デジカメドレスアップ主義:覚醒する広角Cマウントレンズ

Nikon 1 V1 + Bell & Howell-Angenieux 15mm F1.3
Reported by澤村徹

  • ボディ:Nikon 1 V1(ブラック)
  • レンズ:ベル&ハウエル-アンジェニュー 15mm F1.3
  • マウントアダプター:muk select Nikon 1 用Cマウントアダプタ
  • ストラップ:Grok Leather G733 CAMERA STRAP LONG GL
  • ポートアダプター:ニコン AS-N1000
  • 露出計:フォクトレンダー VCメーターII
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 ニコンが満を持してミラーレス機を投入した。このNikon 1は、シネレンズファンの間でとかく話題になることが多い。本機が搭載する1インチセンサーは13.2×8.8ミリで、これは16mmフィルム(スーパー16)の12.52×7.41mmと非常に近い大きさである。そのためCマウントレンズを装着すると、レンズ本来の画角に近い環境で撮影できるのだ。マイクロフォーサーズでは広角Cマウントレンズがことごとくケラレてしまったが、Nikon 1なら最小限のケラレですむ可能性が高い。このようにNikon 1でオールドレンズを使う確固たるアドバンテージがあるわけだが、Nikon 1のオールドレンズ撮影はかなり癖がある。今回はこの癖を中心に、Nikon 1とオールドレンズの相性を見ていこう。

 一般的なミラーレス機は絞り優先AEでオールドレンズ撮影が可能だが、Nikon 1は社外製マウントアダプターを装着した際、絞り優先AEが使えない。絞りとシャッタースピードを手動で操作することになる。いわゆるマニュアルモードの状態だ。さらに残念なことに、内蔵露出計が動作しないため、撮影者自らが外光と絞りの状態から適切なシャッタースピードを判断しなければならない。露出計なしの撮影は、カメラビギナーにはかなりハードルの高い操作だ。そこで今回は、フォクトレンダーの単体露出計「VCメーターII」を用意してみた。純正アクセサリーのマルチアクセサリーポートアダプター「AS-N1000」を取り付け、その上に装着している。単体露出計があれば、カメラビギナーでも安心感が増すだろう。

クリップオンタイプの露出計は、アクセサリーポートアダプター経由で取り付けているコンパクトなミラーレス機なので、Cマウントレンズを付けた際のバランスがよい
オールドレンズ撮影はMモードに設定して、背面のレバーでシャッタースピードを指定するAS-N1000は本来ステレオマイクロフォン「ME-1」を装着するためのものだが、露出計やファインダーを取り付けてもいいだろう
フォクトレンダーのVCメーターIIは2万4,800円。クリップオンタイプのコンパクトな露出計だ今回はmuk selectのNikon1用Cマウントアダプターでレンズを装着した。価格は4,600円

 ドレスアップ面はブラックボディに合わせて黒いレザーストラップを装着してみた。Grok Leatherはアパレル寄りのレザーブランドだが、このストラップは堅牢な作りで実用性にすぐれている。レザーを編み込んだスタイルといい、カービングを施した凝った作りといい、無骨で本物志向に満ちたストラップだ。レザーの編み込み量を加減することで、ストラップの長さが調整可能。存在感のあるストラップなので、ライカM9あたりと組み合わせてもよいだろう。

Grok Leatherのストラップは実店舗Bench made GINZAで購入できる。価格は3万5,000円レザーを折り返してストラップ本体に編み込み、金具を使わずに長さ調整に対応している
肩の部分にカービングを施している。オールハンドメイドの手の込んだストラップだコンパクトカメラ用の取り付けパーツと二重リング用の当て革が付属している

 アンジェニュー15mm F1.3は広角のCマウントレンズだ。マイクロフォーサーズ機で撮影すると、円周魚眼で撮ったように四隅が丸くケラレてしまう。アスペクト比を1:1にしてもケラレが残る有様だ。一方、このレンズをNikon 1に付けると、ほぼケラレなしで撮影できた。開放近辺では四隅に若干陰りがあるものの、F5.6以降で隅々まで明るく撮れる。広角Cマウントレンズを使うと、Nikon 1というカメラがいかにCマウントレンズに適しているかが実感できるだろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしの撮影画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。
Nikon 1 V1 / Bell & Howell-Angenieux 15mm F1.3 / 3,872×2,592 / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 15mmNikon 1 V1 / Bell & Howell-Angenieux 15mm F1.3 / 3,872×2,592 / 1/1,000秒 / F1.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 15mm
Nikon 1 V1 / Bell & Howell-Angenieux 15mm F1.3 / 3,872×2,592 / 1/1,600秒 / F1.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 15mmNikon 1 V1 / Bell & Howell-Angenieux 15mm F1.3 / 3,872×2,592 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 15mm
Nikon 1 V1 / Bell & Howell-Angenieux 15mm F1.3 / 3,872×2,592 / 1/80秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 15mmNikon 1 V1 / Bell & Howell-Angenieux 15mm F1.3 / 3,872×2,592 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 15mm

 Nikon 1はオールドレンズのベースボディとして、メリットとデメリットが相半ばする。1インチセンサーは16mmフィルムとほぼ同サイズなので、Cマウントレンズのベースボディとして実に理想的だ。センサーサイズだけでなく、画質的にもオールドレンズの繊細な表現をうまく再現してくれる。ただし、社外製マウントアダプターを使ったオールドレンズ撮影の操作性は、残念ながら褒めるべき点が見当たらない。絞り優先AEが使えず、内蔵露出計が無効化され、さらに拡大表示すら使えない。オールドレンズ撮影だけにクラカメ感覚で撮るべし、といったところだろうか。

 あえて利点を挙げると、マウントアダプター使用時でもメカシャッター以外に電子シャッターが選択でき、静粛性が求められるシーンでは電子シャッターによる無音撮影が可能だ。また、シャッタースピードは背面のレバーでスマートに操作できる。フルマニュアル撮影は難儀にちがいないが、カメラを使いこなしている感触は心地よい。

 ちなみに、Nikon 1以外のミラーレス機はおしなべて内蔵露出計が動作し、絞り優先AEで撮影できる。もちろん拡大表示も可能だ。だからといって、他社のミラーレス機が特別にオールドレンズを優遇したり、マウントアダプター使用のために特殊な機能を搭載しているわけではないだろう。マウントアダプターとオールドレンズは非正規な使い方にちがいないが、Nikon 1でオールドレンズを使っていると、リミッターをかせられたような気持ちになる。このリミッターがファームウェアレベルで対処できるものなら、今後のファームアップに期待したいところだ。



(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2011/12/15 00:00