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ソニーα55【第8回】

真夏のフルハイビジョン撮影に挑む

Reported by 伊達淳一


 最近は、デジタル一眼レフカメラでもフルハイビジョンムービーが撮影できるのが当たり前の時代になってきたが、動画撮影中にAFが効く機種はごく限られていて、しかも、ホームビデオに比べると動きがぎこちなかったり、映像に乱れが生じるなど、まだまだ発展途上といった感が強い。少なくともAFに頼ったムービー撮影に関しては、ボディだけでなくレンズもコントラストAFを前提に設計されているミラーレス機のほうが優位だ。

 ちなみに、「α55」は、外観は一眼レフカメラのカタチをしているが、トランスルーセントミラーテクノロジーにより、位相差AFを可能にしたレンズ交換式デジタルカメラだ。一眼レフカメラで培った高速な位相差AFと、多くのα(A)レンズ資産をそのまま継承でき、静止画撮影だけでなくフルハイビジョン動画撮影中でも高速な位相差AFが利用できるのが特徴だ。

MFモードで被写界深度をコントロール

 ただし、位相差AFを動作させるためにはF5.6以上の明るさが必要で、絞りを絞ってしまうと位相差AFが動作しなくなってしまう。そのため、α55は手動で絞りが設定できる絞り優先AEやマニュアル露出時でも、ムービー撮影を開始すると絞り値が強制的にF3.5に固定、開放F値がF3.5よりも暗いレンズでは絞り開放での撮影となる仕様だ。

 どうしても絞りを手動でコントロールしたい、という場合には、フォーカスモードを[MF]にして、絞り優先AE、もしくはマニュアル露出モードで撮影すると、手動設定した絞り値でムービー撮影が行える。大口径レンズならではの浅い被写界深度を活かしたい、あるいは、逆に被写界深度を深くするために絞って撮影したい、といったときは、MF撮影に切り換えよう。

α55は、AVCHDとMPEG-4の2種類の動画記録方式を選択できる。AVCHDのほうがハイビジョンテレビやBDレコーダーとの親和性が高いが、パソコンで見るだけならMPEG-4のほうがわかりやすい AVCHCは1,920×1,080ピクセル/60i(センサー出力は30p)、MPEG-4は1,440×1,080/30pとVGA

 前述したように、α55はムービー撮影中でも位相差AFが動作するので、動く被写体でも俊敏にピントが合うのが特徴だが、個人的にはフォーカス送りがムービーとしてはちょっと速すぎてナーバスな面が気になる。しかも、ムービー撮影中は常にAFが動作し続け、カメラボディ側でフォーカスロックを行なう手段がないため、ここでピントを固定したいと思っても、ちょっとフレーミングを変えるだけでフォーカスがふらついてしまう(カメラとしてはフォーカスエリアの被写体にピントを合わせ直しているだけなのだが……)。「70-300mm F4.5-5.6 G SSM」などフォーカスホールドボタンを備えているレンズを使えば、フォーカスロックは可能だが、そうしたレンズはごく一部だけ。同じαでも、NEXシリーズは、ムービー撮影中にシャッターボタンを半押ししている間はフォーカスロックがかかるので、α55にもぜひそうした仕様を採り入れて欲しいと思う。

ムービー撮影では、手ブレ補正を[切]にしたほうが、内部の発熱が抑えられ、より長くムービー撮影を行なえる パンニングなどで背景の明るさが変わっても、一定の露出レベルでムービー撮影したいときは、AELを活用するのが効果的。その際、AELボタンの設定を[再押しAEL]にしておくと操作が楽になる

夏場の動画撮影は熱との戦い

 ところで、α55にとって、夏はもっとも過酷な季節だ。α55は、ボディ内手ブレ補正を採用していて、ほぼすべてのAFレンズで手ブレ補正が可能で、静止画だけでなくムービー撮影でもその恩恵を享受できる。ただ、このボディ内手ブレ補正が、α55のムービー撮影にとって大きな“アキレス腱”となっている。というのも、ボディ内手ブレ補正は、ブレを打ち消す方向に撮像素子をすばやく動かす必要があり、撮像素子やその周辺回路から生じた熱を逃がす導線が極めて限られている。撮像素子の背面をボディシャーシに密着させしたり、背面にヒートシンクを付けて熱を逃がすわけにはいかないので、レンズ内手ブレ補正を採用するカメラに比べると、撮像素子が熱を帯びやすいのだ。

 特に、フルハイビジョンムービー撮影は、撮像素子や周辺回路に負荷がかかり、静止画に比べると動作時間が長いので、発熱量も多くなる。撮像素子が熱を帯びてくると、画質にも影響があるし、カメラの電子部品にも負荷がかかる。そのため、α55に限った話ではないが、カメラがある一定以上熱を帯びてくると、液晶モニターに警告マークが表示され、さらに撮影を続けると自動的にカメラの電源がシャットダウンするようになっている。

静止画、動画を問わず、連続で撮影を続けていると、カメラ内部の温度が上昇し、液晶モニターに「警告アイコン」が表示される。室温30度では約6分20秒あたりから警告が表示され始めた(手ブレ補正[入]時) ちなみに、自動シャットダウンしてから20分放置した後、手ブレ補正[切]でもムービー撮影を試してみたところ、8分40秒過ぎに警告が表示された
液晶モニターに警告が表示されてから約1分で、このようなメッセージが表示されると同時に強制的に録画が停止し、その後、電源が自動的に切れる。スイングパノラマ、オートHDRでも、気温の高い時期に数回撮影を繰り返すと、こうしたメッセージに遭遇する率は高い

