【新製品レビュー】リコーCX3

〜高感度に強い裏面照射型CMOSセンサーを搭載
Reported by 中村文夫

  リコーCX3はその名前が示す通り、CXシリーズの3機種目の製品である。前機種のCX2が登場したのが昨年の9月だから、わずか5カ月で代替わりしたことになる。

 カタログに表記された最大の改良点は、高感度に強くなったこと。裏面照射型CMOSセンサーに加え上級機のGR DIGITAL IIIと同じ画像処理エンジンを搭載し、ノイズの大幅な軽減を実現した。裏面照射型CMOSセンサーは、まだ普及し始めたばかりの新技術で、リコーのデジカメでは、これが最初の製品である。高感度に強いだけでなく、裏面照射型CMOSセンサーが映し出す画像を自分に眼で確かめるという意味でも、意義深い製品といえるだろう。

 発売は2月19日。価格はオープンプライス。実勢価格は4万2,000円前後。カラーバリエーションはブラック、すみれ、ツートン。


28〜300mmの高倍率ズームレンズを搭載

 CXシリーズは、普及タイプのワンランク上を目指した製品としてスタートした。第1弾は2009年3月発売のCX1。このコンセプトはまったく変わらず、そのDNAは2009年9月発売のCX2を経て、CX3にも見事に受け継がれている。いわばGXシリーズ(Caplio GX100、GX200。現在はGXRに収斂)ほど高機能は必要としないが、持つからには高級感のあるカメラが欲しいというユーザーを対象とした製品である。

 GXシリーズと大きく違うのは、35mm判で28〜300mmに相当する高倍率ズームを搭載していることだ。CX3は前モデルのCX2と同じレンズを採用しているが、新しい撮像素子と画像エンジンによって、さらに高画質を実現。特に望遠撮影時のシャープさが増し階調が豊かになったような印象を受けた。

35ミリフルサイズの28〜300mmに相当する高倍率ズームを搭載している
記録メディアとしてSDHC/SDメモリーカードを採用。バッテリーは新タイプのDB-100になった

大幅に軽減した高感度ノイズ

 最も強調したいのが、CX3最大のセールスポイントである高感度時のノイズの少なさだ。これまでISO400を越えると目立っていたノイズが、ISO800にしてもほとんど気にならなくなった。

 またISO1600にするとノイズが顕著になるが、それほど見苦しいレベルではない。さらにこのときの粒子の荒れ方も、高感度フィルムのそれに近く好感が持てる。CXシリーズの前身であるCaplio Rシリーズの頃に比べると、まさに隔世の感だ。また高感度域がISO3200まで拡大されたが、さすがにここまで感度を上げるとノイズがかなり増える。具体的には本記事に掲載した実写サンプルを確認していただきたい。

最高ISO感度がISO3200になったノイズリダクションはOFFのほか、AUTO、弱、強、MAXの4段階から選べるようになった

 このほかノイズリダクションやDRモードの細かな設定が可能になったほか、16:9ハイビジョンサイズのHD動画機能も追加。外観デザインがほとんど従来と変わらないので新製品としての華々しさには欠けるが、CXシリーズらしい進化と言えるだろう。

4:3、3:2、1:1のアスペクト比に加え、新たにハイビジョンサイズの16:9が追加された露出を変えて撮った2枚の画像を合成してダイナミックレンジを拡大するダイナミックレンジダブルショット。効果が、AUTO、微弱、弱、中、強から選べるようになった
1,280×720ピクセルのHD動画撮影機能が追加されたシーンモードにペットを追加。猫の顔を検出すると自動的にフォーカスを合わせる

実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。

・画角

約28mm相当
CX3 / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/870秒 / F7 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 4.9mm
約93mm相当
CX3 / 約3.5MB / 3,648×2,736 / 1/760秒 / F9.4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 16.3mm
約200mm相当
CX3 / 約3.5MB / 3,648×2,736 / 1/810秒 / F9 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 34.9mm
約300mm相当
CX3 / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/1320秒 / F7.7 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 52.5mm
広角側(28mm相当)の画角が広いので、建設中のスカイツリーが画面内に余裕で収まった。ちなみに撮影時の高さは289m
CX3 / 約3.3MB / 2,736×3,648 / 1/760秒 / F7 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 4.9mm
トップのクレーンを望遠端(約300mm相当)で撮影
CX3 / 約3.3MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 52.5mm

・感度

ISO400
CX3 / 約2.9MB / 2,736×2,736 / 1/10秒 / F4.5 / 0EV / WB:オート / 12.2mm
ISO800
CX3 / 約2.9MB / 2,736×2,736 / 1/15秒 / F4.5 / 0EV / WB:オート / 12.2mm
ISO1600
CX3 / 約2.9MB / 2,736×2,736 / 1/39秒 / F4.5 / 0EV / WB:オート / 10.5mm

・ノイズリダクション

※共通設定:CX3 / 約3.2MB / 2,736×3,648 / 1/7秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:屋外 / 6.1mm

 OFFと弱の差がいちばん激しく、弱、強、MAXの差は意外と少ない。好き嫌いにもよるが、AUTOまたは弱あたりが、いちばん自然に見える。

オフAUTO
MAX

 ノイズリダクションAUTOで撮影した夜景。

CX3 / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/9秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:屋外 / 4.9mmCX3 / 約3.5MB / 2,736×3,648 / 1/6秒 / F4.5 / 0EV / ISO400 / WB:屋外 / 12.2mm

・アスペクト比

16:9
CX3 / 約2.7MB / 3,648×2,048 / 1/620秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 4.9mm
1:1
CX3 / 約2.9MB / 2,736×2,736 / 1/16秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 52.5mm

・そのほか

新画像処理エンジンは、白とびを抑える「画素補間アルゴリズム」を新たに採用。思いきってプラス補正したハイキー表現も可能になった
CX3 / 約2.7MB / 3,648×2,736 / 1/68秒 / F4.5 / +2.0EV / ISO476 / WB:オート / 12.2mm
CX2から搭載されている「ミニチュアライズ」で撮影。本来は俯瞰撮影で使用する機能だが、被写界深度を浅く見せ、大口径望遠レンズを絞り開放で撮影したような効果を出すこともできる
CX3 / 約3.4MB / 3,648×2,736 / 1/52秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm




中村文夫
(なかむら ふみお)1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。

2010/3/2 16:58