イベントレポート

【CP+】どんな紙でもインクジェット用紙にする液体

個性的な製品が集まったフォトプリントメディアゾーン

CP+2017のフォトプリントメディアゾーンには、ファインプリントブランドのブースが集まっている。その中から目を惹いた新製品を紹介しよう。

イルフォード/ハーネミューレ

GALERIE Creative Emulsion(クリエイティブエマルジョン)は、いってみれば好きな紙をインクジェット用紙に変えるコーティング液。インクジェット非対応の紙に塗布すると紙の表面にインクジェット受容層が形成され、インクのにじみなどを抑えることができる。

左がクリエイティブエマルジョンなし、右がクリエイティブエマルジョンあり。右のほうが発色とコントラストが良くなっている。

これまでインクジェットプリンターで使用できなかった(できても発色や解像がよくなかった)画材紙もインクジェットプリンターの対象となるため、表現の選択肢が広がりそうだ。もちろん、専用のインクジェット用紙にくらべると性能面で劣る可能性は高いが、作品のため様々な非インクジェットメディアを試すのは楽しそう。

これだけでも特徴的なのに、クリエイティブエマルジョンにはブレンドAとブレンドBの2タイプが用意されている。

ブレンドAは画材紙のテクスチャーなどの特。ブレンドBは発色濃度を高めてくれる。つまり。ブレンドAは元の画材紙の特徴が残利やすくなる一方で、発色も元素材の限界に近い。一方ブレンドBは、既存のインクジェットプリント用紙に近い発色が得られるものの、元の素材の風合いが損なわれがちになる。

イルフォードでは、ユーザーが自由にブレンドAとブレンドBを調合することで、画材紙や表現に合わせたブレンドを各自で試してほしいとしている。

画材紙への塗布方法はシンプル。別売の「コーティングバー」を使い、均一に塗布するだけだ。

コーティングバーは2製品が用意されている。それぞれ40μm、または80μmの細かいらせん状の溝が切ってあり、画材紙の上を転がすことで、クリエティブエマルジョンを引き延ばして塗布する仕組みだ。乾燥には5時間ほどかかるという。

はみ出したり失敗したクリエイティブエマルジョンは、水を含ませたティッシュなど拭き取ることが可能。

同じく薬剤系の新製品では「キャンバスプロテクト」もユニークだ。プリント済みのキャンバス系のメディアに塗布することで、キズなどから作品を守る。耐候性も強くなるという。

ラインナップは、グロス、セミマット、マットの3種類。グロスを使うと作品にツヤを出すことができ、そういった使い方も可能だ。

塗り方はローラーを使うことを推奨。バットにキャンバスプロテクトを張り、ローラーをつける。そのローラーを縦・横・縦と3回転がす。

どちらも2月初旬に発表されており、順次出荷されているという。

マルマン/キャンソン

キャンソン インフィニティの参考出品は「バライタ・プレステージ」。ブースに掲出されたサンプルは、石島英雄氏によるものだ。

バライタとコットンを複合させ、ラインナップ最厚の340g/平方mを実現したのが特徴。これによりコシがありヨレに有利な用紙となった。

4月下旬発売。価格は、A4(25枚)が税別1万1,000円、A3ノビが税別3万円。

ピクトリコ

反対にピクトリコでは、厚みを抑えたマット紙を参考出品していた。他社のマット系より薄い295μmとすることで、A4(1枚)で100円を切る程度までに価格を抑えるという。

ニュートラルな紙白にもこだわり、モノクロにも適している印象。テクスチャーは抑え目だが、マットらしい風合いは残っている。

伊勢和紙

インクジェット対応の和紙メディアで知られる伊勢和紙ブースでは、紙の王様とも呼ばれる雁皮紙を使ったインクジェット用紙「純雁皮紙」を紹介していた。

軽くクリーム色がかった表面は、きめ細かくなめらか。精細なプリントサンプルも掲げられていた。

中央が三輪薫氏による純雁皮紙のサンプル。

高価なため、しばらくは受注生産という扱いだそうだ。

伊勢和紙には「純三椏紙(じゅんみつまたし)」も新製品としてあるので、楮、三椏、雁皮という、代表的な和紙素材が揃ったことになる。

他にも新製品として、「浄ら芭蕉(きよらばしょう)」が紹介されていた。バショウ繊維を使用する従来の「芭蕉」に比べて渋みが抑えられ、若干クリアで精細な描写になるそうだ。

本誌:折本幸治