特別企画:デジタルカメラで楽しむ「AVCHD」

“撮ったそのあと”を体験してみた
Reported by 本誌:鈴木誠

 各社からHD動画記録の対応を謳うデジタルカメラが多数登場し、いまやデジタルカメラにおけるHD動画記録も珍しい機能ではなくなってきた。

 2010年1月には、ソニーが最大1,920×1,080/60iのAVCHD動画が記録可能なコンパクトデジタルカメラ「サイバーショットDSC-TX7」および「サイバーショットDSC-HX5V」を発表。実際にサイバーショットで撮影されたテレビCMをご覧になった方も多いだろう。

 しかし、実際にAVCHD(もしくはAVCHD Lite)動画対応のデジタルカメラを使用したことのある方ならお気づきかと思うが、AVCHDは従来より採用されてきた動画ファイルと勝手が違う。

 まずはAVCHDとはどのような規格なのか、登場の背景も含めておさらいしてみよう。


高圧縮で高画質。AV機器との高い親和性

 AVCHD(Advanced Video Codec High Definition)は、HD撮影を行なうビデオカメラ用として、2006年5月にソニーとパナソニックが基本仕様を策定した規格。DVDディスク、HDD、メモリーカードなどのランダムアクセスが可能な記録メディアを対象に開発した規格で、対応するカメラで撮影した映像は、同規格に対応するレコーダーなどでそのまま再生できる。

 特徴としては、圧縮率の高いMPEG-4 AVC/H.264方式を採用し、Motion JPEGなどと比較して同容量の記録メディアで長時間の撮影を行なえる点が挙げられる(代わりに再生と編集には高いスペックを要求するが、それについては後述)。

 デジタルカメラでは、2009年3月にパナソニックが発売したコンパクトデジタルカメラ「LUMIX DMC-TZ7」、「LUMIX DMC-FT1」がAVCHD Lite規格を初めて採用。AVCHD Liteは、1080iのAVCHDを720p記録に限定したもので、AVCHDとの互換性を有する。共通仕様をパナソニックと共に策定したソニーでは、AVCHD Lite規格を採用した例はまだない。

 その後、マイクロフォーサーズ規格に準拠したレンズ交換式デジタルカメラの「LUMIX DMC-GH1」(2009年4月発売)において、デジタルカメラで初となる1,920×1,080ピクセル/60iのAVCHD動画記録に対応。コンパクトデジタルカメラ初のAVCHD対応機種は、2010年2月発売のサイバーショットDSC-TX7が初の製品化だ(同時発表のサイバーショットDSC-HX5Vは3月発売)。

LUMIX DMC-GH1サイバーショットDSC-TX7

 レンズ交換式デジタルカメラにおいては、LUMIX DMC-GH1以降、AVCHD動画記録に対応する機種が登場していない。しかし、「PMA2010」でソニーが発表し、2010年内の発売としているデジタル一眼レフカメラ「α」と「レンズ交換式小型カメラ」は、いずれもAVCHD動画記録に対応するCMOSセンサーの搭載を予告している。

 特にミラーレスのレンズ交換式小型カメラは、これまでに公表された僅かな情報からもより動画を意識した製品となることが予想され、動画撮影時の操作感についても期待が膨らむ。

まずはテレビに接続してみる

 次にAVCHDの楽しみ方をいくつか見てみよう。

 AVCHDはもともとビデオカメラ用の規格であり、ハイビジョンテレビやレコーダーとの親和性が高い。特にテレビに対しては、HDMIケーブル1本で相互のメーカーを問わず接続が可能。AVCHD動画を楽しむにあたって、最もシンプルで簡単な方法だろう。デジタルカメラのHDMI端子(ミニ端子の場合が多いので注意)を、テレビのHDMI端子に接続する。

テレビ接続時はリモコンもしくはデジタルカメラ本体から再生操作が可能HDMIケーブル経由なら相互のメーカーを問わない(ソニーとパナソニックの接続例)

 この場合、動画の編集を行なえるかどうかはカメラ本体の機能に依存する。今回試用したAVCHD Lite対応のコンパクトデジタルカメラ「LUMIX DMC-FT2」は、動画分割機能を搭載。不要部分の削除といった簡易な編集をカメラ内で行なうことができる。

LUMIX DMC-FT2。防水・耐衝撃性能が特徴LUMIX DMC-FT2で撮影動画の分割編集を行なっているところ

 また、パナソニックのハイビジョンテレビ「ビエラ」は、本体にSDメモリーカードスロットを搭載。カメラを接続することなくカード内の静止画・動画再生を行なうことができる。今回試用したのは、50型のハイビジョンプラズマテレビ「TH-P50V2」。実勢価格は32万7,000円前後だ。

 本体側面にSDXC/SDHC/SDメモリーカードスロットを搭載し、リモコンの「SDカード」ボタンから直接カード内の再生画面を呼び出せる。

TH-P50V2本体側面にSDメモリーカードスロットを備える
リモコン操作でSDメモリーカードの再生機能に直接アクセス可能

HDDレコーダーで編集してみる

 AVCHD対応のHDDレコーダーを使うと、より細かな編集や光学ディスクへの書き込みが可能になる。撮影した画像を“とりあえずHDDに移しておく”といったストレージ的な使い方も可能だ。さらにテレビの大画面を見ながら、リモコン操作で簡単な編集も行なえる。

