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ソニーに訊く「トランスルーセント・ミラー・テクノロジー」の秘密


 ソニーが9月に発売した「α55」と「α33」は、世界初となる透過ミラーを搭載したレンズ交換式デジタルカメラだ。「トランスルーセントミラー・テクノロジー」と呼ばれる固定式透過ミラー技術により、α55ではAFが追従しながら10コマ/秒という高速連写を可能にしている。

左からソニーパーソナルイメージング&サウンド事業本部商品企画1部3課プロダクトプランナーの鈴木亮氏(商品企画を担当)、同機構設計2部4課メカニカルプロジェクトリーダーの児玉信之氏(トランスルーセントミラー・テクノロジーおよびミラーボックス関連を担当)、同イメージング第1事業部商品設計2部1課の足立雄治氏(電気関係を担当)

 今回は、トランスルーセントミラーテクノロジーのメリットや仕組みについてソニーに聞いた(インタビュアー:小倉雄一)※本文中敬称略

AF追従で10コマ/秒の高速連写が可能に

――まずはトランスルーセントミラー・テクノロジーを搭載したα55/33の概要を教えてください。

鈴木:αでは、2010年6月に新しいEマウントを採用したコンパクトなレンズ交換式デジタルカメラNEX-5/3を発売しました。こちらはいろいろなところに持ち出していただき、日常をハイクオリティに切り取っていただきたい、という思いで創り出した商品です。一方、α55/33などAマウントの製品は、「お客さまの思い描くイメージ」を実現する、“この瞬間を撮りたい”という思いを叶えるためのシステムとして用意しています。われわれは「Focus between the moments」というキーワードで今回商品開発を進めていたのですが、瞬間瞬間の間にすらあるかもしれないシャッターチャンスをとらえていただきたいという思いでα55/33を作りました。

 メインストリーム、いわゆる普及機の価格帯になりますが、今までの延長線上にはない非常に高機能で、瞬間をよりハイクオリティに切りとっていただけるような機能を盛り込んでいます。ハイアマチュアのお客さまでも十分に楽しんでいただけるようなスペックに仕上げているというポイントと、「AUTO+」(オートアドバンス)というカメラをより簡単に使いこなせる新機能も入れておりまして、初めてレンズ交換式デジタルカメラに触れるお客さまも簡単にしっかりと撮っていただけるモデルです。

トランスルーセントミラー・テクノロジーを初めて搭載したα55(左)とα33

――では今回のトランスルーセントミラー・テクノロジーの概略を伺えますか。

鈴木:従来の一眼レフカメラではメインミラーからカメラ上部の光学ファインダーに光を導き、被写体を捉えます。それと同時にメインミラーの中央部がハーフミラーになっており、メインミラーの後ろにあるサブミラーを経由して、カメラ下部のAFセンサーに光を届け、位相差検出方式のAFによるピント合わせを行ないます。シャッターを切るとメインミラーが跳ね上がってイメージセンサーに光が当たり、露光が行われるという仕組みになっています。

 これに対し、トランスルーセントミラー・テクノロジーではミラーが固定され、そのミラーが全面透過型になっています。ミラーは上下に動きませんので、つねにイメージセンサーに光を送り続けることができる。同時に、カメラ上部に配置された位相差検出方式のAFセンサーへ常に光を届け、AFセンサーが被写体を捉え続けることができるようになっています。これがトランスルーセントミラー・テクノロジーの大きな特徴です。

 いままでの一眼レフカメラだと、露光の際にミラーを跳ね上げないといけないので、AFセンサーに届く光が途切れていました。当然のことながら、非常に短い時間ですがミラーの上げ下げに時間が必要です。トランスルーセントミラー・テクノロジーではそれがまったくなくなるので、α55の最大の特徴であるAF追従の10コマ/秒の連写がこのボディサイズで実現できたわけですが(α33は7コマ/秒)、そういった高速連写に非常に有利な仕組みになっているのが、まず1つめの特徴です。

 2つめは、動画撮影中も位相差AFが使えることです。イメージセンサーを使ったコントラストAFではなく専用AFセンサーを使った位相差AFが使える。コントラストAFの場合、高速で動く被写体は苦手で、追い続けることが非常に難しいですが、位相差AFの採用によりそういった場面にも強くなっています。位相差検出AFセンサーを使った動画撮影を実現させたのはレンズ交換式デジタルカメラとして世界初となります。

