EOS Kiss X4【第1回】

久々のキヤノン機は高感度画質がすごかった

Reported by 北村智史


今回ゲットしたのはEOS Kiss X4+EF-S 18-55mm F3.5-5.6 ISのキットと予備の電池と縦位置グリップ。EF-S 60mm F2.8 Macro USMは前から持ってたもの

 初めて買ったデジタル一眼レフカメラはキヤノン「EOS D60」だったのだが、その後ニコンに鞍替えして、オリンパスとの2マウント体制にしていたので、実は久々のキヤノン機である。

 FXフォーマット(35mmフルサイズ)の「D700」とフォーサーズの「E-620」というのはメリハリが利いていて悪くないのだけれど、やっぱりあいだにもう1ステップあったほうが便利がよさそうだ。で、ほどのいいAPS-Cサイズ機を、と思いはじめていたところに登場したのが「EOS Kiss X4」だったのだ。

 有効1,800万画素のCMOSセンサーは「EOS 7D」に登載されているものと同じではないが、画質面での差はほとんどないと思う。映像エンジンもシングル仕様ながらDIGIC 4だから、スピードの部分以外は負けていないはず。それに、動画機能も強化されているし、液晶モニターも比率が新しい。AFや連写のパフォーマンス、ファインダー性能などは足もとにも及ばないが、ハデな動きものを撮るわけでもないから平気だろう。

 ただ、キヤノンからしばらく離れていたこともあって、レンズ資産がほとんどない。カミサン用にと買った「EF-S 60mm F2.8 Macro USM」(当の本人はほとんど触りもしない)と、ちょい難ありの「EF 300mm F4 L IS USM」(要修理なので、手放してなかった)があるだけ。こちらのほうもおいおい強化をはかっていきたいから初期投資は抑えめに、というわけで、選んだのは「EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS」付きのレンズキット。それに縦位置グリップのバッテリーグリップ「BG-E8」とバッテリーパック「LP-E8」で、締めて12万590円である。

 さて、いちばんの期待は高感度の画質である。海外のサイトで見たサンプル画像を見たかぎりは素晴らしいのひと言で、ISO1600とかISO3200が信じられないくらいきれい。実際、デジカメWatchで掲載した新製品レビュー用に自分で撮った画像を見た感想も、キヤノンのノイズ処理技術はすげえなぁ、である。

 ちょっと気になったのが、ISO3200のディテール再現の悪さ。ISO1600はいいのに、ISO3200から急にユルくなる。決定的に駄目なわけではないが、ISO1600がいいだけに余計いまいちに感じてしまう。こういうのはノイズ処理のかかり具合が急に上がるからだと思うが、ノイズ処理のレベルを下げたときにノイズの出具合がどうなるかが要チェックのポイントだ。


「高感度撮影時のノイズ低減」の画面。初期設定は「標準」だが、撮り比べてみると「弱め」のほうがディテール再現がよかった

 カスタム機能の「高感度撮影時のノイズ低減」の設定を変えて、ISO100からISO12800まで撮り比べてみた。同時記録のRAW画像を、「Digital Photo Professional」でノイズ低減処理なし状態で現像したのを見比べてみると、ISO3200からノイズがぐっと目立ってくる感じがする。で、そのノイズを抑えるために、ノイズ処理が強めにはたらくようになっているのだろう。

「高感度撮影時のノイズ低減」を「しない」で撮ったJPEG画像を見てみると、ISO3200ではディテール再現が若干低下しているので、わずかながらノイズ処理がはたらくようになっているのかもしれない。ディテール再現を重視するなら「しない」がいいが、カラーノイズが少し目障りにも感じるので、「弱め」にしておくことにする。この感じだと、条件次第ではISO6400でもまあまあ使えるかなぁ、といった印象である。

 注意しないといけないのが、プログラムAEで感度オートのとき。感度が自動で上がる暗さになると、絞りは間違いなく開放になっている。で、少し絞りたいなぁ、と電子ダイヤルをコトコトと回す。プログラムシフトがはたらいて、絞りの数字が増えていく。それと同時にシャッター速度も遅くなっていく。


「ISOオート」の画面。感度をオートにしているときの上限の感度を決められるようになった。普通は初期設定の「上限3200」でよさそう

 ……それってまずくない? 手ブレ限界(35mmフィルムカメラ換算の焦点距離分の1秒)で撮っているときに絞り込む方向でプログラムシフトすると、シャッター速度が手ブレ限界より遅くなってしまうのだ。手ブレを防ぎたいから感度オートにしているのに、プログラムシフトしたとたんに感度オートが働かず、低速シャッターになるのは問題だと思うのですよ。

 もちろん、CA(クリエイティブオート)という、若葉マーク向けモードも用意されているし、そちらでは「背景:ぼかす/くっきり」の「くっきり」側にシフトするとちゃんと感度が上がってくれる。まあ、まず使わないだろうから関係ないですけどね。

