林典子写真展「硫酸に焼かれた人生・パキスタンの女性たち」(大阪ニコンサロン)



人口約1億5000万人の国、パキスタン。この国では、家庭内暴力の延長や求婚を断られた報復などの理由で、女性の顔に硫酸を浴びせ、火傷を負わせる事件が次々と起きている。被害者は毎年150〜300人、その半数は11〜20歳の少女たちと報告されている。
作者は、2010年7月から2ヶ月半パキスタンに滞在し、硫酸の被害に遭った女性たちと寝食を共にしながら、彼女たちの家庭やシェルターでの生活を追った。
ナイラ(20歳)は、13歳の時に求婚を断ったため、報復として硫酸をかけられた。セイダ(22歳)は2008年、夫から突然顔に硫酸をかけられた。硫酸による火傷で、ナイラは左目と左耳を失い、セイダの顔から首にかけての皮膚は溶け落ちてしまった。
現在のパキスタンでは、被害に遭っても加害者が警察を買収したり、被害者に裁判で争うお金がないなどの理由で、訴えが認められて有罪になるのはごく僅かである。また、農薬などに使われている硫酸は100円程度で簡単に購入することができ、被害は減らない。
女性にとって顔が損壊される、これほど屈辱的な暴力はない。しかし、今回作者が撮影した女性たちは、毎朝鏡に映る自身の顔をしっかり見つめ、過去の傷を背負いながらも、その現実を受け止めて生きていこうとしている。
本展では、被害者たちと同世代の女性である作者なりの視点で、彼女たちの身に起きた悲惨な過去や、一生消えない傷を心に抱えながらも前を向いて生きている強さを、写真を通して伝えようとしている。カラー33点。(写真展情報より)

  • 名称:林典子写真展「硫酸に焼かれた人生・パキスタンの女性たち」
  • 会場:大阪ニコンサロン
  • 住所:大阪府大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
  • 会期:2012年3月8日〜2012年3月14日
  • 時間:10時30分〜18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休



(本誌:折本幸治)

2012/2/23 00:00