トランスルーセントミラー・テクノロジーと従来の一眼レフカメラの違い α55のミラーボックス(側面から見たカットモデル)。マウント(左)から入った光は斜めに配置したトランスルーセントミラー(透過ミラー)で、上部の位相差AFセンサーと右の撮像素子に分光される

 3つめが、「Tru-Finder」という電子式のファインダー(EVF)を採用しているということ。視野率は100%、視野角も非常に広く、α900を超えないまでも迫るくらいの広い視野角を持ち、暗所でも非常に見やすいように仕上げています。また水準器を搭載し、グリッドラインも表示できます。非常に見やすくて、かつ広く、便利な機能が盛り込まれたファインダーが位相差AFで使える、というのが大きな特徴になっています。

 われわれは2008年のα350/300から「クイックAFライブビュー」という位相差AFを使ったライブビューを導入したのですが、今回新たに液晶モニターのみならずファインダーでも位相差AFを使ったライブビューを使えるようにしたのが特徴です。

「ペリクルミラー」とは全く異なる

――トランスルーセントミラー・テクノロジーの発想というのは、いつごろから出てきたのでしょうか。

鈴木:具体的なタイミングは申し上げられませんが、基礎検討はずいぶん前から行なっておりました。過去、「ぺリクルミラー」と呼ばれるハーフミラーを採用したフィルムカメラがありましたが、「トランスルーセントミラー・テクノロジー」はこれとはまったく異なります。

 ペリクルミラーは光学ファインダーに光を届けながらフィルムに光を通すといったものでしたが、今回のトランスルーセントミラー・テクノロジーは「AFセンサーに光を途切れさせないようにするにはどうしたらいいか」という発想で作られています。結果として透過ミラーと位相差AFセンサーの組み合わせが最適ではないかと考え、研究開発を進めたのです。

――AFセンサーに光を常時届けるためには、トランスルーセントミラー・テクノロジーが絶対に必要だったのでしょうか?

児玉:私はミラーボックスの設計を担当したのですが、従来の一眼レフカメラのミラーボックスは非常に複雑な機構を持っています。高速連写を実現させるためにどんどん複雑になっていき、同時にコストも高くなってしまいます。そこをトランスルーセントミラー・テクノロジーのような新しい技術を開発すれば安価なコストでシンプルなモノができるというのはアタマの中にはあったので、ぜひ実現させようと開発を進めました。

鈴木::また耐久性も含め厳しい条件が積み重なっていくと、それだけカメラのサイズも大きくなっていきます。

マウントからトランスルーセントミラーを見たところ 撮像素子側から見たところ
ミラーボックスの両側面

――パタパタ跳ね上がる従来のミラーボックスでは、ミラーが下りてる間にAF測距を裏でやらないといけないので、さらなる高速連写を実現させようとすると、ミラーを安定して動かすためにバランサーをつけたり、壊れにくい部品を使ったりと、そういうもろもろのことが大きな開発負荷になるわけですね。

児玉:たとえば50万円クラスのハイエンドデジタル一眼レフカメラだったらできるかもしれませんが、このクラスのカメラで実現しようとすると、なかなか難しいのです。

――以前に7コマ秒の連写もやられてましたよね。

足立:α550では7コマ/秒の連写機能を搭載しましたが、この連写ではAFは1コマ目で固定になっていました。今回のα55/33はトランスルーセントミラー・テクノロジーを搭載することで、10コマ/秒の連写中にもAF追従が可能となり、大きなアドバンテージになっています。

児玉:α550の7コマ/秒以上を狙おうとすると、やはりメカ的にブレークスルーが必要で、より高速でミラーを駆動できるメカニズムが必要であったり、ミラーバランサーのような大がかりな部品でミラーを安定して止める必要があります。コスト、大きさ、重さに反映するような形で実現させるよりも、新しい発想の技術で可能性を追求したいと考えました。

――別の言い方をすると、α55/33のようなメインストリームのカメラでも7コマ/秒以上の連写がほしい、ということでしょうか。Webでα55/33の広告を見かけますよね。子どもがジャンプしていたり。ああいう世界ですよね。そんなにカメラに詳しくない、カメラの撮影がそれほど得意ではない親が、カメラ任せで、AF追従の連写を使うことによって、新しいシャッターチャンスを生み出す、発見するという感じでしょうか。

鈴木:まさにおっしゃるとおりですね。

従来のクイックAFライブビューより画質が向上

――ではα550などの従来のクイックAFライブビューとはどのくらい違いますか?

