新製品レビュー

ニコンD610

軽快フルサイズ機がさらに充実

 ニコンのフルサイズ一眼レフのローエンドを受け持つモデルで、昨年9月に発売されたD600の後継となる。おもな改良点は、連写スピードが5.5コマ/秒から6コマ/秒に高速化したこと、静音連続撮影機能の追加、オートホワイトバランス精度の向上があげられている。

 大手量販店の店頭価格は、ボディ単体が19万8,000円前後、AF-S 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR付きキットが25万2,000円前後、AF-S 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR付きキットが28万8,000円前後となっている。D600発売当初のボディ単体は21万8,000円前後だった。なお、D600にはあったダブルレンズキット(AF-S 24-85mm F3.5-4.5 G ED VRとAF-S 50mm F1.8 Gが同梱)は用意されていない。

見た目はそのまま

 外観は発売済みのD600とまったく同じと言ってよく、付属のストラップを使用していなければ、両者を見わけるのはとても難しい(付属のストラップにはモデル名が刺繍されている)。背面と上面にマグネシウム合金カバーが採用されていることや、防塵・防滴処理が施されているところも同じだ。

 ボディサイズ、質量もD600とまったく同じ。内部機構に変更が加えられている場合、多少数字が変わることが多いので(ニコンのレンズは、発売当初と何年か経ったところとで重さが変わっているケースがよくある。告知なしのマイナーチェンジをスペックに反映させているのであるらしい)、裏を返せば、連写周りのスペックアップもシャッターユニット自体はD600と同じものを採用している可能性が高いと言うことだ(編注:コマ速アップはアルゴリズムの改良、静音連写は新シーケンス開発で実現との公式発表)。

背面右手側の操作部。AFエリア(測距点)の選択は、8方向キーのマルチセレクターの単独操作で行なえる。
背面左手側。撮影時にはISO感度や画質、ホワイトバランス、ピクチャーコントロールにアクセスできるが、カメラを構えたままでは操作できないのはいまいちな点。
エプロン部脇のフォーカスモードセレクター、AFモードボタンでAFモードやAFエリアモードの切り替えを行なう。
背面左手側に再生ボタンと削除ボタン。削除ボタンとグリップ正面の測光モードボタンを同時に長押しするとカードのフォーマットが可能。
上のボタンは内蔵フラッシュのポップアップ、調光補正など。下のボタンはブラケット撮影の設定用。
前面の右手側にあるのは、上がプレビュー(絞り込み)ボタン、下がFn(ファンクション)ボタン。筆者はFnにファインダー内水準器を割り当てている。
グリップ部の背面側。メインコマンドダイヤルはわずかに右上がりに傾けてある。
ロック付きのモードダイヤル。「U1」と「U2」には、好みの露出モード、およびさまざまな機能の組み合わせを登録しておける。
シャッターボタンまわりの操作部。

 撮像素子は35.9×24mmサイズのCMOSセンサーで、ローパスフィルター付き仕様。有効画素数は2,426万画素。D600とのスペック上の違いはないし、Webサイトに掲載されている撮像素子の画像も同じもののように見える。ちまたでは、撮像素子が変更されたのではないかという噂もあったが、これは否定していいだろう。

撮像素子にはFXフォーマット(35.9×24mm)の有効2,426万画素CMOSセンサーを搭載。スペックとしてはD600とまったく同じ。

 画像処理エンジンもEXPEED 3を継承している。ISO感度は、常用範囲がISO100-6400。拡張範囲はLo 1.0(ISO50相当)からHi 2.0(ISO25600相当)まで。設定ステップはカスタムメニューで1/3段ステップと1/2段ステップに切り替えられるが、1段ステップはない。このへんの不親切さも変わっていない。D600と実写比較しても違いは見られなかった。

ISO感度の設定範囲はLo 1.0(ISO50相当)からHi 2.0(ISO25600相当)まで。常用範囲はISO100からISO6400までとなる。
高感度ノイズ低減の設定画面。ISO3200あたりから効果がはっきり分かるようになる。普通は「標準」でいいが、ディテール再現を重視するなら「弱め」か「しない」を選ぶ。
毎度けちくさいと思うのが、ここに「1段」という選択肢がないこと。再生時のOKボタンに拡大表示が割り当てられないのも残念なまま。

