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インタビュー:オリンパスに訊く「OM-D」のコンセプト

〜銀塩OMの思想を引き継いだ“光を操るカメラ”

 オリンパスが3月31日に発売したレンズ交換式デジタルカメラ「OLYMPUS OM-D E-M5」は、同社往年の銀塩一眼レフカメラ「OM」シリーズのテイストを引き継いだことで注目を集めている。機能面でも世界初の5軸手ブレ補正機構など新たなテクノロジーを投入した。今回は、OM-D E-M5のコンセプトや技術などについて話を伺った。(本文中敬称略)

今回話を伺ったメンバー。左から杉田幸彦氏、豊田哲也氏、芳賀満裕氏、江澤寛氏、日暮正樹氏、鯛中大輔氏

 お話を伺ったのは、オリンパス 開発本部 商品開発1部 部長の杉田幸彦氏(商品企画および商品戦略を担当)、同開発本部 システム開発4部 2グループ 課長の豊田哲也氏(画像処理および画質設計を担当)、同開発本部 商品開発1部 2グループの芳賀満裕氏(開発全般のリーダー)、同開発本部 光学開発部 光学開発6グループ 課長の江澤寛氏(手ブレ補正機構を担当)、同開発本部 システム開発4部 3グループ 課長の日暮正樹氏(AFを担当)、同マーケティング本部 デザインセンター コンスーマーグループ 課長代理の鯛中大輔氏(デザイン全般を担当)。

OLYMPUS OM-D E-M5

3年ほど前から具体的な検討を開始

――まず、OM-D E-M5の企画意図とターゲットユーザーを教えてください。

杉田:オリンパスは2008年に「マイクロフォーサーズシステム規格」としてミラーレスカメラを提案させて頂きました。そのときに大きく2つのユーザーを考えていました。1つはブログやSNSを使いこなして、いつでもカメラを持ち歩いて、良い写真を簡単に撮って頂くというユーザー。もう1つは、カメラとしてのシステムや防塵防滴を重視し、厳しい環境でもしっかりと写真を撮って頂くユーザーです。

オリンパス初のマイクロフォーサーズ機「PEN E-P1」(2009年7月発売。有効1,230万画素)

 1つめのユーザーのために2009年に「OLYMPUS PEN」という形で製品を導入しました。その間も、「もっと本格的なカメラ」、「もっとシステムが広がっていくカメラ」という要望が有り、検討してきました。ミラーレスというカメラがかなり一般的になってきたこの時期に、OM-Dという本格的なシステムカメラを出させて頂くことになりました。

――OM-D E-M5のポジションはどのようなものでしょうか。

杉田:カメラのヒエラルキーとしてではなく、簡単・手軽に写真を撮りたいお客様と、本格的に写真を撮りたいというお客様に分けて考えています。前者がPEN、後者がOM-Dのターゲットになります。

本格的な写真を撮りたい人に向けるというOM-D E-M5

――フォーサーズとの棲み分けはどうなりますか?

杉田:一番重要なのが光学ファインダー(OVF)の有無ということでしょう。OVFの良さというのはもちろんありますから、しっかりとやっていかなければなりません。一方で、OM-D E-M5ではEVFを採用しています。EVFにはEVFの良さが有り、撮影者の意図を確認しながら撮るという意味ではEVFにメリットがあると思います。このファインダーの違いで異なる価値観をご提供したいと考えています。EVFはもっともっと伸びる部分があると思いますから、続けていかなければなりません。

――OM-D E-M5の発表以降の反響はどうでしょうか?

杉田:CP+2012の初日にお披露目しましたが、おかげさまで多くの方から反響を頂きました。タッチ&トライコーナーにも予想を上回る多くの方に来ていただき、好評でした。ヨーロッパ、アメリカ、アジア地域で行なったイベントや発表会でも好評を得ているという状況です。

――“システム性”という面ではPENと比べてどのあたりに優位性があるのでしょうか?

杉田:まず、ボディを小型化しながらも大きな背面モニターを搭載しています。さらにその上にEVFを配置することによってまずしっかりとしたカメラができます。今後我々も大口径レンズや望遠レンズを手がけていきますが、そうしたものを装着したときにどうしてもPENのスタイルでは限界があります。

 その点OM-Dはしっかりとしたカメラのデザインの中で、しっかりとしたグリップによる高いホールディングを備えることで、大きなレンズなどにも対応できます。さらに、防塵防滴でどんな環境でも使えるといった意味でのシステム性の広がりを考えています。

防塵防滴仕様を採用した ミラーレス構造によりボディの薄型化を実現

 多くのスペックを詰め込んでいますが、ミラーがあってはとてもこの大きさには収まりません。これだけのスペックと操作性を詰め込んだ凝縮感を実現できたのは、ミラーレスというものがあったからですね。

――OM-D E-M5の構想はいつ頃からあったのですか?

杉田:本格的なカメラをやるということは、マイクロフォーサーズの規格を決めたときからありました。PENと並行して検討しながら、そのための要素技術やデバイスの開発は着々と進めておりました。

 その2年前の頃は多彩なデザインを検討していましたが、まだOMのスタイルにすることは決まっていませんでしたね。ただ本格的に写真を撮って頂くためには、ファインダーをしっかりと見て写真を撮るというスタイルが大事ですから、早い時期からEVF内蔵で行こうという考えはありました。

16Mピクセルセンサーで20Mピクセルの解像力を引き出す

――有効1,605万画素ですが、この画素数はどうやって決まったのでしょうか?

