Canon EF LENS 写真家7人のSEVEN SENSES

「動く被写体を撮る上で最高の組み合わせ」
スポーツ写真のプロ、田中宣明さんの場合

キヤノン EOS 7D Mark II + EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの魅力を探る

S字カーブの出口、先頭を走る選手を狙った。選手の顔付近の測距点をあらかじめ選んでおき、少し斜めの構図にすることで躍動感を表現している。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 200mm(320mm相当) / マニュアル露出(F5、1/800秒) / ISO 1000

カヌーのスラロームの写真は、撮影ポジション次第で様々な風景が撮れる。コースの中で一番勾配のあるところで水しぶきの激しいシーンを狙う。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 234mm(374mm相当) / マニュアル露出(F5、1/8,000秒) / ISO 640

コースの最終、疲労がピークのときに一番流れの強い場所を切り抜ける。選手のそんなキビシイときの表情・目つきは力強い。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 349mm(558mm相当) / マニュアル露出(F5.6、1/1,600秒) / ISO 1250

自分の狙った選手を撮るには、狙ったフレーミングで狙った測距点が必要。EOS 7D Mark IIの隅々まで行き届いた測距点はありがたい。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 300mm(480mm相当) / マニュアル露出(F5、1/800秒) / ISO 1250
9月下旬、神奈川県葉山港沖で開催された全日本学生女子ヨット選手権大会(通称女子インカレ)。80艇近くのディンギー(小型ヨット)が葉山の海を縦横に走り回り、熱戦を繰り広げた。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 100mm(160mm相当) / マニュアル露出(F5.6、1/2,500秒) / ISO 200
インカレに採用されている470(ヨンナナマル)級と呼ばれる写真のディンギーは五輪種目でもあり、世界中で普及している。写真は総合優勝を果たした慶應義塾大学チーム。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 227mm(363mm相当) / マニュアル露出(F5.6、1/2,500秒) / ISO 200

「動きモノ」を撮るうえで至高の組み合わせといわれるのが、「EOS 7D Mark II」と「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」の2製品だ。画質、AF、連写、操作性、サイズ感など、期待を裏切らない実力が評判を呼んでいる。

この2製品を手にした「動きモノ」のプロたちは、どういう感想を持ち、どう使いこなしているのか。

今回はスポーツ写真の世界で活躍されている、田中宣明さんに話をうかがった。

聞き手:笠井里香

EOS 7D Mark II
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM

馬の美しさに魅せられて……

−−写真を始めたきっかけ、またスポーツの撮影を始めたきっかけを教えて下さい。また、競馬の撮影をしていたそうですが、きっかけは何だったのでしょうか?

父が写真をやっていたので、当時父が持っていた一眼レフ(キヤノンAE-1)を触ったのが小学生のころでした。まだそのころは明確に撮りたいものがあるというよりはちょっと使わせてもらっているという感じでしたね。

6歳のとき、テレビで競馬中継を見たんです。それで魅せられてしまい、高校生のときにはアルバイトをして買ったEOS 55を持って東京競馬場に毎週のように撮影に行っていましたね。

馬の美しさ、肌ツヤ、特に目が好きですね。音やにおいなども含めて、とても魅力のある被写体だと思います。

田中宣明さん。大学卒業後、東京ビジュアルアーツ写真学科でスポーツ写真を学ぶ。馬の撮影で写真の世界を目指すことになり、今は、フィギュアスケートをはじめ、さまざまなスポーツ写真撮影で活躍する。

馬を中心に美しい景色などを写した今井寿恵さん、今井さんとはまた違った内藤律子さんの親子馬の写真、そして馬そのものをクローズアップしたような新たな視点からの作品などの写真集もたくさん見ました。

馬は半年程度で一人立ちしますから、親子の馬の写真というのはとても珍しいんですよ。

実は大学生のころ、憧れの内藤律子さんに電話をかけ、会いに行ったんです。

内藤さんは北海道の牧場で仕事をしながら撮影をしていましたから、北海道へ行きました。

つたないながらも写真を見てもらい、馬を撮りたいということを話しました。すると、内藤さんは「馬だけでは経済的に続けるのは難しい」とおっしゃって。そこでスポーツが好きならスポーツ写真はどうかと言われたんですね。

そのアドバイスを受け、スポーツ写真学科のある専門学校を探し、入学することにしました。学費を貯めるために2年間、DPEショップでアルバイトをし、その後2年間学校で学びました。

−−デジタルカメラの導入時期は?そのときの機材は?

デジタルカメラを導入したのは、2001年、EOS D30でした。約325万画素のモデルでしたが、当時はまだ撮った写真をいまのように手軽に送ることもできませんでしたから、仕事としてデジタルカメラを使うようになったのはEOS-1Dになってからのことですね。

−−通常お仕事で使っている機材を教えて下さい。

EOS-1D Xを2台、EF400mm F2.8L IS II USM、EF300mm F2.8L IS II USM、EF70-200mm F2.8L IS II USM、EF24-70mm F2.8L II USM、EF24-70mm F4L IS USM、エクステンダー EF2×IIIですね。EOS 5D Mark IIIも2台持っています。

−−基本的に被写体がすべて「動くもの」ですが、そういった撮影の場合にカメラ、レンズに求める性能というのは、どういったものでしょうか?

