レンズの教科書
状況&目的別・レンズワークの基本:広角
親近感や親密感を表現する
(2015/8/31 11:00)
被写体に思いっきり近づかないと画面いっぱいに大きく写すことができない広角レンズですが、望遠レンズによる写真とは違った独特の迫力感や臨場感が表現できます。グッと近づいて撮影できるということは、被写体と近しい関係であることの証しでもあるため、それにより写真を見る人に親近感や親密感を伝えることができます。
1.被写体に積極的に近づこう
2.画面に入れる背景も、臨場感を伝えるための大切な要素
3.いろいろな角度からアプローチしよう
被写体と撮影者の距離感は、写真を見た人に画面からストレートに伝わるものです。たとえば望遠レンズで遠くから切り取った写真は、距離が離れていることはもちろん、被写体との関係性もそれほど近くないように見えます。カメラの存在がわからないように撮影したいときなどはそのようなアプローチの方法も有効ですが、親近感や親密感を表現したい場合には、広角レンズで被写体に迫って撮影するといいでしょう。
被写体との距離を縮めて、広角レンズならではの遠近感や臨場感を表現に生かしましょう。積極的に近づくことができなければ、広角レンズだと画面に対して小さくしか写らないため、主役や主題がわかりづらくなるほか、散漫な印象の画面構成になりがちです。背景の様子など臨場感も大切なので、ただ被写体に接近するだけでなく、ポジションやアングル、レベルなども意識しながら画づくりを行うといいでしょう。
- 広角レンズ(こうかくれんず):28~35mmの焦点距離を持つレンズです。その名のとおり広い範囲をとらえることができますが、画面の端に少々歪みが生じやすくなります。
- 遠近感(えんきんかん):画面の中で近くのものを近くに、遠くにあるものを遠くに感じることです。レンズの焦点距離が短く(広角)なるほど強く、焦点距離が長く(望遠)なるほど弱くなる傾向があります。
- アングル:カメラを被写体に向けるときの角度や画面への被写体の入れ方のことです。
1.被写体に積極的に近づこう
被写体に思いっきり迫って、広角レンズの広い画角を効果的に生かしましょう。遠近感が強調されて、被写体との親近感や親密感が伝わりやすくなります。周りの様子も一緒に写し込めるため、臨場感のある表現になります。
2.画面に入れる背景も大切な要素
画面に入れる割合、写し込む要素、被写体と重なり具合など、臨場感を伝えるために大切な背景もしっかりと意識しましょう。目障りなものは、たとえぼけても目障りに感じやすいので、効果的な入れ方などの工夫も必要です。
3.いろいろな角度からアプローチしよう
被写体に正対すると大人しい印象の写真になりがちです。撮影するポジション、アングル、レベルなどを工夫することで画面に動きが出て、被写体がより魅力的に感じられるような仕上がりになります。
この連載は、MdN刊「レンズの教科書 撮る楽しさを味わうための写真の手引き」(岡嶋和幸 著)から抜粋・再構成しています。
本連載で紹介しているレンズ焦点域や撮影シーンごとのレンズワーク解説だけでなく、レンズ本体や表現効果の基礎知識、レンズのポテンシャルを引き出すワンランク上の使いこなしなど、全6章で構成されています。
10月7日には著者の岡嶋和幸氏を迎えた出版記念セミナーを開催。2部構成のセミナーに加え、質疑応答と懇親会が行われます。