交換レンズレビュー

AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED

高画質かつ軽量な広角単焦点レンズ

今回はD810で試用した。発売は2014年9月。実勢価格は税込9万7,170円

「AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED」は、ニコンFXフォーマット(35mmフルサイズ相当)対応の超広角単焦点レンズである。

ここ数年でニコンは、「AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G」をはじめとして、新たに軽量コンパクトで比較的価格を抑えたFXフォーマット対応Gタイプのレンズを断続的に投入している。本レンズはその“開放F1.8シリーズ”の第6弾にあたるレンズだ。

ニコンでは焦点距離20mmの単焦点レンズとして、すでに「Ai AF Nikkor 20mm f/2.8D」をラインナップしているが、こちらは開放F値が本レンズより約1段半暗く、フィルム時代から基本的に旧設計のまま更新されていないAiタイプのレンズである。サイズも価格も仕様も異なるとは言え、ズームレンズが当たり前の時代に、こうして新しい設計の単焦点レンズが加わるということは誠に喜ばしい。

同社のD810など、3,600万画素といった高画素のフルサイズデジタル一眼レフカメラが珍しいものでなくなりつつある今、実用性の高い最新設計レンズがどこまで実力を発揮できるのか? 大いに興味のあるところである。

デザインと操作性

手にもって気づくのがその軽さである。質量はわずかに355gで、重量級のD810に装着しても、あまり重さを意識せずにすむ。一方D610やD750などとの組み合わせでは、レンズとボディとのバランスのよさを実感することができるだろう。

焦点距離20mm、開放F1.8というスペックの割りに大きさはよく抑えられている。重さは355gと大変軽量だ

レンズマウント基準面から先端までの長さは80.5mm、最大径は約82.5mm、フィルター径は77mmとなっている。径が太めなのでやや大きく感じるかもしれないが、開放F1.8の大口径であることを考えればむしろコンパクトに抑えた仕上がりだといえる。

D810に装着したイメージ。D610やD750との組み合わせでもバランスはよく操作性はよい

AF-Sの名称の通り、AF機構は超音波モーターを採用しており、速く、正確で、静かだ。MF時のフォーカスリングには適度なトルクがあってスムースに動かすことができるため、実用上の操作性は上々。大口径レンズの浅い被写界深度であってもストレスなく目標にピントを合わせることが可能だ。

フォーカスリングは幅が広くトルクも適度だ。MF時でもスムースにピント合わせができる。側面にはAF/MFの切り替えスイッチがある

ピント調整時に、レンズ構成のうち中間部のレンズ群を移動するインナーフォーカス方式を採用しているため、フィルター枠が回転することはない。PLフィルターなどを装着してもフォーカシングによって効果が変わるということはなく、これも操作性の利点のひとつになっている。

優れた反射防止効果で評価の高いナノクリスタルコートが採用されている
フィルター径は77mm。インナーフォーカス採用によりフィルター枠が回転することはない
マウント部は金属製。しっかりとしたレンズの造りで、堅牢性や耐久性に安心感がある
バヨネット式の花形レンズフードHB-72が付属する

遠景の描写は?

今回はレンズ本来の性能を見るため、ボディ内で可能なレンズ補正に関しては、周辺光量とディストーション(歪曲収差)の補正機能をOFFにしている。また、倍率色収差に関しては、現行のニコンデジタル一眼レフは自動的に補正が適用されるため、撮影結果はそれらのことを考慮して見ていただきたい。

遠景描写について総括すれば、本レンズは画面全体での解像感が非常に高く、コントラスト性能、シャープネスとも、大変優秀な描写性能をもっている。特に、超広角レンズで問題となりがちな、画面四隅での像の流れや明らかな解像不足をほとんど感じさせないのは特筆すべき点である。

ただ、開放のF1.8における描写の印象はさすがに全体に甘さを感じ、また、周辺光量の不足も比較的大きく目立ってしまう。しかし、2段ほど絞り込んだときの画質向上は目覚しく、F4まで絞れば周辺光量落ちもほぼ解消され、画面中央から中間にかけて際立った解像感を見て取ることができる。

さらに、F5.6からF8に絞ったときに発揮される画面全体での安定した鮮鋭性は素晴らしく、最新の高画素デジタルカメラにも完全対応する高い描写性能を実感することができるだろう。