機材に求めることで、いちばん大事なのは「AFのつかみ」ですね。ここだ!というとき、ピントを合わせた瞬間に撮れるというのが重要なんです。次いでシャッタータイムラグが少ないこと、やはりこれもシャッターを押してすぐ撮れるという観点からです。

格段に良くなった「AFのつかみ」

−−今回EOS 7D MarkUでの撮影をして、魅力的に感じられた部分をぜひ教えて下さい。また、APS-C機ですが、画質面では問題ないでしょうか?

EOS 7Dから使っていますが、AFのつかみは格段によくなっていると感じました。つかんだ後の安定性もいいですね。こんなにいいんだ!という驚きがありました。

また、APS-C機ということもあり、測距点がすみずみまで見えますよね。端まで使って全面で測距できますから絵作りしやすいですし、スポーツにはもってこいだと思います。

視野の端までをカバーするEOS 7D Mark IIの測距点配置。青枠は測光の範囲を表す。

スポーツを撮影する場合、たとえばフィギュアスケートなら、いい表情を待って見ているとそこは撮れないんです。

経験から選手の動きを予測し、前の技から次の技へと写る「際」を狙って先行してシャッターを切ります。最初にピントをつかんだら、あとはカメラ側のAIサーボで追い続ける。EOS 7D MarkUのAFの正確性、追従性は信頼できるものだと感じましたね。

カヌースラローム競技は吊るされたゲートを通過しながら下流におりていく。左右に蛇行する選手を撮るにはそのゲートが障害物となる。AFパラメータを調節して、被写体追従特性を「粘る」に変更している。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 300mm(480mm相当) / マニュアル露出(F5、1/8,000秒) / ISO 500

画質の面も問題ありません。問題ないというよりも、通常フルサイズ機を使っていて日頃からその写真を見ているわけですが、EOS 7D MarkUで撮影したものを見ても、まったく違和感がないんですね。特に屋外での撮影では、ノイズなども含めてまったく問題ないと感じました。

−−撮影時に主に使用するカメラの設定を教えて下さい。

基本的に、露出はマニュアルです。サッカーやラグビーなど屋外での撮影では、陽の高さによって建物の陰などが出る場合があります。そういった複雑な条件下ではシャッタースピード優先に設定することもあります。

AFに関しては、1点AFが基本です。それで撮影をしてみてからピントを確認し、AFの領域を拡大することもありますね。

−−メモリーカードはデュアルスロットになっています。使い分けてはされていますか?

撮影はJPEGのみで行っています。基本的にはカードは1枚だけ入れていますね。これまでこのスタイルでカードにエラーが出たことなどもなかったので、そこは信頼しています。

−−通常の撮影時、連続撮影は使用されますか? EOS 7D MarkUの連写性能はいかがでしたか?

高速連続撮影に設定しています。秒間約10コマというのはとても速いですし、EOS 7D MarkUのシャッター音はとても静かで選手はもちろん、周囲に対しても配慮できます。

−−屋内競技での撮影もあるかと思いますが感度はどの程度まで上げて撮りますか? また、EOS 7D MarkUの高感度性能はいかがでしょうか?

EOS 7D MarkUではISO 4000まで上げて撮影しました。やはりシャッタースピードを上げたいので、屋内競技での撮影では特に高感度での撮影は多くなります。EOS 7D MarkUの高感度性能はAPS-C機でありながら、とても優れていると思いますね。

−−屋内撮影時の光源の違いなどには、どのように対応されていますか?

ホワイトバランスをマニュアルで設定し、明るさによって露出を都度変えています。

暗い場所ではフリッカーレス撮影機能が有効ですね。スポーツの撮影では、最低でも1/1,000秒以上の高速シャッターを使うので、フリッカーの影響というのは避けられないものなのですが、フリッカーレス撮影を「する」に設定すると、これらの影響を受けずに撮影することが可能になります。

連写時に蛍光灯のフリッカーによって露出にバラツキが出るのを抑えるのがフリッカーレス撮影機能。測光センサーで蛍光灯のフリッカーを検知し、光量がピークのところで撮影する。

小型なズームレンズならではの取り回しの良さ

−−EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは、APS-C機だと160-640mm相当の焦点距離になりますが、いかがでしたか?

エクステンダーなしで600mmを超える焦点距離を使うことができるわけですから、これは被写体に近づくことのできないスポーツ撮影では大きなアドバンテージになると思いますね。

誰かひとりを狙うというより、自転車のこのシーンを撮りたいという時は、フレーミングの中で置きピンにする。思い通りの画になりそうなときにシャッターを切る。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 400mm(640mm相当) / マニュアル露出(F5.6、1/1,250秒) / ISO 1250

−−手ブレ補正のモードが3種類ありますが、スポーツの撮影にはどれが向いていると感じましたか? また、効果はいかがでしょうか?

