ファーストインプレッション:RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5


 5番目のGXR用カメラユニット、「RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5」が2月2日に発表された。リコーから実写掲載が不可能な試作機を借りることができたので、簡単な試用感などをお伝えしたい。具体的なスペックについては、以前公開したこちらの記事を参照いただければと思う。

GXRボディに装着したRICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5。EVFのVF-2もつけてみた

※試作機のため、記事の内容が製品版と異なる可能性があります。
※実写サンプルは掲載していません。後日、別の記事で公開する予定です。

 RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5(以下A16 24-85mm)は、APS-Cサイズ相当の撮像素子を搭載したGXR用カメラユニットとして、初のズームレンズを搭載した製品。そのせいか、これまでのAPS-Cセンサー搭載カメラユニット(GR LENS A12 28mm F2.5およびGR LENS A12 50mm F2.5 MACRO)と比べ、GXRボディに対して不釣り合いなほど大柄な印象を受ける。レンズを望遠端に伸ばすと、さらにその印象は強まるだろう。長さだけでなく、直径も大きい。鏡筒の下はGXRボディの下端を突き抜けているほどだ。

正面から見たところ。鏡筒下端はGXRボディを超えてしまう
側面から。電源オフ85mm相当までズーム。鏡筒が軽いため、手に持ったときの重量バランスは悪くない
参考までにRICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC(右)と大きさを比較。焦点域は似ているが、全長がかなり異なるのがわかる

 ただし、APS-Cセンサー搭載のデジタル一眼レフカメラ用ズームレンズ、しかも焦点距離24-85mm相当の製品と考えれば、それなりに小さくまとまっているのが理解できる。フィルター径は55mmであり、これはAPS-C一眼レフカメラなら18-55mmクラスの直径だ。

 また、左手で支えた鏡筒は驚くほど軽く、意外にもGXRボディとの重量バランスは良い。見た目からソニーNEXのような構え方を覚悟していただけに、これはうれしい誤算だった。

 鏡筒の表面処理はざらつきが強い珍しい手触り。軽さも相まって高級感は薄いものの、支える左手が滑りにくく、ホールディング性能は悪くない。

 シャッター音はこれまでのA12ユニットと同様、レンズシャッターによるごく小さな音。レリーズ時にミラーショックもないため、手ブレ補正機構はないものの、比較的手ブレしにくい構造となっている。

カメラユニット単体での状態先端のリングを外して、レンズフードLH-2や自動開閉キャップLC-3に付け替えることができる
自動開閉キャップLC-3を装着。写真は電源オフのとき電源をオンにするとレンズが繰り出し、前面を覆っていた4枚の羽根が開く
こちらはレンズフードLH-2

 ズーム操作は、背面右手側のズームレバーで行なう。マニュアルフォーカスはマクロボタンを押しながらアップダウンダイヤル(右手前側のダイヤル)を回す。つまり、「RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC」(S10 24-72mm)や「RICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VC」(P10 28-300mm)と同じ操作だ。フォーカスリングやズームリングがないことから、マニュアル操作ができないのは不満だが、おかげでリコー伝統のステップズームが設定可能。また、APS-Cセンサーを搭載したカメラなのに、片手撮りでズーム操作ができるというのも何だか新鮮だ。

 レンズ先端には金属製のリングがついている。これを外して、自動開閉キャップLC-3、またはレンズフードLH-2を装着可能。LC-3はS10 24-72mmやP10 28-300mmのLC-2と同じく、装着するとレンズキャップの開閉が必要なくなるため、スムーズに撮影を始められる。レンズ口径の大きなA16 24-85mmにおいても、動作は問題なかった。

 他のカメラユニットにない今回からの新機能としては、次の8つが挙げられる。


  • ダイナミックレンジ補正
  • ISOブラケット
  • 新電子水準器
  • 撮影条件維持機能
  • RAWのみ記録
  • 著作権情報の登録
  • スリープ/オートパワーオフ時間の任意設定(1分単位)
  • インターバル撮影機能の拡張(最大撮影枚数の設定など)

 いくつかはGR DIGITAL IVから実現している新機能だが、目玉は新電子水準器だろう。これまでの水平方向に加えて、前後方向(アオリ)の傾き具合を知らせてくれる。リコーは電子水準器の搭載自体では先行していたものの、2軸への対応は他社に遅れていた。風景や建物を撮る際に役立つ機能だろう。広角端が24mm相当からと広いこともあり、電子水準器の有用性はさらに高まると思う。

電子水準器(画面中央下)を表示。従来と異なり、中央上下に垂線が入る傾けると表示色が黄色に。写真は水平・アオリとも傾けた状態
水準器設定。これまで通り、アオリ方向の表示をオフにすることもできる水準器のキャリブレーション機能
キャリブレーション中キャリブレーションを初期化するメニューもある

 RAWのみ記録に対応したのも大きい。従来は最低でもVGAのJPEGファイルを同時記録する必要があったため、RAW撮影派にとっては幾分煩雑な管理を強いられていたことと思う。

GR DIGITAL IVに続き、GXRもRAWのみ記録に対応。他のユニットもアップデートで対応して欲しい

 また、撮影条件維持機能もユニークだ。撮影後にシャッターボタンを半押したままにしていると、フォーカス、絞り、シャッター速度、ISO感度、ホワイトバランスの設定が維持されるというもの。既存のAEロックなら露出だけだが、この機能ではフォーカスやホワイトバランスも固定したまま、構図を変えたり、違う被写体を待ったりできる。いわばAEロックとAFロックを同時に行なえるわけで、AEロックをFnボタンなどに割り当てていた人は、この機能を使うと貴重なFnボタンを空けることができそうだ。また、光源の種類が多い屋内などで、最初にうまくいったオートホワイトバランスを固定させて撮り続けるというのも、有用性が高いと思われる。

撮影条件維持。シャッターボタンの半押しを解かなければ、露出、ホワイトバランス、フォーカスが維持される

 気になったのは、最短撮影距離がレンズ前25cmからとなっていること。S10 24-72mmやP10 28-300mmのようなマクロモードはない。マクロ撮影が必要なら、GR LENS A12 50mm F2.5 MACROを使った方が融通が利きそうだ。

 もうひとつ、内蔵ストロボが使えなくなる点にも留意したい。鏡筒が長いので、広角側だとケラレるためだ。どうしてもストロボ発光が必要な場合は、オプションのクリップオンストロボGF-1を用意したい。

クリップオンストロボGF-1を装着した状態

 今回は試作機とのことで、画質と動作速度については触れないことにする。ただし画質は、同じくローパスフィルターを廃したGXR MOUNT A12を思わせるシャープなもので、AF速度も既存のA12ユニットよりもスムーズな動作が得られたことだけは報告しておこう。詳しいレポートは後日、実写サンプルの掲載が可能な機材を入手できたら公開したい。

その他の新機能。ダイナミックレンジ補正は、ワンショット画像から白飛びと黒つぶれを回避するというダイナミックレンジ補正をオフにしたときの撮影画面。効果のほどは実写レビューで
ISOブラケット。±2段の範囲で3枚を撮影可能。ISO AUTOやAUTO HIでも使用できる著作権情報をExifに書き込むことが可能になった




(本誌:折本幸治)

2012/3/6 00:00