豊田:我々は長いあいだ1,230万画素のセンサーで続けてきたわけですが、もう少し画素数が欲しいという話は届いていました。ただ1,230万画素のセンサーでも、「ファインディテール処理」を施していますので、「解像力では1,600万画素相当以上あるね」という声もたくさん頂いており、決して1,230万画素が、少なすぎる画素数とは思っていませんでした。

 しかしファインディテール処理と1,600万画素級のセンサーを組み合わせれば、2,000万画素クラスの解像力が出せるのではないかと考えました。一般的には画素数を上げると、ノイズが多くなるのではないか、レンズの解像力が追いつかなくなるのではないかといった心配が出てきますが、今回のセンサーはそのあたりも十分に考慮してあります。

 我々が当初採用していた1,230万画素のセンサーに対してS/N比もかなり向上していますし、ダイナミックレンジもハイライト、シャドウともに改善する目処も付きましたので、今回は1,605万画素のセンサーを採用しました。

 実際にテストして頂いたプロカメラマンからも、1,600万画素級以上の解像力があるという声を頂いています。

――今回の絵作りは「OLYMPUS PEN E-P3」とは違うのでしょうか?

豊田:絵作りはデバイス込みの話になるので、全く同じではありません。ただ、昔から引き継いでいる階調性、トーンの作り方、色の出し方といった部分は極力踏襲しています。ノイズと解像のバランスについては、撮像素子の特性に合わせて最適化しています。

PEN E-P3(2011年6月発売。有効1、230万画素)

――ノイズはどれくらい低減していますか?

豊田:「OLYMPUS PEN E-P3」(1,230万画素)の最高感度がISO12800なのに対して、OM-D E-M5が同ISO25600ですから、数値的には1段の改善になります。しかし、画質そのものを見ると2段ほど良くなっているというのが我々としての実感です。効果が顕著なのは、特にISO1600〜ISO6400という実用域の画質改善です。実際に作品を撮影される場合に、例えばISO1600が使えるか否かということは非常に重要になってきます。最高感度のスペックアップという観点もありますが、むしろ高感度の実用域での画質向上に注力しました。

――OM-D E-M5では、ダイナミックレンジの向上も謳っています。

豊田:ダイナミックレンジは測定法が標準化されておらず、なかなか数字では言いづらいのですが、ハイライト側ですと1/3〜1/2段程度向上したイメージです。シャドウ側はS/N比そのものの改善がありましたので1/2段程度向上しています。いろいろな方法で計測した場合の平均としては、トータルで1段以上は広がったと考えています。

 今回は撮像素子そのものの性能アップと、画像処理における特に暗部のノイズ処理能力が向上したことが寄与しています。

――撮像素子自体にはどのような工夫があったのですか?

豊田:ハイライト側のダイナミックレンジというのは、井戸の深さ(フォトダイオードの受光可能量)とセンサーそのものの感度で決まってきます。感度が高すぎるとハイライトはトビやすくなります。今回は感度とS/N比のバランスをかなりチューニングして、この性能を出しています。

豊田哲也氏(画像処理および画質設計を担当)。「光学ファインダーをお使いの方で、今までのEVFに良さを感じていなかった方にはぜひこのカメラのEVFを覗いて臨場感を感じて頂ければうれしいです」

――ローパスフィルターの光学的強度はE-P3と同じでしょうか?

豊田:画素数が変わっていますので効果としては若干変わっていると思いますが、基本的にはファインディテール処理を使って、ローパスフィルターの効果は極力弱くするというE-P3と同じ方針で設計しています。ファインディテール処理に関しては、画像処理エンジンもE-P3と同じ「TruePic VI」になっています。

TruePic VIを搭載したメイン基板

――昨今はローパスフィルターの無いものや、その効果を無効にしたカメラも登場しています。ローパスフィルターを完全に無くしてしまうことに関してはどのようにお考えですか?

豊田:ローパスフィルターを無くすことによるいろいろな弊害をどうフォローするか、という部分さえうまくクリアできれば可能性は高いと考えています。

 一概にローパスフィルターを部品として取る取らないというよりも、レンズの解像力と画素数の関係や画像処理の最適化という部分の話になるので、我々としてはトータルの組み合わせで考えているというイメージです。レンズがローパスの効果を持ってしまえば、それがローパスフィルターだということもできるわけですから、必ずしも撮像素子の前に入れるフィルターだけで判断することはできません。

――オンチップマイクロレンズにも変更はありますか? またギャップレスのタイプでしょうか?

豊田:構造に関しては公開しておりませんが、高画素化に伴って集光効率を上げる工夫を施しています。

――センサーのメーカーは?

豊田:非公開とさせてください。

――国内のサプライヤーでしょうか?

