切り貼りデジカメ実験室

「ニコンFペーパークラフト」をデジカメ化する

Nikon1 V3を内蔵 連載史上最大の力作に!

一見すると、フィルム一眼レフの名機「ニコンF」なのだが、実は中身は最新のデジカメで、もちろん撮影可能である。外装はホンモノのニコンFではなく、ニコンダイレクト限定グッズの「ニコンFペーパークラフト」で、つまり素材は紙である。その紙のニコンFに、ホンモノのデジカメ「Nikon1 V3」を内蔵し、さらに電源スイッチやシャッターボタンを操作する機構も組み込んだ。これらのパーツ類も、今回は全て紙で製作した。レンズは「1 NIKKOR 18.5mm f/1.8」を装着し、ニコンFペーパークラフトのレンズNikkor 50mm F1.4と同様の画角で撮影できる。

模型のカメラに実物のデジカメを入れる究極の紙工作!?

「ニコンF」は言わずと知れたフィルム一眼レフの名機で、デジタルを含むFマウントシステムのルーツとなった。そのニコンFが、ペーパークラフトとなってよみがえり、グッズとしてニコンから発売されているのだ。「ニコンFペーパークラフト」(税込1,543円)だ。

このペーパークラフトは自分で組み立てるようになっており、完成すると実物大のニコンFになる。しかしこれはもちろん外形だけを似せた“模型”であって、写真を撮ることはできない。

しかし逆に言えばこれで写真が撮れたら面白い! と、ふと思い付いてしまったのである。

つまりペーパークラフトは中身が空っぽなので、そこにホンモノのデジカメを内蔵すれば、写ルンですならぬ“写るニコンFペーパークラフト”になるはずだ。

ところが現在のニコンのデジタル一眼レフは、どれもニコンFよりサイズが大きく、これらを使用することはできない。そこで目に付いたのが「Nikon 1」シリーズの存在だ。

Nikon 1シリーズは1型センサーを採用したレンズ交換式デジカメで、ボディもレンズも小型でニコンFペーパークラフトの中にすっぽり収まりそうな雰囲気だ。

そこでさっそくニコンFペーパークラフトと、Nikon 1シリーズの上位機種Nikon 1 V3を用意して、両者の合体を試みることにした。

―注意―
  • 本記事はメーカーの想定する使い方とは異なります。糸崎公朗およびデジカメ Watch編集部がメーカーに断りなく企画した内容ですので、類似の行為を行う方は自己責任でお願いします。
  • この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はデジカメWatch編集部、糸崎公朗および、メーカー、購入店もその責を負いません。
  • デジカメWatch編集部および糸崎公朗は、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

