新製品レビュー

FUJIFILM X-T10(外観・機能編)

手にして感じた造りの良さ。完成度の高いミラーレス機

XF18-55mm F2.8-4 R LM OISを装着したX-T10(シルバー)。そのシェイプは、往年のマニュアルフォーカスのフィルム一眼レフを思い起こさせる。

今や富士フイルム製デジタルカメラの主流となったXシリーズ。そのレンズ交換式モデルは「X-Pro1」(2012年2月発売)から始まるが、当初は数本の交換レンズしか用意されておらず、先行きに些か不安を感じさせるものであった。

しかし、それから3年余り。カメラのラインナップは驚くほど充実し、交換レンズに至っては単焦点10本、ズームレンズ10本とまったく不足を感じるようなことがない。さらにその中には「XF56mm F1.2 R APD」のように光学メーカーらしい強い個性を持つ交換レンズも存在し、現在のXシリーズはまさに飛ぶ鳥を落とす勢い、といってよい。

そのようななか登場したのが、今回の「FUJIFILM X-T10」だ。上級機「FUJIFILM X-T1」の流れを汲むボディシェイプを持ちながら、よりコンパクトで軽量に仕上がり、比較的手の届きやすい価格が魅力のカメラである。

発売開始は6月25日。価格はオープンであるが、量販店の店頭価格ではボディ単体が税込9万6,660円前後、「XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS」が付属するレンズキットが税込12万9,060円前後とする。今回のレビューでは、そのX-T10の外観と機能をお伝えしよう。

より軽快に仕上がったボディ

ボディは、前述のとおりX-T1によく似たシェイプだ。ただし、グリップ部はX-T1のように大きく前方に張り出したものではなく、控え目なものとする。さらにトップカバーが深いこともあり、往年のフィルムMF一眼レフへのオマージュが強く感じられる。特にシルバーカラーのボディはその傾向が強く、前面に刻まれた「FUJIFILM」のロゴを、懐かしい響きの「FUJICA」にして欲しかったほどである。

ボディサイズは、X-T1が129×89.8×46.7mm・440gであるのに対し、X-T10は118.4×82.8×40.8mm・381gとより小型で軽量。X-T1も性能的に同等のクラスのデジタル一眼レフにくらべコンパクトに仕上がっているが、X-T10はさらに小型である。

外装はマグネシウム合金とし、ボディカラーはシルバーのほかブラックの2色を用意する。つくりはX-T1譲りで高品位。ボディの剛性感も高く、趣味の道具として納得の仕上がりである。また、ホールディングしたときの印象も上々で、しっかりと右手でカメラが持て、かつ素直に右手人差し指がシャッターボタンにかかる。

液晶モニターは3型92万ドット。上方向に90度、下方向に45度可動するチルトタイプとしている。
バッテリーはX-T1やX-E2など広く用いられているNP-W126を採用。標準撮影枚数は約350枚(LCD表示ON/CIPA基準)。

筆者個人としては、X-T1と甲乙つけ難いボディのように思える。ただし、惜しむらくは防塵防滴構造を採用していないところだろう。雨天や風が強く砂塵が舞うような場所での撮影では注意が必要だ。

手軽さも意識した操作部

ボタン、ダイヤル類の注目は、トップカバーに配置されたドライブダイヤルと、シャッタースピードダイヤルと同軸とするオートモード切換レバーだろう。

ドライブダイヤル自体は、特に目新しいものではないが、XシリーズとしてはX-T1に続くもの。シングル撮影(S)/高速連写(CH)/低速連写(CL)のほか、パノラマやブラケティングなどを直感的に選べる。また、アドバンストフィルターはダイヤル上の2箇所に用意されており、よく使う2つのフィルターを素早く呼び出すこともできる。

ドライブダイヤルから、シングル撮影/高速連写(CH)/低速連写(CL)のほか、パノラマやブラケット撮影も選択できる。

オートモードレバーはアドバンストSRオートへの切り換え用のものである。瞬間的に切り換えられ手間も要しない。ちなみにアドバンストSRオートは58のパターンからカメラが自動で最適なパターンを選択し、手軽に失敗のない撮影が楽しめる撮影モード。瞬時に被写体に適した設定となるので、このレバーも含めて使い方によっては、大いに活躍してくれるように思える。

シャッターダイヤルと同軸とするレバーは、アドバンストSRオートへの切り換え用。シャッターボタンにはレリーズ用のネジ穴が切られている。

X-T1と同様、カメラの前後にコマンドダイヤルを備えていることもトピックといえる。デフォルトでは、プログラムモードの場合、前後両方のコマンドダイヤルともプログラムシフト用のダイヤルに、マニュアルモードの場合では前ダイヤルでシャッター速度を1/3段ステップで設定できる。また、電子シャッターを選択したときに可能な1/4,000秒以上のシャッター速度の設定もこの前ダイヤルで行う。

1/4,000秒までのメカニカルシャッターに加え、最速1/32,000秒の電子シャッターを搭載する。明るい屋外でも開放絞りによる撮影を可能とし、ボケを活かした表現が手軽に楽しめる。

さらに、前ダイヤルをプッシュするとAFモードの選択(デフォルトの場合)、後ダイヤルを同じくプッシュすると表示画像の拡大を行など、多彩な機能を担う。この2つのコマンドダイヤルを使いこなせば、より快適な撮影が楽しめそうだ。

前後にコマンドダイヤルを配置。フロントコマンドダイヤルは、電子シャッターを選択した際、1/4,000秒よりも速いシャッター速度の設定も行う。

“X-T1画質”の撮影性能

キーデバイスを見てみよう。X-T10のイメージセンサーおよび映像エンジンはX-T1と同じく、独自のカラーフィルター配列でローパスフィルターレスとした有効1,630万画素のX-Trans CMOS IIセンサーと、画像処理エンジンEXR Processor IIを搭載する。