豊田:それもちょっとお答えできません。地球上のどこかのメーカーなのは間違いないです(笑)。

事実上すべての軸のブレを補正可能に

――OM-D E-M5は世界初となる5軸の手ブレ補正機構を搭載したことが大きなトピックになっています。

江澤:これまでのE-P3などではピッチングとヨーイングというカメラが回転してレンズが上下、左右に動く2軸の補正を行なってきました。ほとんどの手ブレはこの2軸ですが、シーンによってはそのほかのいろいろな動きが加わります。例えば並進ブレと呼ばれるカメラが平行移動して上下、左右に動く動きや、シャッターボタンを押したときにカメラがレンズの光軸を中心に回転してしまうローリングの動きがあることが知られています。そこで、これらを補正するために5軸手ブレ補正機構を開発しました。

OM-D E-M5は5軸の手ブレ補正に対応した。1はピッチング、2はヨーイング、3と4は並進、5はローリング 回転にも対応するOM-D E-M5の手ブレ補正ユニット

 従来の手ブレ補正ユニットをご覧頂くとわかりますが、今まではカメラの上下、左右方向に通る2本の軸に沿って2方向にしか動きませんでした。今回はセラミックボールで支持することで、自由に動くようにしました。上下左右はもちろん、回すこともできます。磁気でセンサーユニットを浮かせることで、5軸の制御を実現しています。

2軸対応だったE-P3の手ブレ補正ユニット

 手ブレ補正機構にはレンズで補正するメーカーとセンサーで補正するメーカーがありますが、オリンパスはセンサーで補正する方式を採用しています。5軸手ブレ補正のうち並進ブレについては対応している他のメーカーもあるのですが、ローリングの手ブレはレンズによる補正では対応できません。これは、レンズを回転させても像を回転させることができないからです。つまり、撮像素子による補正でなければ対応できません。

 実は将来的には5軸手ブレ補正を実現することを想定して、オリンパスでは撮像素子による手ブレ補正方式を採用したのです。

 実現にはメカやブレ検知のセンサーなどの条件が揃わなければならなかったので、すぐには搭載できませんでしたが、撮像素子を自由に動かせるメカを作れたことと、並進、ローリングブレを検出する技術が確立したことで、今回搭載することができました。

――5軸の手ブレ補正機構の開発で、一番苦労したのはどのあたりでしたか?

江澤:メカ屋さんと電気屋さんで作っていくわけですが、電気の方で言うと今まで2つだったものが5個に増えるのでどのように信号を処理するかに苦労しました。5軸の手ブレ補正は表記上は“5”となっていますが、実際にはいろいろなブレの組み合わせです。どのブレとどのブレをどうバランス良く動かせばよいか、ということになります。動かしすぎるとかえってブレは増えてしまいますから、そういったことの無いようなアルゴリズムを開発する必要がありました。

 一方メカ側としては、組み立てを考慮した小型化の部分で苦労しました。大きければ組立は簡単なのですが、それではカメラに載りません。小さくした上で、いかに不良を出さず精密に組み立てるかの部分に腐心しました。

江澤寛氏(手ブレ補正機構を担当)。「お使い頂ければわかりますが、ぴたっと吸い付くように止まりますので手ブレを気にせずにたくさん写真を撮って頂きたいですね」

――OM-D E-M5では手ブレ補正の効果はどれくらい向上していますか?

江澤:補正段数としては5段分となりますが、現在のオリンパスのレンズ交換式デジタルカメラの中では最も高い補正効果があります。世の中には6つの自由度がありますが、今回そのうちの5自由度の手ブレを補正しています。残りの1自由度はフォーカス軸なのでAFが行なう仕事になりますから、実質的に5軸ですべての動きに対応できます。これにより、今まで苦手だったシーンにおいても補正効果が得られます。

――5軸の手ブレ補正は比較的シャッター速度が遅い場合に有効だと聞いていますが、実際にはどれくらいまで対応できるのでしょうか?

江澤:今までは2軸でも十分手ブレ補正の効果はありました。2軸では補正しきれないシーンが何かというと、長秒時やマクロ撮影なんですね。長秒撮影時はどうしても回転ブレが起こりやすいので、ローリング軸の補正が有効になります。一方、並進ブレの補正はマクロ撮影時に効いてきます。

芳賀:従来の手ブレ補正機構の問題点は、ステッピングモーターの発熱であまり長時間駆動し続けることができなかったことです。今回は熱を持たない機構になりましたので、動画も含めて長時間手ブレ補正を効かせ続けることができるようになったのです。加えて、歩きながらの動画撮影で発生する低周波ブレの補正にも対応しています。

 今回の駆動方式はモーターの音が発生しませんので、動画撮影時の静粛性を含めて適したシステムができたと考えています。

芳賀満裕氏(開発全般のリーダー)。「このカメラでは是非作品を撮って頂きたい。オリンパスでは単焦点の明るいレンズも出していますし、60mmのマクロや75mmの大口径レンズといったも今後出していきますので、ぜひ楽しんで欲しいと思います」

日暮:動画での手ブレ補正を説明させて頂きますと、5軸のうち並進ブレは動画ではあまり問題になりません。ですからヨーイング、ピッチング、ローリングの3軸で補正を行なっています。これまで動画は電子式手ブレ補正でしたが今回から撮像素子シフトによる補正が可能になっており、動画の品位が向上しています。

――動画撮影時において、電子式に比べて撮像素子シフト式のメリットは何でしょうか?

