八木澤扶美子写真展「生き抜く―祈りの民・チベット―」(大阪ニコンサロン)
作者はここ数年、激変していく中国各地の都市・農村を見てきたが、チベットという辺境の地さえも驚くほどの変容を遂げた。「中国化政策」は一段と拍車がかかり、チベットの人口をはるかに超える中国人の流入は、チベットの伝統・文化・宗教・言語などを抹殺する最終的手段となっている。ラサをはじめとする各都市は中国の観光地と化し、年毎にチベット色は薄れていっている。
それでも、まだ豊かな自然に恵まれた東部(カム・アムド地方)は、一昨年・昨年と大地震が襲い、いくつもの震源地は壊滅的被害を受けた。折りしも日本もこの春、地震・津波・原発事故など未曾有の災害の中で、何とか力を合わせて復興に立ち上がろうと心をひとつにしている。この惨禍の中で、快適・便利という文明に寄りかかり、効率という数字に縛られ、それに支配されてきた今までの日本の姿を考え直す必要も生まれている。
貧しくとも「大自然の営みの中に生かされている命」「永遠のいのちの流れの中の自分」ととらえ、常に感謝の祈りの中にあるチベット人のブレない民族の確かさを見ていると、人間として最も大切なことはどんな困難な中でも「生き抜く」ことだろうと思われる。我々日本人も、今この世にあることの幸せに思いをいたし、謙虚な知性・知恵を持ち合って、力強く行きぬくことにしたいと心から思う。
本展を、作者はささやかな応援歌になればと願っている。カラー48点。(写真展情報より)
- 名称:八木澤扶美子写真展「生き抜く―祈りの民・チベット―」
- 会場:大阪ニコンサロン
- 住所:大阪市北区梅田2-2-2 ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
- 開催日:2011年11月17日~2011年11月23日
- 時間:10時30~18時30分(最終日は15時まで)
- 休館:会期中無休
2011/11/2 13:02