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フォトグラファーが「VAIO Z Canvas」を使用する利点とは?
VAIO Cafe “Photo Day”より TransferJet内蔵SDの参考展示も
Reported by 関根慎一(2015/6/5 17:37)
VAIO株式会社が2015年5月25日〜29日の5日間、期間限定でオープンしていた体験型カフェ「VAIO Cafe」において、最終日にあたる5月29日、フォトグラファーの御園生大地氏とアドビシステムズの栃谷宗央氏によるトークセッションが行われた。
VAIO Cafeは、同社の新製品を体験できる趣旨のカフェスペースで、店内には現在発売中のWindowsタブレット「VAIO Z Canvas」や、ノートPC「VAIO Pro 13|mk2 」などを展示しており、来店者は使用感を自由に試すことができた。
製品について詳しくは、PC Watchの記事を参照されたい。
カラーキャリブレーション対応のモバイルデバイスは少ない
VAIO Z Canvasは、Adobe RGBカバー率95%でカラーマネジメント対応の12.3型ディスプレイを搭載。筆圧感知の最大分解能は1,024段階でCore i7-4770HQ(2.2GHz)や最大16GBメモリ、最大1TBのSSDなどを備えたハイスペックタブレットとして、クリエイター向けを訴求している。
VAIO Cafeでは連日DTP、イラストレーション、アニメーションといった各分野からクリエイターのゲストを招いたトークセッションを実施し、29日は「Photo Day」として、フォトグラファーから見たVAIO Z Canvasの使用感を中心に紹介していた。
御園生氏は、フォトグラファーがVAIO Z Canvasを使う利点として「どこでも正しい色が見られる」、「撮影時にメンバーの意見を取り入れやすくなる」、「どこでもレタッチができるようになる」という3点を挙げた。
タブレット端末のメリットの1つは手軽に持ち運べるという点だが、多くの端末は画面に出力される画像のカラーが正しくないという。御園生氏は、VAIO Z Canvasの画面がカラーキャリブレーションに対応していることで、業務において実用に堪える点を評価した。
「タブレット端末は持ち運びが容易なので、撮ったその場で画像を確認するのに便利です。例えばスタジオでテザー撮影をした際、クライアントには意図した通りの色で写真を見てもらうことができます。きちんとキャリブレーションされたモニターを常に持ち運べるメリットは、写真の色味を確認する際にみんなが同じ色味の写真を見られること。後から色味に関する齟齬が発生しにくいところですね。これって実は当たり前のことではなくて、正しい色で使えるタブレット端末やノートPCは現状、少ないのです」
正しい色の判断基準としては、現在事実上の業界基準になっているEIZOのモニター(ColorEdge)に近い色に落とし込めるかどうか、とした。
「私が試した範囲では、VAIO Z Canvas以外でカラーキャリブレーションに対応しつつ、正しい色が出ると言い切れるのは、MacBook Pro Retina、Cintiq Companion、タフパッド4kの3機種だけです。そもそもノートPCやタブレット端末はOSの設定でキャリブレーションを取ることができなくなっている機種が多いので、そのままクライアントに“これで写真をチェックしてください”と出すのは難しい。ところが、正しい色が出せるタブレットがあるだけで、"撮った写真をそのまま確認に出す"というフローが可能になるのです」
また、タブレットやノートPCに関しては、多くの製品でディスプレイがカラーキャリブレーションに対応するかどうかを確認できないことを難点として挙げた。
「デバイスごとのカラーキャリブレーション関連情報はほとんどどこにもまとまっていないし、まず信頼できる情報ソースが少ない。購入前にカラーキャリブレーションを試せる機会がまずないですよね。店頭に測色器を持っていっても、普通は試させてくれないです。だから私の場合は、自分で試せる機種以外の情報は、信頼できるフォトグラファーさんからの口コミに頼っています。そうせざるを得ない状況が続いています」
タブレットはみんなで写真を良くする使い方に向いている
アドビが4月21日に実施したLightroom CCのアップデートでは、RAWファイルのパノラマ合成や顔認識機能などを盛り込んでいるが、御園生氏のセッションではその中の1つ、タッチUIの利便性を紹介していた。
「タッチUIはずっと待ち望んでいた機能です。先程挙げた“メンバーの意見を取り入れやすくする”という部分にも繋がってきますが、タブレットとして直感的に操作しやすいことで、“この写真のこの部分をこうしたらどうか”というように具体的な意見が撮影に参加したメンバーから出やすくなるのです。また、Photoshopが動くことで、ちょっとしたレタッチならすぐにできてしまうところも強みですね」
