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写真プリント鑑賞時は「脳のモードが異なる」…コンテスト攻略法を喜多規子さんが解説

GANREF MEET 2026「究極の1枚を形に。アート紙プリントの魅力」より

セミナー会場は超満員の大盛況だった

弊社インプレスが運営する写真投稿サイト「GANREF」は、会員向けリアルイベント「GANREF MEET 2026」を6月6日(土)に都内で開催した。

会場は100名を超える多くの来場者で賑わい、写真家やカメラメーカーの開発者によるトークショー、機材のタッチ&トライ、モデル撮影、プレゼントの抽選会や会員同士の懇親会などが行われた。

セミナー講師を務めた喜多規子さん

本稿ではGANREF MEET 2026で実施したセミナーのうち、写真家の喜多規子さんによる写真プリントのセミナー「究極の1枚を形に。アート紙プリントの魅力」(協力:エプソン販売株式会社)の模様をお伝えする。

開催に先立ち、事前に作品をアップロードするとセミナー受講時にA3ノビのプリントが受け取れる企画を実施していた。先着80名を対象とした数量限定のサービスだったが、セミナー受講者のほとんどが申し込み、当日にプリントを受け取っていた。会場では参加者が受け取ったプリントと画面に映した写真を見比べている様子も見られた。

セミナー会場前に並べられた無料プリント
開始時間が近づくと参加者が続々とプリントを受け取りに訪れた

「SC-PX1V」による作品プリントサービスも

そのプリントの出力に用いられたのは、エプソンのA3ノビ対応顔料インクジェットプリンター「SC-PX1V」。エプソンの写真画質プリンターとして、上級ラインのプロセレクションに位置づけられるモデルである。「UltraChrome K3Xインク」の採用により、黒色の濃度と青色の階調再現性を高めた表現力が特徴だ。

受講者の作品をプリントしたエプソン「SC-PX1V」

各作品の出力に使用したプリント用紙は、エプソン純正のファインアート紙「Velvet Fine Art Paper」。リッチな質感と表現力に長けたマット系の用紙になる。

Velvet Fine Art Paper

SC-PX1VVelvet Fine Art Paperの組み合わせは、フォトコンテストへの応募や作品展示などに挑戦したい人にとって、有力な選択肢の1つといえるだろう。

モニターとプリントでは「脳の情報処理」が違う

喜多さんはアマチュア時代から現在に至るまで写真のプリントを続けており、多いときで1カ月に80点前後をプリントしていたという。

今回のセミナーではその経験を踏まえて、フォトコンテストへの挑戦を後押しする実践的なアドバイスを伝授した。

「自宅でプリントをしている人」を呼びかけたところ、GANREF会員が主体の来場者だけあってそれなりに多く手が挙がった

喜多さんによれば、写真をモニターで見る場合とプリントで見る場合とでは、透過光と反射光の違いにより「脳の情報処理モードが異なる」のだという。同じ写真を見た場合でも、透過光のモニターでは構図や色味がひと目で把握しやすい「直感モード」である一方、反射光で見るプリントでは用紙表面の細かな凹凸や手触りなどの質感が加わり、細部までじっくり見る「分析モード」になるといった違いがある。

モニターの透過光は「直感モード」、プリントの反射光は「分析モード」

目にした情報をより客観的に処理する意味ではプリントで見た方が鑑賞に適しており、記憶に残りやすい。細部まで深く見ることによって自分の写真の"粗"を自覚しやすくなり、結果として写真の上達につながることがプリントするメリットだと説明している。

セミナー中、自分のプリント作品を取り出して眺める来場者の姿も多かった

求めるイメージはプリント用紙で変わる

プリント用紙によっても最終的なイメージは変わる。

例として、エプソンの写真用紙「写真用紙クリスピア<高光沢>」、「写真用紙<絹目調>」、「Velvet Fine Art Paper」の3種類について解説があった。

写真用紙クリスピア<高光沢>
ハイコントラストで彩度が高く、ディテールの表現に優れている。被写体としては朝夕のドラマチックに焼けた空や照り返す水面、強い照明に照らされたスポーツシーンなど光を感じる対象に向いている。弱点としては反射が強いため、霧がかった湖など静けさを感じさせる表現は不得意であるとした。

写真用紙<絹目調>
中間色が美しく出やすい自然な質感。汎用性が高く使いやすい。ポートレートやスナップ、自然風景まで、情緒ある落ち着いた風景の描写に向く一方で、インパクト重視の被写体描写はクリスピアに一歩譲る面もある。

Velvet Fine Art Paper
反射のない柔らかな質感で絵画的な描写が得意。モノクロやポートレート、スナップ、風景など、落ち着いた被写体の表現に向いているが、発色/階調の出方もバランスが良く、作品によってはきわめて高い表現力を発揮する。

