新製品レビュー

SIGMA dp3 Quattro(実写編)

相変わらずの先鋭感 JPEG撮って出しの安定感にも注目

dp3 Quattroは35mm判換算75mm相当のレンズと、有効画素数約2,900万画素のFoveon X3ダイレクトイメージセンサーを組み合わせたハイエンドコンパクト機だ。dp Quattroシリーズの第3弾として登場し、発売済みのモデルと合わせ、広角、標準、中望遠とラインアップがすべて出揃ったことになる。

また、dp3 QuattroはコンバージョンレンズFT-1201がオプションとして用意されており、レンズ先端に装着することで焦点距離1.2倍の35mm判換算90mm相当で撮影可能だ。本稿ではdp3 Quattroならびにコンバージョンレンズの実写レポートをお送りしよう。

解像力

まず、解像力をチェックするために遠景を1段ずつ絞りながら撮影した。シグマdpシリーズは解像力に定評のあるカメラだが、本機もご多分に漏れずきわめて解像力の高い実写結果となった。開放からシャープで一切の滲みがなく、画像中央部は無論、四隅までしっかりと結像している。歪曲もほぼ感じられず、とかく正確無比なイメージだ。

回折現象はF11からはじまるが、F8とF11でシャープネスのちがいはごくわずかだ。F11の常用を視野に入れても良いだろう。コンバージョンレンズFT-1201を装着した状態でも同様の描写傾向で、開放から隅々までシャープに写る。専用設計だけあって画質変化が少なく、純粋に焦点距離を変えるツールとして活用できるだろう。

・テレコンなし

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです。
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

・テレコンあり

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです。
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ/近接描写

ボケ味のテストとして、最短撮影距離近辺にて前後のボケを含めたカットを撮影してみた。ボケ味はどちらかと言えば硬めで、状況によっては二線ボケっぽい雰囲気も感じられる。中望遠レンズはポートレート撮影に使用されることが多いが、本機をポートレートに使うといくぶん硬い印象になりそうだ。

一方、中望遠でありながら最短22.6cmまで寄ることができ、開放近辺では大きなボケを稼げる。このクローズアップ性能は本機の強みと言えるだろう。

・テレコンなし

F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

・テレコンあり

F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

高感度

高感度での描写を見るため、1段ずつ感度を上げながら撮影してみた。ISO400まではさほどノイズを感じないが、ISO800を境にノイズが増える。ISO1600ではディテールが損なわれ、常用は厳しい画質だ。

昨今、高感度低ノイズのデジタルカメラが増えているだけに、せめてISO1600が常用できる程度のポテンシャルがほしいところだ。

以下のサムネイルは青枠部分を等倍で切り出したものです。
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400

作品集

近接開放で梅の花にピントを合わせる。二線ボケが出そうな背景だが、うまく持ちこたえてくれた印象だ。淡いピンクをきれいに再現している。

ISO100 / F2.8 / 1/250秒 / +1.3EV

梅を前ボケにして神社にピントを合わせた。AFが悩みそうなシーンだが、一発でピントが合ってくれた。前ボケはなだらかで良い雰囲気の絵作りだ。

ISO100 / F4 / 1/640秒 / ±0EV

金属の質感とつながりの良い階調性が伝わってくる。光沢が強くてAFが悩みがちな被写体だが、支障なくジャストで合焦してくれた。

ISO100 / F5.6 / 1/800秒 / ±0EV

色飽和しがちな赤だが、JPEG撮って出しでも申し分ない階調が感じられる。紙の擦れた様子もしっかりと再現され、その精緻な描写に驚かされる。

ISO200 / F2.8 / 1/80秒 / ±0EV

開放寄りF4での撮影だが、隅々まで解像した写りが圧巻だ。歪曲もほぼ感じられず、搭載するレンズの良さが実感できる。自然な色再現も良い。

ISO100 / F4 / 1/250秒 / -0.7EV

F5.6まで絞り、うっすらと背景をボカした。ボケ味にクセがなく、シーンを問わず使いやすいカメラだ。背景の褪せた赤にリアリティが感じられる

ISO200 / F5.6 / 1/125秒 / -1.3EV

まとめ

焦点距離の異なる3台のハイエンドコンパクト機、シグマdp Quattroシリーズは酔狂なカメラだ。利便性を考慮するならば、ズームレンズを載せればよい。単焦点レンズにこだわるならば、レンズ交換式という選択肢もあっただろう。dp Quattro3台をカメラバッグに詰めるのは、相当のツワモノか変わり者にちがいない。本機を触るまで、そんな風に思っていた。

従来のdpシリーズは、レーシングマシンのような「スゴイけど扱いづらい」印象があった。それに対して本機は、的確なAF性能、JPEG画質の向上、そして精緻な描写により、dpシリーズの凄みを身近に感じられる。特にJPEG撮って出しの安定感は特筆に値するだろう。デザインはdp史上かつてないトンガリっぷりだが、画質と操作性はずいぶんとフレンドリーになっている。

dp3 Quattroのみならず、シリーズ中どれか一機に触れると、つい画角ちがいのモデルが気になってしまう。「3台揃えるのはやりすぎか!?」「でも、広角から中望遠までこの画質が得られるなら……」と空想が止まらなくなりそうだ。

往年のカメラファンはデジタル臭の強い画像を敬遠しがちだが、デジタルだからこそ成し得る領域があるのも事実である。dp3 Quattroはそうした世界を見せてくれる貴重なモデルである。

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp