【新製品レビュー】オリンパス・ペンライト「E-PL1」
オリンパス・ペンライト(PEN Lite)E-PL1は、E-P1、E-P2と続く同社マイクロフォーサーズ第3弾となるカメラだ。同社の位置付けとしてはローエンドクラスとなる。製品版が手元に届いたので、早速試用した結果をご報告したい。
発売は3月5日。価格はオープンプライス。実勢価格は、ボディのみ(受注生産)が6万9,800円前後、レンズキット(ボディ+M.ZUIKO DIGITAL ED-14-42mm F3.5-5.6 L)が7万9,800円前後、ダブルズームキット(レンズキット+ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6+フォーサーズマウントアダプター)が9万9,800円前後。
■軽量でホールドしやすいボディ
ボディデザインは、往年のペンFのイメージを強く引き継ぐE-P2およびE-P1(以下E-P2/P1)と異なり、パームグリップを備えた独自のデザインとなる。以前マイクロフォーサーズ規格発表時に、同社からプロトモデルが披露されたことがあったが、そのイメージにどちらかといえば近い。しかし、ぐっと洗練されており、E-P2/P1のボディデザインに抵抗を持つカメラ愛好家にも好まれそうだ。仕上げの良さは継承しており、アルミ合金製のボディは質感も上々だ。
ボディサイズは114.6×41.5×72.2mm(幅×高さ×奥行き)。幅がE-P2/P1よりも5.9mm短く、奥行きはパームグリップを備える分6.5mm厚くなる。重量は296gで、E-P2/P1よりも59g軽量化されている。ホールドした印象は、パームグリップの存在でたいへん持ちやすく、筆者の手だと素直に右手人差し指がシャッターボタンに掛かる。スナップ撮影時などストラップを右手首に巻き、その手でカメラを常に持ち歩くような撮影スタイルの場合、軽さも手伝い具合が非常にイイ。個人的には、E-P2/P1よりもホールド感は上に感じた。
カラーバリエーションはホワイト、シャンパンゴールド、ブラックの3色が用意される。手元に届いたのはシャンパンゴールドであったが、イエローやブルーなどソリッドなカラーがあっても良さそうに思えた。
操作性に関しては、撮影時の設定など一般的なコンパクトモデル同様、十字キーをメインとしたもので、E-P2/P1の十字キーを囲むように設置されたメインダイヤルとカメラ背面右上部のサブコマンドダイヤルによるものとは趣が異なっている。「ライブコントロール」による設定も十字キーと中央のOKボタンで行う。コンパクトモデルからステップアップしたユーザーは、設定などにおける操作の違和感は少ないだろう。
反面、コマンドダイヤルを使うことの多いユーザーは頭の切り換えを少々必要とするかも知れない。ちなみに、背面部に備わるボタン類は適度に大きく表示も見やすい。新たに備わった動画専用のボタンもたいへん使いやすく感じる。このボタンは液晶モニターの点灯/消灯やAEL/AFLなどユーザーの好みに応じて別の機能が割り当てることができる。
■内蔵ストロボやEVFの装着に対応
新採用の「ライブガイド」は、撮影モードのひとつであるiAUTOモードの専用インターフェース。「色の鮮やかさを変える」、「色合いを変える」、「明るさを変える」、「背景をぼかす」、「動きを表現する」を画面右に現れるスライダーで直感的に操作でき使い勝手はよい。
また、[子供/ペット/花/料理/構図]からなる「撮影ヒント」も備えており、同モードを選択することの多いと思われるエントリーユーザーにはフレンドリーな機能といえる。
「ライブガイド」は、iAUTOモードの専用インターフェース。画面右に現れるスライダーで操作する |
「撮影ヒント」では被写体に応じた撮影のアドバイスが得られる |
E-P2と同様、アクセサリーシュー後ろには外付けEVF「VF-2」やステレオマイク「SEMA-1」用のアクセサリーポートを備える。これはポートを備えない上位機のE-P1より勝っている部分で、特に望遠レンズを装着した際やマクロ撮影時などで、EVFが使えるようになるのはありがたい。残念ながらVF-2が手元になかったため、実際にE-PL1に装着して撮影することは叶わなかったが、よりしっかりとカメラが構えられ、液晶モニターで見るよりも正確なピント位置の把握が可能なはずだ。
