新製品レビュー
OLYMPUS OM-D E-M10 Mark II(外観・機能編)
“上位機譲り”を詰め込んだ、本格仕様のエントリー機
Reported by藤井智弘(2015/10/2 07:00)
オリンパスから、OM-Dシリーズのエントリーモデル新機種となるE-M10 Mark IIが登場した。オリンパスのマイクロフォーサーズ機は、PENシリーズがどちらかといえばライトなイメージを持つのに対し、EVFを内蔵したOM-Dシリーズは本格派だ。そのローエンドとなる“10”は、1979年に発売された銀塩OMシリーズのローエンドの“10”、OM10を彷彿させる。
1970年代後半に登場したエントリークラスの一眼レフの多くが、絞り優先AE専用機だった。ニコンEMやキヤノンAV-1、ミノルタX-7、ペンタックスMGなどだ。OM10も絞り優先AE専用機。しかし測光はOM-2で話題になった、TTLダイレクト測光。さらにオプションのマニュアルアダプターを装着すると、マニュアル露出も可能になった。OM-1NやOM-2Nなどと共通のワインダー2は、当時としては速い2.5コマ/秒の連写を実現(他社のワインダーは1.5コマ〜2コマ/秒)。エントリーモデルでありながら、上位機に迫る本格仕様を誇った。
時は流れて2014年に登場した前モデル「OM-D E-M10」も、小型軽量ボディに手ブレ補正、2ダイヤル、自動調光EVFなどを搭載し、エントリーモデルとしては本格仕様だった。
クラシカル+本格派のデザイン
そして2代目となったOM-Dの“10”ことE-M10 Mark II。小型軽量は踏襲しながら、外観はより精悍になった。特に印象的なのが、モードダイヤルや前後ダイヤルの仕上げの良さだ。上位機E-M5 Mark IIのダイヤルを思わせる。また電源レバーもE-M5 Mark IIと同じ位置にあり、OMの伝統が感じられる。
しかもモードダイヤルはやや高さがあり、小型ボディでも回しやすい。前後ダイヤルの操作感は良好で、高級感も伝わってくる。さらに背面の十字ボタンの形状もE-M5 Mark IIと同じになり、背面グリップもシボ革状になるなど、やはり高級感がアップしている。E-M10の軽快さを踏襲しながら、より高品位な仕上がりになった印象だ。
筆者はE-M5 Mark IIユーザーで、そのカメラを手にしたときも小さいと感じたが、E-M10 Mark IIはさらに小さい。しかし正面のグリップも小さいものの、指を掛けやすく、シャッターボタンの高さも適度で持ちやすい。しかも背面グリップに親指がしっかり掛かるので安定感もある。
キットレンズや短めの単焦点レンズならそのままでもいいが、大柄なレンズを装着するならオプションのカメラグリップ、ECG-3の使用がおすすめだ。これを装着すると、ホールド性が格段に向上する。メモリーカードやバッテリーを出し入れする際は、ワンタッチで脱着でき、使いやすさも上々だ。
上位機ゆずりの5軸になった手ブレ補正
E-M10がMark IIとなって最も進化したのが、ボディ内手ブレ補正だ。E-M10では3軸VCM手ブレ補正機構で、X軸、Y軸の角度ブレと回転ブレを補正する。補正効果はシャッタースピード約3.5段分だった。
それに対しE-M10 Mark IIは、上位機E-M1やE-M5 Mark IIと同じ5軸手ブレ補正機構を搭載した。角度ブレと回転ブレ、さらに上下左右のシフトブレの補正も可能だ。ただし補正効果は、E-M5 Mark IIの5段に対し、E-M10 Mark IIは4段分なのがやや残念。とはいえ、遠景からマクロまで手ブレ補正効果を活かした手持ち撮影が楽しめる。
さらに5軸手ブレ補正は、動画撮影でも手持ちによるアクティブな表現を可能にしている。オリンパスでは「OM-D MOVIE」と呼んでいて、軽快に動画撮影をしたい人にも注目だ。なお通常の動画はフルHD解像度までだが、タイムラプスムービーは4K解像度で記録できる。
EVF+タッチパネルのコンビネーション
OM-Dの特徴である内蔵EVFも進化した。E-M10の倍率約1.15倍・144万ドット液晶から、1.23倍・236万ドットのOLEDになった。E-M5 Mark IIの1.48倍には届かないものの、エントリークラスの機種としては大きな視野を持つ。しかも高精細で快適だ。実際に撮影していても、ファインダーが小さいと思うことはなかった。
そして新たに搭載されたのが「AFターゲットパッド」。ファインダーを覗いたまま背面モニターを親指でなぞると測距点の移動ができる。こうした操作性は他社ですでに採用している機種もあるが、オリンパスでは初だ。いちいち十字ボタンを押す必要がないのでスピーディー。これはとても便利で、上位機にもファームアップで装備してほしいと思うくらいだ。
ユニークなのが、OVFシミュレーション。“OVF”とは光学ファインダーのことだ。EVFのダイナミックレンジを広げて、逆光のような輝度差がある条件でも被写体を確認しやすくする。
試したところ、特にハイライト側の階調が豊富になるように感じた。ただし露出補正してもファインダー内の明るさは変わらず、撮ってみないと結果がわからない。まさに光学ファインダーと同じだ。視認性を重視して使うのが本来だろうが、あえてOVFシミュレーションにして、仕上がりをイメージしながら露出コントロールするのも楽しいだろう。
ほかにも新要素・便利機能が多数
お馴染みのアートフィルターは、「ヴィンテージ」と「パートカラー」の2種を追加。表現の楽しさが広がった。さらにWi-Fi機能も搭載し、QRコードで接続できる。接続前にカメラ内で転送画像の予約ができるため、必要な写真をスムーズに送れるのは便利だ。
また上位機にはない内蔵ストロボも装備。外部ストロボのコマンダーとしても使え、エントリーモデルながら多彩なライティングも可能とした。ピント位置を変えながら連続撮影するフォーカスブラケットやタッチAFも可能とするなど、E-M10から外観の仕上げはもちろん、スペックの大幅なアップも実現している。
次回の実写編では、実際に使用した印象や画質についてお届けする。