 ここでは、ソニーとパナソニックのデジタルカメラで撮影したAVCHD動画を、それぞれ同社のレコーダーで編集するまでの手順を紹介する。

 サイバーショットDSC-HX5Vで撮影したAVCHD動画を、1TBのHDDと2機のデジタルチューナーを搭載するソニーのブルーレイディスク/DVDレコーダー「BDZ-RX105」で編集してみた。実勢価格は11万7,800円前後の製品だ。

動画撮影時のアクティブ手ブレ補正と光学10ズームが特徴のサイバーショットDSC-HX5VBDZ-RX105

 前面にCF、メモリースティック、SDメモリーカード用のスロットを備え、他社のカメラで撮影したJPEG画像も問題なく再生することができた。サイバーショットで記録したメモリースティックデュオからAVCHD動画を取り込む際は、メニュー画面から「ビデオカメラダビング」を選択する。

前面にCF、メモリースティック、SDメモリーカードスロットを搭載AVCHDを扱う際は「ビデオカメラダビング」を選択
AVCHDのダビングダビング後にチャプター編集を行なっているところ

 なおソニーによると、同社のAVCHD対応レコーダーは原則的にAVCHD(Liteを含む)対応機器で撮影したAVCHD動画を再生できるようになっているという。しかし、全ての機器に対する再生保障は行なっておらず、動作確認がとれた機種については他社製品も含めてWebサイトでリストを公開している。購入時には事前に確認しておくとよいだろう。

 一方、LUMIX DMC-FT2はパナソニックのブルーレイディスクレコーダーで試してみた。試用したのは「ブルーレイディーガDMR-BW880」だ。こちらもダブルチューナーと1TBのHDDを搭載する機種で、実勢価格は15万8,000円前後。

DMR-BW880前面にSDメモリーカードスロットを搭載

 前面にSDメモリーカードスロットを搭載。操作を行なう画面は全体的にシンプルでわかりやすく、初めてでも迷うことなく使えそうな印象だ。LUMIX DMC-FT2のAVCHD Lite動画、LUMIX DMC-GH1のAVCHD動画に加え、メーカーの異なるサイバーショットDSC-HX5VでSDHCメモリーカードに記録したAVCHD動画も、DMR-BW880で問題なく再生することができた。

SDメモリーカードの操作メニューSDメモリーカード内の動画一覧
HDDもしくは光学ディスクにダビングできる取り込み後はチャプター作成や分割などの編集を行なえる

 HDDレコーダーを利用する楽しみ方は、対応機器さえ揃えれば確実に環境構築を行なえることが最大のメリットだ。カード内のAVCHD動画をDVDビデオなどと同様の操作で再生できるのは、PCに馴染みのない世代にも親しみやすいのではないだろうか。現時点でのAVCHD本来の楽しみ方が、HDDレコーダーを介した鑑賞と編集といえる。

PCは高スペックが必要

 最後に、それぞれのデジタルカメラに付属するソフトを利用してPCでの再生・編集を行なってみた。サイバーショットDSC-HX5Vは「PMB」、LUMIX DMC-FT2は「PHOTOfunSTUDIO 5.0 HD Edition」だ。いずれもWindows版のみ用意している。

 どちらのソフトを使用した場合も、カメラや記録メディアからの取り込みと管理が可能。AVCHD動画に対しては、開始点と終了点を指定するトリミング編集が行なえるほか、静止画のキャプチャもできた。光学ディスクへの書き込み(AVCHDもしくはDVD-Video)も可能だ。

 また、HDDレコーダーにもない機能として、YouTubeなどのWebサービスにアップロードする機能もある。

 ちなみにDVDディスクへ書き込む際の注意点として、AVCHD形式で記録したDVDディスクは、通常のDVD-Videoのディスクと圧縮方式が異なるため、対応する機器でしか再生できない。通常のDVDプレイヤーでは再生する場合は、画質は落ちるがDVD-Video方式を選択して書き込む。

PMBの動画編集画面PMBのネットワークサービスメニュー
PHOTOfunSTUDIOの動画編集メニューPHOTOfunSTUDIO HD Editionの動画編集画面

 冒頭でも述べたが、AVCHD動画はPCにとって大きな負担となる。使用ソフトなどにもよるが、パナソニックは編集時にIntel Core2Quad 2.6GHz以上のCPUを推奨している。

 PCさえ所有していれば、追加投資なく動画の取り込みからオンライン公開までを行なえるメリットはあるが、編集を行なうPCにかなりの高スペックが要求される点に注意すべきだろう。

AV機器で手軽に楽しむという選択肢

 AVCHD動画は、それに特化したカメラ内再生やレコーダーでの編集は快適なものの、低スペックのマシンでは再生時にもコマ落ちが発生し、まだまだ扱いやすいとは言い難い。

 一方、HDDレコーダーなどのAV機器を使うと、スムーズな編集・再生環境が手に入る。現時点でAVCHD動画の画質をフルに楽しみたいのであれば、HDDレコーダーなどの活用を視野に入れたほうが良さそうだ。そもそもがAV機器のための規格なので、簡易な編集機能で十分であれば、PCでの編集に強く固執する必要はないだろう。

 いずれにしても、デジタルカメラで高圧縮・高品質のHD動画が手軽に撮れるようになったことは歓迎したい。今後の進化が楽しみだ。





本誌:鈴木誠

2010/4/28 12:53