トピック

光を味方にして表現力をアップ!印象的なポートレート作品にするには?

K&F「ブラックディフュージョン」フィルターを試す

ポートレート写真はカメラ愛好家の中でも人気のカテゴリーだ。そんなポートレート撮影で昨今”定番”と言われるのがミスト効果を与えるフィルターの使用。そのうち「ブラック」系が人気を集めている。

現代のともすれば写りすぎてしまう高性能なカメラやレンズの描写を柔らかくして、人肌を滑らかに表現することができるのがミスト系フィルターの魅力。ドリーミーなイメージも演出できることから、ポートレートに限らず常用している人もいるだろう。

ブラックディフュージョンフィルターならふんわりとした雰囲気を出すことができる
ソニー α7 IV/FE 35mm F1.4 GM/35mm/マニュアル露出(1/800秒、F2.2)/ISO 100/K&F Nano-X ブラックディフュージョン1/4

ブラックディフュージョンフィルターとは?

こうしたミスト系のフィルターはもともと映画撮影用として広く使われていた。以前は高価で入手性も良くなかったが、いまでは様々なメーカーが似た名前でリリースしておりユーザーが広がった。

ブラックディフュージョンフィルターはソフトフィルターの一種。ソフトフィルター自体は昔からあってファンも多いが、一般的なソフトフィルターは画面がかなり軟調になるため使いどころが難しいきらいがあった。

そこで注目されたのがブラックディフュージョンフィルターだった。黒い粒子を拡散させることで、暗部の浮きを比較的抑えつつ、コントラストを和らげることができるのでそれまでのソフトフィルターよりも自然なソフト効果を演出できる利点があったためだ。

よく見るとガラス内に黒い粒子が見える

そんなブラックディフュージョンフィルターだが、種類やグレードが多いため初めてだとどれを選んで良いかわからないという面もあると思う。今回は初めての人にも使いやすく性能と価格のバランスに優れたK&F Conceptの「ブラックディフュージョン」フィルターを紹介したいと思う。

K&F Conceptは様々なカメアアクセサリーをリリースしており、種類が豊富なマウントアダプターでは特に有名。三脚やカメラバッグも手がけているが全体的にコストパフォーマンスに優れるブランドになっている。

さて、K&F Conceptでは3つのグレードのブラックディフュージョンフィルターをラインナップしている。上位モデルから「Nano-X」「Nano-D」「Nano-K」シリーズだ。大きな違いは反射防止コーティングの性能で、それぞれ28層、24層、18層となる。

どのフィルターでもそうだが、フィルターの反射によるゴーストやフレアの発生は抑えたいもの。Nano-Xシリーズは超多層コーティングということで効果も大いに期待できる。

ブラックディフュージョンフィルターNano-X
レンズへの装着例。カメラボディおよびレンズは、ソニーα7 IVとFE 35mm F1.4 GM

3シリーズには価格差があるもののNano-Xでも高すぎるわけではないので、どうせ買うならこのグレードをおすすめしたい。というのも、今回Nano-Xシリーズを試用して逆光などでも撮影したが問題になるようなゴーストやフレアは見てとれなかったからだ。

AGCの光学ガラスを採用

Nano-Xシリーズはソフト効果の強い順に1/1、1/2、1/4、1/8がある。ブラックディフュージョンフィルターは画の狙い、レンズの焦点距離、絞り値、光線状態などで適切な強度のフィルターをその都度選択するのが本来の姿。映画撮影用の角形フィルターなどは強度別に一揃いが箱に入っていたりする。

ウォータープルーフやアンチスクラッチコーティングといった機能もある

ただ、全部の強度を揃えるのは金額的に大変だし、どれが自分のスタイルに合うのかはわからない。そこで最初に1枚として好適なのが1/4という強度だ。

1/1や1/2はかなりソフトで使うシーンを選んでしまいがち。一方1/8は効果が弱く、シーンによってはわかりづらいこともある。中間的な1/4はそこそこの効果も出るがくどくならず、一般的な撮影では使いやすい。

Nano-XシリーズはAGCの光学ガラスを採用し、28層コーティングとあわせて耐水性、耐油性、耐擦傷性、防塵性を謳っている。枠が3.3mmの薄枠タイプなので広角レンズでもケラレにくくなっている。サイズは丸型が37-95mm、ほかに100mmの角型タイプもラインナップされている。

このような滑り止めが2カ所に付いていて着脱がしやすい
横から見ると薄枠なのがわかる

フィルターとしての作りも申し分なく、レンズへの着脱も滑らかにできた。なお、同じフィルターのマグネット装着タイプも用意されているので、頻繁な着脱を考えているならこちらを選ぶのも手だ。