 ファインダーは視野率100%、倍率0.7倍。AFは中央部9点にクロスセンサーを採用した39点測距。中央部の7点は絞りF8の光束にも対応している。ただし、AFエリア(測距点)のカバーする範囲が狭いため(11点測距のD3200を除けば、現行のニコン一眼レフではもっとも狭い)、特に動体撮影時のフレーミングの自由度が低いのは泣きどころのひとつとなっている。

ファインダー内。格子線やDXフォーマットでの撮影範囲枠の表示もできる。
39点のAFエリア(測距点)の分布はこんな感じ。かなり中央部に寄っているので、三脚撮影時はAFに頼れないシーンも多かったりする。
水準器の表示がD600から変わっていた。
中心部の丸印が黄色いのは前後方向にわずかに傾いていることを示している(完全に水平にすると緑色の丸印になる)。
これはライブビュー撮影時の水準器表示。個人的にはD600の表示のほうが好み(負け惜しみとかじゃなくて)。
ファインダー内水準器は左右方向の1軸のみだけど、普通に撮っている分にはこれで十分役に立つ。

 記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード(UHS-I対応)のデュアルスロット。順次記録やバックアップ記録、RAW+JPEG分割記録が可能なほか、カード間での画像のコピーも行なえる。実写での平均ファイルサイズはJPEG(Lサイズ/ファイン画質)で10.8MB、RAW(14bitロスレス圧縮)で29.2MBだった。64GBのカードのフォーマットしたばかりの状態でのRAW+JPEGの撮影可能コマ数の表示は「915」だが、実際には1,600コマほど撮れる計算になる。

 電源は容量1,900mAhの「EN-EL15」。CIPA基準での撮影可能コマ数は約900コマ。実写ではストロボ発光なしで600コマほど撮ったあたりで電池残量表示がひとマス減った程度だった。

記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカードのデュアルスロット。カード間でのコピーとかもできる。
下側のスロット2の機能は、順次記録、バックアップ記録、RAW+JPEG分割記録から選べる。
バッテリーはEN-EL15。CIPA基準で約900コマの撮影が可能だ。

連写周りが充実。オートホワイトバランスは精度向上を実感

 D600との違いのひとつが連写のスピード。と言っても、5.5コマ/秒から6コマ/秒なので、それほど大きな違いではない。D600と比べてみると、たしかに、「あ、速くなったな」とは感じるものの、5.5コマ/秒で買い控えていた人が6コマ/秒になったからという理由で購入に踏み切るとは思えない。

 ただ、プロ向けのキヤノンEOS-1D XやニコンD4を別にすると、フルサイズ機のトップはキヤノンEOS 5D Mark IIIとソニーα99の6コマ/秒(α99はテレコン連続撮影優先AEモードだと10コマ/秒だが)。次がD600の5.5コマ/秒だったわけで、本機で6コマ/秒に並んでおくのは悪くない手だろう。

 3コマ/秒の静音連続撮影の追加も新しい。が、作動音は低速連続撮影(初期設定は3コマ/秒)より少し静かかなというぐらいの違いしかない。若干だが音質がソフトになっている印象ではあるので、耳障りな作動音を嫌う撮影(ブライダル関係や音楽関係)にはいいかもしれない。

新設された静音連続撮影モード。3コマ/秒でちょっと静かめの連写が可能。

 案外に大きな違いが感じられたのがオートホワイトバランスの精度。発売日からずっとD600を使ってきて、ちまたで言われているほど黄色いと感じたことはなかったし、これだけ見事なコケっぷりも初めて見たので、正直、かなり驚いている。晴天の野外で「AUTO1」で撮ったカットは、D600はアンバーかぶりがすごく目立つし、屋内で「AUTO2」で撮ったカットも、D600のほうがマゼンタが強く感じられる。一方のD610は、どちらの条件でもニュートラルに近い色再現となっている。

