トピック
可変NDフィルターはどこまで進化した? 気になる色再現とクロスムラを検証
K&F「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」を試す
- 提供:
- K&F CONCEPT
2025年1月22日 12:50
動画で作品を作り上げるのに必携ともいえるのが、いわゆる可変NDフィルターだ。数多くのメーカーがこの可変NDフィルターをリリースしている現在、このページではK&F CONCEPTの「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」の実力に迫りたい。
紹介するのは、写真・映像の撮影に携わる木村琢磨さん。「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」の実力を検証してもらった。
可変NDフィルターとは?
可変NDフィルターの最大の特徴は、1枚のフィルターでNDフィルターの濃度を調整できることだ。
通常のNDフィルターは決められた濃度のものを装着して使用するが、濃度が固定だと目的に合わせて複数枚のフィルターを持ち歩く必要があるが、可変NDフィルターを使用することでNDフィルターを交換することなく理想の濃度で撮影が可能だ。
可変NDフィルターの仕組みとしては2枚の偏光フィルター(PLフィルター)の効果を重ねがけしている状態だ。
偏光フィルターは効果が大きくなるほど光の透過量が下がる特性がある。
可変NDフィルターではその特性を応用することで減光効果を調整することを可能にしている。
もしPLフィルターを2枚持っている方がいれば簡易的な可変NDフィルターを再現することができる。
可変NDフィルターの使いどころ:静止画撮影
写真を撮影していてNDフィルターを使いたい時はやはりシャッター速度を遅くしたいシーンだ。
シャッター速度の効果がわかりやすいシーンとしては滝や河川のように水が流れるシーンだろう。
NDフィルターがなくても低ISOでF値を絞り込めばスローシャッターで撮影できるのでは?と思う人もいるかもしれない。
しかし日中の明るさは想像以上で、F22まで絞っても1/30秒、頑張っても1/15秒あたりが露出の限界だ。
日陰などではもう少しシャッター速度を下げることができるがそれでも1秒以上のスローシャッターはなかなか難しい。
また、F値を絞りすぎると回折現象が発生し画質の低下につながってしまう。
そこで活躍してくれるのがNDフィルターということになる。
NDフィルターにはさまざまな濃度があり、ND2であれば−1EV、ND4であれば−2EVとNDの数値が大きくなるほど減光効果も大きくなる。
−1EVがどれくらいかというと、ISO 100/シャッター速度1/125秒/F11で適正露出のシーンを、ISO 100、シャッター速度1/60秒、F11で撮影することが可能となる。
つまり日中にスローシャッターで撮影したい場合はND16(−4EV)やND32(−5EV)の濃度は必要となる。
しかし濃度の濃いNDばかり集めていると効果が大きすぎる場合もあるので結果、複数の濃度のNDフィルターを持ち歩くことになるのだが、それを解決してくれるのがこの可変NDフィルターだ。
K&F CONCEPTの「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」の場合、ND2からND32の濃度を1枚のNDフィルターで再現できるので
撮影シーンに合わせて適切な効果を得ることができる。
また無段階調整となっているためND2とND4の間というような中間の効果も得ることができるのでカメラで行う露出調整以上のことが可能だ。
可変NDフィルターの特徴としてND効果を調整するノブやレバーがついているが、「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」の操作レバーは丸みを帯びたデザインとなっている。製品によってはこの出っ張りが気になるものだ。しかし、本製品の操作レバーは操作性もよく出っ張りも少ない。
可変NDフィルターの使いどころ:動画撮影
最近はスチルだけでなくムービーを撮影する人も多いと思うが、同じ撮影でもスチルとムービーとでは撮り方が全く異なるためそのギャップに悩んでいる人も多いだろう。
スチルとムービーの1番の違いは撮影時の露出、特にシャッター速度の設定に大きな違いがある。
スチルの場合は感度(ISO)とF値を決めた後にシャッター速度で適正露出に追い込むことも多いが、ムービーの場合は撮影時のフレームレート(1秒間のコマ数)に応じて適正なシャッタースピードを設定する必要がある。
必ずというわけでは無いのだが、ムービーの場合は撮影時のフレームレートの2倍のシャッタースピードが適切であり、シャッタースピードが速すぎるとパラパラ漫画のようなぎこちない映像になったりフリッカー発生の原因にもなる。
フレームレートが30fpsだった場合はシャッター速度は1/60秒が理想ということになる。
そう考えると日中にシャッタースピードを1/60秒で適正露出となると必然的にF値を絞り込んでの撮影となってしまい、レンズのボケを生かした映像や表現の自由度を考えるとムービーの場合はNDフィルターは必須となってくる。