VAIO Z Canvasと似た運用はiPadでも可能だったが、正しい色が出ない点と、レタッチや合成がしにくい点で今ひとつ使い勝手に難があった。また、撮影現場のPCでPhotoshopを立ち上げている場合、どうしてもPCの操作がフォトグラファー自身かアシスタントになりがちで、ほかのメンバーは他の写真を見てみたい、とはなかなか言い出せない空気になってしまうという。その点、タブレット端末であれば手軽に取り回せることから、写真に対する意見が出やすくなる、と御園生氏は話す。
「私自身、メンバーから意見を聞いて、その場で化学反応を起こしたいたちなので、今回、LightroomがWindowsタブレットに対応したことはすごくありがたいこと。メンバー全員に正しい色の写真を共有できるようになって、指での直感的な操作が可能になり、その場で画像合成が行えるうえに機動力も落ちないですから、いいことづくめなのです」
Lightroom CCとのタッチ操作でよく使う機能としては、フィルムストリップのスワイプ送りやフラグ/レーティング付けを紹介。デスクトップアプリの「OneNote」と連携させて、キャプチャ画像に直接レタッチ指示を書き込み、ファイル共有するという使い方も提案していた。
そのほか、実用上便利なポイントとしては、フットプリントの小ささを挙げた。一般的なノートPCでレタッチ作業をしようとすると、PC本体とペンタブレット(もしくはマウス)が必要になるが、VAIO Z Canvasの場合はタブレットと付属のデジタルスタイラスペンのみで作業ができるため、主に移動中の作業がしやすいと話した。また、ソフトウェアキーボードの使い方も紹介し、タブレット1枚でキーボードショートカットを用いたPhotoshopのレタッチを実演した。
御園生氏は最後に、VAIOシリーズに今後期待することについて言及。「フォトグラファー視点からの勝手な要望なのですが」と前置きして、ディスプレイをカラーキャリブレーションに対応させたまま、大きさを選べるようにしてほしいとの要望を述べていた。
「そのほかの要望としては、バッテリーの保ちに関して、現状、私の使い方では大体5時間程度使ったところで電源が切れます。カメラからワイヤレス転送を行なっているので、転送枚数は大体300ショットくらいですね。ちょっとした撮影なら十分保ちますが、大掛かりな撮影になると丸1日ということもあるので、別途電源を確保する必要があります。将来的にフル充電で15時間くらい保つようになったら最高です(笑)」
「VAIO Z Canvasは、信頼できるモニターを外で使える、限られたスペースでレタッチができる、みんなの意見を取り入れながらものを作れるという点で、これまでにないものだと思っています。ロケーションフリーかつ、クリエイティブ用途で使えるレベルの2-in-1タブレットは、製品カテゴリーとしてもまだ始まったばかり。この分野はまだまだ進歩する余地があると思いますので、今後の発展に期待しています」
高品質なクリエイティブを持ち運べるのが利点
アドビシステムズの栃谷宗央氏は、VAIO Z CanvasでPhotoshopのようなクリエイティブ向けアプリを組み合わせた時の利点として、外出先でも自分のデスクにいるのと同じクオリティで仕事ができる点を挙げた。
「御園生さんも仰っていましたが、デスクトップから離れ、場所を変えても高品質なクリエイティブが実現できるところは、今までできそうでできなかったことです。個人的には、いわゆるワンストップソリューションとして、PCと一緒に持ち歩くものを減らせるところがいいなと思っています。最近はモバイルデバイスの躍進が目覚ましいですが、VAIO Z Canvasの特徴は、PCとモバイル端末の両方の利点をいいところ取りしているところ。アドビとしても、今後はモバイル環境でも本格的なクリエイティビティが発揮できる方向性でアプリケーションを出していきたいと考えています」
東芝のTransferJet内蔵SDHCメモリーカードも参考展示
VAIO CafeではPCや端末本体のほかに、東芝が発売しているTransferJetアダプタも展示していた。PCと携帯端末、あるいは携帯端末同士でデータ転送が可能になる。TransferJetは最大約375Mbpsの実効スループットで通信可能な短距離通信規格。通信距離が数cmのため、情報漏洩や混線のリスクが少なく、かざすだけという簡単な操作方法が特徴だ。東芝ではコネクタ形状はUSB、microUSB、Lightningの3種類を用意している。
このほか、近日発売予定のTransferJet内蔵SDHCメモリーカードも展示していた。内蔵SDHCメモリーカードをカメラに挿入し、コネクタを装着したPCもしくは携帯端末に近づけるだけで、撮影データが転送できるようになる。
6月12日18時追記:記事初出時にVAIO Z Canvasのスケルトンモデルとして掲載していた写真は、VAIO Zのものでした。キャプションを訂正し、VAIO株式会社提供の会場写真(VAIO Z Canvasのスケルトンモデル)を追加しました。