リコー「GXR MOUNT A12」に一眼レフユニットを装着する
Reported by糸崎公朗
リコー「GXR」の新ユニット「GXR MOUNT A12」に、Lマウントライカ用「ミラーハウジング付きKilfitt Tele-Kilar 300mm F5.6」を装着。カメラと言うより、レトロフューチャーな光線銃のような出で立ちだ。ミラーハウジングとは、ライカに装着する“一眼レフユニット”とも呼べるアクセサリー。今回はGXRとのシャッター連動機構を考案してみた |
■GXRに待望のレンズ交換ユニットが登場
リコーGXRシステムの新ユニット、「GXR MOUNT A12」が発売になった。ライカMマウントを採用したレンズ交換式ユニットで、有効1,230万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーを搭載している。
センサーはこれまでの「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」(実焦点距離33mm)や「GR LENS A12 28mm F2.5」(実焦点距離18.5mm)と基本的に同一だが、モアレ防止のローパスフィルターが廃止され、シャープなレンズはよりシャープに描写されることが期待できる。またフランジバックの短いレンジファインダー用広角レンズの周辺画質の劣化を防ぐため、センサー周辺に配置されたマイクロレンズが最適化されている。
もちろんマニュアルフォーカス専用で、ライカMデジタルのようなレンジファインダーは搭載しないが、液晶モニターで像を部分拡大したり、輪郭やコントラストを強調して表示するなどのフォーカスアシスト機能を装備する。また歪曲、周辺光量、色シェーディングの各レンズ収差を補正する機能を備え、レンズデータなどとともに「マイセッティング」に登録することもできる。
このユニットは「レンジファインダーカメラ用レンズ」に画質も操作性も特化している、という点で他メーカーのレンズ交換式デジタルカメラと一線を画している。マニアックな製品にもかかわらず、手頃な値段に設定されているもの嬉しい特徴だ。
■GXRに“一眼レフユニット”を装着
ぼくはライカマウントレンズとしては、Lマウント用のキルフィット社製「テレキラー300mm F5.6」(Kilfitt Tele-Kilar 300mm F5.6)を持っている。このレンズは同じくキルフィット社製の「ミラーハウジング」とセットで売られていたのを、中古カメラ店で購入した。
ミラーハウジングは、ライカのようなレンジファインダーカメラに装着する“一眼レフユニット”とも呼べるアクセサリーで、これにより超望遠レンズのピント合わせが可能になる。一般にライカ純正の「ビゾフレックス」が有名だが、キルフィット社製のミラーハウジングはモダン彫刻のような不思議なデザインで、異様な存在感を放っている。
テレキラー300mm F5.6のレンズ本体は、ミラーハウジングから外して各種マウントアダプターに換装できる。ぼくはエキザクタマウント用アダプターを持っていたので、フォーサーズカメラなどに装着して撮影を楽しんでいた。一方で、ミラーハウジングはその異様なカッコ良さにもかかわらず、使い道が無く持て余していた。
しかしMマウントを採用したGXR MOUNT A12には、Lマウントのミラーハウジングが簡単に装着できる。いや装着できたところで実用性は低いのだが、それだけに“いにしえの望遠撮影”の不便さを、デジタルで味わってみたくなってしまったのだ。
と思ったのだが、事はそれほど簡単ではない。このミラーハウジングは、ケーブルを介して可動ミラーとカメラのシャッターを連動させる仕組みになっている。ケーブルは一端をミラーハウジングのソケットに差し込み、もう一端をLマウントライカ特有の“レリーズ取り付けネジ”に装着して使う。
ところが当然のことながら、GXRボディのシャッターボタンにはそのような取り付けネジは存在しない。そこで今回も頭をひねり、このケーブルをGXRのシャッターと連動させる方法を考えてみた。
―注意―
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さらにABS板をカットし、このようなパーツを作る。後ろのパーツは2mm厚板で、ペンのお尻を差し込むため緩い三角形の穴を開けている。手前はカメラのアクセサリーシューへの取り付け部で、2mm厚と1mm厚板を組み合わせている | 左のパーツをネジ止めして組み立てると、このようになる。黄色いペンのお尻パーツに、シャッター連動ケーブルをねじ込む |
同じパーツを裏から見たところ。GXRのアクセサリーシューに取り付けて使用する | シャッター連動ケーブルを取り付けると、パーツが完成する |
完成したパーツを、GXR本体のアクセサリーシューに差し込み、ケーブルのソケットをミラーハウジングに差し込む。これで完成……と言いたいところだが、まだ問題がある。このミラーハウジングは縦位置に対応するため、90°のレボルビング機能を備える。しかしなぜかクリック位置が斜めにずれていて、角度が不安定なのである | そこでストロボ用ブラケットにABS板とゴム板を貼って、このようなパーツを作る |
テレキラー300mm F5.6とミラーハウジングを装着したGXR MOUNT A12。なかなかスゴイ出で立ちの「デジタル一眼レフカメラ」になった。ライカ判換算の画角は450mm相当の超望遠になる | 接眼部が突き出たまさに異様な形態。カメラというより、レトロフューチャーな光線銃といった感じ。街中で構えるのは、ちょっと勇気が要るかも知れない(笑) |
今回のシステムを分解するとこのようになる |
下がミラーとシャッターの動作を示した動画。ボタンを押すとミラーがアップし、次いでシャッターが切れる。ミラーはクイックリターン式ではなく、レバーを下げてセットする必要がある。面倒なようだが、デジカメなのでフィルム巻き上げの動作は省かれている。
・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
■テスト撮影