ムービーの場合は基本的にシャッター速度は「ほぼ固定」と考えてもらうと話が早く、露出の調整はスチル以上に難易度が高い。
順光と逆光、日向と日陰など撮影位置やアングルが変化することで適正露出も変化するため、ND濃度が固定だとその都度NDフィルターを変更することとなる。
可変NDフィルターを装着しておけばレバー操作ひとつで濃度を変えられるので、確実かつ素早く適正露出を狙うことが可能だ。カメラの感度(ISO)、シャッター速度、F値は変更せず、ND効果の変化でそれぞれのシーンに応じた適正露出に調整できるのだ。
また、ムービーにはLog収録という方法がある。スチルでいうところのRAWデータでの撮影に近く、後処理の自由度がかなり高いのでこだわり始めるとLog収録がメインとなってくる。そうなると日中にシャッター速度を下げるのはますます難しくなってくるため、そういう意味でもムービー収録ではNDフィルターが必須となる。Log収録の場合、ベースとなる感度(ISO)が100や200ではなく、640や800、機種によってはそれ以上の感度がベースとなるためだ。高感度での撮影がデフォルトとなり、より可変NDフィルターの必要性が増すことになる。
可変NDフィルターの欠点…「色再現」「Xムラ」をチェック
可変NDフィルターは便利な反面その仕組み上デメリットも少なからずあり、例えばフィルターが重なっている分、光のロスも大きくなるため忠実な色で撮影が難しい。また、複数枚の偏光フィルターを光が通る際に発生する、クロス状のムラなどもよく知られているところだろう。
今回試用した「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」では、それらが最小限に抑えられている。
色被りもゼロでは無いが、ホワイトバランスの微調整で対応可能な範囲だ。特に広角レンズとの組み合わせでよく見られるクロスむらが少ないのは素晴らしい。
最近はフィルターが装着できる超広角レンズも多くラインナップされているので、フィルターの活躍の場はこれからどんどん増えるはずだ。
<検証1>色再現性をチェック
可変NDフィルターを使用する上で避けられないのがカラーシフトと呼ばれる色被り現象だ。製品によって色の被りの傾向は異なるが、フィルターを使っていないときと比較して、画面全体が青や黄色に色が被ってしまうことが多い。
「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」はチタンコーティングが施されており、そうした極端な色被りが抑制されているという。物理フィルターをレンズ前に装着するため影響がゼロということは難しいのだが、カメラやレンズと一緒でフィルターも年々進化しており、最新のフィルターを使用することでカメラやレンズの性能を最大限に引き出せる。
私の好きな撮影場所で「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」の効果を確かめてみた。
スローシャッターの効果が1番わかりやすい河川で撮影を行い、NDフィルターの効果と色の再現性なども合わせて確認している。
今回は同じ撮影シーンでムービーの収録も行っており、可変NDフィルターでなければ撮影することが難しかった条件だ。
撮影環境に合わせてND濃度を変えられるので理想のイメージで撮影することができた。
通常であれば単体のND16や32をベースに、保険としてND2〜8も持って行こうかというシチュエーションだが、「フィルターの枚数が増える=荷物が増える」ということになるため可変NDフィルターのメリットが生きた撮影となった。
また、通常のNDフィルターの場合は付け替え作業が発生する。ネイチャーシーンでのフィルターの着脱はフィルターを落としてしまうなどのリスクもあることから、可能であればフィルターの着脱は最小限に抑えたい。
そういう意味でも可変NDフィルターは、撮影時の負担が軽減されより一層撮影に集中することができる。
シチュエーションによっては若干の色の被りも見られるが、撮影結果をファインダーや背面モニターでプレビューできるミラーレスカメラであれば、撮影現場での補正も簡単だ。気になればその場で調整してしまうのも手だろう。
可変NDフィルターは、レンズでいうところのズームレンズのようなもの。とりあえずこれ1つあればなんとかなるだろう、という安心材料にもなる。
スチルはムービーと違い被写体の動きを1枚で表現しなければならないのでシャッタースピードの選択がとても重要なポイントとなる。
水だから必ずスローシャッターというわけではないのだが、NDフィルターがあるからこそ可能な表現方法なので、いくら良いレンズや良いカメラであってもフィルターがなければ撮影できないシーンはたくさんあるのだ。
<検証2>“クロスムラ”をチェック
今回使用して私が良いと感じたポイントのひとつでもあるX状のクロスムラの少なさ。
焦点距離が24〜28mmくらいの広角レンズでもフィルターによっては目立つことがあるのだが、今回はどのシーンでも目につくことはなく何も気にすることなく撮影を続けることができた。
特にムービーでムラが発生すると手に追えない状態なのでムービー収録でも安心して使えるのは嬉しいポイントだ。