オートホワイトバランスは電球色も補正する「AUTO1 標準」と、雰囲気重視の「AUTO2 電球色を残す」から選択できる。
Fnボタンの機能設定は、カスタムメニューから行なう。

 ただまあ、ちまたで「ニコンの画は黄色い」と言われているようには感じたことはないし(「晴天」モードで夜景を撮ったときには黄色っぽいのが気になったけど、あれはD700も同じ傾向だった)、いつもいつも色かぶりが起きているわけでもないので、これが大きな進化と言えるかどうかは微妙だ(素晴らしい進化だとは思うけど)。

これから買うならD610

 D600ユーザーのひとりとしては、本機の登場は、とてもじゃないが心穏やかには迎えられない。D600からの進化は、どれも大きなものではなく、あえてモデル名を変更しなくてはならないほどではない。と考えれば、必然的に、センサーが汚れやすいと言われている問題への対策なのだろうと邪推するしかないわけで、そのあたりの確証はないものの、まず間違いなく本機に件の問題は発生しないはずだ。

 現時点で、D600との価格差は、ボディ単体で3万3,200円前後と小さくないが、レンズキットではもっと縮まる。その価格差を、センサー汚れが発生しにくい安心感(保証はしないが)と連写スペックアップとオートホワイトバランスの精度向上分と受け止めることはできなくはないと思う。自分が今、フルサイズ機を初めて買うという立場に置かれているのであれば、間違いなく本機を選ぶはずだ。それは間違いない。

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・オートホワイトバランス精度をD600と比較
 D600とのオートホワイトバランスの違いを撮り比べてみた。全体としては、D610のほうがニュートラルな発色に仕上がっている。ただし、D600もシーンによっては色かぶりは起きていない。

D610
D600

「AUTO1」で撮影。D600はこの条件であからさまなアンバーかぶりが見られた。これだけの色かぶりは、今まで見たことがなかったので、とても驚いている。

D610
D600

これも「AUTO1」で撮影。上のカットと似た条件だが、こちらはなぜかD600の色かぶりは起きていない。

D610
D600

光源の色味を補正してニュートラルな発色を得るということを重視するならD610のほうがいいが、午後3時の光の色としてはD600のほうが好ましかったりする。

D610
D600

レンガの建物の外壁。青みが強くなりやすい条件だが、どちらも悪くないレベル。強いて選ぶならD600のほうが現物に近いように思う。これも「AUTO1」。

D610
D600

白熱灯照明の屋内で「AUTO2」での撮影。見比べるとD600のほうがマゼンタが強めに感じる。が、1コマだけ見ている分にはあまり気にならないと思う。

・連写の様子を動画撮影

D600 高速連続撮影(5.5コマ/秒)
D610 高速連続撮影(6コマ/秒)
D610 低速連続撮影(3コマ/秒)
D610 静音連続撮影(3コマ/秒)
D610 静音撮影

・感度
 ベース感度はISO100で、常用範囲はISO6400まで。減感で「L 1.0(ISO50相当)」、増感で「H 2.0(ISO25600相当)」まで利用可能だ。「高感度ノイズ低減」機能は、「オフ」「弱め」「標準」「強め」から選べる。

 初期設定の「標準」では、ISO800あたりまではノイズは無視できるレベルで、筆者個人としてはISO3200までなら常用できるレベル。ISO6400でも条件によっては使えそうだし、「H 1.0」でもディテールがよく残っているので、人によっては許容範囲に入れられるだろう。「L 1.0」はハイライト側のダイナミックレンジがやや狭く、ISO100のカットと見比べると、ハイライト部がより明るく写っているのが分かる。

 ※各サンプルのサムネイルは下の画像の青枠部分を等倍で切り出しています。

高感度ノイズ低減:オフ

L 1.0(ISO50相当)
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
H 1.0(ISO12800相当)
H 2.0(ISO25600相当)

高感度ノイズ低減:弱め

L 1.0(ISO50)
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
H 1.0(ISO12800相当)
H 2.0(ISO25600相当)

