交換レンズレビュー

EF50mm F1.8 STM

あの人気レンズがリニューアルして登場

今回はEOS 5D Mark IIIで試用した。発売は5月下旬。価格は税込2万1,060円

軽量でリーズナブルな価格ながら写りのよいことで知られる「EF50mm F1.8 II」が、この度ニューアルされた。

新しい「EF50mm F1.8 STM」は、5群6枚のレンズ構成自体はこれまでと同じとするものの、そのほかの部分は大きく手が入り時代に即したものとなった。先代EF50mm F1.8 IIは25年もの長きに渡り製造され高い人気を誇ったレンズであるだけに、EF50mm F1.8 STMの描写や操作感など期待するEOSユーザーも少なくないことだろう。

EF50mm F1.8シリーズとしては3代目となる本レンズの実力をチェックしてみたい。

デザインと操作性

鏡筒のデザインテイストは、「EF40mm F2.8 STM」など最近登場した単焦点レンズに準じたものである。プラスチッキーでチープな印象であった先代にくらべ質感はぐっと増す。

左からEF50mm F1.8、EF50mm F1.8 II(日本製)、EF50mm F1.8 STM。撮影距離表示や被写界深度目盛りのほか、赤外指標(赤外線マーク、赤印などとも呼ばれる)まである初代のつくりのよさは、残念ながら今回のEF50mm F1.8 STMでも及ばない

今回EOS 5D Mark IIIで撮影を行っているが、ボディのデザインとも合っているように思える。フォーカスリングは先代にくらべ幅の広いものとしたうえにラバーが巻かれ、ルックスのみならず操作感も向上。ただし、撮影距離表示や被写界深度目盛りは先代同様無く、そのあたりについては初代EF50mm F1.8に残念ながら及ばない。

フォーカスリングは先代モデルより幅が広く、新たにラバーが巻かれる。何よりAF駆動時に回転することがない。フィルター径は49mm

鏡筒のサイズは、先代が68.2mm(最大径)×41mm(全長)であるのに対し、本モデルは69.2mm×39.3mm。重量は130gから160gとなっている。鏡筒の大きさやレンズ構成などほとんど変わらないのに、質量が30gアップした大きな要因がマウントのマテリアルだ。

プラスチック製であった先代とは異なり、初代と同じ金属製としているからである。精度的にはプラスチック製でも問題ないと聞くが、やはり金属製となったことは素直に喜ばしく思える。

金属製となったマウント。これだけでも嬉しく思うEOSユーザーは少なくないことだろう

鏡筒の先端にはフード用のバヨネットマウントを装備する。アダプターリングを介してフードを装着しなければならなかった先代とは異なり、専用設計のフード(ES-68)をダイレクトに装着できるようになったことも特筆すべき部分である。ただし、このフードは残念ながら別売。今回のトライアルに際しても、レンズ本体のみしか手もとに届かなかったため、作例撮影は全てフードなしで行っている。

製造国はマレーシア。ちなみに初代EF50mm F1.8と2代目EF50mm F1.8 IIの初期モデルは日本製

機構的な進化としてはAF駆動があるだろう。DCモーターにくらべ静寂性の高いギアタイプのSTM(ステッピングモーター)を採用。AF作動中に耳をすますとわずかにモーター音が聞こえてくるが、耳障りに思うことはない。動画撮影でも内蔵マイクがモーターの音を拾ってしまうこともなさそうである。

厳密な比較をしたわけではないが、合焦するまでも体感的にこれまでよりも速くスムースに感じられる。なお、手ブレ補正機構の搭載については、これまでと同様非搭載だ。

最短撮影距離は先代の45cmから35cmに。それにより最大撮影倍率も0.15倍から0.21倍となり、クローズアップ撮影もより得意とする。もう一歩被写体に寄りたいと思ったときなど重宝するはずだ。

最短撮影距離はこれまでの45cmから35cmとなった。クローズアップ撮影の際は便利に思えるはずだ

遠景の描写は?