今回のテストは、マンションの上階から電柱を撮影して行なった。絞りを1段ずつ変えながら、露出はマニュアルで一定にさせている。ホワイトバランスやISO感度などの条件も固定している。
今回はミラーハウジングのファインダー部の分解方法が今ひとつ分からず、スクリーンの視野をAPSサイズに合わせる工作ができなかったため、正確な構図の確認ができない。また、ファインダーは現代の一眼レフカメラに比べると暗く、スクリーンがざらざらし過ぎでピントの山が掴みづらい。そこでテスト撮影に限っては、電子ビューファインダー(EVF)「VF-2」を使用しピント合わせを行なっている。
300mmを装着したミラーハウジングのファインダー像。レボルビング機構に対応し、横位置用と縦位置用のフレームが入れられている。APSサイズの450mm相当の画角で使用する際は、縦位置用フレームの縦線が目安として使用できる |
描写は、絞り開放のF5.6はソフトな描写で、F8に絞るとシャープになる。F16で少しピントが甘くなり、F32まで絞ると被写界深度は深くなるが全体にぼけた感じになる。光学ファインダーの見え具合を考慮すると、F8に固定して使うのが実用的かも知れない。
GXR MOUNT A12の撮像素子はレンジファインダー用広角レンズに最適化されている、ということで望遠での描写が心配だったが、テスト撮影を見る限りは全く問題ないといえるだろう。
ところであとで気付いたのだが、このテスト撮影を含め間違えて4:3のアスペクト比で撮影してしまっていた。このユニットはアスペクト比3:2の撮像素子が採用されているのだが、デフォルトではどういうわけか4:3に設定されている。「APS-Cサイズ撮像素子採用」というスペックを鵜呑みにすると思わぬ間違いをするので、事前のチェックが必要だ。
GXR MOUNT A12 / 約3.7MB / 3,776×2,832 / 1/2500秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:屋外 / 300mm | GXR MOUNT A12 / 約3.8MB / 3,776×2,832 / 1/1000秒 / F8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:屋外 / 300mm |
GXR MOUNT A12 / 約3.8MB / 3,776×2,832 / 1/500秒 / F11 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:屋外 / 300mm | GXR MOUNT A12 / 約3.8MB / 3,776×2,832 / 1/250秒 / F16 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:屋外 / 300mm |
GXR MOUNT A12 / 約3.8MB / 3,776×2,832 / 1/125秒 / F22 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:屋外 / 300mm | GXR MOUNT A12 / 約3.8MB / 3,776×2,832 / 1/50秒 / F32 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:屋外 / 300mm |
■実写作品と使用感
今回は、450mm相当(ライカ判換算)の超望遠に相応しい被写体ということで鳥をテーマに選んでみた。しかしぼくは昆虫は専門でも鳥の撮影は全く不慣れで苦労してしまった。いちばんの苦労は“どこに行けば鳥が撮れるのか”というフィールドについてのデータが決定的に不足している点だ。ネイチャーフォトグラファーにとって“フィールドという資源”がいかに重要か、あらためて自覚した次第である。
さて、撮影はもちろんミラーハウジングの光学ファインダーを使用しながら行なうよりもEVFを使った方が撮影で確なのは当たり前だが、ぼくとしてはこのミラーハウジングを通して、昔の人の撮影の苦労を体験してみたいのだ。しかもただ昔をなぞるだけではなく、最新式のGXR MOUNT A12と組み合わせた感触として、味わいたいのである。
どんなに不便なカメラでも、愛着があると自分の体がカメラの方になじんできて、使いこなせるようになる。APS-Cサイズ用のフレームが入っていないファインダーは、撮れた写真とのズレが面白いし、それなりに構図を決められるようにもなってくる。
ミラーハウジングの斜め45度に突き出たファインダーを覗くと、カメラ本体を低く構えることになり、システムの重量と相まって安定性が高い。そのため、手ブレ補正機構のないカメラでの望遠撮影だったのにもかかわらず、手持ちでほぼ問題なく撮影できるようになった。シャッターを押すごとにファインダー像がブラックアウトし、その都度ミラーをセットする必要があるが、そういう動作もなかなか楽しいものがある。
カメラ設定は露出モードM(マニュアル)を使用した。A(絞り優先)モードで使用すると必ず露出オーバーになってしまう。というのもミラーハウジングを覗いているときは、ミラーが撮像素子への光を遮っている状態で、シャッターを切る直前にミラーアップしても露出が追随しないのだ。
絞りはF8固定で、シャッター速度1/400秒以上をキープしつつ、ISO感度を変えながら露出調節をした。WBも太陽光に固定している。アスペクト比を間違えて4:3と3:2が混在してしまったのは前述の通りだ。
GXR MOUNT A12 / 約4.4MB / 4,288×2,848 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO500 / マニュアル露出 / WB:屋外 / 300mm。神田川の川面で、バサバサ羽ばたく行動を何度も繰り返していたカルガモ。行動パターンを知ればそれだけ撮影のバリエーションも広がる。それにしても羽毛の撥水性能にはあらためて驚く |
■オマケ・撮像素子のゴミと清掃サービスについて
2011/10/21 00:00