 さて、今回のは「CP+2010」を見に行ったついでに、会場となっているパシフィコ横浜の近くをぶらぶらしながら撮った写真である。「ISOオート」は初期設定の「上限3200」のまま、「高感度撮影時のノイズ低減」は「弱め」にしてある(比較作例は除く)。夕方や屋内を含めて264コマ撮ったうち、明らかな手ブレ写真はほんの数コマしかなかった。感度オート(とEF-S 18-55mmのIS)のおかげである。


実写サンプル


※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウインドウで表示します。

●高感度撮影時のノイズ低減:しない

※共通設定:EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / F8 / WB:太陽光 / 60mm

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400ISO12800
●高感度撮影時のノイズ低減:弱め

※共通設定:EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / F8 / WB:太陽光 / 60mm

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400ISO12800
●高感度撮影時のノイズ低減:標準

※共通設定:EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / F8 / WB:太陽光 / 60mm

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400ISO12800
●高感度撮影時のノイズ低減:強め

※共通設定:EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / F8 / WB:太陽光 / 60mm

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400ISO12800
●そのほか
パシフィコ横浜のそばの臨海パークにあったオブジェ。フルーツ・ツリーという名前らしい。野菜も混じってたと思うけど
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/60秒 / F6.3 / 0EV / ISO320 / WB:オート / 35mm
窓ガラスに映った雲をねらってみた。キットなら実質1万円で手に入るEF-S18-55mmだが、F8くらいに絞るとけっこうシャープだ
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/160秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 43mm
デジタル化以降の評価測光はかなり高精度になったと感じているが、新型センサーのおかげでさらによくなったのかもしれない
EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 60mm
よこはまコスモワールドに渡る橋の下の通路。壁に描かれているオレンジ色の矢印が何を意味しているかは謎である
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/60秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 34mm
このレンズは35mmから50mmあたりの焦点距離がいちばん歪曲収差が少なくなる。というのを知っておくとちょっと便利
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/60秒 / F8 / -0.3EV / ISO160 / WB:太陽光 / 49mm
こういうシーンではそれなりに大きくプラス補正する必要があるわけで、だから露出の精度はあまり変わっていないのかもしれない
EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / 1/100秒 / F8 / +1.3EV / ISO100 / WB:オート / 60mm
日本丸を係留している鎖がつながれている短い鉄の柱はボラードというのであるらしい。気になってつい調べてしまった
EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / 1/100秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 60mm
日本丸メモリアルパークにあるタワーの階段。かなり暗いのでISO3200。なのに、十分見られる画質だ
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/20秒 / F8 / -1EV / ISO3200 / WB:オート / 18mm
展望フロアの壁にあった火災報知器。かなり年季入ってます。ピクセル等倍で見ると微妙にアマいけど、許せる範囲ということにしておく
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/50秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 37mm
画面右側のボートに用があるときは、上を歩いて行くんだろうなぁ。途中で転んだりしたら悲惨だなぁ、とか思いながら撮ったカット
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/400秒 / F8 / -1.7EV / ISO100 / WB:オート / 55mm
2つのタワーをつないでいる渡り廊下。景色を楽しむにはいい場所なのだけれど、人の気配はまったくなかったりする
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/40秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 18mm
渡った側のタワーの内部に飾られていた魚のオブジェ。薄暗い上に不思議な形なものだから、深海魚っぽく見える
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/30秒 / F8 / -0.7EV / ISO1000 / WB:オート / 18mm
ランドマークタワーのふもとのドックヤードガーデン。昭和48年まで使われていた石造りドックヤードを復元したものだそうな
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/60秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:太陽光 / 18mm
曇っているときはものすごく地味な場所だが、隣接するビルの窓からの反射光のおかげで柔らかな陰影に包まれていた
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/50秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 18mm
CP+2010からの帰りに撮ったヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルの窓に映ったパシフィコ横浜
EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / 1/125秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:太陽光 / 60mm
みなとみらい駅に向かう歩道橋のケーブルの付け根部分とライトアップ用の照明。点灯したらめちゃまぶしそう
EOS Kiss X4 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 5,184×3,456 / 1/60秒 / F8 / +0.3EV / ISO500 / WB:太陽光 / 46mm
このカットだけプログラムAE。プログラムシフトしたらシャッター速度が1/25秒になってしまった。おっとぉ、って感じである
EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / 1/25秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:太陽光 / 60mm
ハードロックカフェの看板ギター。ネオンサインって、一部分だけアップにすると、豪快というかワイルドなつくりだったりする
EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / 1/100秒 / F6.3 / -0.7EV / ISO320 / WB:太陽光 / 60mm
感度オートだと無駄に感度が上がりすぎて画質が悪くなる心配が少ないのがいいところ。EOS Kiss X4だと感度が上がっても平気だけど
EOS Kiss X4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 5,184×3,456 / 1/100秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO500 / WB:太陽光 / 60mm


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2010/3/18 17:37