新製品レビュー
PENTAX K-S1(実写編)
小型ボディに詰め込んだ上級機並の本格画質
永山昌克(2014/10/27 08:00)
リコーイメージングが発売するPENTAX K-S1は、同社デジタル一眼レフカメラの新ライン第一弾となる製品だ。初級者から中級者までの幅広いユーザーをターゲットにし、小型軽量ボディに高機能を凝縮している。
最大の特長は、これまでの一眼レフとはひと味違う、デジタルガジェットとしての面白みを加えたデザインとインタフェースだ。ボディの各所に埋め込まれたLEDは、起動時に光って目を楽しませてくれるほか、カメラの状態を表示する働きを兼ねている。
面を意識した四角いボディデザインや、背面に設置した円盤状のモードダイヤルなどもユニークだ。
いっぽうで一眼レフの証しであるファインダー性能にはこだわり、上位機K-3と同等の視野率100%のガラスプリズムファインダーを採用。撮像素子には、APS-Cサイズセンサーを搭載した同社一眼レフの中ではK-3に次いで多画素となる、有効2,012万画素のCMOSセンサーを装備する。
前回のレビューでは、外観と機能をチェックしたが、今回は描写性能を見てみよう。
遠景の画質(解像力)
下の写真は、レンズキットに付属する標準ズーム「DA L18-55mm F3.5-5.6AL」を使用して18mm側と55mmで撮影したもの。どちらもF8まで絞り込んだことで、四隅までシャープに解像している。
本モデルは上位製品K-3と同じく、ローパスフィルターレス構造であり、遠景のディテール描写性能は良好だ。レンズの光学性能をきっちりと引き出す解像感があるともいえる。
センサーユニットの微小駆動によってモアレを低減する同社独自の機能ローパスセレクターについては、ここでは解像感を優先するため、初期設定であるオフのまま撮影した。その結果、厳密に見ればジェットコースターのレールの下に設置された網の部分にはモアレが若干生じていることが分かる。
このカットでは不自然に感じるほどではないが、気になる場合はローパスセレクターをType 1(効果弱)またはType 2(効果強)に設定して撮るといいだろう。自然風景ではモアレが生じるケースはほとんどないが、こうした人工の建造物や衣服など被写体によっては目立つことがときどきある。
感度別の画質
画像処理エンジンは「PRIME MII」で、感度はISO100-51200に対応する。下の写真は、感度を切り替えながら同一シーンを撮り比べたもの。
高感度ノイズリダクションは、ここでは感度ごとに最適な処理が自動的に適用される「オート」を使用した。好みや狙いに応じて「オフ/弱/中/強」を選択したり、「カスタム」を選んで感度ごとに細かく設定することもできる。
結果は非常に優秀だ。バランスよく解像感を維持しつつ、高感度ノイズは目立たないように低減されていることが分かる。ISO1600あたりでもノイズが汚いという印象はなく、ISO3200やISO6400でも実用範囲だと思える。
ハイライト部の階調再現性については、最低感度のISO100よりもISO200のほうが良好といえる。
動画
動画は、最大で30pのフルHD記録に対応し、ファイル形式はMPEG-4 AVC/H.264(MOV)となる。絞り値やシャッター速度、ISO感度のマニュアル設定ができるほか、動画にさまざまなエフェクトを加えて撮ることも可能だ。
動画撮影の操作は、電源レバーを動画モードの位置まで回した上で、シャッターボタンによってスタート/ストップを行なう。動画専用の撮影ボタンはなく、静止画用の撮影ボタンが兼ねるタイプだ。
下の動画は絞り優先AEモードで動画撮影。カスタムイメージは「鮮やか」を選択した。
作品集
発色の調整機能としては、これまでの同社製品と同じくカスタムイメージを搭載。初期設定の「鮮やか」では、彩度とコントラスト、シャープネスが高められた見栄え重視の仕上がりとなる。このカットでは、「鮮やか」を選んだ上で、さらにコントラストをプラス設定にして、シルエットを強調した。
カスタムイメージの「ナチュラル」を選ぶことで、色飽和を抑えつつ、見た目に近い色合いを再現した。レンズは明るい単焦点を使用。ピントを合わせた花の中心部はシャープに解像し、花びらの質感をリアルに表現できている。
あえて逆光になるカメラポジションを選び、絞りをF11まで絞り込むことで、画面左下に光芒を写し込んだ。レンズ補正メニュー内にある回折補正をオンにすれば、絞り込んだ際の回折ボケを最小限に抑えられる。
11種類から選べるカスタムイメージのうち、個人的には「雅(MIYABI)」がお気に入りだ。適度な鮮やかさとメリハリ感を備えた仕上がりが得られる。
こちらもカスタムイメージの「雅(MIYABI)」を選択。高層ビルをその手前に配置された風船のオブジェと重ねて撮影したもの。
多彩なエフェクト機能を備えることは本モデルの特徴のひとつ。この写真では、カスタムイメージの「クロスプロセス」を選択し、緑色に色かぶりしたような効果を加えた。
こちらはカスタムイメージの「銀残し」を選択。コントラストを高めつつ、彩度を落とした渋い色合いが得られる。
まとめ
実写では、被写体の細部までをシャープに表現できる解像性能と、クリアで濁りのない発色を確認できた。高感度の描写についても不満はなく、APS-Cサイズセンサー搭載機の画質としてはハイレベルとあると感じられた。
今回は主にキットレンズを活用したが、絞り込んで使用する範囲では写りに問題はない。よりクオリティの高い交換レンズを装着すれば、さらに良好な描写を引き出せるはずだ。
PENTAX K-S1は、デジタルガジェット風の個性派デザインが目を引くカメラだが、画質や光学ファインダーというカメラとしての本質部分にも大きな魅力がある。
前回のレビューでも述べたように、AF駆動音などの撮影時の音がやや大きいことは気になるが、その点さえ納得できれば、気軽なスナップ用の一眼レフとして高い満足感が得られるだろう。