実は、手ブレ補正は通常一脚を装着していることもあり使用していなかったんです。今回EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMでの撮影は手持ちで、しかも焦点距離が160-640mm相当ということもあり、特に長い側で有利かと思いモード1で撮影しました。手ブレ補正の効きがよかったことは大きなメリットだと思いましたね。

手ブレ補正モードは全ての方向の手ブレを補正するモード1を選択。

−−この焦点距離クラスのレンズでは非常に軽量ですが、手持ち撮影をしてみていかがでしたか?

コンパクトであることもあって、手持ち撮影をしましたが、とても動きやすいですね。

高い位置、低い位置からの撮影も自由にできますし、どこにでも行けます。屋外では山の中や川辺の岩場など、足場のよくないところでも一脚を使わずにどんどん撮影できる。

EOS 7D MarkUとEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMを組み合わせれば、この1セットでどこにでも行けますよね。

−−最短撮影距離が前モデルに比べ、0.98mと大幅に短くなっていますがメリットは感じられましたか?

スポーツの撮影では、たいてい被写体に近寄れないのですが、フィギュアスケートのリンクで選手が目の前を横切っていくことがあります。そういった際に、超望遠レンズではピントが合わないのですが、このレンズではピントを合わせられる。もちろんAF設定内の敏感度などを最大に上げるなど、自身での再設定が必要な部分はありますが、撮れないと思って諦める場面を撮れるのは有利ですね。

撮りたいという気持ちが上達につながる

−−これから、スポーツや動きの多い被写体の撮影をしてみたいという人のために、撮影方法も含め、スポーツ撮影の基本となること、守った方がいいポイントがありましたら教えて下さい。

ズームレンズは万能で、さまざまな場面に対応できる便利なレンズですが、一度ズームを使わずに焦点距離を固定してどんな画角で撮れるのか、この距離でこの位撮れるという感覚を味わってみてほしいですね。

また、高速連続撮影10コマと言っても、意外とシャッターを切り続けるということが心理的にできないものなんです。思い切ってシャッターを押し続けて、これだけ撮れるんだということを実感してみてほしいです。カメラを試し、カメラ、レンズへの信頼性を高め、本番に対してラクになるというのがベストです。

撮影の設定に関しては、オートから入っていったとしても、自分の思うように撮るためにマニュアルでの露出を経験し、測距点も自分で決めると、自分の写真の表現の幅が広がっていきますし、自分自身も楽しくなってくると思うんです。

スポーツには上下左右さまざまな動きがあり、その都度AFなどを設定し、撮影します。たとえばスピードスケートのように、前に向かって猛スピードで滑っていく競技でも、実際には大きく手を振って顔も体も左右に振れていたりします。ピントを合わせるのはとても難しいんです。ただ、難しいから面白いんだと思うんですね。

そして、被写体を好きになること。これが大切だと思います。子どもの写真などが顕著だと思いますが、親が撮る子どもの写真以上のものはありません。それは、そこに愛情があるから。

好きなスポーツの知識をつけ、好きな選手を見つけることで、そのスポーツの見方にも変化が出てきます。そうして撮りたいという気持ちが技術を上げることにつながっていくと思います。

EOS 7D MarkUとEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの組み合わせは、そういった思いにさまざまな機能が応えてくれますから、スポーツの撮影に関しては最高の組み合わせだと思いますよ。

田中宣明さんの主なEOS 7D Mark II設定例

設定項目設定内容
画質(圧縮率)JPEG(ラージ)
ドライブモード高速連続撮影
AFモードAIサーボAF
測距エリア選択モード1点
AFカスタム設定ガイド機能Case1をベースに変更
被写体追従特性ノーマル
速度変化に対する追従性ノーマル
測距点乗り移り特性ノーマル
ピクチャースタイルスタンダード
高感度時のノイズ低減
高輝度側・階調優先標準
オートライティングオプティマイザしない
周辺光量補正する
色収差補正する
歪曲収差補正しない


協力:一般財団法人 全日本実業団自転車競技連盟、公益社団法人 日本カヌー連盟、公益財団法人日本セーリング連盟(掲載順)

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月刊誌「デジタルカメラマガジン」でも連携企画「Canon EF LENS 写真家7人のSEVEN SENSES」が連載中です。EFレンズを知り尽くした写真家によるレンズテクニックが収録されています。

笠井里香

出版社の編集者として、メカニカルカメラのムック編集、ライティング、『旅するカメラ(渡部さとる)』、『旅、ときどきライカ(稲垣徳文)』など、多数の書籍編集に携わる。2008年、出産と同時に独立。現在は、カメラ関連の雑誌、書籍、ウェブサイトを中心に編集、ライティング、撮影を務める。渡部さとる氏のworkshop2B/42期、平間至氏のフォトスタンダード/1期に参加。