X-T1と同じとするAPS-CサイズのX-Trans CMOS IIセンサーを搭載する。ローパスレスで有効約1,630万画素。
最高感度はISO6400。拡張機能によりISO51200相当まで設定を可能とする。ベース感度はISO200で、同じく拡張機能でISO100相当まで可能とする。

詳細は後日掲載する実写編を楽しみにしてもらいたいが、エッジが立ち、フィルムライクな絵づくりはX-T1と同じと考えてよい。サブカメラが欲しいX-T1ユーザーや、Xシリーズの絵づくりをこれから楽しんでみたい人にもX-T10は最適なカメラといえる。

お馴染みフィルムシミュレーション。いわゆる仕上がり設定機能だが、フィルムライクな仕上がりは多くの写真愛好家から支持されている。

見やすさ・レスポンスとも良好なEVF

EVFはX-T1と同じ236万ドット(ディスプレイサイズはX-T10が0.39インチ、X-T1が0.5インチと異なる)。ファインダー倍率はX-T1の0.77倍に対し、X-T10は0.62倍で、アイピースをのぞくとファインダー像はX-T1よりも一回り小さく感じられる。

眼鏡を常用するユーザーは、倍率の小さいX-T10のファインダーのほうが見やすいように思うかもしれないが、アイピース部の開口部が小さいため、眼鏡をかけたままのぞくとファインダー像の四隅がけられてしまうのは残念な部分。ただし、アイピース部は4枚構成の光学系を採用によって隅々までクリアで収差は皆無。裸眼ではたいへん見やすく感じられる。

特徴的な形状のアイピース部。ファインダー像自体はX-T1よりも小さいものの、画面の隅々までクリアでたいへん見やすく感じられる。

EVFのタイムラグがX-T1同様少ないのも特徴だ。カタログ値では0.005秒と謳うが、実際そのレスポンスの良さは掛け値のないもので、EVFの像と実際の被写体の動きの差は全くといってよいほど感じない。スナップや人物撮影では当然だが、スポーツなど動体撮影でも撮影者を強力にサポートしてくれることだろう。

一眼レフ並みのAF追従性

AFも強力だ。シングルポイントAF時49点、ゾーンAFおよびワイド/トラッキングAFでは77点のコントラスト方式のフォーカスエリアとし、そのうち中央15点は像面位相差AFとのハイブリッドタイプとする。一眼レフ並の高速なAFを可能としており、いわゆる“食い付きのよい”AF追従性を誇る。少なくとも今回試用したキットレンズなどで確認した限りにおいては満足いく結果が得られており、デジタル一眼レフ並みの被写体追従性が期待できそうである。

X-T10のAFモードには新たにゾーンを追加。3×3点、5×3点、5×5点のフォーカスエリアから選択が可能で、動いている被写体でも確実に捉える。

なお、前述のゾーンAFはX-T10のほかに、X-T1の次期ファームウェアVer.4.00(6月下旬予定)で新採用のAFモード。フォーカスエリアを3×3点、5×3点、5×5点から選択でき、被写体をより広い範囲で確実に捉えることができる。フォーカスエリア1点では追いかけきれない動体撮影などでは重宝することが多そうだ。なお、AF追従連写は8コマ/秒とX-T1と同じだが、連続撮影コマ数は8コマで、47コマを誇るX-T1には及ばない。

便利な各種機能も搭載

そのほかの注目としては、まずストロボの搭載があるだろう。非搭載のX-T1に対するアドバンテージといえるもので、ガイドナンバーは7(ISO200・m)。トップカバー左のドライブダイヤルと同軸とするレバーによってポップアップする。構造的に発光部はそれほど高く上がらないため、ワイドレンズなどではケラレが発生しやすそうだが、いざというときなど便利なことが多そうだ。

X-T1に無くて、X-T10にあるものといえばストロボ。ガイドナンバーは7(ISO200・m)。記念写真などでは出番が多そうだ。
フラッシュ設定メニューのなかにある「コマンダー」を選ぶと、スレーブ機能を持つ外部ストロボとの連携が可能に。残念ながら外部ストロボのTTL発光はできないが、より多彩なストロボライティングが楽しめる。

さらにWi-Fiの搭載も注目。無料の専用アプリ「FUJIFILM Camera Remote」をスマートフォンやタブレット端末にインストールすれば、リモート撮影も楽しめる。ピント合わせに始まり、露出の設定、ホワイトバランス、ISO感度、フィルムシミュレーションなどの設定に加え、タッチAFも可能。使い方は様々だが、写真撮影の可能性を広げるものといってよい。

Wi-Fiにも対応しており、専用アプリ「FUJIFILM Camera Remote」をインストールしたスマートフォンやタブレット端末との通信を可能としている。
インターフェースは、上よりマイクロフォン端子、HDMIマイクロ端子(Type D)、マイクロUSB端子(リモートレリーズ端子兼用)。

X-T10は、ある意味で保守的ともいえる外観と、手堅くまとまった機能を持つミラーレスだ。筆者個人としては現物を手にするまで、さほどの興味は持ち合わせていなかったのだが、実物を手にし撮影を行ってみると意外なほど楽しく、カメラとしてのつくりのよさも強く感じた。

一点、三脚穴が光軸上にないのはカメラ好きとして興醒めな部分ではあるが、それ以外はミラーレスカメラとして完成度が高く、X-Trans CMOS IIセンサーの描写を手軽に堪能してみたい写真愛好家にオススメのカメラである。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。