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【フォトキナ】インタビュー:新“X”シリーズ「X-E1」「XF1」を発表した富士フイルム


 今年1月の2012 International CESでは、FUJIFILM X100で培ったハイブリッドマルチビューファインダーと、独自の画素配列でローパスフィルターなしの高精細撮像を実現するX-Trans CMOSを組み合わせたFUJIFILM X-Pro1を発表、レンズ交換式カメラ市場へと参入した富士フイルム。

 今回のPhotokinaでは、FUJIFILM X100、FUJIFILM X10、FUJIFILM X-S1といった一連の”X”の系譜をさらに拡大している。ハイブリッドマルチビューファインダーを外し、X-Pro1と同等の高画質を実現しながら低価格化とコンパクト化を果たしたFUJIFILM X-E1、それにXのコンセプトを引き継ぎつつも、薄型・軽量の軽快なカメラに仕上げたFUJIFILM XF1である。

 富士フイルム電子映像事業部商品部担当課長で、Xシリーズの商品企画を担当する上野隆氏にフォトキナ2012における話を伺った。(聞き手:本田雅一)


富士フイルム電子映像事業部商品部担当課長で、Xシリーズの商品企画を担当する上野隆氏

好評を持って迎え入れられたX-Pro1

--- 1月にX-Pro1を発表。ローパスレスで偽色が発生しにくいX-Trans CMOSで勝負に出ましたが、ユーザーからのフィードバックはいかがでしょうか?

「さまざまなお声をいただいていますが、一番大きな反響としては画質に対して、これは素晴らしいと支持する声が圧倒的です。通常、どんな製品でも、画質に関して何らかのリクエストがユーザーから届くものですが、X-Pro1に関しては、一切、そうした声はありませんでした」

「これは同時にリリースしたフジノンレンズにも言えることです。どのレンズも、それぞれのスペックにおいて、満足のコメントをいただいています。特に35mmに関しては、描写について高い評価を得ています。一部、広角レンズで周辺部の収差が、という声が、ネットの上では言われたこともあったのですが、実際のユーザーからの声としては上がってきていません。“絵全体”の作りとしては、どのレンズも好評をいただけています」


“X”シリーズ初のレンズ交換式デジタルカメラ「FUJIFILM X-Pro1」

--- ハイブリッドマルチビューファインダー採用のレンズ交換式カメラというのは、それだけでかなりインパクトのある商品コンセプトだったのですが、X100で自信を深めたことがレンズ交換式カメラ市場への参入を後押しした面があったのでしょうか。

「確かにX100は予想以上の好調な売上げをいただきましたが、X100が行けそうだから、その次はレンズ交換式、と流れたわけではありません。実は両者の開発は同時に始まり、異なるコンセプトの製品として別々に開発が進められました」

「X100で、ハイブリッドマルチビューファインダーに対するニーズ、要望をヒアリングできたことが、X-Pro1の開発にフィードバックされた面はあります。もし、あそこでハイブリッドマルチビューファインダーが受け入れられていなかったら、X-Pro1の仕様は変わったものになったかもしれないですね。EVFだけでいいのでは? 本当にブライトフレームが必要なの? という議論は社内では当然ありましたが、その中でX100に対するポジティブな声が、“ブライトフレームでいいんだ”という自信を与えてくれました」

--- 画質面での良好な反応とのことですが、別途、ユーザーからのフィードバックで感じた課題はありますか?

「ボディの大きさ、オートフォーカス速度、プレビューのタイムラグに意見をいただきました。中にはPro1の方がX100よりもオートフォーカスが遅いという声もありましたが、実はオートフォーカスのアルゴリズムは、X100とまったく同じなんです。X100でもオートフォーカスが遅いという声はありましたが、実はさほど大きなものではなかったんです。しかし、X-Pro1ではX100の時よりも多くの声がありました」

「性能は同じなのですが、カメラの性格や位置付けによって要求レベルが違ったといいことだと思います。しかし、シニア層のカメラ好きや、スナップ撮影、人物撮影などを行なうプロなどには、オートフォーカスは問題になっていません」

「もっとも、X-Pro1への声で一番大きかったのは、実は大きさへの不満でした。みなさん、ライカMを想定されているようなんですが、デジタル化さた今のライカMと比べると、X-Pro1の方がより薄く、横方向の大きさは同等です。小さくしすぎても、レンズとの重量バランスが崩れますから、ちょうどいいサイズ感だと考えたいました」

「小型化するのであれば、単倍率の素通しになりますが、ファインダーには拘る必要がありました。そこで、サイズの制約が出たのに加え、画像処理のパワーをX100よりも使うため電力も多く必要ですし、レンズシャッターではなくフォーカルプレーンシャッターを採用したことなどもあって、それほど大きくないでしょ? かなり小さいんですよ? というのが本音です。反省点があるとするなら、実測するとレンジファインダー搭載機として、それほど大きいわけではないのだけど、見た目には大きく見えるという部分だと思います」


X-E1の画質はX-Pro1と同じ

---- 光学ファインダーレスのX-E1は、そのX-Pro1の発売から半年後に発表されましたが、こちらもX100と同時に企画が持ち上がっていたのでしょうか?

