ライカ、「X1」「M9」の発表会を開催

〜早ければ年内発売の可能性も

 ライカカメラジャパンは14日、9月10日に発表した新製品「X1」、「M9」、「S2」に関する発表会をライカ銀座店で開催した。会場にはドイツ本国から開発責任者2名が出席。開発意図などを語った。

X1。光学ファインダーとハンドグリップを装着した状態スチールグレーペイントのM9。レンズはズミクロン35mm F2 ASPH.
10月以降の発売が正式に決まったS2

MシステムとD-LUX4の間を埋める新ジャンル

 新製品のうちX1を紹介したのは、Product Managerの杢中薫氏。ライカとしてゼロから立ち上げた製品で、M型ライカを小型化した印象のボディに、APS-Cサイズ相当の有効1,220万画素CMOSセンサーを搭載する。非交換式の36mm相当 F2.8のレンズを採用し、コントラストAFに加えてMF操作も行なえる。液晶モニターは2.7型。記録メディアはSDHC/SDメモリーカード。

ライカカメラAG Product Managerの杢中薫氏X1にポジショニング

 杢中氏が強調したのが、1913年のウルライカにすでに備わっていた「ライカシェイプ」をX1が継承していること。ライカシェイプとは、バルナック型およびM型ライカに見られる、円筒の上下を平らにして左右の円みを残した形状。X1のマグネシウム製ボディシェルもライカシェイプを再現し、トップカバーとボトムカバーで挟み込むという、バルナック型およびM型ライカの伝統的な構造を守っている。

 杢中氏は同時に、初の35mm判カメラであるライカ登場時のインパクトになぞらえて「ボディは小さくても高画質、大きなセンサーを積んだ小さなカメラ」といった、バルナック型およびM型ライカとの共通性をアピールした。円筒形をした内蔵ストロボもライカシェイプを崩さないデザインであり、ライカの自信作という。

 X1発売の背景には、ライカの新しいラインナップ戦略があるという。というのも、近年はライカブランドのうちコンパクトデジタルカメラの占める割合が多くなり、初めてのライカが「D-LUX4」という層が厚くなってきた。しかし、D-LUX4やC-LUX3のユーザーが次のステップを求めたとしても、その上には敷居が高いMシステムしかない。X1はそうした層に向け、D-LUX4とMシステムの中間を埋める存在として誕生したという。もちろんMシステムのサブカメラとして、あるいはデジタル一眼レフカメラのサブカメラとしての魅力もアピールしていた。

 レンズはX1のために新設計したエルマリート24mm F2.8。撮像素子への取り付け時には、1台ずつアオリ調整を行っているとのことで、ローパスフィルターへの最適化も行なったという。

 起動時間は約0.2秒。センサーを高速でドライブする「AF H」モードを搭載するほか、顔認識AFも採用。JPEG S.Fine+DNG(どちらもフル画素記録)の状態で、3コマ/秒・最大6コマの連続撮影能力を持つ。上面にダイヤルを2つ備えており、ひとつは絞り、もうひとつでシャッター速度を設定する。

 最終組み立てはドイツのゾルムス工場で行なう。ただし部品については日本やアジアでの製造も行なっているという。本体にはMade in Germanyの記述が見えるが、(最終組み立てがドイツである以上)「法制上こう名乗るのが一番妥当な結論だった」としている。CMOSセンサーはソニー製。

 オプションとして、光学ファインダーやハンドグリップを用意。ハンドグリップを装着したまま使用できる速写ケース型のボディジャケットもラインナップする。また、縦型ジャケットやシステムバッグもオプションとして登場する予定。クリップオンストロボはSF24D、またはSF58を使用できる。

 X1の国内価格は20万円前後になる見込み。すでにライカでは2010年1月の発売をアナウンスしているが、「年内の発売を目標にしている」とのことだ。

特徴的な内蔵ストロボレンズユニット
APS-Cサイズの撮像素子を搭載するボディはマグネシウムとアルミ合金
オプションのハンドグリップハンドグリップ底面に三脚穴を装備
上下分割式の速写ケースも用意するハンドグリップをつけたまま装着できる
速写ケースには別付けの光学ファインダーを収納するケースが付属。ストラップに取り付けられる光学ファインダー。旧35mmファインダーの流れをくむという
上面にはライカロゴが。外装は樹脂製「外部ファインダー」をOnにすると、液晶モニターにライブビューが表示されない
縦収納のケースシステムバッグ