日暮:電子式ですと、どうしても補正のための糊しろを多く取らなければなりませんので、画角がレンズ本来のものより狭くなるというデメリットがあります。

江澤:ただ、OM-D E-M5でも全く切り出しをしていないわけではありません。ほんの少し画角は変わります。歩きながらの動画撮影に対応するため、静止画の手ブレ補正に比べて補正の幅を大きく確保する必要があるためです。実際に使う上ではこの方が、価値があると考えての判断です。

日暮:とはいえ電子式では見て明らかにわかるほど画角が狭くなっていましたが、今回は“言われてみればわかる程度”に画角変化を抑えています。

ハイライト&シャドーコントロールは銀塩OMの思想を引き継いだ機能

――今回「ハイライト&シャドーコントロール」を新搭載しました。

豊田:OM-D E-M5の重要な要素にEVFを内蔵させたことがあります。しっかり覗いて頂いて写真を楽しんでもらいたいということですが、EVFですとフレーミングだけでは無くて、撮影の効果など撮影者が考えていたことを反映して見ることができます。その楽しみをさらに膨らませたいと考え、「クリエイティブコントロール」という仕組みを搭載しました。EVFを覗きながら絵作りができるものです。

 そのうちのハイライト&シャドーコントロールですが、表示されるトーンカーブのハイライト部とシャドー部を2つのコントロールダイヤルで補正することができる機能になっています。

――ハイライト&シャドーコントロールは、オリンパスの銀塩一眼レフカメラ「OM-4」と関係があると聞きました。

ハイライト&シャドーコントロールを行なっているところ

鯛中:何を持ってしてデジタル世代の「OM」とするか、ということの1つとして、やはり思想を引き継いでいくことがOMたる所以になると考えました。そこで機能的な部分もかつてのOMを引き継いでいくべきだと思いました。

 OM-1でまずは小型化して、どこにでも持って行けるシステムを作り上げています。その後にマルチスポット測光やダイレクト測光といった機能を積んでいく際の思想として「光を操る機能」がOMにはありました。「OM-3 Ti」のカタログにはその思想を表す「PERFECT CONTROL OF LIGHTS」という言葉があります。また他のカタログを見ても、とにかく光を操って撮影者の意図に応えるんだ、という思想をOMは残しています。そこで、OM-Dにもそうした機能を搭載していくべきだということで採用した機能になります。

OM-3 Tiのカタログには「PERFECT CONTROL OF LIGHTS」とある OM-4

 具体的には銀塩OMにあったマルチスポット測光の流れを汲む機能ですが、OM-D E-M5のハイライト&シャドーコントロールではスポット測光を行なっているわけではありません。現代において、光を操るということがどういうことなのかを総合的に考えた結果の機能です。EVFならではの良さを最大化できる機能でもあります。

――ハイライト&シャドーコントロールは、ハイライトとシャドーの2つのコントロールですが、もっと細かくトーンカーブを変更できるようにはしませんでしたか?

芳賀:今回はそれには対応していませんが、ご要望を聞かせて頂きながら次の機種などで対応するかどうか検討していきたいと思います。

コンティニュアスAFで4.2コマ/秒の動体追尾を実現

――今回、AFはどれくらい高速化していますか?

日暮:E-P3で世界最速AFと申し上げて「FAST AF」という名前を付けましたが、これはシングルAFが最速になったというのがトピックでした。E-P1の頃から見ると格段に速くなっています。ただ、動体追尾を含めたコンティニュアスAFの性能はどうなのかというと不十分でした。実際に測定してみると、イメージャーAFでは他社様を含め、せいぜい2コマ/秒くらいしか出ていないのです。これが2011年までのモデルの実力でした。

 それに対して、OM-D E-M5は最大4.2コマ/秒で被写体に追従します。これがAFでは一番の売りになります。またイメージャーAFの場合、各社とも追尾機能は搭載していると思います。今回はそれを連写中にも追従するようにしています。そのため、動体追尾と合わせて3次元の動きにも対応できることから「3Dトラッキング」として訴求しています。

日暮正樹氏(AFを担当)。「運動会などでは、ぜひコンティニュアスAFを試してもらいたいです。強力な手ブレ補正と合わせて、世のお父さんの良い武器になるでしょう」

――コンティニュアスAFを高速化できた要因はどのあたりにありますか?

日暮:デバイスの面とメカの面がありますが、デバイスではセンサーからの読み出しが非常に速くなっていることが一番大きいですね。E-P3に比べて倍となる240fpsで読み出しています。メカではシャッターの性能もE-P3からアップしています。これらのデバイスが揃った上で制御でどこまで詰めていけるかというところがポイントです。またレンズの駆動速度も向上しています。これらを統合して最大4.2コマ/秒の動体追従AFが可能になりました。

――レンズ側の高速化について教えてください。

日暮:最新の「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ」ですと、レンズ内のアクチュエーターが強力になったことでAF駆動が速くなっています。加えて、ボディとレンズの間の通信も同期を高速化することで以前のレンズに比べて速くなっています。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZとの組み合わせで世界最速のAFが実現する

 OM-D E-M5のシングルAFは、位相差AFのデジタル一眼レフカメラも含めて世界最速を更新しています。コンティニュアスAFもミラーレス機ではトップレベルの実力を持っていると考えています。