絞り開放ではコントラストは十分であるものの、解像感は全体的に緩く感じられる。ただしポートレートやテーブルフォトなどではこの緩さを活かせば、雰囲気ある結果が得られることもあるだろう。

絞りF2.8を越すと画面中央部の解像感はぐっと増す。ただし、一部のミラーレス用交換レンズで見受けられるようなキレキレのシャープネスを期待するとちょっとガッカリするかもしれない。あくまでも不足を感じない程度のキレといってよいだろう。

画面周辺部の描写に関しては絞りF4あたりまで甘さが残るものの、クラスを考えれば納得できるものである。周辺減光はどちらかといえば強め。ただし、絞りF4でほぼ解消する。また、回折現象による解像感の低下はF11あたりからはじまる。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:EOS 5D Mark III / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm
F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:EOS 5D Mark III / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm
F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

絞り羽根は先代の5枚から7枚にアップ。さらに円形絞りを採用し、現代的なスペックとする。そのボケ味はクセないナチュラルなものである。特に合焦した部分からのボケの滑らかさや、デフォーカスとなった被写体同士が溶け合うような柔らかさは先代モデル以上といってよい。

また、後ボケのみならず、前ボケも強いクセなどなく、球面収差の発生をバランスよくコントロールしているように思える。画角的にボケを積極的に応用した撮影を行うことが少なくないと思われるが、撮影者のそのような期待に十分応えられるボケ味といってよいだろう。

絞り開放・最短撮影距離(約35cm)で撮影。EOS 5D Mark III / 1/2,000秒 / F1.8 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm
絞り開放・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/4,000秒 / F1.8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm
絞りF2.8・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/1,250秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm
絞りF4・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/640秒 / F4 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

逆光耐性は?

画面の中に太陽が入った場合も、画面のすぐ外に太陽がある場合も、作例を見るかぎり派手なゴースト・フレアの発生は見受けられない。

今回のリニューアルでは、レンズ構成自体には変化はないもののデジタルの特性に最適化されたコーティングが新たに施される。

さらに、不要な入射光をカットするフレアカッターを採用するなど徹底した内面反射防止策を採用したことが功を奏しているようだ。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/8,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/3,200秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

作品

35cmとなった最短撮影距離によって、これまで以上に被写体を大きく画面に引き寄せることが可能。合焦面からのボケの変化は滑らかに感じられる。

EOS 5D Mark III / 1/1,000秒 / F2 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

こちらは開放から1段と少し絞ったF2.8で撮影。7枚円形絞りの採用で、玉ボケはその名のとおり角のない丸いものとなる。

EOS 5D Mark III / 1/1,600秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

F5.6まで絞るとぐっと解像感およびコントラストが増し、開放では甘さのある画面四隅も含め、キリッとしまった描写が得られる。

EOS 5D Mark III / 1/400秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

僅かに絞っているが、非点収差の発生などなく素直で自然なボケ味。短くなった最短撮影距離によって、このような撮影でもぐっと被写体に寄れる。

EOS 5D Mark III / 1/100秒 / F3.2 / 0EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 50mm

最短撮影距離近くで撮影。ピントの合った部分のキレはよい。背景を考えると写真としてはもう少し絞り込んだほうがよかったように思える。

EOS 5D Mark III / 1/3,200秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

前ボケもナチュラルで不自然さのようなものは感じられない。絞りはF4とするがこの作例を見るかぎり、周辺減光は目立たない。ピントの合った部分のキレも上々だ。

EOS 5D Mark III / 1/1,600秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

全体的にキレがよく立体感のある描写が得られた。絞りはF5.6。画面中央部には及ばないものの画面周辺部の描写も良好な結果といってよいだろう。

EOS 5D Mark III / 1/1,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

決してキレキレのレンズではないが、クラスを考慮すれば不足のないもの。左端の握り棒を見ても分かるとおり、弱い樽型のディストーションが現れる。

EOS 5D Mark III / 1/2,000秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

絞りはF2。大口径ズームレンズよりも明るい絞り値により、ボケを活かした撮影もより多彩に楽しめる。

EOS 5D Mark III / 1/6,400秒 / F2 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

単焦点レンズらしいコントラストの高さとキレのよさで、被写体の質感を見事に再現。リアル感のある繊細な描写が得られる。

EOS 5D Mark III / 1/1,000秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

まとめ

エントリーユーザーから一家言あるアドバンスドマチュア、果てはプロからも愛されたEF50mm F1.8 IIの後継に相応しいレンズである。

メーカー希望小売り価格は税込2万1,060円と先代の倍ほどとなってしまったが、デジタルカメラに最適化されたコーティングや質感の高まった外装、滑らかなAFのSTMなどその仕上がりから万人が納得することだろう。

ちなみに初代EF50mm F1.8、EF50mm F1.8 IIと愛用し続けている筆者も、今回のレビューの結果も踏まえ、もちろん手に入れたいと考えている。

EOSフルサイズ機なら使い勝手のよい標準レンズとして、EOS APS-C機なら被写体にぐっと迫まることのできる中望遠レンズとして、これまで以上に活躍してくれそうに思えてならない。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。