写真展

鷹野隆大写真展「距離と時間」

(NADiff Gallery)

©Ryudai Takano, Courtesy of Yumiko Chiba Associates, Zeit-Foto Salon

鷹野隆大は写真、映像による作品で、私たちの慣習を形成する社会的・歴史的なまなざしについての批評的な考察から、「セクシュアリティ」「都市」「近代」等といったテーマを基軸とした作品を多数発表してきました。

1998年から現在まで一日も欠かさず撮り続けている「毎日写真」というシリーズは、「なんとなく気になったもの」だという日々の異なる時間の中で巡り合う、様々な対象を分け隔てなく撮影するというもので、人の眼がその時々で見ているとりとめがない離散的な個別性を扱いつつ、視覚そのものを類型化することへの抵抗をその制作態度から示しているともいえる作品です。

本展では、私たちの世界の多種多様な様態を写し取っている「毎日写真」シリーズと、光をテーマにモノクロ・フィルムで撮影している「Photo-Graph」シリーズから、「距離」「時間」という2つのテーマで選び取った作品により展示構成を行います。

身近な被写体であるという理由から断続的に定点観測し撮影している東京タワー、そしてセルフポートレートによる「時間」をテーマにした作品では、写真を時系列に連続して配置させることで、対象の物質的、肉体的な変質が、写真と写真のあいだに介在しているかもしれない目に見えない差異を感知させ、写真という静止画からとりこぼれた時の経過が汲み取られています。

もうひとつの「距離」をテーマにした作品は、街を行き交う人々の往来や建物が路面に落とす影そのものを捉え、影単体によって生まれる空間の「距離」を写し出そうとするものです。同時に、鑑賞者がどの距離で作品を見るのが適正か、という問いかけもこの作品は内包しており、見る人の身体にも訴えかけるものとなっています。

「時間」「距離」という、いずれも物質的な輪郭を持たない対象について、極めて視覚的なメディアである写真を媒介して顕わそうとする実験的な試みであると共に、鷹野の写真特有の視触的な生々しさの精緻な表現や、人間の気配を感覚させるスナップの魅力も備えた内容となっています。新たな展開へと進み始めた鷹野の新作展をご高覧いただけましたら幸いです。

鷹野隆大「距離と時間」-NADiff

©Ryudai Takano, Courtesy of Yumiko Chiba Associates, Zeit-Foto Salon

©Ryudai Takano, Courtesy of Yumiko Chiba Associates, Zeit-Foto Salon

会場・スケジュールなど

  • ・会場:NADiff Gallery
  • ・住所:東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F
  • ・会期:2016年11月26日(土)〜2017年1月9日(月)
  • ・時間:12時〜20時
  • ・休廊:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)、2016年12月29日~2017年1月3日
  • ・入場:無料

同時開催 鷹野隆大個展「光の欠落が地面に届くとき 距離が奪われ距離が生まれる」

・会場:Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
・会期:2016年11月26日(土)~12月24日(土)
・時間:12時~19時
・休廊:月曜日、日曜日・祝日

作者プロフィール

1963 福井生まれ
2006 第31回木村伊兵衛写真賞受賞
東京都在住

[主な個展]
2015「残影」森岡書店(東京)
2014「2014年1月から比較的最近まで、撮影順に」Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(東京)
2013「香港、新圳 1988」ツァイト・フォト・サロン(東京)
2012「モノクロ写真」 Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(東京)
2009「公開製作46 記録と記憶とあと何か」府中市美術館(東京)
2009「おれと」ナディッフ(東京)
2006「第31回木村伊兵衛写真賞受賞作品展 In My Room」コニカミノルタプラザ ギャラリーC(東京)
2006「イン・マイ・ルーム」ナディッフ(東京)

[主なグループ展]
2016「Internationale Photoszene Köln」ケルン(ドイツ)
2016「夏・終わりとはじまり」東京日本橋高島屋6階美術画廊X(東京)
2015「WATCHQUEEN展」スパイラルホール(東京)
2015「愛すべき世界」丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川)
2015「きっと、だれもが、だれかに、恋をする」Gallery Soap(福岡)
2015「エディション・ワークス Prints & Originals」GALLERY SPEAK FOR(東京)
2015「Come Close: Japanese Artists within their Communities」BUS Project Gallerues(オーストラリア)
2014「これからの写真 光源はいくつもある」愛知県美術館(愛知)
2014「写真分離派展 「日本」」京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ(京都)
2013「引込線 2013」旧所沢市立第2学校給食センター(埼玉)
2013「Face Value: Portraits from The Kinsey Institute」The Kinsey Institute Gallery(インディアナ州, アメリカ)
2011「ANTIFOTO 2011」Kunstraum(デュッセルドルフ, ドイツ)
2011「印刷-日本現代写真集展」(パリ, フランス)
2011「MODERNITY STRIPPED BARE」University of Maryland(ワシントン, アメリカ)
2010「写真分離派宣言」ナディッフ(東京)
2010「スナップショットの魅力-かがやきの瞬間-」東京都写真美術館(東京)
2010「Beyond The Border」Tangram Art Center(上海, 中国)
2010「木村伊兵衛写真賞35年周年記念展」 川崎市民ミュージアム(神奈川)
2009-10「貴方を愛するときと憎むとき」 沖縄県立博物館・美術館(沖縄)
2009「第5回 太宰府天満宮アートプログラム 高松次郎|鷹野隆大 “写真の写真”と写真」太宰府天満宮 宝物殿(福岡)

[パブリック・コレクション]
東京都写真美術館、国際交流基金、川崎市市民ミュージアム、上海美術館、太宰府天満宮、The Kinsey Institute

[アーティストブック]
『In My Room』蒼穹舎(2005)、『鷹野隆大1993-1996』蒼穹舎(2006)、『ぱらぱら まりあ/としひさ』Akio Nagasawa Publishing(2009)、『ぱらぱら ソフトクリーム/歯磨き』Akio Nagasawa Publishing(2009)、『男の乗り方』Akio Nagasawa Publishing(2009)、『カスババ』大和プレス(2011)、『α』SUPER DELUXE(2013)、『まなざしに触れる』水声社(2014)