交換レンズ実写ギャラリー

NOKTON 10.5mm F0.95

大きなボケと緻密な描写が両立

今回はOLYMPUS OM-D E-M5 Mark IIで試用した。発売は6月12日。価格は税別14万8,000円

コシナのフォクトレンダー ノクトンシリーズは、F0.95にこだわったマイクロフォーサーズ用MF単焦点レンズだ。そのノクトンに、4種5本目となる「NOKTON 10.5mm F0.95」が加わった。

マイクロフォーサーズ機に装着すると、35mm判換算21mm相当となる超広角レンズだ。画角的に目新しさはないものの、F0.95という驚異的に明るい広角レンズは、唯一無二の存在感を放っている。早速、その特徴を見ていこう。

高級感のある作り

NOKTON 10.5mm F0.95は10群13枚で、うち2枚は非球面レンズを採用している。非球面レンズを2枚用いたのは、ノクトンシリーズでは初となる。やはり広角でF0.95という明るさを実現するのは、設計面でそれ相応の困難が伴うのだろう。

マイクロフォーサーズマウントのMF単焦点レンズだ。電子接点は搭載していない

鏡胴の作りはフォクトレンダーならではの高級感があり、ピントリングの滑らかな動きも心地良い。絞りリングはクリックの有無が選択可能だ。絞りリング直下のリングが切り替えスイッチを兼ねており、このリングを押し上げて回すと、クリック有りとクリック無しが切り替わる。

絞り羽根は10枚。フィルター径は72mmだ。非球面レンズを2枚採用し、ASPHERICALと赤い刻印が入る
絞りリング直下のリングを押し回すことで、絞りリングのクリックの有無を切り替えられる

カブセ式の花型レンズフードが付属しており、フィルターを装着した上からフードを取り付けられる。今回、ケンコーのプロND4ワイドを装着した上でフードを取り付けてみたが、ケラレることなく撮影できた。

カブセ式の花型フードは、側面のネジで固定する。フィルターの上からも装着可能だ

ノクトンシリーズの絵作りを踏襲

メーカーによると、本レンズはノクトンシリーズ共通の描写傾向を重視したという。一般に、広角レンズは硬い描写のものが多い。一方、既存のノクトンシリーズはボケ味の美しさや繊細さを意識した絵作りだ。

実写してみると、開放から十分なシャープさを保ちつつ、優しさを備えている。広角レンズとしては線が細く、コントラストも落ち着きがある。前後のボケはなだらかで、大口径ノクトンシリーズの一翼であることを実感できるだろう。焦点距離の異なるノクトンと一緒に使っても、共通の世界観で作品を揃えられそうだ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:E-M5 Mark II / +1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm(中央部で合焦)
F0.95
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:E-M5 Mark II / +1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm(右下で合焦)
F0.95
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

寄れるからボケが作れる

本レンズの最短撮影距離は17cmだ。広角レンズは寄れるものが多いとは言え、17cmはレンズフード先端に被写体が触れんばかりの近距離である。機動力に長ける反面、開放の近接撮影では周辺像は流れがちだ。

開放近接で被写体を周辺部に配置し、結像させるのは難しい。F4あたりまで絞ってようやく結像するエリアが広がってくる。かなりクセのある描写傾向だが、メーカーによると、画質よりも寄れることを優先して設計したと言う。

その理由を斟酌してみると、そもそも広角レンズは被写界深度が深く、大きなボケを稼ぐには近接撮影が欠かせない。大口径ノクトンシリーズにとって、大きなボケはいわば生命線だ。画質よりも最短17cmを優先したのは、NOKTON 10.5mm F0.95がノクトンたり得るための必然と言えるだろう。

絞り開放・近距離で撮影。E-M5 Mark II / 1/3,200秒 / F0.95 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm
絞り開放・近距離で撮影。E-M5 Mark II / 1/4,000秒 / F0.95 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm
絞り開放・中距離で撮影。E-M5 Mark II / 1/8,000秒 / F0.95 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm

逆光性能も上々

広角レンズは当然ながら画角が広く、屋外撮影では好むと好まざると、太陽が写り込む場面が少なくない。それだけに描写面では逆光耐性が大きなポイントとなる。

光源を入れ込んで開放で撮影したところ、ハイライトにパープルフリンジが発生するものの、フレアとゴーストは最小限に抑えられていた。光源を隠した逆光条件でも描写は上々だ。逆光シーンも気後れせずにチャレンジできるだろう。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。E-M5 Mark II / 1/8,000秒 / F0.95 / -1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。E-M5 Mark II / 1/8,000秒 / F2.8 / -1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm

作品

F5.6まで絞って無限遠撮影した。広角レンズのF5.6であることを思うと、多少柔らかい描写だろうか。

E-M5 Mark II / 1/500秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm

F4まで絞れば切れ味良く、歪曲もほぼ感じさせない。隅々までしっかりと解像している。

E-M5 Mark II / 1/320秒 / F4 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm

開放で奥の電車にピントを合わせる。こうした中間距離でボケを活かせるのがノクトンの強みだ。

E-M5 Mark II / 1/4,000秒 / F0.95 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm

周辺光量落ちが若干発生する。落ち込みはさほど目立たず、F2.8あたりでほぼ解消する。

E-M5 Mark II / 1/8,000秒 / F0.95 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm

ほぼ最短撮影距離での撮影だ。F4あたりまで絞り込むと、近接でもしっかりと結像する。

E-M5 Mark II / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm

薄暗いシーンでも、NOKTON 10.5mm F0.95ならISO感度を上げずに撮影できる。

E-M5 Mark II / 1/125秒 / F0.95 / -1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 10.5mm

まとめ

17.5mm、25mm、42.5mm、そして10.5mm。焦点距離の異なるレンズをすべてF0.95で揃え、さらに画質面でも共通のテイストを実現するのは、並大抵のことではない。

マイクロフォーサーズ機で大きなボケを実現し、なおかつ周辺まで緻密なシャープネスを見せるノクトンシリーズ。広角から中望遠までF0.95がラインアップされたことで、作品づくりの新たな可能性が見えてくるだろう。

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp