新製品レビュー

OLYMPUS OM-D E-M10 Mark II(外観・機能編)

“上位機譲り”を詰め込んだ、本格仕様のエントリー機

オリンパスから、OM-Dシリーズのエントリーモデル新機種となるE-M10 Mark IIが登場した。オリンパスのマイクロフォーサーズ機は、PENシリーズがどちらかといえばライトなイメージを持つのに対し、EVFを内蔵したOM-Dシリーズは本格派だ。そのローエンドとなる“10”は、1979年に発売された銀塩OMシリーズのローエンドの“10”、OM10を彷彿させる。

1970年代後半に登場したエントリークラスの一眼レフの多くが、絞り優先AE専用機だった。ニコンEMやキヤノンAV-1、ミノルタX-7、ペンタックスMGなどだ。OM10も絞り優先AE専用機。しかし測光はOM-2で話題になった、TTLダイレクト測光。さらにオプションのマニュアルアダプターを装着すると、マニュアル露出も可能になった。OM-1NやOM-2Nなどと共通のワインダー2は、当時としては速い2.5コマ/秒の連写を実現(他社のワインダーは1.5コマ〜2コマ/秒)。エントリーモデルでありながら、上位機に迫る本格仕様を誇った。

時は流れて2014年に登場した前モデル「OM-D E-M10」も、小型軽量ボディに手ブレ補正、2ダイヤル、自動調光EVFなどを搭載し、エントリーモデルとしては本格仕様だった。

クラシカル+本格派のデザイン

そして2代目となったOM-Dの“10”ことE-M10 Mark II。小型軽量は踏襲しながら、外観はより精悍になった。特に印象的なのが、モードダイヤルや前後ダイヤルの仕上げの良さだ。上位機E-M5 Mark IIのダイヤルを思わせる。また電源レバーもE-M5 Mark IIと同じ位置にあり、OMの伝統が感じられる。

しかもモードダイヤルはやや高さがあり、小型ボディでも回しやすい。前後ダイヤルの操作感は良好で、高級感も伝わってくる。さらに背面の十字ボタンの形状もE-M5 Mark IIと同じになり、背面グリップもシボ革状になるなど、やはり高級感がアップしている。E-M10の軽快さを踏襲しながら、より高品位な仕上がりになった印象だ。

銀塩一眼レフOM-1やOM-2を彷彿させる電源レバー。上位機の電源レバーも同じ位置だが、ここにモードダイヤルがあるため、E-M10 Mark IIの方がよりOMらしさを感じる。電源オンのさらに先は、ストロボポップアップだ。
背が高くなったモードダイヤルと、2つの操作ダイヤル。小さなボディでも確実な操作ができて使いやすい。仕上げも美しく、高級感がグンとアップした。

筆者はE-M5 Mark IIユーザーで、そのカメラを手にしたときも小さいと感じたが、E-M10 Mark IIはさらに小さい。しかし正面のグリップも小さいものの、指を掛けやすく、シャッターボタンの高さも適度で持ちやすい。しかも背面グリップに親指がしっかり掛かるので安定感もある。

キットレンズや短めの単焦点レンズならそのままでもいいが、大柄なレンズを装着するならオプションのカメラグリップ、ECG-3の使用がおすすめだ。これを装着すると、ホールド性が格段に向上する。メモリーカードやバッテリーを出し入れする際は、ワンタッチで脱着でき、使いやすさも上々だ。

背面のグリップは大きく、親指がしっかり掛かる。特にECG-3カメラグリップを装着すると、一層ホールディング性が向上する。またグリップ上にはFn1ボタンも持つ。
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8を装着。コンパクトなボディにはコンパクトなレンズがよく似合う。このセットで軽快にスナップするのは楽しそうだ。
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8を装着。小柄な中望遠レンズで、E-M10 Mark IIとのバランスもいい。ポートレートだけでなく、スナップにも使いたい。
別売のECG-3カメラグリップを装着。とても握りやすくなる。望遠ズームや大口径レンズを使用する人、さらに手が大きい人にはイチオシのアクセサリーだ。
ECG-3カメラグリップはワンタッチで底面が外れて、バッテリーやSDカードの出し入れがスピーディーに行える。
キットレンズの、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ装着時の電源オフ状態。とても薄い。
電源オン、14mm側。鏡筒が出てくる。
電源オン、42mm側。14mm側と比べて鏡筒はほとんど伸びない。
上下にチルトする可動式液晶モニターを継承。上方85度、下方45度の範囲で動かせる。ローアングルやハイアングルでの撮影に便利。また動画撮影でも活躍する。
バッテリーはBLS-50。低消費電力モード時は、約750枚の撮影が可能だ。USB充電ができるとなおうれしかった。また上位機用のBLN-1との互換性もない。
メモリーカードはバッテリー室と同じ場所にスロットを持つ。SDカードはUHS-II規格に対応している。
側面のカバーを開けると、上にUSB端子、下にHDMI端子を装備する。

