フォトアプリガイド

HDR FX Photo Editorのプロ(Android)

多彩な機能を誇るHDR調画像の編集アプリ

「HDR」(High Dynamic Range)という技法がある。明暗の差がある複数の写真を合成し、白トビ・黒ツブレの少ない写真を作り出すというものだ。

 昨今では、「HDR」を冠するアプリが数多く配信され、またカメラにも機能の一部として搭載されている。もはやHDRは身近な存在だ。

 さて、今回紹介する「HDR FX Photo Editorのプロ」は、その名からもわかる通り“HDR”を冠するアプリだ。しかし合成を主とするのではなく、明るさの調整を含む編集機能、フィルタ効果などをパッケージした画像編集アプリとなっている。

 試用バージョンは1.4.1。価格は479円。

 ちなみに、Google Play上でのアプリ名は「HDR FX Photo Editorのプロ」となっているが、端末上では「HDR FX Pro」になる。Androidアプリで良く見かける直訳調の日本語訳だ。

 画像編集アプリによくあるパターンだが、本アプリを起動すると「Gallery」と「Camera」という2つのアイコンがあらわれる。「Gallery」をタップすると端末内に保存された画像を選択でき、「Camera」をタップするとカメラ機能が起動して撮影モードとなる。画像編集アプリの性質上、多くの場合は保存された画像データを利用すると思うが、カメラを使って撮影した写真データをそのまま編集するといった使い方もできるというわけだ。

「HDR FX Photo Editorのプロ」の起動画面。画面中央下部には、「Gallery」と「Camera」という2つのアイコンが並ぶ

 画像データを読み込ませると編集画面が表示されるわけだが、ここに編集アプリとしての「HDR FX Photo Editorのプロ」の扱いやすさが見てとれる。

 というのも、編集前の画像を表示する「BEFORE」、編集効果を与えた状態である「AFTER」、そして「BEFORE」と「AFTER」を同一画面上に分割表示させる「BEFORE&AFTER」という3つの表示モードがあり、モードを切り替えることで効果の掛かり具合を見比べられるからだ。

 特に、初期状態で設定されている「BEFORE&AFTER」は、モードの切り替えなしに見比べられるので便利。画面中央で分割されるため、全体を見通すには「BEFORE」と「AFTER」を使い分ける必要があるものの、編集過程であれば「BEFORE&AFTER」はとても扱いやすい。

 ちなみに、表示モードの切り替えは直接画面上部の表示部をタップすればよい。

初期の表示モードは「BEFORE&AFTER」。二分割されたうち、左側が元画像、右側が編集画像となる

 また、画面下部には「Effects」と「Adjustments」という2つのアイコンが並ぶ。「Effects」は「Current」や「Florine」などのプリセットされたフィルタ効果を付加できる機能。そして「Adjustments」は、「Frame」「HDR」「Sharp」などの効果が選択できる。

「Effects」と「Adjustments」の大きな違いは、「Effects」がプリセットを選択して効果を反映させるだけなのに対し、「Adjustments」はスライドバーなどを利用した細かな調整ができることにある。なお「Frame」や「Sepia」などの一部機能は、用意された項目からの選択式になっている。

「Effects」では、「Current」「Alyse」「Jonnie」など計50個のフィルタ効果を利用できる
「Adjustments」で利用できるのは、「Frame」「Sepia」「HDR」「HDR Circle」「Curve」「Levels」「Vignette」「Crop」「Overlay」「Sharp」「Opacity」「Saturation」という機能13種

 アプリ名にもある「HDR」は、明暗の差がある画像を合成するのではなく、「Light」と「Strength」の2項に対してスライドバーを利用し調整できる機能。黒くくすんでしまった写真も「Light」を調整することで明るい写真となり、「Strength」を調整すればハッキリと角の立った写真となる。

 なお同種の「HDR Circle」は、ピンポイントな補正項目をスライドバーで調整するものではなく、明るさや強度といったさまざまな要素をリングを利用して一括補正できるというもの。オリンパスのデジタルカメラに搭載されているアートフィルター「ドラマチックトーン」のようなフィルタ効果を簡単に再現できるのが特徴だ。

「HDR」で調整できるのは「Light」と「Strength」の2つ。暗めな写真、ぼやけた写真の調整に利用できる
調整した後は、「BEFORE」と「AFTER」で全体をチェックしてみるとよい
「BEFORE」と「AFTER」を見比べると、調整の程は明らか
「HDR Circle」を起動すると、スライドバーではなく調整リングが表示される
調整リングはなぞるように利用する。明るさだけでなく、さまざまな補正要素がリングの調整により一括反映される仕組みだ

 その他にも、色温度とコントラスト、ブライトネスを調整する「Color」、入力レベルを調整する「Levels」、RED、GREEN、BLUE、RGBという4チャンネルをトーンカーブを利用して調整する「Curve」などがある。

「Color」は、色温度を変えるだけでなく、コントラストやブライトネスの調整も可能
「Levels」では、RGBの入力レベルを調整できるレベル補正機能。下段のバーでは出力レベルの調整にも対応する
RED、GREEN、BLUEの各チャンネルとRGBをトーンカーブを利用して調整できる「Curve」。無料版では、RED、GREEN、BLUEの各チャンネルが利用できない

 補正だけでなく、フレームの付加にも対応するわけだが、用意された34種のフレームの内、12種は単純なフレームではなく、写真を疑似劣化させた風合いのフィルタ効果(+フレーム)となる。

類似効果をプリセットする「Effects」との棲み分けは、フィルタ効果を付加したあとに、任意のフレームを選ぶという組み合わせの自由を優先するか、それともワンタップでフィルタ効果&フレームを付加するという手軽さをとるかという優先度の違いだろう。

選択できるフレーム数は34種
単純なフレームだけでなく、古ぼけた風合いになるフィルタ効果付きフレームも搭載

 本アプリは「HDR」という名を冠しつつも、その実、手軽な編集&フィルタアプリだ。明るさやシャープ、RGBの各チャンネルの補正など、補正機能が豊富に用意されているだけでなく、フィルタ効果のプリセットも充実しており、コレひとつで補正からフィルタ効果まで対応できるのはうれしいところ。円安絡みで同種アプリと比べて価格がやや高めになっているが、それを踏まえてもオススメできるアプリのひとつだ。

飯塚直