 現在、OM-D E-M5で最速なのはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZですが、MSC対応レンズであれば、コンティニュアスAFの速度は従来のカメラよりも速くなります。

――OM-D E-M5ではシャッターボタンを押してからAFが起動するまでの時間も短縮しています。

日暮:これはファームウェアの改善による部分が大きいので、機種ごとに処理をを少しずつ削るなどして高速化しています。タイムラグということでは、半押し状態からシャッターが切れるまでの時間と、シャッターボタンの一気押しによるAFも含んだ時間の2種類ありますが、従来機種からはどちらも向上しています。

EVFにOM-4の表示を再現

――EVFに「OMスタイル」という表示を採用しています。

芳賀:EVFの表示は「OMスタイル1」、「OMスタイル2」、「高倍率スタイル」の3つから選択できます。OMスタイル1では画面下部のブルーのエリアに撮影情報を表示させていますが、これは「OM-4」のファインダーの表示スタイルになります。OMスタイル2は、OMスタイル1のブルーの部分をブラックにしたもので、フォーサーズ機の「E-5」を踏襲しています。高倍率スタイルは、OMスタイルで下部にあった撮影情報の部分まで撮影画像を表示するモードです。これにするとファインダー倍率を1.15倍に高めることができます。

EVFでは3つの表示スタイルを選択できる

杉田:撮影画面の中に撮影情報を表示する背面モニターと同じ方式が使いやすいというユーザーもいらっしゃると思います。一方で、撮影画面から表示をすべて外に出すという表示方法も提案させて頂いたということです。それで3つから好きなものを選べるようにしました。

鯛中:こうした表示もOMとしてこだわった部分です。表示部分のフォントも当時のOMを参考にして新たに作り直しています。このあたりも見て頂けるとうれしいですね。

――EVFの高速表示モードとはどういったものですか?

 豊田:今回から搭載した機能になります。通常の表示モードと高速表示モードの違いは、センサーからの出力フレームレートが2倍になっている点です。さらに画像処理も2倍速で行なっているので、表示タイムラグが半分になるメリットがあります。

 フレームレートを2倍にするためにフレーム毎のデータ量を減らしており、ややモアレが多く見える場合がありますが、出力フレーム毎に異なるラインの画素データを交互に読み出して表示することにより、解像劣化やジャギーの発生を極力抑えており、実用的な画質に仕上げています。もちろん、高速表示モードであっても記録される画質は影響ありません。

144万ドットのEVFを内蔵する EVFユニット

――今回背面には有機ELパネルを採用しました。今後は有機ELパネルの採用を進めていくのでしょうか?

芳賀:今後有機ELパネルを使っていくという決定は特にありません。そのときそのときで最適なデバイスを選択していくということです。今回は有機ELパネルがOM-D E-M5に適しているとの判断で採用しています。有機ELパネルはE-P3でも採用していますが、色の再現がきれいということで、しっかりきれいな映像を見てほしいと考えて採用しています。

タッチ式のチルト式有機ELパネルを採用

――有機ELパネルは液晶パネルと違ってバックライトのためのスペースが不要です。ボディの薄型化にも貢献していますか?

芳賀:パネルの厚さが減った分、薄型化に貢献しています。

――有機ELパネルは液晶パネルに比べて高価なのでしょうか?

芳賀:コスト面では高いデバイスになっていますね。

ボツになったアートフィルターは今後復活の可能性も

――今回、新たな「アートフィルター」を3種類追加しました。まず、ポスタリゼーションのような作風になる「リーニュクレール」ですが、ユーザーから要望が多かったのでしょうか?

豊田:リーニュクレールに関してはどちらかというとフィードバックを頂いたものというよりも、我々から提案する世界観の拡充といえます。今までは写真的な表現を突き詰めてきましたが、ドラマチックトーンあたりから少し絵画的な表現までテリトリーを広げようということになり、その1つです。一方、マゼンタを強調した「クロスプロセスII」やモノクロ化した「ドラマチックトーンII」についてはフィードバックを頂いた中で“こういうバリエーションも欲しいね”という話がありまして、それを具現化していったものになります。

イラストテイストになる「リーニュクレール。IとIIは効果の強度が異なる

 

全体がマゼンタ調になる「クロスプロセスII」も追加された

――その「ドラマチックトーンII」ですが、これは従来のドラマチックトーンを単純にモノクロ化したものと考えて良いでしょうか?

豊田:はい。基本的には色を抜いている処理になります。もともとドラマチックトーンは色で作風を作るという面もありましたが、ドラマチックトーンIIではモノクロ写真にドラマチックトーンの効果をかけることで、今までにないほどモノクロ写真の表現を広げられるのではないか、という発想から開発に着手しました。単純にドラマチックトーンをモノクロ化したように見えますが、モノクロ写真にマッチしたドラマチック効果をかけるように最適化を施しています。

印象的なモノクロ写真になる「ドラマチックトーンII」も新搭載

 アートフィルターに関してはどのモデルからどのフィルターを積むということよりも、どちらかといえばアートフィルターの世界を少しずつ広げていこうというスタンスです。

 アートフィルターを導入してからユーザーには非常に好評を頂いていますので、やはりこれは続けていき、育てていくというシナリオを描いています。どのような順番でどの機種から搭載するのかという点に関しては、画像処理エンジンとも密接な関係がありますので、順番に出していこうというなかで今回これらのフィルターを搭載することにしました。

 新しい提案をするとユーザーからフィードバックが来ますので、そのなかで世界観を広げるのに良いねと解釈したフィルターについては、バリエーションを広げていく形を採っています。

 本当にいろいろなご意見が数多く寄せられるのです。そういった中で新しいフィルターとして成立するなら新しいフィルターとして提供しますし、バリエーションという形で、色や作風を変えることでI、IIという呼び方で同じ名前を付けたりして整理しながら進めているイメージですね。

OM-D E-M5に搭載されているアートフィルター

――まだ採用されていないフィルターはどれくらいあるのでしょうか?