その液晶モニターは2.7型を搭載。約23万ドットと解像度は低いものの、太陽光の照る屋外でも比較的見やすく視認性はよい。ただし液晶モニター周りにスペースが空いており、もう一回り大きなモニターが搭載できそうに思えた。
内蔵ストロボの搭載はE-P2/P1と大きく異なるところ。ポップアップ式で、パナソニックLUMIX DMC-GF1のそれと起き上がるギミックはよく似ている。ガイドナンバーは7(ISO100)。クリップオンストロボFL-50RやFL-36Rと組み合わせると、最大3グループのTTL多灯システムを組める「ワイヤレスRCシステム」に対応しており、ちょっと凝ったライティングも楽しめる。調光補正を±3EVの間で可能としているのは、エントリークラスらしからぬところ。
アクセサリーシュー後ろにはアクセサリーポートが備わる。上位機であるE-P2と同様に、外付けEVF「VF-2」やステレオマイク「SEMA-1」の装着可能だ | DMC-GF1とよく似たポップアップタイプのストロボを備える。一般的なポップアップ式とくらべ発光部が光軸よりも離れるため、鏡銅やフードによるケラレを抑えられる。ガイドナンバーは7(ISO100) |
イメージセンサーには、E-P2/P1と同じ4/3型有効1,230万画素ハイスピードLiveMOSセンサーを採用する。ISO感度は100から3200まで(E-P2/P1はISO100〜6400)。作例を見ていただければと思うが、高感度域におけるノイズ量は、フォーサーズとして一般に語られているほど多くは感じない。APS-Cサイズのデジタル一眼レフより気持ち多いかなというレベルだ。
コマ速はE-P2/P1と同一の3コマ/秒だが、最高シャッター速度は1/2,000秒とちょっと物足りない(E-P2/P1は1/4,000秒)。マイクロフォーサーズはフランジバックの短さから多くの種類のマウントアダプターがサードパーティからリリースされているが、純正のレンズも含め絞りを開いた撮影では、露出的にきびしいことが多々ありそうだ。
マウントはいうまでもなくマイクロフォーサーズ。センサーは有効1,230万画素ハイスピードLiveMOSを採用する。センサーシフト方式の手ブレ補正を内蔵する | E-P2/P1ではカメラ上部左側にあったモードダイヤルは、シャッターボタン側に備わる。電源ボタンはONになると青いLEDが点灯する |
シンプルなボタンレイアウトの背面部。設定等の操作は全て十字キーとOKボタンで行う。新たに設置された録画ボタンは、静止画撮影用の機能を割り当てることも可能 | 電源はE-P2/P1などと同じBLS-1を使用する。撮影可能枚数は約290コマ(CIPA準拠)。記録メディアはSDHC/SDメモリーカード |
インターフェースはアクセサリーポート以外に、USB&AVとHDMI端子を備える |
アートフィルターはライナップに変更があった。「デイドリーム」「ライトトーン」「クロスプロセス」が省略され、代わりに「ジェントルセピア」を追加。「ポップアート」「ファンタジックフォーカス」「ラフモノクローム」「トイフォト」「ジオラマ」と合計6つのフィルターが備わる。E-PL1では、メリハリのない色調となるフィルターや色の変化の想像しづらいものが外され、ビビッドな色調や結果の分かりやすいフィルターでまとめた感じだ。このカメラのターゲットを考えるとなるほどと思えるところである。
アートフィルターには「ポップアート/ファンタジックフォーカス/ラフモノクローム/トイフォト/ジオラマ」のほか、新たに「ジェントルセピア」が加わり合計6つが揃う |
撮影シーンに合った印象的な仕上りの得られる「i-FINISH」をE-P2と同様搭載する。撮影モード「iAUTO」ではデフォルトの仕上りとなる | 高感度域におけるノイズ低減機能はOFF、弱、標準、強から選択が可能 |
シーンモードは、ポートレート、e ポートレート、風景、風景&人物、スポーツ、夜景、夜景&人物、チャイルド、ハイキー、ローキー、ぶれ軽減、マクロ、ネイチャーマクロ、キャンドル、夕日、文書、パノラマ、打ち上げ花火、ビーチ&スノーと多彩だ |
■エントリーユーザーにはもちろん、手軽なサブ機としても
作例の撮影ではキットレンズとして付属するM.ZUIKO DIGITAL ED-14-42mm F3.5-5.6 Lと、ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6を使用した。いずれもプラスチックマウントを採用するなど軽量化と低コスト化が図られている。