鈴木:α550などのクイックAFライブビューはカメラ上部のペンタミラーの後ろにライブビュー専用センサーをもっていて、メインミラーを反射した光が、このライブビュー専用センサーに導かれます。そうすることによって背面液晶でも一眼レフカメラならではの位相差AFが使えて撮影ができるという大きな特徴を持っていました。ただ、そのときはファインダーはブラックアウトしてます。また、ライブビュー専用センサーはAPS-Cセンサーよりずっと小型なのに対し、トランスルーセントミラー・テクノロジーではメインイメージセンサーを使っていますので非常に高精細な画質が得られます。

従来のクイックAFライブビューとの違い

鈴木:それから、従来のクイックAFライブビューでは、ライブビュー中はミラーアップしますので、AFセンサーに光が途切れてしまうんですね。α550のクイックAFライブビューはあくまでも従来の一眼レフカメラの機構の延長線上にあるライブビュー機能ですが、トランスルーセントミラー・テクノロジーではより進化して、AFセンサーに光をつねに送り続けるというのが大きな特徴です。被写体からの光がAFセンサーに対してつねに途切れないというブレークスルーを盛り込んだのが大きな変化点ですね。

足立:ほかにもα550の方式と比較して、100%の視野率というのが、今回のトランスルーセントミラー・テクノロジーを使ったライブビューの大きなメリットになりますね。従来は約90%でしたので。

――α550の方式は従来技術を活用しつつ、なんとか位相差AFとライブビューを両立しようとしていたのに対し、トランスルーセントミラー・テクノロジーはスタート地点からして違っており、発想の深さ、新規さというところではまったく新しいブレークスルーであると言うことでしょうか。

鈴木:そういえると思います。

――α550の方式とトランスルーセントミラー・テクノロジーの開発は、ある時期には同時並行的に行なっていたのでしょうか?

児玉:トランスルーセントミラー・テクノロジーも昔から開発のアイディアとしてはあったのですが、具体的な商品化は違う時期からスタートしています。

鈴木:基礎検討と商品化のスケジュールは違ってきますね。

足立:ただ、技術として基礎検討の期間が重なっていたかといわれれば、Yesということになると思います。

トランスルーセントミラー・テクノロジーとミラーボックスを担当した児玉氏

――トランスルーセントミラーの角度は光軸に対して45度ではないのですね。

児玉:技術的な情報なのでお答えできません。

――分光比率はどれくらいですか。

鈴木:実際の数字はお答えできません。ただ当然のことですが、AFセンサーへはAFに必要十分な光の量だけを送っており、撮影光にはほぼ影響がないといえると思います。

――トランスルーセントミラー・テクノロジーのハーフミラーが光を2つに分ける技術的な解説を簡単にいただけませんでしょうか。

児玉:特殊な光学フィルムの上に、大変薄く成膜された光学レイヤーがありまして、透過する光と反射する光を分ける工夫がされています。

――それは刑事ドラマに出てくる取調室のハーフミラーと同じなんですか?

児玉:厳密にいうと違います。α55/33のトランスルーセントミラー・テクノロジーは画質の劣化が許されないので、フラットな光学特性を実現させています。

――そのハーフミラーを実現させる光学レイヤーは一緒なのですか?

児玉:それはまた違います。

――いま「光学的にフラットな」というお話がありましたが、イメージセンサーに届く光としては、ハーフミラーはあたかも存在しないかのような、ということですね。

児玉:そうですね。影響ないような特性にしています。

――撮影に使われる光に対して、ハーフミラーの影響はゼロという理解でよろしいのでしょうか。

児玉:イメージセンサーも今回アルゴリズムも含めてトランスルーセントミラー・テクノロジーとの組み合わせで最適にチューニングされています。感度もISO12800まで使えるクオリティに仕上げていますので、撮影した画質に影響はありません。

α55/33ではシャッターユニットも新設計し小型化した

――ハーフミラー内部の反射でゴーストなどは発生しないのでしょうか。

児玉:はい、限りなくゼロに近づける処理がされており、ほぼないと言えます。

――イメージセンサーをトランスルーセントミラー・テクノロジーに最適化しているというお話がありましたが、画像処理エンジン「BIONZ」も、トランスルーセントミラー・テクノロジーに合わせた処理になっているのですか。

