リコーGXRの「A12」ユニットを実用カスタマイズ――レンズキャップ編
Reported by糸崎公朗
スナップ用カメラとしてさらに進化させた、ぼくのリコーGXR A12ユニット。取り外し式レンズキャップのかわりに、レンズ先端に「自動開閉キャップLC-2」を固定するカスタマイズを施した。前々回で紹介した、倍率アップのカスタムを施した電子ビューファインダー「VF2」も装着している | レンズバリアは手動で開閉させるが、ワンタッチで作動するので非常に便利だ。このバリアの開閉動作は、A12ユニットに組み込まれたレンズフードの伸縮を利用しており、それがアイデアの要でもある |
■自動開閉キャップ「LC-2」をA12ユニットに装着
前回は、リコーGXRの「A12ユニット」(GR LENS A12 50mm F2.5 Macro)をマクロレンズとして活用するための「ディフューザー兼レンズキャップ」を紹介した。しかしA12ユニットのマクロモードは、かなりの高画質にもかかわらずピントがなかなか合わないという“豪華すぎるオマケ”機能なのだ。
結局ぼくは、A12ユニットをもっぱらスナップ用に使うようになったのだが、そうなると「ディフューザー兼レンズキャップ」もただデカイだけのレンズキャップになってしまった。そこで今回は、スナップ撮影に適したレンズキャップのカスタマイズを考えてみた。
というのも、A12ユニットに標準装備の取り外し式レンズキャップは、どうも煩わしくてスナップ向きとは思えないからだ。一方、GXRのS10ユニット(RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC)とP10ユニット(RICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VC)には、便利な共用オプションとして「自動開閉キャップLC-2」が用意されている。そこで、LC-2をなんとかA12ユニットに装着できないか、考えてみたのである。
アイデアとしては以前の記事『E-P1用ズームレンズにGX200用「自動開閉キャップ」を装着』と基本的に同じだ。リコーの自動開閉キャップは、レンズの沈胴を利用してレンズバリアの開閉を行なう。オリンパスの「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm
F3.5-5.6」は交換レンズとしては珍しい沈胴式ズームなので、それを利用して 自動開閉キャップを作動させることができた。
ではA12ユニットのレンズはどうなっているのかというと、もちろん沈胴式にはなっていない。ところがこのレンズは引き込み式フードを内蔵していて、この動きが自動開閉キャップの作動に利用できそうなのである。
LC-2は、「GX200」用の「自動開閉キャップLC-1」より若干改良され、プラスティックがより薄くなり軽量化されている。だから改造方法も若干異なり、いろいろと試行錯誤してしまった。まぁ、似たような製品の微妙な違いがオタクの楽しみでもあるので、両方の記事を見比べていただければと思う。
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今回もいろいろ試行錯誤を繰り返したのだが、まずはA12ユニットのレンズ先端に、40.5mmフィルターのガラスを抜いた枠を2個装着する | 次はLC-2用の改造パーツの製作。まずは1mm厚のABS板を30mm×5mmにカットしたパーツを2個作る |
右で作ったパーツを重ね合わせ、両面テープで貼り合わせる | 次に、下側のABS板を耐水紙ヤスリ(600番)で薄く削る。水を付け、力を均等に加えながら、回すように動かして削ると良いだろう |
耐水紙ヤスリで削ったABS板(下)の厚みは約0.7mm。本当は0.7mm厚のABS板を使いたかったが、売っていなかったのだ。上のABS板は治具なので、改造部品としては使わない | 0.7mm厚に削ったABS板から、10mm×5mmのパーツ3個を作る(奥)。さらに1mm厚のABS板を3mm×5mmにカットしたパーツも3つ作る(手前) |
2種類のパーツを接着し、このような形状のパーツを3個作る。接着にはABS専用接着剤を使う | 先に製作したパーツを、LC-2のバリア裏側のご覧の位置に、それぞれ接着する。LC-2の素材もABS樹脂なので、ABS樹脂用接着剤でしっかり固定できるのだ |
LC-2はこのままでは厚みがありすぎるので、薄く削ることにする。まず外周のパーティングラインに沿って、2mm幅にカットした方眼紙を両面テープで貼り付ける | 貼り付けた方眼紙をガイドにして、カッターナイフで筋を入れる |
