デジカメアイテム丼

アルバム写真を剥がさずスキャン…「Omoidori(おもいどり)」の実力は?

iPhoneがスキャナーに変身 思い出の写真を手軽にデジタル化

写真の楽しみ方は様々だが、長年楽しまれている方法として、写真アルバムに整理する方法がある。

初期のアルバムは写真を台紙に貼るスタイルが一般的だっため、その当時のアルバムの写真をスキャンしてデジタル化するためには、台紙から剥がすという作業が必要になる。それが困難な場合は、アルバムに貼ったまま、デジタルカメラやスマートフォンで撮影する、という方法でデジタル化を試みる方法もある。しかし、写真の表面が光ってしまったり、歪んでしまったりと、クオリティを求めれば求めるほど、難易度の高い作業になりがちだ。

その一方で、近年、アルバムのデジタル化の重要性を感じさせる事件が起きている。2011年の東日本大震災などの災害だ。災害に巻き込まれて、家を失った被災者が探しているものの中に、アルバムがある。思い出の写真を1枚でも見つけたい。被災者にとってかけがえのない1枚なのだから。

「アルバムをデジタル化して保存しておきたい」「思い出をなくさずに持っておきたい」……そんな技術者の強い思いで、開発された商品がある。それが「Omoidori(おもいどり)」だ。

この製品はアルバムに写真を貼ったまま、iPhoneで簡単にスキャンできるのが特徴。ドキュメントスキャナーのScanSnapシリーズをリリースしているPFUの製品だ。

PFUではアルバム写真用のスキャナーを約10年前より開発してきたが、技術的な難易度が高く、なかなか実現しなかった。しかし、2011年の東日本大震災を機に開発を強化し、今回の商品化に繋がったという。

古いアルバムほど、個人にとっては重要な思い出となる。その思い出を保存するツールとして活用できるのが、Omoidoriだ。

商品発表会より。
Omoidoriの試作機。

iPhoneをセットするだけでスキャナーに

Omoidori本体の紹介をする前に、まずスキャンの仕組みを説明しよう。

ボックス型のOmoidori本体にiPhoneを装着し、アルバムなどに貼ってある写真の上に置いて、iPhoneのカメラで撮影するスタイルだ。アルバムに写真を貼ったまま、iPhoneで綺麗に簡単にスキャンできる工夫が随所にある。それらの工夫は、写真の反射をいかに防ぐか、という点にある。

アルバムの上にOmoidoriをセット。

画像の取り込みはiPhone内蔵のカメラを利用する。iPhoneを装着する折りたたみ状のボックスが写真が覆うことで、外光による反射をシャットアウト。そしてボックス内のLEDが光源となり、iPhoneアプリにて撮影が2回行われる。LED光源を照らすことで、写真表面に反射が出てしまうが、2枚を合成することで反射を消す仕組みになっている。

スキャンの様子は動画にて参照してほしい。撮影から合成まで待ち時間がほぼなく、スキャンデータの取得ができている。(iPhone SEを使用)

折り畳み時の本体サイズは112×32×152mm。使用時に広げると112×158×142mm。比較的コンパクトなサイズで、本体重量も310g(電池搭載時)なので、持ち歩くことも可能だ。

畳んだ状態。

本体を開く途中。

開いた状態。

対応機種は、iPhone 6s/6/SE/5s/5。

iPhone 6sを装着したところ。

付属のアタッチメントを使えば、4インチサイズのiPhone SE/5s/5も利用できる。

内蔵LEDを駆動させるため、電源として単4電池2本を使用。アルカリ電池推奨で、カタログ値では約1,000枚の連続スキャンが可能。

オプション品として、マグネット式の透明のアクリル板「フォトプレッサー」(税別2,500円)が用意されており、これを載せてスキャンすることで、写真のたわみを防ぐことができる。

フォトプレッサーをOmoidori底面にマグネットで装着してみた。

アルバムの写真が次々とデジタル化

スキャン操作は、無料で提供されている専用アプリ「Omoidori」を使用する。

対応OSはiOS 8.0以降。出力ファイルはJPEG形式で、解像度は450dpi〜600dpi程度(条件によって異なる)。

スキャンしたデータは、iPhone内のカメラロールに保存され、他の写真データと同様に扱うことができる。

トリミング、正立補正(顔向き検出)、2L判合成、赤目補正といった自動補正機能を搭載。基本的にユーザーは、オート設定でスキャンを終えることが可能だ。加えて、回転、トリミング、赤目補正ON/OFF、日付認識(自動/手動)を搭載している。

スキャン範囲の調整機能もある。スキャン範囲は、Lサイズ(89×127mm)〜2Lサイズ(127×178mm)。2Lサイズのプリントに関しては、左右にずらして2回スキャンして合成を行う。

アプリからの写真プリントおよびフォトブックの注文にも対応している。

ファイルサイズはモノクロ写真で1MB前後。Lサイズ程度のプリントなら十分な解像度だろう。

使ってみて一番のメリットだと感じたのは、スキャンが簡単で早くできることだ。例えば、1ページ4枚の写真を貼った30ページ程度のアルバムの場合。1枚当たりの作業時間は、写真にOmoidoriを置いてスキャンボタンを押すだけなので、5秒程度だ。計120枚の写真をスキャンするとなると、約10分で終わる。アルバムから写真を剥がさないので、この速さが得られる。

写真やアルバムという大事な思い出をデジタル化する、という新しい体験を手軽に提供するOmoidori。

出荷は6月下旬予定で価格はオープン。PFUダイレクトでの直販価格は1万2,800円となっている。

伊藤浩一

モバイル情報ブロガー、ITライター。ブログ「伊藤浩一のWindows Phone応援団(旧W-ZERO3応援団)」やIT系WEB連載にてモバイル端末などのレビューを執筆。カメラは、ソニーα7を中心にオールドレンズの活用をしている。