鈴木:今回採用したイメージセンサーのExmorもまったく新しいものですし、画像処理エンジンとしてのアルゴリズムも新規開発しています。その組み合わせでより高感度でも低ノイズで解像感も維持できるような処理をしています。トランスルーセントミラー・テクノロジーと新しいExmorの組み合わせで最適な絵が出せるように、それぞれを最適化しているという説明でご理解いただけますでしょうか。

足立:トランスルーセントミラー・テクノロジーの魅力を最大限に引き出すために、10コマ/秒の高速読出に対応したExmorを新規に開発したというのも、大きなポイントです。

――BIONZも高速化しているのでしょうか?

鈴木:そうですね。α55の場合、16.2メガの画像を10コマ/秒で処理しますので。

新開発の撮像素子ユニット α55の画像処理エンジン「BIONZ」

ボディの小型化にも寄与

――トランスルーセントミラー・テクノロジーを採用すると、なぜカメラを小型軽量化できるのでしょうか。

鈴木:ミラーを駆動させる必要がなくなったことで、ミラーボックス周りをゼロから新規設計で開発していますので、その際に非常に小型に仕上げたというのもありますし、シャッターユニットもまったくの新規設計で小型化を実現できています。そういった1つ1つの積み重ねで、ようやくα55/33のサイズにすることができました。

α550から小型、軽量化を図っている

――小型軽量化の願望は、開発陣のなかでかなり大きなウェイトを占めていたという理解でいいのでしょうか。

児玉:そうですね。一眼レフカメラはAFは速いけど大きくて重いというのがユーザーの大きな不満であると思いますので、AFも連写も速く、なおかつ小型軽量であるカメラを提供したいと考えました。

――一眼レフカメラのスタイルにEVFを採用することに関して躊躇はありませんでしたか? 「Aマウントのカメラに光学ファインダーは必須だ」といった社内の守旧派との戦いのようなものはあったのでしょうか。

鈴木:戦いというものではなく、いかにお客様へ今までの延長上にない大きなベネフィットを提供できるか、との議論は積み重ねていました。またTru-Finder(EVF)にしか得られないメリットも多くあると考えていました。
 例えば、大きさやコストを抑えた商品に搭載できる光学ファインダーのスペックは視野角も狭くなりますし、暗い所では暗いままに見えるので解像感がどうしても落ちてしまいます。これが解消できるということや、撮影前にホワイトバランスや露出が見えるということ、より見やすいデジタル水準器などのメリットがありましたので、いかにこのメリットを伸ばせるかを議論しました。

――社内で「EVFは絶対ダメだ」という人たちはいなかったのですか。

鈴木:EVFが絶対ダメというよりは、EVFのクオリティをどこまで追求できるかという議論はありましたね。「やっぱりOVF(光学ビューファインダー)のほうがいい」といわれないように、よりEVFのクオリティを高くしていこうという議論はつねにしておりました。

児玉:カムコーダー(ビデオカメラ)だとEVFが当たり前なので、そういう人からすればぜんぜん違和感なかったのではないかと思います。

――Tru-Finderと呼ぶからには、OVFを凌駕するということを目標に、開発陣の一致した考えとしてもっていたのでしょうか。

鈴木:はい、EVFのクオリティをより高めていこうという強い思いがあり、どこまで実現レベルを上げていけるか、リアルに近づけることができるか、といったことは非常に議論を重ねていました。表示応答速度も業界最速を目指して開発し、実際に最速を達成できました。

ミラー平面度の確保に苦心

――トランスルーセントミラー・テクノロジーの開発で、もっとも困難だった点は?

児玉:AFの精度は落とせないので、トランスルーセントミラー表面の平面度を従来のサブミラーと同等以上にするのに大変苦労しました。

α55の分解モデル

児玉:レンズから入った光を正しくAFセンサーに導かなくてはいけないので、ミラーの表面が歪んでたりすると、正しい光が導けない、届かないのです。ですのでどこまでもフラットに、平面度を極限まで追求しました。

――ミラーの材質はガラスなのですか?

児玉:ガラスではありません。特殊光学フィルムですね。

――光学フィルムの平面性を確保するのは難しいのでしょうか?