円形のケースが付属する

使用例|ハイライトの滲みでドリーミーな表現に

今回はNano-Xシリーズの1/4を使って、フィルターなしとありの比較を行った。使用機材はα7 IV、FE 35mm F1.4 GM、FE 85mm F1.4 GM IIだ。

うっすらソフトでドリーミー

フィルターなし
ソニー α7 IV/FE 35mm F1.4 GM/35mm/マニュアル露出(1/250秒、F1.4)/ISO 100
フィルターあり
ソニー α7 IV/FE 35mm F1.4 GM/35mm/マニュアル露出(1/250秒、F1.4)/ISO 100/K&F Nano-X ブラックディフュージョン1/4

日陰のモデルを撮影してみた。ブラックディフュージョンフィルターを使うと画面奥のハイライトに美しい滲みが出て、それがモデルにも若干かかり柔らかい雰囲気となった。

フィルターなしの写真もきれいだが、光が溢れる感じのインパクトとしてはブラックディフュージョンフィルターを使ったものに軍配が上がるだろうか。

ハイライトを抑えてシックな印象に

フィルターなし
ソニー α7 IV/FE 35mm F1.4 GM/35mm/マニュアル露出(1/400秒、F5.0)/ISO 100
フィルターあり
ソニー α7 IV/FE 35mm F1.4 GM/35mm/マニュアル露出(1/400秒、F5.0)/ISO 100/K&F Nano-X ブラックディフュージョン1/4

モデルに太陽の方を向いてもらい、あえて順光のシーンを作った。その上で顔に手をかざして影を落としてもらって明暗差を見た。

フィルターなしはパキッとした描写でこれはこれでありだろう。一方フィルターを使うと影部分が少し持ち上がり、ハイライトも抑え気味になるので絵画的とでもいうか落ち着いた描写にすることができた。

派手な逆光こそ出番

フィルターなし
ソニー α7 IV/FE 85mm F1.4 GM/85mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F1.4)/ISO 100
フィルターあり
ソニー α7 IV/FE 85mm F1.4 GM/85mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F1.4)/ISO 100/K&F Nano-X ブラックディフュージョン1/4

続いては川面に夕陽が反射するという強烈な逆光のシーンだ。ソフトフィルターは強い光源があると効果も大きくなるのでわかりやすい効果となって現れた。

モデルが光に包まれたように写り雰囲気がある。これだけの逆光でも目立つゴーストやフレアは無く、やはりコーティングが優秀なのだと感じた。

使用例|肌のトーンを美しくなめらかに

フィルターなし
ソニー α7 IV/FE 85mm F1.4 GM/85mm/マニュアル露出(1/640秒、F2.0)/ISO 100
フィルターあり
ソニー α7 IV/FE 85mm F1.4 GM/85mm/マニュアル露出(1/640秒、F2.0)/ISO 100/K&F Nano-X ブラックディフュージョン1/4

斜光で肌のディテールが目立ちやすい条件で撮影。ブラックディフュージョンフィルターを使うことで肌を滑らかに描写できた。コントラストが少し弱まるのでトーンの連続性も良くなる。

ポートレートはで肌の描写は写りすぎてもNG。適度に柔らかくできるブラックディフュージョンフィルターならレタッチをする場合でも最小限で済む。

まとめ

ソフトフィルターを使わないポートレートも王道だが、ちょっと雰囲気が欲しいとか表現の幅を広げたいといった場合には1枚あると活躍するのがブラックディフュージョンフィルターといえる。

ブラックディフュージョンフィルターには独特の世界観が出るため、こうした表現を目指したいなら一度試してみて欲しいアイテムだ。

今回の作例でいうと逆光では人によっては1/4では効果が大きすぎると感じるかもしれない。その場合は次に1/8にトライしてみよう。1/8は隠し味程度になるので普段使いにも適する。また順光だと効果が弱いということであれば、1/2がマッチするかもしれない。

まずは1/4からエントリーして、描写が気に入ったらその前後の強度を揃えるくらいまで行くと現場で柔軟に対応できるだろう。

ある程度シャドウを締めたままソフト効果を出せるのはブラックディフュージョンフィルターならでは
ソニー α7 IV/FE 85mm F1.4 GM/85mm/マニュアル露出(1/3,200秒、F2.0)/ISO 100/K&F Nano-X ブラックディフュージョン1/4

モデル:透子

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。