ニコンFペーパークラフトは、5枚の紙に各パーツが印刷されている。どのパーツにも切れ目や折り目がついており、誰でも簡単に組み立てられるようになっている。もちろん、親切な説明書も付属している。しかし今回は必ずしもその通りには作らず、考えながらアレンジを加えてゆくことにする
ニコンFペーパークラフトからボディー・パーツだけを切り取り、Nikon 1 V3に被せて仮止めしてみる。すると、ちょうど上手い具合にすっぽり収まった。本当は電子ビューファインダーDF-N1000を装着したかったのだが、ペンタプリズムのパーツに収まらないため断念した。なお装着レンズは、ペーパークラフトのレンズ(Nikkor 50mm F1.4)の画角に合わせ「1 NIKKOR 18.5mm f/1.8」をセレクトした
このペーパークラフトは、デジカメを内蔵するには紙が薄くて強度不足だ。そこで、構造を強化するための「フレーム」を制作することにした。ニコンFペーパークラフトと、Nikon 1 V3の形状に合わせ、厚紙(イラストボード)をカットして、パーツを製作する。ちなみに今回の工作は、あくまでペーパークラフトの延長と言うことで、パーツを全て紙で製作することにした
それぞれのパーツを接着すると、フレームが完成する。ちなみに底部には、三脚止めネジを通す穴を開けた
フレームにはNikon 1 V3をすっぽりとはめ込むことができる。上部には、シャッターボタンと電源スイッチを操作するための開口部がある
フレームを後ろから見たところ。三角吊り輪の部分も切り欠いて干渉を避けている。さらに三脚ねじ穴に止めネジをねじ込めば、かなりしっかり固定できる
このフレームに、ニコンFペーパークラフトの外装を張り込む予定だ。しかしまだ張り込む作業はしないで、その前に外装パーツにいろいろな加工を施すことにする
まず「トップカバー」パーツだが、「シャッター目盛盤」の取り付け部に、切れ目と折り目を入れた。実はここがNikon 1 V3のシャッターボタンと連動する予定だ。その隣に丸く穴を開けたのが「シャッター押しボタン」取り付け部で、ここがNikon 1 V3の電源スイッチ操作部になる
トップカバーを裏返したところ。工作用紙を半円に切って重ね張りした部分で、Nikon 1 V3のシャッターボタンを押す仕組みだ。本当はニコンFのシャッターボタンで、Nikon 1 V3のシャッターボタンが押せると良かったのだが、機構上ムリだったので割り切ってアレンジした
シャッター速度ダイヤルのパーツだが、今回はこの部分がデジカメとしてのシャッターボタンになる。そこで強度を上げるため、工作用紙をサークルカッターで切り抜いたパーツを重ねて補強する
組み立てたシャッター速度ダイヤルのパーツを、トップカバーに接着する。くどいようだがこのパーツがデジカメとしてのシャッターボタンとなる
Nikon 1 V3の電源スイッチを操作するパーツを、イラストボードをカットして製作する。この円盤を回転させると、電源のON/OFFが操作できる
ニコンFのシャッターボタンを、工作用紙で補強しながら組み立ててる。そして先の円盤パーツに接着する。このパーツが、Nikon 1 V3の電源スイッチ操作ツマミになる
加工したトップカバーと、内部フレームを重ねてみる。ニコンFのシャッターボタンを回転させると、Nikon 1 V3の電源スイッチが操作できる機構がわかるだろう。また、ニコンFのシャッター速度ダイヤルを押すと、Nikon 1 V3のシャッターボタンが押せるようになっている
ボディパーツだが、後部をNikon 1 V3ボディを出し入れする「裏蓋」とするために切り離す。さらに液晶モニターの部分を切り抜く。また底部には三脚止めネジを通す穴を開ける
裏蓋となるパーツには、周囲に紙をL字型に折った補強パーツを接着し、モニター開口部に透明塩ビ板を接着した
レンズとミラーボックスのパーツには、Nikon 1 V3のレンズを通すための穴あけ加工を施す。元のペーパークラフトには、レンズマウントのパーツが付属しているが、今回は使用しない
ミラーボックスパーツをボディに接着し、Nikon 1 V3に被せたところ、レンズ着脱ボタンが干渉してしまうことが判明した。そこで四角く穴を開けたのだが、この部分は偶然にもニコンFのレンズ着脱ボタンの位置と、ピッタリと重なるのである
そこでニコンFペーパークラフトのレンズ着脱ボタンを、実際に作動できるよう改造工作を施す。パーツに印刷された「着脱ボタン」を切り離し、イラストボードと工作用紙で構造物を制作した
レンズパーツは組み立てて、内側に反射防止の黒ラシャ紙のパーツを組み込む。さらに1 NIKKOR 18.5mm f/1.8に装着するため、マジックテープの片側を貼ったパーツを組み込む
ファインダー接眼部と、ストラップ取り付け金具のパーツ。ペーパークラフトではどちらも立体的に表現されていたのだが、今回は動作の都合上それそれ平面にアレンジしなおした
全てのパーツを接着して組み立てると、ニコンFペーパークラフトの「外装」が完成する。今回はNikon 1 V3を内蔵する都合上、ボディとレンズは別体となっている
ニコンFボディ後部の蓋が開くようになっていて、ここからNikon 1 V3ボディを出し入れする
いよいよニコンFペーパークラフト内部に、Nikon 1 V3を入れる。まずNikon 1 V3ボディからレンズを外す
後部の蓋を開けて、Nikon 1 V3を入れる。ぎりぎりの寸法に作ったためコツが必要だが、ボディを斜めにしながら丁寧にはめ込んでゆく
Nikon 1 V3ボディがフレームにキッチリ収まっていることを確認し、三脚止めネジを締めて固定する。なお、撮影中もこのように裏蓋を開けて、十字キーをはじめとするスイッチの操作ができる
次に「レンズ着脱ボタン」を押して、レンズキャップを外す。このペーパークラフトの着脱ボタンが、Nikon 1 V3の着脱ボタンと連動するところが、面白いのである
1 NIKKOR 18.5mm f/1.8を装着し、そこにレンズ外装を被せる。レンズ外装の内側は面ファスナーの片側が貼ってあり、その圧力で簡単確実にレンズにはまる仕組みになっている
全ての外装を装着すると「写るニコンFペーパークラフト」が完成する
この写るニコンFペーパークラフトは、シャッターボタン外周(巻き戻し切り替えボタン)を左に回転させると、電源のON/OFFが操作できる。そしてシャッター速度ダイヤルの前部を押すと、シャッターが切れる
電源を入れると、背面液晶モニターが点灯する。なお裏蓋を開ければ各種ボタン操作は可能だが、モード切替ダイヤルや電子ダイヤルは動かせない。元のペーパークラフトの形状を可能な限り壊さないため、操作部は割り切った仕様にした


