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ケンコー・トキナー「一般ユーザー向け製品説明会」に参加してみた

意外にマニアックな内容が…新製品だけでなく撮影用品の歴史も

ケンコー・トキナーは、東京・中野の本社ビル内にある直営ショールーム兼各種サービス受付窓口「ケンコー・トキナーサービスショップ」において、直近で発売した新製品についての解説を行なう説明会を月1回のペースで開催している。

新製品説明会は、同社が実施している一般ユーザー向けイベントの1つ。対象はケンコー・トキナーが発売したすべての新製品で、その中から光学、映像、撮影関連の製品をいくつかピックアップして紹介する。会場はショールーム内に設置している撮影スタジオ。

当記事では、12月4日に実施された新製品説明会の模様をレポートする。

新製品説明会という名の通り、担当者が選んだ新製品を紹介する主旨のイベントではあるのだが、その内容は製品開発の裏話を中心とした幅の広いもの。

旧製品との比較はもちろん、企画意図や個々のポイントに関する解説をはじめ、時には創業当時の旧製品にまで遡って説明するなど、新製品だけにとどまらず、製品の歴史や最近のトレンドをある程度学べる、濃い内容のイベントとなっている。

特徴的なのは、同社が取り扱っている製品であれば、新旧問わず"現物"が登場すること。今回の説明会では、新製品の機構を紹介する過程で、スリックが1970年代に発売した「グッドマンS-104」や「88D」が持ち出されており、実際に触れて試すこともできた。古くから写真映像用品を扱うメーカーならではの趣向だ。

エアリーカーボン644(左)とエアリーV100(右)
「エアリー」は、現行ラインナップのカーボン三脚に新たに加わったトラベラー三脚
折り畳んだときに足の間から雲台が出るように調整している
トラベラー三脚はジッツオが最初に開発したが、当初は価格が高かったので一般化しなかった。その後、中国メーカーが似た機構の三脚を市場に出したことをきっかけに、一般化していったという
ハライチロック。ロックレバーを押し下げて脚の根本をフリーにしておき、先端部を持って角度を変更できる。他のロック方式と比べて開脚時の負担が低い
ハライチロックの解説
収納時にナット部分がきっちり収まるよう、雲台部分に凹みが設けられている
エアリーは「軽くて小さい」というイメージで命名した。山本まりこさんのトレードマーク、"エアリーフォト"も意識しているそうだ
ハライチロックの名前の由来も
アルカスイス互換のシューを採用
エアリーカーボン644の詳細
エアリーV100の詳細
ライトカーボン(左)とエアリー(右)のパイプには、それぞれ製法の異なるカーボンパイプを採用している。エアリーのパイプの方が高価だが、防振性に優れるという
カーボンパイプ製法の違い
ライトカーボンE63(左、3段)と同E64(右、4段)
その場で三脚を試すこともできた
1970年代に発売した「グッドマンS-104」
グッドマンSシリーズの詳細
脚を六角レンチで外して逆に取り付けることで開脚させてローアングルに対応できるが、3本すべてを逆に取り付ける必要があるので、やや手間がかかる
当時のタグ
88D
88Dの詳細。脚に雲台を取り付けられる装備を持っていた
実際に設置したところ。壊れたら修理が大変なので慎重に扱っていた
雲台を脚に取り付けたところ
脚に取り付けた雲台を段差のあるところで使っているところ
ボール式水準器を備えており、持ち歩くとボールの転がる音がすごく気になった
スリックの開脚システムは1980年代に確立した
今回置かれていた新製品の一部
新製品の双眼鏡「ウルトラビューM」(右)。右は現行フラッグシップの「Kenko OP」
コーティングに関する簡単な解説もあった
MECABLITZ 64AF-1 Digital
Aosta OEJマルチポーチ
単眼鏡や双眼鏡をスマートフォンのテレコンバージョンレンズとして利用するためのホルダー「SNAPZOOM」
対物レンズを装着する側
装着時のスマートフォン側撮影画面
レインカバー「DG-CAMO」

実際に説明を受けてみると、個々の製品について、メーカーとしてこだわりを持って開発に臨んでいることが伝わってくるイベントとなっている。内容は確かにマニアックであり、楽しめるかどうかは人を選ぶとは思うのだが、"なぜ、パーツがこの形をしているのか"というレベルの話は作り手であるメーカーでないとできないし、こと写真映像用品に限っていえば、普通はそこまで聞く機会そのものがない。

ケンコー・トキナーとしても、製品についてユーザーにより深く知ってもらい、もっと触れられる機会を作りたかったと考えているそうで、本イベントもその一環という位置付けだ。旧製品と新製品の比較にしてみても、言われてみて初めて気付くことや、実際に触ってみないとわからない差異も多かった。

本イベントは、製品に関する細部の解説を通して、自社製品のファンを増やすための試みといえるだろう。

(関根慎一)