ちょっと意地悪に空を多めに入れてF値も絞り気味にして撮影しているが、ムラもなくクリアな撮影結果を得ることができた。
焦点距離を広角側にして、ND2から最大効果のND32まで同条件で撮影してみたが、いわれないとわからないくらいの影響だろう。
ここまで影響が少なければ基本的に装着しっぱなしでも問題ないレベルだ。
今回は冬の空だが、この結果からすると夏場の真っ青な青空でも影響は少ないだろうと想像できる。
またこのフィルターは解像感の低下も見られないため、ディテールが重要な要素でもある風景写真との相性がとても良い。
操作性や造りの良さも重要
可変NDフィルターはレバーをつまんで前枠を回転させて効果を調整するので、操作性も重要だ。
操作レバーが指にフィットする形状となっているので非常に回しやすく、トルクもちょうど良い。とにかく微調整がしやすかった。大きめの操作レバーなので、手袋をしていても操作しやすいのもポイントだろう。
細かい部分だが、フィルター前枠部分がローレット加工されているので、レバー操作だけでなく前枠を直接掴んでの調整もやりやすい。
また、フィルター全体の造りがしっかりしているので、高級感もあり所有感も高い。
撥水・防汚コーティングもされているため、水辺での撮影でも安心して使用できるのもメリットだ。特に撥水効果は、滝に近づいての撮影や小雨での撮影の時に有効。前玉に水滴が残らないので、防塵・防滴性能を有したカメラとの相性は抜群だ。
さらに傷防止コーティングもされているため、フィルターに傷がつきにくく、風景撮影でも安心して使用できる。
今回の撮影では基本的に移動中も常にフィルターは装着しっぱなしだったが、それも製品の堅牢性の高さがあるからこそだ。
ちなみにラインアップされている対応フィルター径は、49mmから大口径の82mmまでをカバー。ほとんどのレンズで使用することができるだろう。
価格も1万円台と、高性能な可変NDフィルターとしてはリーズナブルな価格帯となっている。しかも単体のND2〜32フィルターを複数枚購入すると考えると、かなりお得に感じる。
フィルターケースの出来も良い
フィルターを購入すると必ずついてくるのがフィルターケース。メーカーや製品によってさまざまだが、本製品のケースはおまけでついてくるものとは思えないほどしっかりとしていて驚いた。製品との統一感もあり、ブランド品を所有している満足感も高い。
いってしまえばケースはフィルターを保護、管理できればどのようなものでも良いのだが、そこまでしっかり考えて作られているということで、ブランドそのものへの信頼感も高まる。
デザイン以外にも細かい配慮がされている。例えばフィルターが取り出しやすいように、ケースの横にフィルターを取り出すための紐が備え付けられている。手袋をして撮影する冬場の撮影でも、恩恵を受けられるだろう。
まとめ:品質が上り、可変NDフィルターはフォトグラファー必須のアイテムに
カメラが高性能になった結果、カメラ内でできることが多くなったが、フィルターワークに関してはまだ物理フィルターに頼らなければ再現できない表現が圧倒的に多い。
特に光量の調整に関してはNDフィルターがなければ不可能であり、スチルだけでなくムービー収録も手軽に行えるようになった今の時代だからこそ、NDフィルターはなくてはならない存在となっている。私のようにスチルを撮影しながら同じ現場でムービーも収録するとなると、NDフィルターはなくてはならない機材の1つだ。
フィルターもカメラやレンズと同じく日々進化している。最新のフィルターを使用することで、最高のクオリティを得ることが可能となる。
特にムービー収録では可変NDフィルターは必須となっており、フィルターひとつで映像クオリティが左右されるといっても過言ではない。
初めて可変フィルターを買う人にとって、高性能かつ高コストパフォーマンスの製品が存在することは大きい。動画デビューに対するハードルが下がり、フィルターワークの楽しさを知ってもらえるだろう。
「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」を使用した作品を紹介
最後に「ND2-ND32 TRUE COLOR フィルター」を使用して撮影した私の作品を見ていただけたらと思う。
スチル作品ではスローシャッターを意識してロケーションの選択を行い、色再現の高いフィルターということもあり晩秋の自然風景の色を大切に撮影した。
併せてムービー作品も同じシチュエーションで行っている。こちらは全カットLog収録を行いカラーコレクションで色味を調整し、色味や質感をスチル作品とは違う仕上げにしている。無段階調整が可能な可変NDフィルターなので、撮影中、意図的にND効果量を変化させ抑揚をつけたり、撮影中に変化する光量の変化を補正しながら撮影を行なった。
今回の撮影で使用しているLUMIX S5IIXは、Log収録時は最低感度がISO 640となるためNDフィルターは必須であり、スチルとムービーと同時進行で撮影するには、可変NDフィルターがなくては成り立たない。
可変NDフィルターが1つあることで表現の幅と可能性が大きく広がる。皆さんもぜひ可変NDフィルターを使い、スチルとムービーの撮影を楽しんでみてほしい。
製品・状況撮影:岡田航平