シグマDP2【第3回】

新ファームウェアのAF速度とクローズアップレンズ

Reported by 大浦タケシ


 シグマのDPシリーズには、共通のアクセサリーとしてクローズアップレンズ「AML-1」が用意されている。DP2への装着はフードアダプター「HA-21」を介して行なう(新製品のDP2sも同じ)。

 センサーサイズの小さい一般的なコンパクトモデルとは異なり、DPシリーズはクローズアップ撮影を苦手とする。コンパクトモデルがレンズ先端からほんの数cmほどのところにある被写体に容易に近づけるのに対し、DP2単体での最短撮影距離はカタログ値で28cmとまったく敵わない。もちろんAML-1を装着したからといって、コンパクトモデル並みにグッと近づけるわけではないが、それでも被写体を少しでも大きく写したいときには心強い。ちなみにAML-1装着時は、実測値で約20cmまでの撮影が可能となる。

 実写した限りにおいて、1群2枚に光学系を持つAML-1の描写は文句ないものである。つくりの悪いクローズアップレンズで見受けられる画面周辺部の像の流れのようなものはほとんどなく、色のにじみも皆無。解像感の低下も撮影した画像からはまったく感じられない。DP2に搭載される焦点距離24.2mmレンズの高い描写特性を損なうことがなく、安心して使うことができる。

 参考までにDP1にも装着して試してみたが、同様の結果が得られ、DP2ユーザーのみならず全てのDPユーザーにオススメできるアイテムといえる。


クローズアップレンズ「AML-1」に付属するケースは、価格に見合わないほど立派なつくりだ光学系は1群2枚。安価なクローズアップレンズとは異なり、見た目以上にズシリと手にくる重さだ
クローズアップレンズ「AML-1」の装着はフードアダプター「HA-21」を介して行なうDP1系にもクローズアップレンズは使用可能。装着はフードアダプター「HA-11」を使用する

  • 実写サンプルのサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 実写サンプルはRAWで撮影後、Sigma Photo Pro 4.0.0で現像しています。
AML-1非装着
DP2 / 約1.6MB / 1,760×2,640 / 1/250秒 / F7.1 / -0.3EV / ISO100 / 24.2mm
AML-1装着
DP2 / 約1.3MB / 1,760×2,640 / 1/320秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / 24.2mm
AML-1非装着
DP2 / 約1.1MB / 2,640×1,760 / 1/100秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 24.2mm
AML-1装着
DP2 / 約1013K / 2,640×1,760 / 1/100秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 24.2mm
AML-1非装着
DP2 / 約1.8MB / 2,640×1,760 / 1/30秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO400 / 24.2mm
AML-1装着
DP2 / 約1.4MB / 2,640×1,760 / 1/25秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / 24.2mm
AML-1非装着
DP2 / 約1.2MB / 2,640×1,760 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 24.2mm
AML-1装着
DP2 / 約865K / 2,640×1,760 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 24.2mm

 ※この列のみDP1で撮影

DP1 / 約1.6MB / 1,760×2,640 / 1/80秒 / F5 / -0.3EV / ISO100 / 16.6mmDP1 / 約1.3MB / 1,760×2,640 / 1/50秒 / F5 / -0.3EV / ISO100 / 16.6mm

 さて、先般DP2のファームウェアアップデートが公開された。バージョンは1.04。DP2sが発売された現在、恐らくは最後となるアップデートだろう。内容はAFスピードの高速化である。DP2からDP2sへの主だった進化がAFスピードの高速化だったので、このファームウェアアップデートで同等のスピードが達成できれれば、DP2ユーザーにとってこれほど嬉しいことはない。

新しいファームウェアは「Ver.1.04」。AFの高速化が主な内容だ

 早速、最新ファームウェアでのAFスピードを計測してみた。計測方法は先般掲載したDP2sのレビューと同じだ。拙い方法とはなるが、あらかじめピントを無限遠に合わせておき、50cmほど離れた被写体をターゲットに、シャッターボタンの半押し開始からフォーカスエリアが白色から緑色に変わった直後までのタイムを10回計測。その平均値としている。この方法では、DP2sの0.71秒に対し旧ファームウェアのDP2は1.47秒と倍の時間の結果となっている。

 注目の結果は0.84秒。これまでを大きく凌ぎ、DP2sに迫る速さだ。使っていても、違いは明確に実感でき、スナップ程度の撮影であればピント合わせにストレスを感じることはほとんどない。欲をいえば、さらに速いとうれしいが、DP2にとって構造的にこれが精一杯の結果といえるだろう。

AF速度の計測結果
機種名合焦までの速度(平均値)
DP2s0.71秒
DP2(新ファームウェア)0.84秒
DP2(旧ファームウェア)1.47秒

 ついでながら記録メディアへの書き込み時間も計測してみた。こちらも先のレビューと同じく、AF合焦後シャッターボタンを全押しした瞬間から、データ(RAWフォーマット)を読み込んでいる状態を示すLEDランプの点滅が終わった直後までとしている。こちらも10回計測し、その平均値を出した、使用した記録メディア(サンディスクExtreme III 4GB)もまったく同じものである。

 結果は6.34秒。これは、ほぼ同じ条件で計測したファームウェアアップデート前のDP2の7.32秒より1秒ほど速い。さらに驚くべきはDP2sの6.67秒よりもわずかながら速かったことだ。あらためて述べるまでもないが、DPシリーズの一番のウィークポイントは、この書き込み速度の遅さ。AFの測距速度も含め、少しでもレスポンスよく撮影を行ないたいDP2ユーザーは、ファームウェアをアップデートしない手はないといえる。

記録速度の計測結果
機種名書き込み終了までの速度(平均値)
DP2s6.67秒
DP2(新ファームウェア)6.34秒
DP2(旧ファームウェア)7.32秒

 数回しか掲載できなかったが、DP2の長期リアルタイムレポートは今回で終了となる。筆者的にはまだまだ使い倒すまでに至っていないが、個人的な撮影旅行やちょっとした外出時には持ち歩くことが多く、愛着あるカメラのひとつとなっている。DP2sが先般リリースされたが、絵づくりなどは変わっていないため、まだまだこのカメラとの付き合いが続きそうだ。


DP2 / 約813KB / 1,760×2,640 / 1/125秒 / F5 / +0.7EV / ISO100 / 24.2mmDP2 / 約3.7MB / 2,640×1,760 / 1/80秒 / F4 / +0.7EV / ISO100 / 24.2mm
DP2 / 約1.4MB / 2,640×1,760 / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO50 / 24.2mmDP2 / 約2.3MB / 1,760×2,640 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO50 / 24.2mm
DP2 / 約930K / 2,640×1,760 / 1/80秒 / F2.8 / -1EV / ISO100 / 24.2mmDP2 / 約2.1MB / 1,760×2,640 / 1/100秒 / F4 / +0.7EV / ISO100 / 24.2mm
DP2 / 約1.7MB / 1,760×2,640 / 1/100秒 / F4 / -0.3EV / ISO50 / 24.2mmDP2 / 約2.6MB / 2,640×1,760 / 1/80秒 / F4 / -0.3EV / ISO100 / 24.2mm
DP2 / 約727KB / 1,760×2,640 / 1/400秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO50 / 24.2mmDP2 / 約1.5MB / 1,760×2,640 / 1/200秒 / F2.8 / -1EV / ISO50 / 24.2mm


大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2010/4/16 00:00