このうちVelvet Fine Art Paperについては喜多さんもお気に入りとのことで、特に紙としての柔らかな質感と豊かな階調表現を高く評価しており、過去に開催した作品展でも展示写真の用紙として採用している。

2023年にエプサイトギャラリーで開催した「旅で巡る感動の風景」の展示作品では霧の風景や新緑、岩礁、星景まで幅広い被写体を写しているが、湿度感や静けさ、ハイライト部の柔らかい階調からシャドー部の締まりまで表現する対応力の高さも評価ポイントとしていた。

喜多さんが開催した過去の写真展ではすべてのプリントにVelvet Fine Art Paperを採用した例も

Velvet Fine Art Paperを扱う上での注意点としては「表裏を間違えやすい」ことがあるという。プリント用紙に触れてみると微妙に感触が違うため判別することもできるが、いずれにしても慎重に扱うことが求められる。プリント用紙のケースにも表裏についての記載があるので、初めて使用するときはあらかじめ読むと良いだろう。

余白の設定が容易な「Epson Print Layout」

現像/レタッチアプリ向けプラグインの「Epson Print Layout」を用いた印刷ワークフローについても紹介があった。

喜多さんの場合、Photoshopのプラグインに設定した「Epson Print Layout」を立ち上げてファイルを読み込み、余白を設定してプリントイメージを決め、色域の維持設定を確認したら出力を開始している。余白の比率が固定でき、簡単に設定できる点が「Epson Print Layout」のお気に入りポイントだという。

撮影後のセレクトは早めに

フォトコンテストの攻略アドバイスとしては、「撮影後のセレクト」が撮影と同じくらい重要だと話した。撮影後できるだけ間を置かずにセレクトするよう勧めている。

セレクトは後回しにせずできるだけすぐに行うこと

フォトコンテストへの応募を前提としたセレクトのコツとしては、以下の6点があるという。

  • 審査員に伝わる作品であるか
  • きれいにプリントできているか
  • 同じような作品を応募していないか
  • 応募時期を考慮しているか
  • 審査員の好みは何か
  • 選にもれても諦めず応募する

とりわけ応募作品に関しては、見る人に狙いやストーリーが伝わる作品に仕上がっているかが大事だという。

また、被写体を旬の時期からずらして応募することも有効だとした。例えば桜の写真を春のコンテストに応募するよりも、夏以降のコンテストに応募した方が審査員の目に留まりやすくなる。

さらに自分にとって大事な自信作であるならば、諦めずに別のコンテストにも応募することも一考の余地があるとしている。

「きれいにプリントできているか」については、適正露出であること、自然な色が再現できているか、意図しない白とび/黒つぶれがないかといった基本的なところから、余白が効果的に取られているか、応募するプリントに汚れがないかについても確認するよう促している。

きれいなプリントの要件

特に余白に関しては、余白部分をフレームに見立ててバランスよく配置するよう助言した。

余白はフレームに見立てる

コンテストにもよるが、選者の立場としては、作品につけるタイトルも重要だという。ここで気をつけるポイントは、説明的な言葉よりも連想/想像する余地のある言葉を使うこと。タイトルそのものは写真の評価に影響しないが、ほかの作品と評価が拮抗しているときにタイトルが決め手になることもあると話した。

フォトコンテストに挑戦する意義

最後に、フォトコンテストへの応募を継続するモチベーションについても自身の経験から語っている。

フォトコンテストはアマチュアとして貴重な作品発表の場であり、続けている限りは次の撮影制作にとりかかる動機付けにもなる。

また努力の末に入選すれば審査員からの選評がもらえることも励みになったという。

長く活動を続けているうち、フォトコンテストの表彰式やイベントなどで知り合った写真仲間が全国にできたことも大きかったと振り返った。

喜多さんがアマチュア時代、フォトコンテストへの応募を続けるモチベーションになったこと

サプライズで行われた作品講評会

講義が一通り終わった後、セミナー参加者の作品を喜多さんが講評する時間が設けられた。

セミナーに先立ってプリント申し込みのために参加者がアップロードした作品は、一通り喜多さんとGANREF編集部がチェックしている。事前に告知のないサプライズで、編集部から突然告知された際には会場で笑い混じりのどよめきが起きていた。

プリントを申し込んだ来場者を壇上に呼んで作品の紹介をする場面も

講評を受けた作者は、撮影現場の状況や制作の際に気をつけたポイントなどをしっかりと話していた。

それに対し喜多さんは、構図やディテール、陰影、色彩をはじめとした表現意図についてコメント。作品プリントの優れた点を解説した。

選ばれた作品はセミナー終了後もしばらくの間、来場者が間近で鑑賞できるよう会場の受付に展示され、イベントの盛り上げに一役買っていたようだ。

来場者のプリントはセミナー終了後しばらく間近で見られるようになっていた
関根慎一