高感度ノイズ低減:標準

L 1.0(ISO50相当)
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
H 1.0(ISO12800相当)
H 2.0(ISO25600相当)

高感度ノイズ低減:強め

L 1.0(ISO50相当)
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
H 1.0(ISO12800相当)
H 2.0(ISO25600相当)

・ピクチャーコントロール
 画像の仕上げを決める「ピクチャーコントロール」は「スタンダード」「ニュートラル」「ビビッド」「モノクローム」「ポートレート」「風景」の6種類。それぞれに「輪郭強調(シャープネス)」「コントラスト」「明るさ」「色の濃さ(彩度)」「色合い(色相)」を微調整できる。

画像仕上げ機能のピクチャーコントロールは、従来どおりの6種類があり、それぞれ好みに合わせて微調整が可能だ。
スタンダード
ニュートラル
ビビッド
モノクローム
ポートレート
風景

・作例

キットレンズのAF-S 24-85mm F3.5-4.5 G ED VRは、そんなにすごく高画質というわけじゃないけど、小型軽量で使い勝手はいい。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 4,016×6,016 / ISO100 / F8 / 1/160秒 / 24mm
これは望遠端での撮影。画面中心部はわりとシャープで、周辺部は少しアマい。が、破綻しているというほど悪くはない感じ。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 6,016×4,016 / ISO100 / F8 / 1/500秒 / 85mm
望遠端の至近距離付近で撮ったカット。もう少しキレが欲しい。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 4,016×6,016 / ISO100 / F4.5 / 1/320秒 / 85mm
歪曲収差は、広角端はわりとよく補正されているが、望遠端ははっきりしたイトマキ型。円形の噴水なので、ほんとは線の曲がり方が逆なのだ。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 4,016×6,016 / ISO100 / F11 / 1/100秒 / 85mm
自前のAF-S 50mm F1.8 G。被写界深度を稼ぎたかったのでめいっぱい絞っている。画素サイズが大きい分、回折の影響は少なめ。/ D610 / AF-S NIKKOR 50mm F1.8 G / 4,016×6,016 / ISO100 / F16 / 1/10秒 / 50mm
東京都はだいたい10度ぐらい気温が違う感じ。紅葉も進んできてる。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 6,016×4,016 / ISO100 / F9 / 1/250秒 / 24mm
AF-S 24-85mm F3.5-4.5 G ED VRは、AF-S 24-70mm F2.8 G EDやAF-S 24-120mm F4 G ED VRに比べると、ぐっと小型軽量。本機とのマッチングはいい。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 4,016×6,016 / ISO100 / F11 / 1/60秒 / 24mm
このシーンはアンバーかぶりが起きている。というのもあるが、左上と左下の隅が暗くなっているのが気になる。ちなみに、ヴィネットコントロールは「標準」だ。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 6,016×4,016 / ISO100 / F5.6 / 1/400秒 / 85mm
ホワイトバランスを、白熱灯の雰囲気をいかす「AUTO2」で。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 4,016×6,016 / ISO800 / F5.6 / 1/40秒 / 56mm
照明の色温度が低いと「AUTO1」のほうがいいケースもあるけど、ここは「AUTO2」でちょうどよかった。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 6,016×4,016 / ISO800 / F5.6 / 1/320秒 / 32mm
感度自動制御をオンにして撮ったカット。ISO2800まで上がっているが、ノイズ感はあまりない。このへんはフルサイズならではだ。/ D610 / AF-S NIKKOR 50mm F1.8 G / 4,016×6,016 / ISO2800 / F2.2 / 1/100秒 / 50mm
昔はレンガ造りの建物なんかをオートホワイトバランスで撮ったら真っ青になったものだが、今は普通に写るのが当たり前。/ D610 / AF-S NIKKOR 50mm F1.8 G / 4,016×6,016 / ISO100 / F3.2 / 1/200秒 / 50mm
テレビ塔をバックに大通公園の噴水。ISO感度の比較作例用に撮ったのだが、手ブレ補正を切り忘れてて、80コマ中3コマブレていた。/ D610 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 6,016×4,016 / ISO100 / F11 / 15秒 / 24mm

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら