングに集約されたことで、PowerShot G系の伝統であったシャッターボタン前方の「電子ダイヤル」と軍艦部の露出補正ダイヤルは姿を消した。

鏡筒に装備された、スムーズリング(レンズ先端側)とクリックリング(レンズ基部側)。スムーズリングはフォーカシングを、クリックリングは絞り値やシャッター速度、露出補正の設定などを主な役割とする。機能の割り当てはカスタマイズ可能で、これによって操作性は極めて高くなっている。

 それで、新しい操作系の感想はというと、これが非常に好印象である。左手は親指を前後にずらすだけで、2つのリングに設定したさまざまな操作を直感的にこなすことができ、右手親指で操作するコントローラーホイールを合わせれば、ほとんど全ての設定を迷うことなく操作できるので撮影に集中できる。EOSシリーズとはまた違った独創的な操作系がコンパクトデジタルに誕生したといった印象だ。

 液晶モニターはG1 Xのバリアングル式から、上180度、下45度のチルト式に変更された。

液晶モニターは約104万ドットの3型タッチパネルを採用。上180度、下45度のチルト式である。横位置でのハイアングル・ローアングル撮影に便利だ。

 横位置のローアングルで猫を撮る機会の多い筆者にとっては、より横位置撮影のしやすい上下チルト式の方が嬉しい。縦位置撮影もしやすいバリアングルを必要とする人には申し訳ないが、ここは多分に好みの問題が大きくかかわるところだろう。

 ただ、G1 X Mark IIにはタッチシャッター可能なタッチパネルが採用されているので、ローアングルやハイアングルでもピント合わせやシャッターを切る動作は比較的楽にできる。また、無線LAN機能を内蔵しているので、スマートフォンを利用したライブビューでのリモート撮影も可能だ。

防波堤沿いにいた猫をローアングルで撮影。横位置の場合はバリアングル式よりも上下チルト式の液晶モニターの方が光軸からずれずに使いやすい。逆光に浮かぶ繊細な猫の毛の美しさを見事に描写してくれた。

4,352×2,904(3:2) / F4 / 1/125 / -1EV / ISO100 / 40.3mm / WB:オート

すこぶる相性の良好な外付けEVF

 今回の試用では、新たに対応した外付けEVF(電子ビューファインダー EVF-DC1・オプション)をほぼ付けっ放しにして撮影を行なった。

 EVFは視野率約100%、XGA約236万画素の高精細型、それ以外の仕様は現時点で公開されていないが、実際に使ってみた印象としては、表示タイムラグも気になることはなく見え具合は大変自然で優秀だった。EVFとしては他社製も含めてトップクラスだといってよい。

新たに外付けのEVFに対応した。視野率約100%、XGA約236万画素の高精細型で自然な見え具合は非常に秀逸。使い勝手上、G1 X MarkIIとの相性は素晴らしく、試写に使わせてもらった影響から「G1 X Mark IIはEVFがないとイヤ」というほど気にいってしまった。90度可動し、上から覗くことも可能。
EVFは金属外装でロック機構付き。価格は3万3,000円(税別)。

 EVF対応にともなって、従来のPowerShot G系のアイデンティティともいえた光学ファインダーは省略された訳であるが、決して大きく見やすいとはいえず、正確なピント確認機能もない従来の光学ファインダーより、実際の撮影ではEVFの方が遥かに有用性が高いのが正直なところ。

 晴天だった撮影日は液晶モニターで像を確認しにくいシーンがあったため、視認性のよいEVFに頼りきりになった格好だ。マクロ撮影での安定感とピント合わせの安心感も高く、今回の経験からG1 X Mark II購入時には必ず一緒に揃えるべき必須アイテムとなった。

カメラを下向きにして天日干し中の魚の干物を撮影。太陽の光が反射して液晶モニターが見にくかったのでEVFの視認性を頼りにしている。非常に高精細で見栄具合がよいので、マニュアルフォーカスで干物の目にピントを合わせるのも容易なことである。

4,352×2,904(3:2) / F5.6 / 1/500 / -0.3EV / ISO100 / 38.2mm / WB:オート

メイン機の資質をもったコンパクトデジカメ

 レンズ性能、画質、操作性など、全てにおいて飛躍的ともいえる大幅な進化を遂げたG1 X Mark IIであるが、AFの合焦速度をはじめ、ボタンやダイヤルを操作したときなどのレスポンスも全体的に向上している点は特筆すべきことだった。

 大型センサーを搭載しながら、マクロ撮影も得意なズームレンズを備えたG1 X Mark IIの撮影領域は、1台で非常に広範だ。画質面においても機能面においても一眼レフカメラに匹敵する資質を完成させているといってよく、本格的な撮影でのサブ機としてはもちろん、メイン機としても十分に通用する最高の“コンパクトデジタルカメラ”なのである。

G1 X Mark IIとのドライブを飾るかのような、輝かしい夕陽。この美しい風景をシッカリと写真にすることができたのは、レンズ、撮像センサー、DIGIC 6が高度に連携しあった賜物だろう。高画質な描写性能を使いこなすための操作性の高さもG1 X Mark IIの特徴だ。

3,120×4,160(3:4) / F11 / 1/500 / -1.3EV / ISO100 / 34.9mm / WB:曇天

日没後、かなり周りが暗くなってもISO感度を高くすることでF5.6まで絞って撮影することができた。前機種よりさらに向上した高感度特性も、一眼カメラ並みに優秀である。大口径な明るいレンズと約3.5段分の補正効果をもつ光学手ブレ補正機構(IS)を搭載するので、もっと暗い条件での撮影も安心だろう。

4,352×2,904(3:2) / F5.6 / 1/500 / -1.3EV / ISO1600 / 34.9mm / WB:曇天

※本記事では「PowerShot G1 X Mark II」のベータ機を使ってレビューを行なっています。
製品版とは仕様が異なる場合があります。

(協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社)

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。