カッターで入れた筋をガイドにして、LC-2を薄く削るとこのようになる。削り方は先ほどのABS板と同じ要領で、耐水紙ヤスリを使って行う | LC-2のバリア先端の裏側を、ご覧のようにカットする。この加工をしないと、バリアの一部が画面に写り込んでケラレてしまうのだ。これでLC-2本体の加工は終了である |
つぎはLC-2をレンズに取り付ける作業。まず裏側に幅広の両面テープを貼り、ご覧のように余分な部分をカットする | A12ユニットのレンズフードを少し引き出し、そこに改造したLC-2を押さえつけるようにして接着する |
さらに強度をアップさせるため、6mm幅にカットした製本テープを、フードとLC-2が接する外周部に巻き付ける。これで今回の切り貼り作業は終了である |
完成した「レンズバリア内蔵A12ユニット」。LC-2はまったく違和感なく似合っているが、実際に他人に見せても、これが改造品だと気づく人はほとんどいない | LC-2を手動で手前に引くと、バリアが開く。基部のレンズフードが引き込まれると共に、レンズ先端のフィルター枠がバリアを押し出す仕組みだ。レンズフードのようにもなって、実に良い感じだ |
前回制作した「レンズキャップ兼ディフューザー」も、ディフューザーとしてだけなら装着できる。この状態でも、最短撮影距離までストロボ光がケラレることはない |
●動画
バリア開閉の様子を動画で見ていただこう。手動とはいえ、取り外し式レンズキャップに比べると、はるかに素早く撮影スタンバイができる。
■ふたたび「反―反写真」
ぼくのいう「反―反写真」とは、バカボンのパパが「賛成の反対の賛成なのだ」というように結局はふつうの“写真”なのだが、前々回の記事で、A12ユニットでの作品として公開したところ、賛否両論あってなかなか興味深かった。
友人の写真家たちからは「普通のレベルで上手い写真にはなっている」というような評価をもらったのだが、以前は同じ彼らから「糸崎さんは、普通に写真を上手く撮るのは無理でしょう」などと言われてたので(笑)、学習の成果を認められてもらったことになる。
一方で、写真やアートに詳しくない友人からは「上手いとは思えないし、良さが分からない」というように言われてしまった。ぼくが「反ー反写真」で目指してるのは、いわゆるアートとしての写真なのだが、これが一般的にはわかりにくいものであることをあらためて感じた。
いや、実のところぼく自身にしても、アートとしての写真が何なのか、いまだによく理解できていないのだ。例えば、多くの写真家が作品として「路上スナップ」を撮っているが、誰にでも撮れるように思えてしまうそれらの写真が、なぜアートになり得るのかが分からない。
それを知るには写真をたくさん見たり、写真史や美術史を勉強する必要があるだろう。しかし写真を知るには自分でも撮ってみるというのも1つの方法である。それでA12ユニットの50mm相当の標準レンズで、身近で平凡な街並みを、構図を考えながら撮ってみることにしたのだ。そしてしばらく続けているうちに徐々に構図のバランス感覚が身に付き、撮ることの意味(コンセプト)も見えてきた。
ぼくはそもそも、平凡な日本の街並みを目的もなくただひたすら歩き回ることを、無上の喜びとしている。ぼくは現代人が思う「平凡」とは先入観にすぎないと考えている。つまり、どんなに平凡と思える風景も、人類の長い歴史から見れば「現代日本」というごく限られた地域、期間に出現した特殊で非凡な風景なのである。そう思うと、街並みの全てがこの上もなく貴重で素晴らしいものに思えてくる。ぼくはそのような「世界に対する祝福」としてシャッターを切っているのだ。
しかし以上のようなコンセプトは、実は自分の反写真的な作品である「フォトモ」や「ツギラマ」などと同じである。だからそれが「反ー反写真」のコンセプトとして妥当かどうか、正直まだ分からないでいる。
ともかく「分かっているようで分からない」のが写真であって、それについてあれこれ考えながら撮るのも、写真のおもしろさであることだけは、分かってきた気がする。ということで今回は、お盆で帰省した長野市で撮影した「反-反写真」を見ていただこうと思う。
※実写サンプルのサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウに800×600ピクセル前後で表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。(以下同)
2010/9/24 00:00