ちなみにE-PL1を買うなら、個人的にはM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8をE-PL1と組み合わせて使ってみたいと思うが、残念ながらキットレンズとはなっていない。M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8は大手量販店での単品価格は4万円前後だが、E-P2/P1のパンケーキレンズセットの場合、E-P2/P1の単体との価格差は2万円前後でしかない。E-PL1にもM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8がリーズナブルに手に入るレンズキットが欲しく感じが、皆さんはいかがだろうか。
E-PL1はシャッタースピードなどいくつかE-P2/P1からデチューンされているところがあるものの、ミラーレス機として楽しむには十分なカメラだ。ライバルのLUMIX DMC-GF1とくらべても不足を感じさせるところはほとんどない。実際に使っていても手によく馴染み、露出の設定や補正なども直感的でたいへん操作しやすい。
本来はエントリーユーザーを主なターゲットとしたマイクロフォーサーズ機であるが、手軽なサブ機としてやフィルム時代のレンズ資産を活かせるカメラとしてディープなカメラ愛好家にも楽しめるカメラに思える。また、今後M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8のようなコンパクトな単焦点レンズをラインアップに揃えてくれれば、E-PL1のみならず同社のマイクロフォーサーズ機全体も面白くなりそうにも思えた。
ライバルは、ズバリ、パナソニックLUMIX DMC-GF1。実力は伯仲しているように思え、甲乙は正直たいへん付けがたい |
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
・仕上がり
※共通設定:E-PL1 / M.ZUIKO DIGITAL ED-14-42mm F3.5-5.6 L / 約5.9MB / 4,032×3,024 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 14mmi-FINISH | VIVID | NATURAL |
FLAT | PORTRAIT | モノトーン |
・アートフィルター
ジェントルセピア E-PL1 / M.ZUIKO DIGITAL ED-14-42mm F3.5-5.6 L / 約5.9MB / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / WB:― / 32mm |
・アスペクト比
※共通設定:E-PL1 / M.ZUIKO DIGITAL ED-14-42mm F3.5-5.6 L / 約4.3MB / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm4:3(4,032×3,024ピクセル) | 3:2(4,032×2,688ピクセル) |
16:9(4,032×2,272ピクセル) | 1:1(3,024×3,024ピクセル) |
・感度
※共通設定:E-PL1 / M.ZUIKO DIGITAL ED-14-42mm F3.5-5.6 L / 約5.1MB / 4,032×3,024 / F5.6 / +0.7EV / WB:晴天 / 14mmノイズリダクション:OFF
ISO100 | ISO200 | ISO400 |
ISO800 | ISO1600 | ISO3200 |
ノイズリダクション:弱
ISO100 | ISO200 | ISO400 |
ISO800 | ISO1600 | ISO3200 |
ノイズリダクション:標準
ISO100 | ISO200 | ISO400 |
ISO800 | ISO1600 | ISO3200 |
ノイズリダクション:強
ISO100 | ISO200 | ISO400 |
ISO800 | ISO1600 | ISO3200 |
・そのほか
2010/3/9 00:00