カシオ、EXILIMフラッグシップ「EX-ZR1000」の国内発表会

〜益若つばささんとフェンシングの太田雄貴選手が撮影体験

 カシオ計算機は23日、コンパクトデジタルカメラ新製品発表会を都内で開催。9月のフォトキナ2012で海外発表した「EXILIM EX-ZR1000」を国内で初披露した。発表会には、ゲストのファッションモデルの益若つばささんと、フェンシングの太田雄貴選手を迎えた。

EX-ZR1000を手にする益若つばささん(左)と太田雄貴選手(右)EX-ZR1000

 発表会には、カシオ計算機株式会社 執行役員 QV事業部長の中山仁氏が登壇。新製品の説明を行なった。

カシオ計算機株式会社 執行役員 QV事業部長の中山仁氏。同氏はQV-10やエクシリム1号機も手がけた

 中山氏はまずデジタルカメラ市場規模の推移を示し、「デジカメ業界は4年前をピークに停滞している。特にコンパクトカメラではコモディティ化が進み、最近ではスマホの台頭もあり非常に厳しい状況」とした。

デジタルカメラ市場規模の推移

 同社には「レンズ交換式カメラはやらないの?」との声もよく寄せられるそうだが、中山氏は「基本的にカシオ計算機はレンズ交換式をやる計画はまったくない」と断言。いわゆるミラーレスカメラについて「一般ユーザーが求めるのはレンズ交換の手間ではなく、思った以上の画質で簡単に撮れるのが理想。それはコンパクトでのみ実現できると確信している」と強調した。「ミラーレスが浸透しているのも事実だが、この方向が本当に正しいのか疑問に思っている」そうだ。

 発表会後半の質疑応答で、中山氏はその疑問について具体的に語った。ひとつは「レンズ交換(という作業)は誰も求めていない」という点で、巷の声ではミラーレス機をレンズ交換式と知らずに買っており、交換レンズを一緒に買っている人も少ないことから、一眼レフとは違うターゲットであると中山氏は分析。「このままの方向では安く小さいボディだけを売るような、コンパクト普及モデルと同じ道を辿るのではないか」と見解を語った。

 加えて、カシオとしては「デジタルでしかできない楽しさと性能を追求したい」という。ミラーレスは銀塩からきた一眼レフの機能がそのまま小さく安くなっているだけのように感じられ、同社としては高速連写などのデジタル機能を活かしたものがより大事と考えていると語った。

 中山氏は続いて同社デジタルカメラに関する2012年のトピックス3つを紹介。1995年に発売し、“撮ったその場で楽しむ”というデジタルカメラのスタイルを創造したという「QV-10」が9月に国立科学博物館の未来技術遺産に登録されたことを第一に挙げた。

QV-10と未来技術遺産認定の盾を展示していた

 2つ目は、同社コンパクトデジタルカメラの「EXILIM」(エクシリム)シリーズが10周年を迎えた点。中山氏は「大画面、長電池寿命、高速連写といったトレンドを生み出し、コンパクトデジカメの歴史とともに歩んできたとも言える」と語った。同日国内発表したEX-ZR1000は、その10年の集大成と言えるモデルとしていた。

会場入口には同社の歴代デジタルカメラが並んでいた最後のひとつにはベールがかけられていた

 3つ目に挙げたのは「ハイスピードエクシリム」のヒット。「EX-ZR200」および「EX-ZR300」は様々な販売ランキングで上位だといい、他社と一線を画した起動時間や撮影間隔によるサクサク感が評価されているとした。「大型センサーや明るいレンズもなく、デバイスとしてはいたって平凡だし、価格を下げているわけでもない」としつつ、「デジカメに速さという新しい価値を創造した」「カシオはコンパクトデジカメを極める」と自信を見せた。

 続いて、新たな開発テーマという「TRIPLE ZERO」(トリプルゼロ)を紹介。同社が誇るスピード性能でタイムラグゼロ、ピンぼけゼロ、手ブレゼロに挑み、これの実現により「誰でも失敗なく撮りたい瞬間を撮り逃さない」ことを目指すという。同日発表した「EX-ZR1000」がその一歩とした。

EX-ZR1000(ホワイト)
EX-ZR1000(ブラック)EX-ZR1000(レッド)
自分撮り用のスタンドも備える
スピード性能で目に見えないものを写したEX-F1、楽しさを提案したEX-ZR10に続き、新テーマをかかげる第三世代のEX-ZR1000とした2010年のEX-ZR10に初搭載したHSエンジンは、EX-ZR1000でエクシリムエンジンHS Ver.3となった。画像処理、画像解析を並行処理でき、デジタル処理の大幅な高速化を実現したという

 EX-ZR1000は、業界トップクラスという起動時間、AF時間、撮影間隔を継承し、引き続き操作性のサクサク感を訴求。レリーズタイムラグはEX-ZR300の半分としていた。また、AF連写にも対応する。

 新たにレンズ鏡筒部にファンクションリングを搭載し、新GUIと組み合わせた直感的な操作性も特徴とする。画像再生も高速に行なえ、ファンクションリングを用いた日付ソートも可能としていた。

ファンクションリングの利用イメージ

 
 また、高速性能を活かした新たな撮影機能として「全焦点マクロ」を紹介。ピント位置の異なる画像を連写合成し、接写時でも手前の被写体から背景までピントが合ったような画像を記録できる。「背景ぼかし」も利用可能。

通常撮影(左)と全焦点マクロ(右)の撮影例背景ぼかしの撮影例

 「HSナイトショット」ではISO25600相当の撮影に対応し、進化したという「HDRアート」では解像度が向上したほか、オートで通常撮影した画像の同時保存も可能という。