「はい、大きさの話がありましたが、X-Pro1の開発時には、X-E1が並行して企画として走っていることが念頭にあったので、軽量、コンパクトはそちらに任せて、X-Pro1は徹底してファインダーの良さや操作性にフォーカスしようという意図がありました」

「今、発売されている製品も含め、X100、X10、Pro1、X-E1、X-S1は、多少、実際の開発スタート時期は少しずれていますが、検討開始の時期は全部一緒なんです。その後、XF1が追加されましたが、レンズ固定式に2機種、レンズ交換式に2機種、そして望遠系で1機種が当初からの計画です」


「FUJIFILM X-E1」。ハイブリッドマルチビューファインダーを有機EL採用のEVFに変更するなどして小型軽量ボディを実現した

--- 多彩な機種構成ですが、これらの製品、Xシリーズに共通するコンセプトとはなんでしょう?

「X-Trans CMOSやハイブリッドマルチビューファインダーといった、ひとつひとつの技術ではなく、カメラを操る楽しみ、カメラを持つ喜びを追い求めることです。各要素技術は、それらのコンセプトを実現するための手段として位置付けています。たとえば、XF1は光学ファインダーも電子ビューファインダーもありません。しかし、電源を入れる際に、沈胴式のレンズ鏡筒をネジって引っ張り、手動のズームを繰り出すと電源が連動してオンになるよう設計しています。メカニカルなズーム操作や、沈胴メカに連動したスイッチなど、機能性、操作性とデザインが一体化している点などは、“X”のコンセプトに合致しています」

「持つ喜びに関しては、カメラらしいデザイン、高い質感というところがポイントです。マグネシウムボディで軽量化しながら、しかし質感はキッチリと出す。交換レンズもそうで、パッと見て高品位なレンズを想起する“らしい”デザインでありながら、値段なりのスペックではなく、同一価格帯ならライバルより明るいレンズにしました」

「このレンズの操作性は、ズームリングの選択から、グリスの粘性まで選び、ピンとリングの重さ、滑らかさを、何度も何度も自分たちで触り、重すぎる、軽すぎる、粘りすぎ、抵抗感強いなどを議論して決めています。一度知ってしまうと、思わず何度も触りたくなってしまう。そんなフィーリングを目指しました。デジタルカメラではありますが、製品としてはデジタルっぽくない。作り手の温もりが伝わり、ユーザーから愛でてもらえるカメラ。これが“X”のコンセプトと言えます」

--- X-E1も宮城生産でしょうか? また、X-Pro1では電子ビュー・ファインダー時のフレームレートがやや遅かったと記憶しています。この点は改善されていますか?

「はい、X-Pro1と同じく宮城、交換レンズは国内で従来と変わっていません。ビューファインダーには有機ELの高画素タイプを採用しており、品位には配慮していますが、フレームレートは毎秒46フレームで、これはX-Pro1と変わっていません。ビューファインダーのフレームレートは、ソニーが毎秒60フレーム、オリンパスはもう少し速いと思いますが、我々の場合はX-Trans CMOSを使っているため、それに最適なフレームレートとして46fpsを選んでいるのです」

--- ベイヤー配列のデモザイクよりも、X-Trans CMOSの方が処理が複雑ということですね。ではビューファインダーのレイテンシも大きいのでしょうか?

「いえ、その点は遅れが少なくなるようにしています。20mm秒以下のディレイに収まっているため、ほとんど気にならないはずです。もちろん、X-Pro1の光学ファインダーには敵いませんが、電子ビューファインダーとしては十分な速さです」

--- X-Pro1とは画質面での変化はありますか?

「いえ、まったく同じです。X-Pro1の高画質を、より軽量なボディで手軽に味わっていただけます。実はX100ではハイブリッドマルチビューファインダーを絶賛いただいたのですが、X-Pro1の時はサイズが小さくなるならば、電子ビューファインダーだけでいいので小型化してほしいという要望が出てきました。用途次第で、どちらを選んでいただいても、同じ画質を得られますので、安心してお選びください」

--- 同じシルバーでも、X100とは少しばかり違う風合いに見えます。これは意識したものですか?