児玉:ただ単純に置けばフラットになるかというと、それはフラットにはならなくて、いままでのミラーと同じレベルの、サブミクロンレベルの平面度を実現しています。

――従来のミラーでは、平面度を出すのはそれほど難しくなかったのでしょうか。

児玉:ガラスは研磨して平面度を出すのですが、それはある程度の厚さがあるからです。特殊光学フィルムのような非常に薄いものでは、研磨によって平面を出すことはできないので、そのフィルムをうまくキレイに貼ることで平面度を実現しています。

――厚さはどのくらいなのですか?

児玉:ちょっとそれは企業秘密です。

――でもハーフミラーにはよく使われる材料なんですよね。

鈴木:トランスルーセントミラー以外のハーフミラーの材料はよく存じませんが、今回の素材は専用の独自素材になります。

――ペリクルミラーと違うと伺いましたが、どのあたりが違うのでしょう。材質が違うのか、目的が違うのか……。

鈴木:そもそもの目的も材質も異なります。

商品企画を担当した鈴木氏

――発想は似てはいるが非なるものであるということでしょうか。

鈴木:目的がそもそもまったく違いますし、その目的を達成するために必要な性能や要件もまったく異なりますので、実際に使われている技術も異なると思います。

EVFは自社開発で作り込んだ

――今回採用したEVFの特徴や解像度はどうなっていますか?

児玉:フィールドシーケンシャル方式の115万ドット相当の液晶モジュールを採用しています。このモジュールは業務用のビデオカメラと同じモノを採用し、非常に高精細で広い色域があります。ソニー独自のTru-Finderのために、接眼レンズや画の作り込みにかなりの時間を費やしました。

鈴木:接眼光学系含め、ファインダーは自社開発になります。

――α55では10コマ/秒の連写が可能になりましたが、レンズシステムも含め、AF追従性能は万全でしょうか。

児玉:“万全”という言葉の意味にもよりますし、被写体、撮影方法にもよりますので、一言で申し上げづらいところがありますが、従来機種以上の十分なAF追従性能を実現しています。

――蛇行したりスピードが変化したりしても大丈夫ですか?

児玉:いろいろなケースがあるので、一言では申し上げづらいところがあります。

――たとえば70-300mmくらいの望遠ズームで、お子さんが徒競走で走ってくるというシーンなどは?

児玉:状況次第ですが、問題なく撮影できると思います。

α55は、トランスルーセントミラー・テクノロジーの採用でAF追従で10コマ/秒の高速連写を実現

――10コマ/秒連写が独立した「連続撮影優先AEモード」として設定された意図はなんですか?

鈴木:2つありまして、1つめはよりエントリーのお客さま、メインストリームのお客さまにもわかりやすいように、すぐにモードを変えていただけるようにしています。もう1つは、より10コマ/秒の高速連写が出やすいように専用制御されているモードになっています。その瞬間を撮りたいというときは、このモードに設定していただいて、構えて撮りたい1枚を狙うというふうに使っていただけたらと思い、独立モードにしています。

――言い方を変えると、カメラ全体が秒10コマの連写を実現するために一致団結するというか……。

鈴木:最適処理をするということです。

――あるていど機能が固定化されてしまうのですか?

鈴木:最適制御されますので、絞りもシャッター速度も自動制御になりますね。

――10コマ/秒を実現するためには、絞りもあまり絞っていると、コマ速を稼げなくなるし、シャッター速度も速めをキープしなければなりませんね。

鈴木:そうですね。開放絞りがF3.5より明るいレンズはF3.5固定、それより暗いレンズは絞り開放になります。もちろん通常のドライブモードもあります。こちらのほうは最高連写速度は6コマ/秒。そのなかで絞りも感度も自由に変えていただけますし、たとえば流し撮りをしたいというところまでステップアップしたお客さまですと、ドライブモードを使っていただく。そういった幅広さを盛り込んでいます。

――ドライブモードでは最高6コマ/秒ですか。7コマ/秒、8コマ/秒は難しいのでしょうか。

鈴木:今回のメインストリームの機種として、どういうバランスで盛り込んだらよいかという考え方で6コマ/秒に決めています。

――手ブレ補正をオンにすると動画連続撮影時間が大幅に減少するのはなぜでしょうか。

鈴木:消費電力を非常に費やしますので、そのなかで最適な、安定して使えるラインでストップさせていただこうと考えました。

位相差AFの可能性を引き出す開発

――そもそもα55/33って「ミラーレス機」なのでしょうか。なんと呼べばいいのでしょうね。一眼レフカメラではないですよね?