色分離作用を抑えるEDレンズを採用しており、実写では倍率色収差が原因となる色ズレはまったく見られなかった。ボディ内での画像処理による補正効果もあると思われるが、それを差し引いても見事な結果と言えよう。

絞り開放におけるわずかな描写の甘さこそあるが、フルサイズ対応の大口径超広角レンズであることを考えれば、さすがはニコンが放つ最新設計の単焦点レンズだと納得するところである。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

※共通設定:D810 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE / 20mm

中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

本レンズの最短撮影距離は0.2m。被写体にぐっと近づく思い切った近接撮影ができ、FXフォーマットであることと、開放F1.8の明るさを利用すれば、被写界深度の深い超広角レンズであっても相当に大きなボケ表現が可能だ。

近接撮影時には、溶けるように柔らかく美しいボケを堪能することができ、この場合、前述の開放時における描写の甘さは、むしろ作画の効果に対してプラスに働いていると言ってよいだろう。

被写体との距離を離した場合(作例では被写体までの距離約1m)でも、超広角らしからぬ大きなボケが得られ、二線ボケなどの発生で背景が煩くなるようなことはほとんどない。2〜3段ほど絞るにつれてボケは小さくなり、徐々に背景の形がハッキリしてくるのであるが、その場合でもボケ味は大変に素直で好ましく、ピントを合わせた被写体の邪魔をすることはない。

絞り開放・最短撮影距離(約20cm)で撮影。D810 / 1/160秒 / F1.8 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm
絞り開放・距離数mで撮影。D810 / 1/250秒 / F1.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm
絞りF4・距離数mで撮影。D810 / 1/50秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。D810 / 1/25秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm

逆光耐性は?

画角が広い超広角レンズは、画面内に太陽光が直接入る機会が多いが、ナノクリスタルコートのおかげもあってフレアやゴーストの発生は良好に抑えられており、画面内におけるコントラストの低下も最小限にとどめられていた。

作例をよくよく確認すれば、小さなゴーストの発生と小範囲のフレアが認められるものの、このレベルであれば同クラス比で考えても極めて優れた逆光耐性であるといって問題はない。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。D810 / 1/250秒 / F8 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。D810 / 1/200秒 / F8 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm

作品

杭に登って遊んでいた猫を撮影した。猫を大きく写しながら、背景も広く画面に入れることができるのが超広角レンズのいいところ。AFが静かで速いので、猫に近づいての撮影でも安心だ。

D810 / 1/125秒 / F4 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 20mm

F5.6まで絞って撮影した。この近さで撮影しても四隅が流れるようなことはなく、よく解像している。大変優れた描写性能の超広角レンズである。

D810 / 1/60秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm

夕陽の逆光に浮かぶ噴水を撮影。絞りF2では周辺光量落ちがやや顕著であるが、それをもち味と考えれば作画に生かすこともできる。1/2,500秒の高速シャッターで水の飛沫まで詳細に写った。

D810 / 1/2,500秒 / F2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm

花の中にカメラを入れて最短撮影距離で撮影した。ピントを合わせた中心の花から、周辺を大きく柔らかくぼかす、本レンズならではのワイドマクロ的表現。

D810 / 1/125秒 / F1.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm

絞りを開放にしてイルミネーションを撮影した。コマ収差や非点収差などもよく補正されており安定した高画質を実感できる。

D810 / 1/100秒 / F1.8 / +1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 20mm

まとめ

広大な景色をひとつの画面におさめたり、強いパースペクティブで被写体の遠近感を誇張したり、と独特な表現が可能な超広角レンズであるが、明確な意思をもって被写体に臨まねば使いこなしが難しいレンズでもある。

特に、近年は超広角域を含めたズームレンズの性能向上も目覚しいため、画角が固定された単焦点超広角レンズは、よけいに使いどころが難しいと感じてしまうのではないだろうか。

しかし、本レンズはズームレンズに比べて開放値がF1.8と明るいので、広い画角であっても大きなボケを活かした表現が得意なのが特徴。また、絞りに応じて劇的に向上する描写性能にも単焦点レンズならではの素晴らしさがあり、風景や建築、天体などの撮影で持ち前の高画質を存分に発揮してくれることだろう。

355gという軽さは機動力において強い味方であり、標準レンズや標準ズームにプラスワンの交換レンズとして用意すれば、表現の幅を大きく広げてくれる一本となってくれるに違いない。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。