杉田:それは何百種類もあります(笑)。その中から試行錯誤しながら1つの作品として使えるフィルターができたというときに実装することにしています。我々としては作った数というよりも、写真を撮ったときの完成度の高さが重要だと考えています。他社さんのようにこんなにたくさんありますよ、というように数で勝負することはしません。

豊田:例えば画像処理エンジンの能力が関係しているフィルターなどは、今のエンジンでは無理だけれども、次の世代のエンジンには仕込めるというものも同時に進めています。今はボツになっていても次に日の目を見るかもしれませんので、なかなかどんなものがあるかは提示が難しいですね。

――今回、新機能として「ライブバルブ/ライブタイム」が加わっていますがどういったものでしょうか?

豊田:これはバルブ機能ですが、途中経過がEVFや背面モニターで確認できるようになっています。例えば打ち上げ花火を撮る場合に、どのタイミングでシャッターを閉じれば良いのかということは従来なかなかわかりづらかったと思います。

ライブバルブ/ライブタイムの概要

 この機能を使うと何発の花火が入っているかがバルブ撮影の途中で見ることができます。星や夜景も経過を見ながらバルブで撮影できるので、ぜひ楽しんで頂きたいですね。更新の間隔も選べますので、紙芝居のように経過を見ることができます。若手の開発者が提案して自ら作り上げた、開発者魂のようなものが詰まった機能です。

――動画機能の進化点を教えてください。

豊田:センサーからの読み出しが高速化したことによる動体歪み(ローリング歪み)の量が大幅に軽減しています。センサーの読み出し速度が2倍になっているので、歪み量は半減しているといえます。また動体歪みは手ブレでも発生しますが、今回はリアルタイムでメカによる手ブレ補正が可能になりましたので、トータルとしての違和感という意味では2倍、3倍というレベル以上に改善されていると思います。

 また撮像素子からの読み出しの工夫や画像処理の工夫で動画時のジャギーの発生も改善しました。

動画時のジャギーやローリング歪みを低減した

外観には銀塩OMの「デルタカット」などを継承

――銀塩OMのデザインテイストを踏襲することに決めた経緯を教えてください。他にも幾つかの案があったとのことですが。

鯛中:OMあるいはファインダーを光軸上に置いたトラディショナルなスタイルで行こうということが決まってからはあまり変わってはいませんが、それまでは紆余曲折ありました。EVFを色々な場所に付けてみたり、ちょっとお見せできませんが全く違うデザインも考えました。OMのスタイルで行くことが決まると、開発陣が“わぁ”となってブレずに進んでいきました。デザインもそのときからほとんど変わっていません。

OMのスタイルで行くことが決定してからのデザイン検討イラスト

杉田:常に新しいカメラを作るときには様々なデザインから絞り込んでいきます。今回のコンセプトとして、PENとは違ったシステム性を備えた本格的な写真を撮って頂くカメラというところで、どんなレンズ、どんなアクセサリーもしっかり使えるということで、OMのスタイルにしました。

 OMという名前を付けるからには、我々も相当の覚悟と技術的な進化を盛り込まなければなりません。そこで、先ほどの手ブレ補正機構、AF、EVFなどがベクトルとして合致していきました。

――外観デザインは元になった具体的な機種があったのでしょうか?

鯛中:特に特定の機種をモデルにしたわけではありません。“OMというカメラが目指したラインにある現代のデジタルカメラ”を作ったと理解して頂ければと思います。OMが持っていた部分的な要素は踏襲する、あるいは現代版に置き換えています。

鯛中大輔氏(デザイン全般を担当)。「銀塩OMの思想を引き継いだ“現代のOM”です」

杉田:OM-D E-M5は、「OMの復刻ではなく復活」だと我々は言っています。昔あったものを復刻させるつもりは全くありません。デジタルにした上で復活させるつもりで作りました。単にまねをするわけではないということです。

――OM-D E-M5は外観にも銀塩OMのテイストを受け継いでいるのが特徴ですが、どのようにデザインが決まったのでしょうか?