電源スイッチとシャッターボタンの操作を、動画でご覧いただきたい

ニコンFの実物(ブラックボディ)と並べてみた。ニコンFペーパークラフトが、実物の複雑な形状をどれほど上手くシンプル化してるかがよくわかる。しかしどちらも写真が撮れるという意味で、ホンモノのカメラなのである
完成したばかりの「写るニコンFペーパークラフト」を私が構えているところ。実は今回、連載が始まって以来もっともタイヘンな作業になってしまい、根を詰めすぎて疲れ果て、風邪をひいてしまった。そのためマスクを掛けた作業着姿で、タイヘン失礼致しました(笑)

実写作品とカメラの使用感

今回は思い付きの冗談みたいなネタなので、工作も簡単に済ませるつもりでいた。ところが実際に取りかかってみると、思った以上にたいへんであることがわかってきた。

そもそも、実物のニコンF《現実界》に対しペーパークラフトはイメージの産物《想像界》だ。そのイメージに、さらにNikon 1 V3の機能《現実界》を持たせるのだから、そのつじつま合わせにかなり頭を悩ませることになった。

しかもこのペーパークラフトは、制作・監修がペーパーエンジニアの坂啓典さんなのである。私は坂さんと展覧会もご一緒したことがあるのだが、ペーパークラフトとしてのアレンジが上手い作家さんで、一目置いている。ニコンFペーパークラフトもその意味で実によくできていて、それをないがしろにするようなダサい工作を私が加えるわけにはいかないのである。

加えて、紙というのはやっかいな素材で、置物としてのペーパークラフトでは問題にならないが、カメラとしての機能を持たせようとすると強度が足りない。

このため、できる限り補強工作を行ったのだが、そのため細かい作業を膨大に行うはめになってしまった。そのうち疲労がピークに達して倒れ込み、ついに風邪をひいてしまった。冗談も本気になりすぎるとタイヘンになると言うことが、よく分かった(笑)

ともかく、苦労の甲斐あって我ながらなかなかイイモノができた。さっそく「写るニコンFペーパークラフト」を携えて、町に出掛けてみた。

カメラの設定だが、まず実際のニコンFが使われた時代に合わせ、モノクロモードにした。露出モードはプログラムオートにしたが、この写るニコンFペーパークラフトは電子ダイヤルが操作できないので、実物のニコンFのようなマニュアル露出が使えない。さらに装着した1 NIKKOR 18.5mm f/1.8にはもともとピントリングがなく、AFモードで撮影するしかない。

まぁこのあたりは、ニコンFのカタチをした全く別のデジカメとして楽しむのが吉である。そもそも「ニコンFのシャッター速度ダイヤル」がデジカメとしての「シャッターボタン」になってるわけで、ファインダーも背面モニター式なのだ。

しかしはじめは違和感あるものの、慣れるとなかなか楽しく撮影できる。Nikon 1 V3はフォーカルプレーンシャッターの音も小気味よく、AFの動作も的確で速い。「1 NIKKOR 18.5mm f/1.8」も絞り開放からシャープで、逆光にも強く、接写すれば背景をぼかすこともできる。

とは言えこの写るニコンFペーパークラフトは、紙製だけあってカメラとしてはやはり繊細で脆弱すぎる。ちょっとぶつけただけで外装はへこむだろうし、そうでなくとも使い込むうちにすり切れてボロボロになってしまうはずだ。

なので、もし素材をプラスティックに置き換えた「写るニコンFの外装」が発売されたら、さぞや楽しいだろうと思うのだ。冗談がわかるメーカーさんにはぜひ検討していただきたい(笑)。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
1/1,000秒 / F2.8 / ISO200 / プログラム / 18.5mm
1/640秒 / F2.2 / ISO200 / プログラム / 18.5mm
1/1,000秒 / F2.8 / ISO200 / プログラム / 18.5mm
1/1,000秒 / F2.8 / ISO160 / プログラム / 18.5mm
1/1,600秒 / F3.5 / ISO160 / プログラム / 18.5mm
1/640秒 / F2 / ISO400 / プログラム / 18.5mm
1/1,000秒 / F2.8 / ISO200 / プログラム / 18.5mm
1/640秒 / F2 / ISO400 / プログラム / 18.5mm
1/800秒 / F2 / ISO400 / プログラム / 18.5mm
1/640秒 / F2 / ISO400 / プログラム / 18.5mm
1/125秒 / F1.8 / ISO2000 / プログラム / 18.5mm
1/50秒 / F1.8 / ISO800 / プログラム / 18.5mm
1/160秒 / F1.8 / ISO800 / プログラム / 18.5mm
1/40秒 / F1.8 / ISO800 / プログラム / 18.5mm

糸崎公朗

1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ フォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。毎週土曜日、新宿三丁目の竹林閣にて「糸崎公朗主宰:非人称芸術博士課程」の講師を務める。メインブログはhttp://kimioitosaki.hatenablog.com/ Twitterは@itozaki