上位機ゆずりの5軸になった手ブレ補正

E-M10がMark IIとなって最も進化したのが、ボディ内手ブレ補正だ。E-M10では3軸VCM手ブレ補正機構で、X軸、Y軸の角度ブレと回転ブレを補正する。補正効果はシャッタースピード約3.5段分だった。

それに対しE-M10 Mark IIは、上位機E-M1やE-M5 Mark IIと同じ5軸手ブレ補正機構を搭載した。角度ブレと回転ブレ、さらに上下左右のシフトブレの補正も可能だ。ただし補正効果は、E-M5 Mark IIの5段に対し、E-M10 Mark IIは4段分なのがやや残念。とはいえ、遠景からマクロまで手ブレ補正効果を活かした手持ち撮影が楽しめる。

さらに5軸手ブレ補正は、動画撮影でも手持ちによるアクティブな表現を可能にしている。オリンパスでは「OM-D MOVIE」と呼んでいて、軽快に動画撮影をしたい人にも注目だ。なお通常の動画はフルHD解像度までだが、タイムラプスムービーは4K解像度で記録できる。

EVF+タッチパネルのコンビネーション

OM-Dの特徴である内蔵EVFも進化した。E-M10の倍率約1.15倍・144万ドット液晶から、1.23倍・236万ドットのOLEDになった。E-M5 Mark IIの1.48倍には届かないものの、エントリークラスの機種としては大きな視野を持つ。しかも高精細で快適だ。実際に撮影していても、ファインダーが小さいと思うことはなかった。

倍率が大きく、高精細になったEVF。エントリーモデルのEVFは上位機と差がある、というのは過去のこと。上位機に迫る高い視認性を誇る。
背面モニターのライブビューのオンとオフは、EVF横のボタンで切り替える。

そして新たに搭載されたのが「AFターゲットパッド」。ファインダーを覗いたまま背面モニターを親指でなぞると測距点の移動ができる。こうした操作性は他社ですでに採用している機種もあるが、オリンパスでは初だ。いちいち十字ボタンを押す必要がないのでスピーディー。これはとても便利で、上位機にもファームアップで装備してほしいと思うくらいだ。

メニュー画面から「AFターゲットパッド」をオンにすると、EVF使用時に背面モニターをなぞって測距点移動ができる。
AFターゲットパッドは、ファインダーを覗いたまま測距点を変更できてとても便利。ただファインダーを右目で覗く人は使いやすいが、左目で覗く人は鼻が邪魔になり、実用的とはいえない。

ユニークなのが、OVFシミュレーション。“OVF”とは光学ファインダーのことだ。EVFのダイナミックレンジを広げて、逆光のような輝度差がある条件でも被写体を確認しやすくする。

OVFシミュレーションをオンにすると、EVFのダイナミックレンジが広がる。この機能はFnボタンに割り当てることも可能だ。

試したところ、特にハイライト側の階調が豊富になるように感じた。ただし露出補正してもファインダー内の明るさは変わらず、撮ってみないと結果がわからない。まさに光学ファインダーと同じだ。視認性を重視して使うのが本来だろうが、あえてOVFシミュレーションにして、仕上がりをイメージしながら露出コントロールするのも楽しいだろう。

参考:通常設定時のEVF表示。逆光状態なので、空が明るくみえる。
参考:OVFシミュレーションをオン。空の階調が広がったのがわかるだろう。画面上には「S-OVF」のマークが表示される。

ほかにも新要素・便利機能が多数

お馴染みのアートフィルターは、「ヴィンテージ」と「パートカラー」の2種を追加。表現の楽しさが広がった。さらにWi-Fi機能も搭載し、QRコードで接続できる。接続前にカメラ内で転送画像の予約ができるため、必要な写真をスムーズに送れるのは便利だ。

アートフィルターには、上位機ではお馴染みのヴィンテージとパートカラーが追加された。さらにアートエフェクトも適用可能だ。
スマートデバイスとの接続は、NFCペアリングには対応していないものの、QRコードを読み取ることでスムーズに行える。NFC非対応端末でも手軽さを味わえてうれしい。

また上位機にはない内蔵ストロボも装備。外部ストロボのコマンダーとしても使え、エントリーモデルながら多彩なライティングも可能とした。ピント位置を変えながら連続撮影するフォーカスブラケットやタッチAFも可能とするなど、E-M10から外観の仕上げはもちろん、スペックの大幅なアップも実現している。

内蔵ストロボは、ちょっと光がほしいときに便利。特に記念写真を含めた気軽な撮影に重宝する。光量はガイドナンバー8.2(ISO200・m)。
内蔵ストロボではなく、大光量が欲しいときは、ホットシューに外部ストロボを装着する。
ピント位置をずらしながら連写するフォーカスブラケットを装備。なんと999枚まで設定可能だ。マクロ撮影でシビアなピント合わせが必要な際に活用できる。
メニュー画面のデザインは上位機と同じ。統一感があり、オリンパスユーザーは馴染みやすい。

次回の実写編では、実際に使用した印象や画質についてお届けする。

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、国内や海外の街のスナップを撮影。公益社団法人日本写真家協会会員。