鯛中:OMは1桁機ですとOM-1、OM-2、OM-3、OM-4とありまして、銀塩OMを支持して頂いているファンの方は非常に多いですね。デジタル時代になってもかつてのOMを使っていらっしゃる方もいます。

 それで我々も“OMとは何者ぞ”というところから入らなければならなかったのですが、OMファンの方はざっくり分けるとOM-1/2派とOM-3/4派の方に分かれるようです。そうすると、ボディシェイプとしてどちらで行こうか? という話にもなってきます。しかし、我々はシェイプの部分はもちろん注力していきますが、それよりもOMの思想というものを引き継いで、それをモダナイズしていくというデザインの方向性に今回トライしました。

OMシリーズのカタログ。上のカメラは左からOM-4、M-1(OM-1の前身)、OM-D E-M5

 OMの思想には幾つかあって、語り出す人は社内にもたくさん居ます。マイOMを持って、「OMってものはこうなんだ!」と言いに来る社員がたくさんいました(笑)。私はOMの世代ではなかったので、しっかりそういう声も活かしながらデザインに当たりました。

 今回我々が大事にしたことは3つあります。まずは小型軽量のボディ。当然デジタル時代になっても小型軽量でなくてはなりません。2つめが先ほども申し上げたPERFECT CONTROL OF LIGHTSの部分ですね。撮影者の意図をどう光のコントロールで写真に残すかということです。これは静止画もそうですが、動画にも当てはまることです。3つめは「バクテリアから宇宙まで」というOMのキャッチフレーズに表されている多彩なシステムです。パワーバッテリーホルダーを分割式にして対応させるといったことを行なっています。

 またOM-D E-M5はデジタル時代でEVFの載るカメラですから、ファインダーはどこにでも置けるんですね。そのときに、OMが理想としていた撮影者の意図をどう写真に込めるかという部分で、1つの理想型としては光軸のセンターにファインダーが来るということがあると考えました。

光軸の真上にEVFを配置している

 頭の部分は、ペンタプリズムが入っていないのにペンタプリズムの形をしています。我々デザインセンターとしては、この部分に必然性をそのまま表現していると考えています。というのも、5軸手ブレ補正のジャイロセンサーがペンタ部の前の部分に入っています。このセンサーは光軸上のセンターにあることで、手ブレ補正の効きを担保しています。以前はプリズムでしたが、今も昔も一番大切なものがこの部分に入るということに変わりはありません。

ペンタ部の形状も中のパーツに合わせたもの OM-D E-M5の分解モデル

――今回、例えばOM-1のように比較的尖ったペンタ部にはしませんでした。

鯛中:それも機能美だと思います。ペンタプリズムがこういう形をしていて、外観もこうなったのだと思います。OM-D E-M5でも内蔵物の外形を直線で繋いでいくと、その線が面になり、この形になります。内蔵物とは関係なく形状として尖らせることは可能ではありますが、それをやっても意味がないと考えています。中身に対して必然性のある形を与えています。

OM-D E-M5のカットモデル

――そうしますと、ペンタ部に内蔵ストロボを搭載することは難しくなりますね。

鯛中:そうですね。ストロボはそれなりのボリュームにはなります。これを含めようとすると相当大きなものになってしまい、レイアウト上搭載は難しくなります。

OM-D E-M5では、防塵防滴のクリップオンストロボを同梱している

――そのほかにOMのテイストを反映させた部分はどういったところでしょうか?

鯛中:当時、「デルタカット」と呼ばれるデザインのモチーフがありました。これはペンタプリズムの形状を含むボディ全体のカットラインのことで、全体が精密感のある調子になり小型化ができます。カメラをコンパクトに仕上げていく上で、当時はこの思想で仕上げていきました。これを今回も踏襲しています。

 OM-D E-M5では、ボディの角の部分などにデルタカットを採用しています。上面にある動画ボタンの部分も三角形に切ることで、シャッターボタンと動画ボタンへのアクセス性を高めています。

OM-4に見られるデルタカット
OM-D E-M5では、動画ボタンの部分を斜めに切り落としている これにより、シャッターボタンなどへのアクセスがしやすくなる

 また、マウント左下のエプロン部分にもデルタカットを施しています。システム性という部分で、フォーサーズのような大きなレンズや長玉を使う際の取り回しを良くするために考慮したところです。

エプロンの左下も斜めに切り落とした

 それから、銀塩のOMには独自の比率がありまして、幅136mmが使いやすいということで当時のカタログなどでもそれを謳っていました。その比率は我々も素晴らしいととらえていたのですが、フィルムから撮像素子になり、フィルム由来の内蔵物も無くなりましたので、デジタルの新しい比率をを作っています。しかし、使いやすさをスポイルしてはなりませんのでグリップスペースは銀塩OMと同じ幅にしています。使いやすさの思想も引き継いでいるということです。

OM-D E-M5のグリップ幅は銀塩OMに合わせている

――デザインの部分で、ここは譲れないという部分があれば教えてください。

鯛中:我々デザインセンターがこだわったのは、現代の使い方への最適化です。同じデザインで復刻しただけでは、単にレトロなカメラというだけになってしまいます。例えば革張りの部分ですと昔はシート状の革を貼り付けるだけでしたが、今回はラバーの端を三次元的に折り込む工夫をしています。

 高級な革製品で端面の処理に手が込んでいるのと同様、こうした部分は説明されなければ気がつかないかもしれませんが、カメラ全体を見たときの「あ、なんかいいね!」の“なんか”という部分に繋がる“微に入り細に入り”の部分にはこだわりました。

――グリップの部分は、ボディカラーによってラバーのパターンが異なりますね。

鯛中:色を選ぶところに意思を込めたいと考えました。つまりボディカラーに役割を持たせたということです。シルバーでツートンのカラーは、よりクラシカルに見えてきます。そちらを好まれるお客様もいらっしゃいますので、それを後押しする意味でシルバーは革調のラバーを採用しました。一方ブラックは、レトロではないということをしっかりと表現するために、スポーツ感のあるパターンを採用しました。

シルバーはクラシックなタイプのラバーを採用 ブラックは斜めのラインでスポーティなイメージを出した

――ところで、ブラックとシルバーではどちらが人気ですか?