「X100は、青みがかったスチールっぽい色にすることを目指しました。一方、X-E1は明るめの、一般的なブライトシルバーにしています。これは、X100よりも、想定されるユーザー層が幅広いためです。スチールの質感に拘るよりも、誰もが好感するシルバーということで変更しました」

「ブラックモデルに関しては、X10のブラックとまったく同じ塗装になります。X100のブラックモデルは、ものすごくコストがかかっているので、あれほどのものではありませんが、しかし近い質感は得られていると思います。具体的には、ダイキャストのパーティションライン(鋳型の境目に出る線)などが、フラットブラック塗装では隠せません。X100のブラックモデルでは、組み上げた後に凹凸を削ってフラットにしてから塗装しています」

--- XF1ですが、このレンズメカは面白いですね。薄く軽量ですし、デザインもクリーンなイメージです。しかし、このレンズメカはかなり苦労されたのでは?

「はい、何が特別かと言えば、レンズのメカ設計が超の付くスペシャルです。開放F1.8の4倍ズームレンズを、この薄さに畳むメカ設計は大変で、担当者は泣いていました。Xシリーズなので、当然、画質面で譲るところはありません。この仕組みに関しては、実際に体験されて、その薄さと操作性の良さを体感していただきたいですね」


マニュアルズームレンズを搭載するレンズ一体型の「FUJIFILM XF1」

--- センサーやエンジンはX10と共通のようですが、最終画質はX10と同等になりますか?

「X10で指摘されていたブルーミング(点光源に青の縁取りが出る現象)は、画像処理の見直しとハードウェア側の工夫で潰していますが、それ以外は基本的に変化していません。高感度性能などは、センサーが同じなので変わっていないと思います」


X100後継機種は?

--- X-E1でX-Trans CMOSが横展開しましたが、シリーズの縦方向、すなわちX100、X10、XF1などの後継に採用する計画はありませんか?

「現時点で正式に何かが決まっているわけではありませんが、カメラの特徴に合わせて水平にも垂直にも展開したいとは考えています。しかし、すべての機種で採用するわけではありません。特徴に合わせて採用するセンサーは変えていきますが、将来像として“X”シリーズに関しては、X-Trans CMOSにしていきたいですね」

「しかし、それが何時になるか? というと、そこは一気に縦にもというわけではありません。たとえば、X100の画質がどうしようもないのであれば、それは考え直さなければなりませんが、現時点でかなりよい画を出せていると思います。X-Trans CMOSは大変によい画質を実現できますが、万能ではありまん。一般的な配列との違いを見極めながら、製品ごとに適切なセンサーを採用していきます」

--- 今後という意味では、オートフォーカスの高速化など、X100の新モデルに対する期待は高まっています。こちらの計画は?

「(X-E1が投入された直後とはいえ)レンズ交換式とX100は、別の世界観を持つ製品ですから、“今後については心配しなくていいですよ”とだけ申し上げておきます。X-E1はミラーレスでハイエンドの画質を実現しています。だからこそ、X100はどのような位置づけであるべきなのか、よく考えて後継機種を作らなければなりません。大切にしていきたいモデルなので、頻繁にモデルチェンジはしませんが、今後についての心配は無用です」


一連のXシリーズの端緒となった「FUJIFILM X100」。右が限定のブラックバージョン

「X100のオートフォーカスは遅いという指摘の反面、正確であるとの評価もあります。X-Pro1のアップデートでは、ギア比といいますか、フォーカスを動かすステップを可変にすることで高速化できるようにしました。X100でも何らかの対策もできるかもしれませんが、正確性が第一です。オートフォーカスの正確性はポリシーでもあるので、そことのバランスを取っていきたいと思います」

「もっとも、このようにいろいろ意見をいただけるのも、注目されているからこそ。X100は投入してから1年ですし、X-Pro1に至っては半年です。これだけ短期にいろいろリクエストが届くというのは、嬉しい面もありますから、なんとか解決するために頑張っていきますよ」

--- X100以降、Xシリーズの製品は、マニア向けだけど、ちょっと敷居が高い印象を持たれるのではないか?という危惧もありました。しかしXF1では、この殻を大きく破って、Xテイストだけどイージー、という新しい境地に至ったと感じました。何か富士フイルム自身の変化はあったのでしょうか。

「我々の役割は、カメラが好きな人、写真を愛している人たちが、よりよいカメラ、よりよい写真のために何を求めているのか。その声を吸い上げる役割を担っています。自分たち自身が、なによりカメラ、写真が好きなんだ、という、その本能に任せて、よりよいカメラを作っていきますこれが、すべてのXシリーズにおける基本です」

「確かに、マニアックというと、敷居の高さを感じる面もあるでしょうが、マニアがこだわるには、そこに何か理由があるのです。そのこだわりとは何なのかを見極め、マニアのコダワリを、よりイージーに、誰もが使いこなせるカメラに仕上げることも、私たちの仕事なんだとXF1の開発を通じて気付きました。操作性にマニアックなこだわりは盛り込みながら、ニッチな方向ではなく、一般のひとたちが使いこなせるXシリーズも、今後はたくさん投入していきたいですね。今後のXシリーズに期待してください」



(本田雅一)

2012/9/22 17:28