新製品レビュー
OLYMPUS PEN Lite E-PL7(実写編)
OM-D譲りの画質の実力は? 新アートフィルターも紹介
水咲奈々(2014/10/2 15:01)
9月25日公開のOLYMPUS PEN Lite E-PL7(外観・機能編)に続き、今回は実写編をお送りします。
撮像素子は、上位ラインナップの「OM-D」と同じ有効1,605万画素Live MOSセンサー。画像処理エンジンも同じくTruePic VIIを採用しています。
液晶モニターは可動式の3型TFTカラー液晶で、自分撮りのため下向きに開くのが特徴。これも上位機種のOLYMPUS PEN E-P5と同じ約104万ドットです。
また、Wi-Fi機能を内蔵しており、「OLYMPUS Image Share(OI.Share)」というアプリを使ってスマホと連携することによって、写真の転送やリモートコントロールを気軽に行うことができます。
デザインも上位機種であるPEN E-P5に近付いてます。ボディ前面が張り革で覆われたことから、さらに高級感がアップしています。
それでは、本機の撮影画質についてお話をしたいと思います。
遠景(解像力)
使用したレンズはキットレンズの「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ」です。作例はISO200で絞りF8、広角端で撮影。
この作例は夕方に撮影。明暗差のある均等に光が当たっていない意地悪な条件です。
この作例に限らず、全体のイメージとしては、近景も遠景も無理なく自然な描写で心地良いのですが、等倍表示では遠景の描写が頑張りきれていないなというのが正直な感想です。画面右下の駅舎はかなりクリアに描写されていますが、その奥の色味の薄いビルや画面左下の工事箇所や車両などは、もっとシャープな描写をつい求めたいです。
ただ、ボディとセットで購入できるキットレンズを使っての評価です。コストパフォーマンスを考えると、お散歩カメラにぴったりのレンズだと思います。
特に近景はシャープな画が得られているので、セルフィカメラのレンズとしては合格です。遠景をメインに緻密な風景写真を求められる方は、別途レンズの購入をお勧めします。本機の画像処理エンジンでしたらこのレンズよりももっと高い描写を得られるでしょう。
感度
本機のISO感度はLOW(約100相当)から25600まで設定できます。
作例は明かりが入らない室内で、小さなろうそくを被写体の周りに4つ配置して撮影しました。
瓶の中に入っていますが、右下のクッキーの「HAPPY HALLOWEEN」の文字と、そのクッキーが入っている袋の上部を拡大して見るとわかりやすいです。全体としては3つの瓶のフチのざらつきで画像の荒れがわかります。
まず、低感度側はさすがに問題なし。ISO1600から瓶のフチに多少の荒れが見られますが、全体としてはそれほど問題ありません。
さすがに苦しくなってきたのがISO3200です。でもそれも「粗を探せば」というレベルなので、大伸ばしにする作品の撮影でなければ充分使えます。
ここまで頑張ってきましたが、ISO4000からは徐々に全体の描写の低下が顕著になってきて、ISO10000以降は緊急回避的に、どうしてもこの感度を使わなければ写らない記録写真を撮る状況下のみ使いましょう、という画質に感じました。
自分撮り
セルフィカメラの本領発揮です。
作例は、片手を伸ばしてカメラをグリップして、もう片方の手でタッチしてピントを合わせてシャッターを切るという撮り方をしました。撮影場所は動物園。混雑した中で三脚を立てるのは迷惑なので、手持ちの自分撮りが最適でした。フォーカスモードは顔検出にしましたが、タッチしてカメラに近いほうの目にピントを合わせたほうが素早く撮影ができました。
女性の手を伸ばした状態でカメラを構えると、このレンズでは広角端になっても3人くらいが画面に入る限界だと感じました。大人数の集合写真や自宅やお店での記念撮影の場合は、三脚やテーブルを活用してカメラを設置して、スマホの画面を見ながらリモート機能を使って撮る方法がいいかも知れませんね。
マクロ
オリンパスらしく、シーンモードにはマクロという項目があります。
通常のマクロモードとネイチャーマクロを撮り比べてみましたが、ネイチャーマクロのほうが色の鮮やかさやコントラストが少しだけ強くなりました。ただ、マクロと銘打っているので通常モードよりもあっと驚くほど寄って撮れるともっと楽しいなとは思いました。
アートフィルター「ヴィンテージ」
今回新しく搭載されたアートフィルターのヴィンテージは、写真プリントが経年劣化したような、味わいのある画に作り上げてくれます。
タイプIからタイプIIまでの選択肢があります。
タイプIは光漏れ、プリント焼けなどの変色効果。色味のバランスの崩れた光の存在感を感じさせる仕上がりになります。
タイプIIは優しく色あせたノスタルジックな仕上がりに、タイプIIIはしっとりと落ち着いたトーンに仕上がります。
それぞれのタイプに特徴があるので被写体によって使い分けるととてもムードある作風になります。
タイプIは特に光の部分の変化がおもしろいので、明暗のあるシチュエーションや逆光時にお勧めです。タイプIIIは全体をシックに仕上げるので古風な街並みや金属的なものを被写体とするとムードに似合うと思います。
一番迷ったのがタイプIIだったのですが、カラフルな被写体の持ち味を損なわず優しい色味に仕上げてくれるので、テーブルフォトや花の撮影、女性のポートレートなどに向いているのではと思いました。
アートフィルター「パートカラー」
同じく、今回新搭載のパートカラーも3タイプから選べます。特定の色を残して他をモノクロ化するパートカラーは他社製品で良く見かけますが、オリンパスのアートフィルターとしては初めての機能になります。「外観・機能編」で紹介した通り、コントロールリングを使った操作で、色を抽出するのもユニークです。
タイプIは選択した色を中心に、それ以外の色は自然なグラデーションでモノクロ化します。タイプIIは選択した色以外の色もほんの少し残り、その逆にタイプIIIは選択した色だけを残します。
効果の予想ができて使いやすいのはタイプIですが、1色だけくっきりと残してメッセージ性の強い作風にしたい場合はタイプIIIを、1色ではなくてもう少し残したい場合(柔らかい被写体がお勧めです)はタイプIIがハマりました。
まとめ
本機のメインテーマでもある自分撮りですが、チルト式の液晶モニターを見ながらと、スマホのライブビュー画面を見ながらの2パターンの方法から選べるのは大きなメリットです。そして、そのどちらも使い勝手は良い方です。良い方……というのは、やはりまだ改良して欲しい点もあるからです。
例えば、斜め上から手を伸ばして「美人角度」で撮影するには、ボディはちょっと重く感じます。また、下開きの液晶モニターは、手持ちで自分撮りする分には楽なのですが、三脚での集合写真には使えません。三脚の雲台と液晶モニターが干渉するからです。
一方、新アートフィルターの「ヴィンテージ」と「パートカラー」は秀逸だと感じます。筆者は今までのどのアートフィルターよりも気に入りました。このふたつのアートフィルターだけで2〜3日は話し続けられると思います。
そんな個人的な感想を挟みつつ、これまた個人的に本機をお勧めしたい方を挙げると、SNSなどで友達とのショットや料理をアップするのが好きな方、旅行好きな方、PEN Liteシリーズの初期型を持っているけどいつ買い換えようか迷っている方…といったところでしょうか。秋の行楽シーズン前に決断されたほうがいいですよ!!