写真展

小沢朋範写真展「More or Less」

(Gallery Forgotten Dreams)

どこでも「ない」特別な場所。

都市の風景の中から、自らの感性にフィットする情景を選び抜き出すことで、ユニークな世界を構築している。

「Picto Graph」シリーズでは、都市のどこかにふと存在している、モノトーンとビビッドな色と真っ直ぐ伸びる直線(時に曲線)とが絶妙な対比を見せている空間をまずは見つけ出す。

そして、空の色彩感が一番少なくなる程良い曇天を待ち、大判のカメラでじっくりと撮影する。

仕上がった作品は猥雑とも言われる東京の風景とは思えない程シンプルなものであり、見えている色数もとても少ない。

一見簡素とも見えるものの中に豊富な情報量を盛り込むことで、絵画のマチエールのような繊細な表現を創り上げている。そこでキーとなっている色は、自ら作り出したものではないのに、常に住んでいて鮮やか。

ピュアな美しさに見惚れてしまう。

本来表示するべき広告を失った巨大看板。

それはかえってその存在感を増している。広告に限らず、表現があふれる現代空間において、「何もない」ということはむしろ普通のことではないことだからだ。

今から50年前に筒井泰隆が「にぎやかな未来」で描き出していた世界そのままである。

「Quadra」シリーズでは、そうした町中に佇立する「虚ろな」看板をメインのモティーフに据えている。

制作のスタイルは「Pict Graph」と同様である。

いずれのシリーズにおいても、表現要素を出来るだけ絞り込むことによって抽象画のようなストイックでクールな画面を生み出し、科目でありながら観る者の想像力をかえって掻き立ててくれる。

それはそれまで「パープルレイン」時代の過剰な程の音の奔流から一転、これ以上音を減らしたら音楽として成立しなくなるのではないか、と思えるまでに音数や楽器を減らし研ぎ澄まされた音楽を生み出した、プリンスの「Kiss 」のように活き活きとしたリズムを感じさせてくれる。

バッハの無伴奏チェロ組曲や無伴奏ヴァイオリン作品が、極限まで引き算された音の世界が無限の響きと緊張感を現出させるように。

気鋭の写真家小沢朋範の、Gallery Forgotten Dreamsとして初の個展を開催する。名だたる写真家の方々から薫陶を受け、それを糧に自らの制作をどんどん進化させ深化させてきた。

その最新の境地を、存分に御覧いただける機会となれば、と願って止まない。

削ぎ落とすことで見えてくるシンプルな美の世界を、是非御堪能あれ。

(展示情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:Gallery Forgotten Dreams
  • ・住所:東京都江東区白河1-3-21 2F
  • ・会期:2016年8月20日(土)~9月11日(日)
  • ・時間:13時~19時
  • ・休館:毎週月・火、8月26日(金)、9月9日(金)
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1976年 神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京在住。
2001年 東洋大学経営学部経営学科卒業
2005年 東京綜合写真専門学校 研究科修了。

【主な個展】
2006年 「DIVISION」ギャラリー山口(東京)
2015年 「Picto Graph」ギャラリーメスタージャ(東京)

【主なグループ展】
2005年 「Look away」みなとみらいギャラリー(横浜)
2006年 「Tales」bankart1929 (横浜)
2007年 「世界は誰のもの」bankart NYK (横浜)
2013年 「Night&Day-New Landscape Photographers in Japan」gallery ART UNLIMITED(東京)
2014年 「NO ART, NO LIFE - Collection Unlimited」gallery ART UNLIMITED(東京)

【主な受賞】
2013年 「Night&Day-New Landscape Photographers in Japan」展 柴田敏雄賞受賞
2014年 ONWARD photo compe finalist (selected by Andrew MOORE)