 撮影スタイルの自由度を高める要素として、自分撮りやスナップ撮影に有効というチルト液晶モニターを搭載。液晶モニターの可動が電源にも連動しており、ネックストラップでカメラを提げて歩きながら、気になったシーンをウエストレベルですばやく撮影可能という。

 液晶モニターをレンズ側に反転させると自分撮りに便利とし、ライブビュー画面の特定箇所に手をかざすと撮影し、ジェスチャーでプレビューすることもできる。

自分撮り時にジェスチャーでセルフタイマー撮影を利用できる

 ほかにもライブビューで効果を確認しながら撮影できる8種類のアートショット(動画にも対応)、RAW記録、マニュアル露出などを搭載。「フラッグシップにふさわしいコンパクトデジカメに仕上げた」と自信を語り、「コンパクトデジカメはやっぱりカシオだね、と言われるようになりたい」と締めくくった。

 EX-ZR1000では、通常モデルのほかに10周年記念モデルとして限定5,000台の「EX-ZR1000 BSA」と、EX-ZR1000をベースとしたゴルフ用モデル「EX-FC300S」を用意する。

EX-ZR1000 BSA。通常モデルのブラックとカラーリングが異なる付属のケースとストラップを装着したところ
EX-FC300S。ゴルフ向け機能を搭載したほか、カラーリングも一部異なる機能概要
スイングチェックのイメージ

 質疑応答の中で中山氏は、EX-ZR1000の価格設定がヨーロッパでは299ユーロ、国内では5万円前後(店頭予想価格)という点に触れ、「為替でいうとアンバランスだが、その国の価値観で決めている。高級コンパクトが普及し始めている国内では5万円も高くなく、価値を見出してもらえるだろうと考えて決めた」と説明した。

 続いて発表会では、ゲストにファッションモデルの益若つばささんと、フェンシングの太田雄貴選手を迎えてのトークショーを実施した。

益若つばささん太田雄貴選手

 益若つばささんは写真が好きで「毎日と言っていいほど撮る」という。被写体は子供や飼っているウサギなどの動物が多いそうで「気づくとすごい枚数になる」と話す。腕前に自信はあるほうだと思うが、それでもブレによる失敗はがあるとし、普段撮影している写真をスクリーン上で紹介した。

子供の運動会で3〜4人がかりで撮影したという写真を紹介。左上は「息子が飛びかかってきて頭をぶつけた」写真だそうだ

 特に子供は動きが速くて追いつくのが難しく、急に突拍子もない面白い動きをするが、もう一度やってはくれないのが難しいポイントだそうだ。また、カメラの起動時間が長いとペットの可愛い顔を撮りのがしてしまうと語った。

EX-ZR1000を持って登場した益若さん。可愛らしくレトロな雰囲気が感じられるカメラと語った。中でもホワイトが一番のお気に入りとしていた

 続いてステージでは益若さんがEX-ZR1000の高速性能を実際に試した。自転車に乗った子供がステージ上を走り回り、それを撮影するという趣旨。チルト式モニターのローアングル撮影も試しつつ、スクリーンに映し出された撮影画像を見て「動きのあるものでも絶対失敗しないですね」と感想を述べた。

 太田選手は、海外遠征が多く、その地でいろんな写真を撮っているという。しかし動きのあるフェンシングの試合を撮るのは難しく、後輩を撮ってあげようにもブレ写真ばかりだったため、(益若さんの撮った写真を見て)今日は興奮していると意気込んだ。

太田選手の撮影体験はフェンシングの試合秒30コマという高速連写で剣先の動きを捉えた。「カメラの性能に助けられた」と感想を述べた

 続いて「せっかくなので」と司会者に促され、剣を手にした太田選手。相手の体についている2つの風船を割り、その様子を益若さんが撮影した。

時間が1秒間と伝えられた太田選手は「今年の夏を思い出しますね」と会場の笑いを誘った時間の半分ほどを残して、素早く2つの風船を割った太田選手
風船が割れて紙吹雪が散る様子をコマ送りで再生した

 最後に益若さんは、「サクサク撮れるので、私のように子供や動物を撮ることもできるが、携帯電話のように自分撮りも簡単にできるので、お母さん世代や若い世代の方にも幅広く使ってほしい」とした。

 太田選手は「周りがみんなゴルフをやっているので、スイングを撮ってみたい。ゴルフやフェンシングに限らずスポーツのいろんなシーンで使ってみてほしい。選手の目線でいうと、前腕の筋肉の動きまで全てがわかる」とコメントした。

左から益若つばささん、中山仁氏、太田雄貴選手。EX-ZR1000を手に
撮影体験コーナーを用意作例展示
EXILIMの“女子カメ”(EX-JE10、EX-N10)もコンセプチュアルな展示を行なっていた
会場に展示していた歴代デジタルカメラの一部。EX-S1とEX-M1(2002年)最大1200fpsのハイスピード撮影が行なえるHIGH SPEED EXILIM EX-F1(2008年)
撮影可能枚数1,000枚を特徴としたEXILIM Hi-ZOOM EX-H10(2009年)グリップやスタンドになる可動フレームと21mm相当レンズを採用したEX-TR100(2011年)
「快速シャッター」をアピールし、対決系テレビ番組でも取り上げられたEX-ZR200(2011年)発表会終了後にはベールを脱いだEX-ZR1000(2012年)の姿も



(本誌:鈴木誠)

2012/10/23 19:29