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動画と静止画、両方を管理できるソフト「Mync」

動画編集ソフトEDIUSからのスピンアウト Basic版は無料で利用可能

プロ向け映像編集ソフト「EDIUS」シリーズを展開するグラスバレーは3月、簡易編集機能を備えたコンテンツ管理ソフト「Mync」を発売した。

EDIUSの最新バージョン「EDIUS 8」の静止画・動画・音声データの管理機能を独立させたコンシューマ向け製品。無料で使えるMync Basicと有料のMync Standardを用意しており、Mync Standardの価格は6月30日までの期間限定で4,980円。両者の違いは読み込めるフォーマットの種類の多寡とムービー出力機能制限の有無。対応OSはWindows 7/8.1/10(いずれも64bit)。

元となったのはEDIUS内蔵のコンテンツ管理機能「GV Browser」で、MyncはGV Browserに従来から存在していたコンテンツ管理機能にいくつかの新機能を追加し、単体でリリースした。コンセプトは「エクスプローラーを使った管理からの脱却」。

動画ファイルと静止画ファイルの両方のメタデータを用いた管理機能を特徴とする。写真管理ソフトでは当たり前の機能だが、映像管理ソフトではこれまでメタデータを活用する動きがなかったという事情もあり、今後の映像ファイル管理関連機能の改善に向けて搭載したとしている。メタデータの検索条件を保存し、ライブラリの更新状態をリアルタイムに反映する「スマートカタログ」機能を備えた。

主な機能は、メタデータを用いたカスタマイズ検索、簡易映像編集、プレビュー再生時の解像度変更など。コンシューマ向けにUIを簡略化し、簡易映像編集ではプロ向けの映像編集ソフトで一般的なタイムラインではなく、ドラッグ&ドロップによる操作を基本とした「ストーリーボード」による直感的な操作方法を採用している。オーディオトラックの編集には非対応。編集した動画の出力はStandardのみ対応する。

映像編集時やプレビュー再生時の快適さにも配慮しており、操作時の挙動も軽快になるよう様々な工夫を施している。一例としては、低スペックPCでの実行時に4K動画のプレビュー再生を行なう際、コマ落ちの発生を防ぐために、任意に再生解像度を落とす「ドラフトプレビュー」を備えている。

管理機能は、基本的に動画ファイルに対する管理がメインだが、別途画像コーデックのフレームワーク「Windows Imaging Component」(WIC)を導入することで、デジタルカメラで撮影した静止画のRAWデータをプレビュー表示できる(導入していない場合でも読み込みは可能)。静止画に対してはレーティングのみ可能で、画質の調整や編集機能は非搭載。

記録メディアやスマートフォンからの一括取り込みも可能で、記録メディアや内蔵ストレージをクローンコピーするようなイメージで使えるとしている。取り込んだファイルは取り込み履歴から確認でき、同じファイルを重複して取り込むのを防げる。

このほか、映像ファイルのメタデータ活用の一環として、GPX(GPS eXchange Format)ファイルの読み込みにも対応。GPSが非搭載のカメラでも、映像とジオタグを紐付けた管理を意図している。

まだ珍しい静止画/動画のRAWへの両対応。今後の機能追加に期待

Myncは静止画と動画の両方を管理できるソフトウェアだが、映像編集ソフトから独立したという経緯もあり、静止画に対してできることはとても少ない。しかも初期状態では静止画をプレビュー表示できない(WICを導入する必要がある)時点で静止画の管理ソフトとして使うにはかなりつらいものがある。

しかし、ほとんどフォルダ分けレベルの管理だけとはいえ、動画と静止画のRAWファイルを同時に扱えるのは特筆すべきポイントだ。動画と静止画を同じカタログ上で管理する方向性は、コンシューマ向けソフトではAdobe「Photoshop Lightroom 3」などが先駆けとなって実現しているが、Lightroomでは現行の最新バージョンでもα7シリーズなどが採用するXAVC Sなどのフォーマットを読み込むことはできない。

すべてのカメラメーカー固有のRAWファイルが読み込めるかどうかは今回試していない(少なくともシグマX3Fは無理だという)が、RAWファイルまで含めたメディアファイル管理ソフトは、これまで静止画と動画でほぼ分離されていたと言ってよいので、今後もしも動画だけでなく静止画の編集や現像までカバーするようになるとするならば、大きく化ける可能性があるだろう。

グラスバレーが今回強調している「動作の軽さ」も見逃せない。多分に主観的な感想で恐縮だが、動画/静止画両対応の管理ソフトでありがちな、ファイル読み込み時の微妙なもたつきはほとんどなく、軽快にファイルの移動やカタログ分け、さらには動画の簡易編集を行なうことができた。EDIUSは過去14年間にわたり映像編集ソフトを手がけてきたこともあってUIもこなれており、静止画をメインに管理する分には無料で使えるBasicでも機能的に十分だ。デジタルカメラユーザーとしては、主に静止画周りにかかわる今後のアップデートに期待したい。

関根慎一