シグマDP1x【第1回】

RAWとJPEGを撮り比べる

Reported by 本誌:武石修


 シグマのコンパクトデジタルカメラ「DP1x」の長期リアルタイムレポートを担当することになった。よろしくお付き合いいただければと思う。

DP1x。専用フードアダプター「HA-11」を装着

 DP1xの発売からは5カ月余りが経過し、ユーザーも増えていることと思う。DP1xの詳しい進化点などについては、【新製品レビュー】シグマDP1xを参照いただきたい。大きくは画像処理エンジンが最新の「TRUE II」になったほか、操作性を高める「QS」(クイックセット)ボタンの搭載などだ。

 シグマ製デジタルカメラ最大の魅力はなんと言っても「X3ダイレクトセンサー」(フォビオンX3センサー)と言える。原理的に色モアレ(偽色)が発生しないためローパスフィルターが要らず先鋭な画像が得られるほか、RGBすべての色情報を間引くことなく取り込めるのだ。

 さて、X3ダイレクトセンサーのカメラでRAW撮影をするとJPEGでの撮影よりも高画質になることが知られている。DP1xもJPEG撮影時は信号サンプリングをYCbCr=4:2:2(色差信号を輝度信号の半分に間引く)で記録するが、RAWファイル(X3F)から現像するとYCbCr=4:4:4で記録できる。1つのピクセルで3色の色情報を取り込めるX3ダイレクトセンサーならではのメリットだという。

 というわけで、第1回目はJPEGとRAWの比較を行なってみることにした。

 純正RAW現像ソフト「SIGMA Photo Pro」(SPP)には、撮影時の設定のまま現像する「X3F」(ストレート現像)、自動的に調整を行なう「オート」、パラメーターを変更できる「カスタム」がある。今回はカスタムは使わず、X3Fとオートで現像を行ない両方を掲載した。

SIGMA Photo Proの保存画面。現像設定は、ストレート現像の「X3F」、SPPが自動的に調整する「オート」、任意にパラメーターを調整した際の「カスタム」から選べる

 なお、YCbCr=4:4:4のJPEGを生成するにはSPPで[JPEGクオリティ]を7~12に設定する必要がある。今回はX3FとオートともJPEGクオリティは最高の12にした。

実写サンプル

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしのRAW画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

※RAW現像はSIGMA Photo Pro 4.2.2.0(3607)で行なっています。[出力画像のサイズ]は「標準」です。

※実写サンプルは左から「カメラ内JPEG」、「SPPのX3F設定で現像」、「SPPのオート設定で現像」の順です。

JPEGとストレート現像では解像感はほとんど変らないが、色はストレート現像のほうが自然だ。JPEGではややマゼンタよりに見える。オートは全体的に明るさが増す。共通設定:DP1x / 2,640×1,760 / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 16.6mm
赤の再現はデジタルカメラが苦手な部分と言われている。JPEGでも消防車の赤色が良く出ているが、ストレート現像では一段と鮮烈な赤を表現できた。オートは明るめでパリッとした仕上り。共通設定:DP1x / 2,640×1,760 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 16.6mm
これも、JPEGに比べてストレート現像は高彩度な絵になった。注目して欲しいのは赤や緑の部分。JPEGではもやもやとしたノイズのような模様が見えるが、ストレート現像では綺麗になくなっている。共通設定:DP1x / 2,640×1,760 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 16.6mm
今度はお堂の朱色をみる。JPEGよりもストレート現像が彩度があって重厚な仕上りだ。色調もJPEGがややマゼンタよりだったのが、ストレート現像ではややグリーンよりになっているがストレート現像のほうが自然だ。上のサンプルと同様にノイズのようなもやもやも減った。共通設定:DP1x / 2,640×1,760 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:晴れ / 16.6mm
ここでも、JPEGとストレート現像では解像感はほぼ変らない。色調とコントラストがやや変化しているがストレート現像のほうが落ち着いた仕上りだ。石の質感もストレート現像の方が好ましく感じた。オートはオーバーな仕上りに。共通設定:DP1x / 2,640×1,760 / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:晴れ / 16.6mm
JPEGに比べると、ストレート現像はマゼンタよりの色調が取れてより自然になった。ボートの色は、水色、ピンク、黄緑とも少し変化しているのが興味深い。このショットではオートが健闘しているように思った。共通設定:DP1x / 2,640×1,760 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:晴れ / 16.6mm
夕暮れとあって、ややマゼンタよりになるJPEGがこのシーンには合っているようにみえる。ただビルの壁面などを見ると、ストレート現像のほうがもやもやが無く綺麗。ダイナミックレンジもストレート現像のほうが広いようだ。オートはかなり暗部を持ち上げている。共通設定:DP1x / 2,640×1,760 / 2.5秒 / F8 / -1EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 16.6mm
JPEGに比べてストレート現像は原色があざやかに出る。コントラストもやや高く締った描写だ。高彩度なリバーサルフィルムを思わせる。共通設定:DP1x / 2,640×1,760 / 1/30秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 16.6mm

まとめ

 こうしてみると、撮って出しのJPEGであってもほかのデジタルカメラでは味わえない解像感を改めて見ることができた。さらに、X3Fをストレート現像したものは彩度が高まることでより印象的な仕上りになっていた。

 今回はすべてISO100で撮影したので高感度ノイズではないと思うが、JPEG画像で平坦な部分にはもやもやしたノイズのようなものが見られた。これも、X3Fから現像すると大幅に軽減できることもわかった。とはいえ、撮って出しのJPEGでも比較すればわかるくらいの微妙なものだが。

 一方、オート設定での現像は全体的に画面が明るくなった。シャドウ部の露出はかなり持ち上げるようだ。ただ、ハイライト部分は露出を下げており、ダイナミックレンジの広い絵作りを目指しているように思った。オート設定も必要に応じて活用したい。

 撮って出しのJPEGに比べてX3Fから現像したJPEGの容量は約1.3倍前後になっており、情報量が増えていることがわかる。ちなみに、今回撮影したDP1xのX3Fファイルは15MB前後だった。

 やはりX3ダイレクトセンサーの力を最大限に発揮するには、RAWで撮影することが必須のようだ。パソコンで現像するのは面倒かもしれないが、ストレート現像するだけでも違ってくる。YCbCr=4:4:4であれば、レタッチ耐性も高くなるはずだ(できれば、今後の回で検証していきたい)。DP1xの力をフルに発揮するためにも、是非RAWでの撮影をお勧めしたい。






本誌:武石修

2011/3/9 00:00