 α55の取扱説明書によると、連続撮影可能な時間(強制的にシャットダウンされるまでの時間)環境温度が20度のときは、手ブレ補正[入]で約9分、[切]で約29分撮影できることになっているが、環境温度が30度に上がると、手ブレ補正[入]で約6分、[切]で約13分、さらに40度まで上昇すると手ブレ補正[入]で約3分、[切]で約5分しか撮影できない。これはカメラの電源がしばらくオフになっていて、十分冷えた状態からの撮影可能時間で、実際には、構図をあれこれ考えたり、連続して何カットも撮影するので、現実にはもっと撮影時間は短くなる。

 α55が発売されたのは2010年9月なので、α55にとってはこれが初めて迎える夏となるが、やはり太陽がサンサンと降り注ぐ日中の屋外では、動画を撮り始めてわずか2〜3分で警告マークが表示され、10分程度の休憩を余儀なくされる。正直、気温の高い真夏の屋外では、本格的な動画撮影に挑むには厳しい機種ではあるが、少しでも長く動画撮影したいときは、取扱説明書にも記載されているように、

  • 手ブレ補正は[切]にする(手ブレ補正のアクチュエーターから発生する熱が少なくなる分、内部の温度上昇が遅くなる)
  • ボディに直射日光をできるだけ当てないようにする
  • 使用しないときはこまめに電源を切る

 のが根本的な対処法。また、ほんの気休めに過ぎないかもしれないが、液晶モニターからの熱を避け、少しでも内部の熱を放熱しやすくするため、液晶モニターを開いた状態で撮影したりしている。

今回、ムービー編集に使ったのは、グラスバレーの「EDIUS 6」。ここまで高機能な編集ソフトを使わなくても、無料の「Windows Liveムービーメーカー」でもAVCHDの編集は可能だ

 まあ、そこまでα55での動画撮影にこだわらなくても、NEX-5にマウントアダプターを装着すれば、手持ちのα(A)レンズを活かしたフルハイビジョン撮影ができる(AFカプラー式のレンズはAFが効かないなど制約はあるけれども……)。

 それと、α55と同じくトランスルーセントミラーテクノロジーを採用する上位機種の「α77」(仮)は、このムービー撮影時の発熱問題をどのようにクリアしているのか、していないのか、非常に気になるところ。(編注:執筆時点でα77は未発表)撮像素子が進化して、発熱量がもっと少なくなれば、気温が高い時期でもより長時間のムービー撮影が可能になるだろうし、α55ほど小型軽量ボディにこだわらなければ、もっとボディの放熱性を高めることもできるはず……、と期待半分、不安半分で、上位機種の発表を楽しみにしている。

動画サンプル

※動画再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。

【機能解説】

・ピクチャーエフェクト

 α55は、撮影モードにかかわらず、背面のMOVIEボタンを押せば、ムービー撮影が行なえるのが特徴。2011年6月20日のファームウェアアップグレードで追加された「ピクチャーエフェクト」を使ったムービー撮影も楽しめる。

サムネイルをクリックするとYouTubeにアップロードしたものと同じファイルをダウンロードします(mts形式、約147MB)

・絞りコントロール

 α55でムービー撮影を行なうと、撮影モードにかかわらず、絞りはF3.5固定(F3.5よりも暗いレンズは絞り開放)になるが、フォーカスモードを[MF]にして、絞り優先AE、もしくはマニュアル露出にセットすれば、設定した絞り値でムービー撮影が可能。

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・フォーカス送り

 フォーカスエリア[ワイド]だと、どこにピントが合うか完全にカメラ任せになるが、[ローカル]ならムービー撮影中に撮影者の意思でフォーカスエリアを移動できる。これをうまく利用することで、思わぬ箇所にピントが合ってしまう失敗を防げ、自動でフォーカス送りをすることができる。

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【編集作例】

・昭和記念公園

 一応ビデオ雲台付きの三脚は持参しているが、大半のカットは手持ち撮影。この頃はまだそれほど気温も高くないので、手ブレ補正を[入]にしていても、すぐにはオーバーヒートせず、手持ちでも比較的安定した映像が撮れた。

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・猫カフェ

 横浜・関内にある猫カフェMiysisにて撮影。節電でいつもよりも店内が暗く、動き回っている子猫などは被写体ブレしてしまうので、思い切ってムービーでその愛らしさを捉えてみた。ピント合わせは基本的にAFまかせなので、シーンによっては行ったり来たりもあるが、ホームビデオ的には十分使えるレベルではないだろうか? 動きが読めず、どうしても長回しになるので何度もオーバーヒート警告で休み休みの撮影を強いられた。交互に撮影するための予備機が欲しい!

(告)いつも水飲み場で出迎えてくれるサッフォさんでしたが、8月3日に虹の橋に旅立ちました。合掌。

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【撮って出しのサンプル】

Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZAで撮影。サムネイルをクリックするとオリジナルファイルをダウンロードします(mts形式、約53MB) Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZAで撮影。サムネイルをクリックするとオリジナルファイルをダウンロードします(mts形式、約31MB)
Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZAで撮影。サムネイルをクリックするとオリジナルファイルをダウンロードします(mts形式、約53MB) 100mm F2.8 Macroで撮影。サムネイルをクリックするとオリジナルファイルをダウンロードします(mts形式、約37MB)



伊達淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌でカメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自らも身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。ただし、鳥撮りに関してはまだ半年。飛びモノが撮れるように日々精進中なり。

2011/9/1 00:00