世界最小の“ライカ判”センサー搭載モデル「M9」

 同時発表のM9は、M型ライカの系譜につらなるレンジファインダー機で、M8、M8.2に続くデジタル記録のM型ライカ。これまでAPS-H相当だった撮像素子をフルサイズ化したもので、ライカ側の出席者からは「フルサイズ、フルフレームというより、世界最小ボディの“ライカ判”搭載モデル」(笑)との発言も出た。

 有効画素数は1,800万。センサーはコダック製で、マイクロレンズをオフセットさせて周辺部での画質を最適化するなど、M9にあわせた特注仕様になっているという。ローパスフィルターは非搭載。感度はISO160〜2500で、拡張感度としてISO80も選べるようになった。

 引き続きレンズの周辺画質を改善するための6bitコードに対応するが、新たに6bitコードがないレンズについても画像処理を行なうようになった。その場合は本体メニューから希望のレンズ名を選ぶ。あえて違うレンズ名を指定することも可能。

Product Management Directorのステファン・ダニエル氏M9ブラックペイント

 Product Management Directorのステファン・ダニエル氏は、「Mのコンセプトを替えることはしない、一目見てM型ライカであることがゴール」と、そのスタイリングを語った。また、レンズを含めたシステム全体が一眼レフより小さいというレンジファインダーの良さを挙げ、「フルサイズセンサーで最小ボディ、目立ちにくく、写真家に自由を与えるサイズ」と説明した。

 また同氏はM9を「最も頑丈なカメラのひとつ」と説明。従来通りトップカバーとボトムカバーは真鍮の削り出しとなる。ファインダーは0.68倍、有効基線長47.1mm。ブライトフレームは35/135mm、28/90mm、50/75mmの3パターンを備える。M7と同じ構成になるという。画像処理エンジンはM8と同じドイツ企業ユーロスと共同で開発。

 M9は9月末に発売。価格は77万7,000円。ブラックペイント、またはスチールグレーペイントの2種類を用意する。

レンジファインダー部接眼部
シャッターボタン周り。引き続き連写モードのCポジションを用意M9のロゴ
INFOボタンを押すと、背面液晶モニターに撮影ステータス表示を行なう6bitコードを持たないレンズにも情報を送ることが可能になった
左がX1の撮像素子。右はM9(上)、S2(下)の撮像素子M9とX1のセンサーサイズを比較
S2、M9のセンサーをそれぞれ手に持つダニエル氏

 いよいよ発売が決まったS2については、「ミドルフォーマットにしてはコンパクトなボディ、35mm判サイズのボディに中判の画質を組み合わせたシステム」と説明。レンズは「業界標準の数年先を行くレンズ。何年もそのまま使えるクオリティ」とした。

 発売は10月以降。サービスパッケージ付きの価格は300万円程度で、レンズシャッター付きのレンズも年末から発売するという。

日本市場は世界の10%。フォーサーズとの協業に変わりはない

 目標とする販売台数についてダニエル氏は、「M9はM8と同じくらい。月産ベースで1,000〜1,500台を見込んでいる。日本市場はその10%を期待できる。非常に有望なマーケット」とコメント。X1については「M9、M8に対して2倍〜3倍の規模か。そのうち日本市場はM9と同じく10%程度。日本ではライカのコンパクトデジタルカメラがほかのエリアより弱かった。今後に期待したい」としている。

 X1がフォーサーズシステム、あるいはマイクロフォーサーズシステムではなく、APS-Cサイズのセンサーと非交換式のレンズの組み合わせになったのは、「あくまでもレンズ一体型として考えたため。S2を立ち上げたばかりでもあり、新たなシステムを創ることは難しい。入手性の良いセンサーを考えるとAPS-Cになった」と説明。また、「フォーサーズとマイクロフォーサーズをサポートする考えに変わりはない。協業は今まで通りの関係」とコメントした。

 また、EVFについて将来的には採用の可能性があることに触れつつも、「結線部が複雑になるきらいがあり、今回はできるだけシンプルにしたいことから採用を見送った。また、X1はコンサバティブな方向に振りたいとの想いもあり、今回は光学ファインダーを用意した」との説明があった。

【2009年9月15日】36mmファインダーの外装を金属製と表記しましたが、正しくは樹脂製です。



(本誌:折本幸治)

2009/9/14 20:43