鈴木:そもそもNEX-5/3についても、ミラーレス機との分類の仕方はわれわれ自身はしておらず、α55/33もα900も「レンズ交換式デジタルカメラ」という呼び方をしています。

足立:言葉が大事、というわけではないのだと思います。

――富士フイルムが撮像素子を使った位相差検出AFを実現しましたが、トランスルーセントミラー・テクノロジーの基礎検討段階では、そういう発想もあったのでしょうか。

鈴木:いろいろな技術の検討はしていましたが、トランスルーセントミラー・テクノロジーの発想としては、位相差AFセンサーの力を最大限どれだけ引き出せるか、というポイントを絞って考えました。今回のα55/33には15点測距、中央3点クロスのAFセンサーを新たに搭載しています。

――では、検討段階でコントラストAFの高速化という発想もあったのでしょうか。

鈴木:いえ、位相差AFがもたらすベネフィットはあると思っていて、その力をいままで以上に、限界を超えて引き出すことはできないか、というカタチで検討を進めてきました。

――はじめから位相差AFが前提で、それを発展させていきたかったということですね。

鈴木:はい、そのとおりです。

――トランスルーセントミラー自体にゴミ取り機構はついているのでしょうか?

児玉:ゴミ取り機構は付いていませんが、表面に帯電防止の処理をしてあります。ゴミが付着したとしてもブロアーで簡単に飛ばせるようになっています。また、トランスルーセントミラーは跳ね上げることができますので、ローパスフィルターのゴミについては、清掃できるような工夫はしています。

――ミラー部分のコストは従来型のコストと比較して、いかがでしょうか?

児玉:ほかの部品点数が減っていますので、一概にコスト比較というのは申し上げづらいですね。すべて新規に開発していますので。

ハンディカム部門などとの協力も

――2010年の春にαの開発部隊が新大阪から品川に移ったと伺いましたが、サイバーショットやハンディカムの開発部隊と近くなることで、プラスの効果はあったりしたのでしょうか。

足立:たしかにお互いが近くなったメリットはあると思います。

電気関係を担当した足立氏

足立:たとえば今回導入した、動画のAFをより滑らかに動かすというポイントにおいてもハンディカムの開発陣といっしょに進めていきましたし、そのコミュニケーションが現場で取りやすくなったというのは事実ですね。

――9月10日のα55/33発売から1カ月が過ぎて、ユーザーの声は集まってきていますか?

鈴木:はい、徐々に集まっています。お客様の声を直接伺う機会もあるのですが、ご意見やご好評をいただけています。実際に手にとっていただいて、お客さまの笑顔を拝見し、生の声を聞かせていただくのは非常にうれしいですし、励みにもなりますね。

――大きな手応えをお感じになって、これからもトランスルーセントミラー・テクノロジーをガンガン進めていくぞ、という感じでしょうか。

鈴木:いままでもそうなのですが、われわれのもつ技術進化をより加速させつつ、しっかりと継続的にお客様の声を伺っていきたいと考えております。

新たな価値の提供を

――メインストリーム機に関しては、すべての機種でトランスルーセントミラー・テクノロジーになるわけですか。

鈴木:そこについてもお客さまの声を伺いながら考えていきたいと思っています。もちろんAマウントのみならずEマウントも含めてですが、αとしてどんな価値が提供できるかをずっと考えていきたい。今回はトランスルーセントミラー・テクノロジーという技術を使って新しい価値を提供させていただいたことになります。海外では、お客さまのニーズに応じて従来技術を用いたα580/560も販売してます。

――どのあたりのモデルまでがEVFを採用するのでしょうか? α700の後継機もEVFになるのですか?

鈴木:フォトキナ2010で参考出品として展示させていただいた「アドバンスモデル」には、トランスルーセントミラー・テクノロジーを採用すると説明させていただいています。このモデルは、「α700の後継機」という風には申し上げていません。

ソニーは、トランスルーセントミラー・テクノロジーを搭載したアドバンスモデルの投入を明らかにしている フォトキナ2010で展示したアドバンスモデルのモックアップ



(小倉雄一)

2010/10/25 00:00