杉田:割と極端に分かれるかなと思っていたのですが、両者に大きな差はなく、国内では若干ブラックが多いかなという印象ですね。当初はブラックに偏ると見ていたのですが、予想よりもシルバーが健闘している状況です。

シルバーも健闘しているという

――OM-D E-M5の支持における男女比は?

杉田:PENに比べても、やはり男性が多いですね。女性にも受け入れて頂けるものだと考えていますので、そうした訴求もしていくつもりですが、現時点では男性の人気が高いということです。

――パワーバッテリーホルダー「HLD-6」は上下分割式ですが、上のグリップのみが欲しいというユーザーもいると思います。単品販売の可能性は?

芳賀:今のところその予定はありません。今後お客様の要望を聞きながら、検討はしていきたいと思います。

HLD-6を装着したところ
HLD-6は分割式を採用 上部のグリップのみを取り付けたところ

――OM-D E-M5は防塵防滴仕様になっています。

芳賀:フォーサーズ機の「E-5」と同等の防塵防滴設計を採用しており、防塵防滴の評価もE-5と同じ項目で実施しています。

 今回はボディのフレームにマグネシウムダイキャストを使用しています。防塵防滴を実現するためには、シーリングのクッション材をつぶしながら構成するのでカメラとして強いものが必要になるからです。この強度によって防塵防滴を設計的に保障しています。

ボディにはマグネシウム合金を採用 防塵防滴のためのシーリングを施している

――東日本大震災とタイの洪水の影響はありましたか?

杉田:決して影響がなかったわけではありませんが、我々の製造現場もデバイスのメーカーさんも何とか生産にたどり着いたという状況ですね。ボディの生産はこれまで通り中国で行なっています。発売の時期ははじめからこのあたりを考えていまして、例えば半年遅れたといった話ではないですね。

OM-Dシリーズは“カメラの王道”を目指す

――今後OM-Dをシリーズとして出していくと思いますが、どのように展開していくのでしょうか?

杉田:もちろん、E-M5を単発として終わらせるつもりは全くありません。PENが進化してきたようにOM-Dも進化させていくつもりです。ただ、PENとはまた別の進化を考えています。システムを楽しんで、自分らしい一枚を残して頂くというコンセプトに適するような形で進化を考えています。

杉田幸彦氏(商品企画及、商品戦略)。「何かに取って代わるというものではなく、こういうスタイルの製品もあるということを使って頂きながら、この世界観を楽しんで頂ければと思います」

 OMのテイストでしっかり作っていくことが一番重要ですし、開発しながらゆえにわかってくることもあるでしょう。そこからどんどんフィードバックしつつ、ユーザーの声も聞きながらより完成度を上げていきます。ミラーレスを提案させて頂いたのは、技術面ではデバイスの進化を直にカメラに反映できる利点があるからです。これはまだまだデジタルカメラとして進化できることがあると思っています。

 EM-5の上位モデルや下位モデルといったことももちろん考えてながらやっていきますが、まず王道として何をやっていくかということが重要だと考えています。

――E-5はプロ機ですが、OM-Dシリーズでもそういったプロ機を出す可能性があるのでしょうか?

杉田:単純に機能を載せればプロ機だ、というものではないと考えています。サポート態勢にしてもいろいろなものを準備しなくてはなりません。可能性はありますが、それなりに慎重にやっていかなければならないと思っています。プロ機に限らず技術を構築して、カメラとして一番重要なものをしっかりと載せていきたいとは思っています。

E-5(2010年10月発売、有効約1,230万画素)

――海外では比較的“カメラらしいデザインのカメラ”が好まれる傾向があると聞きますが、OM-D E-M5には海外でのシェアアップという狙いもあるのでしょうか?

杉田:日本、台湾、韓国などアジア地域がミラーレスカメラの市場をリードしているのは確かです。それから遅れて、アメリカやヨーロッパが立ち上がりつつあると言ったところです。従来の一眼レフカメラとスタイル的にさほど変わらないといったところが、もしかしたら受け入れてもらえる要素になるかもしれません。

 もちろんシェアは引き上げたいですが、OM-D E-M5がその部分を取り立てて狙ったものではありません。海外だから、日本だからということではないと考えています。

 我々がミラーレス機を出した後にも、多くのメーカーさんがミラーレス市場に参入しました。これによって市場がお陰様である程度活性化してきています。これから他のメーカーさんもどんどん入ってくると思いますので、ミラーレスのカテゴリーでのシェア争いは激化してくるでしょう。しかしその中で我々は先行してやってきましたから、ずっと1位で居続けることを目標にしています。

インタビューはオリンパス技術開発センター石川(東京都八王子市)で行なった




(本誌:武石修、インタビュー撮影:國見周作)

2012/4/18 11:40