特別企画
シルイから出た“防水三脚”は何がすごい?
滝・渓流の撮影で使ってみたら……
Reported by 萩原史郎(2015/10/29 10:27)
三脚は風景写真にとって欠かすことができない必須アイテムと言ってよい。もちろん、手持ちの起動性や速写性を重視して撮影をすることもあるが、手ブレを完全に抑えたい場面や構図をじっくりと追い込むとき、あるいはスローシャッターを使った表現を行う際には、三脚がなくては成立しない。これほど重要な位置を占めている三脚だが、カメラやレンズのように防水仕様の製品は意外にも少ない。
確かに、渓流や滝、海辺などで使ったあとは、水洗いをして水気をふき取り乾燥させれば日常的には問題はないが、夜になって帰宅したとき、こうした作業は面倒だし、うっかり忘れてしまうこともある。そんなことを気にせずに、安心して水場でも砂場でも使える三脚が欲しいではないか。
シルイからそんな願いを聞き届けてくれたような三脚が登場した。常盤写真用品が発売するSIRUIブランドの防水三脚「Wシリーズ」だ。この三脚をつかうことで、どのようなメリットが生まれるのか、さっそく現場で試してみた。
W-2204について
今回試用したのは、W-2204。素材はカーボンで、最大パイプ径は29.4mm、最小パイプ径は18.6mm、段数は4段式。全高は1,470mm、センターポールを伸ばした最全高は1,800mmまで対応しているため、身長が180cmを越す筆者でも、自然な撮影姿勢をとることが可能だ。
そのうえ開脚ストッパーを押し込めば、通常時は22度の開脚度だが、52度、さらには82度まで開くことができ、ローアングル撮影が可能となる。マクロ撮影や、思い切った地面すれすれからのアングルを使いたいときには重宝する。
Wシリーズは、持ち運びの便がよく考慮されている。一般的な三脚は、脚を縮めて閉じることで通常収納の形になるが、Wシリーズは脚を180度反転させセンターポールを伸ばすことでコンパクトになる。通常収納時より短くなるだけでなく、雲台が脚に挟まれた格好になるため突起物を隠すことになり安全性が高まる。
脚の先端部は、石突ゴムとスパイクを交換できるため、路面に合わせて最適な対応が可能である。加えて、3本の脚のうち、根元にナットが装備された1本が一脚としても使えるが、対応力の高さがうかがえる仕掛けだ。プラスアルファの機能として、いざという場面で大いなる助けになりそうだ。
雲台は同じくシルイのK-20Xを使用した。水準器やアルカスイス規格互換のクイックシュー、セーフティロック、フリクションメモリーなど機能満載の雲台で、W-2204との相性は抜群である。
K-20Xの耐荷重は25kg。W-2204の耐荷重は18kgなので、フルサイズ機に大口径レンズを装着した撮影にも十分耐えられる。
本製品はIPX7という水深1mに30分間沈めるテストに合格した性能を持つため、滝や渓流といった水際での撮影を得意としている。3本のうち2本の脚にウレタングリップが巻かれているが、そのウレタングリップの下側までなら水中に入れることが可能だ。実際には水流の強さによって水に入れられる位置は変化するが、少なくともその位置までは保証があるというのは頼もしい。
そもそも三脚があると…
今回、W-2204を試すにあたって訪れたのは滝だ。風景写真にとって滝は欠かせない被写体だが、滝を表現するうえでは三脚も欠かせない。なぜなら、滝や渓流を表現する場合、スローシャッターを使うことが多いことが理由だ。手持ち撮影では、手ブレ補正機構を使ってもせいぜい1/8秒が限界だが、三脚を使えばその限界はなくなる。1秒、場合によっては10数秒の露光時間をかけ、水の流れをしなやかに表現するには三脚は必須となる。
滝撮影で防水三脚を使う
三脚が滝や渓流を相手にしたときに必須であることはわかっていただけたと思う。しかし、こういった水がらみの被写体の場合、三脚が防水仕様になっていれば、スローシャッターが稼げること以外にもメリットが生まれる。それは、躊躇なく水中に三脚を入れられることによって作画の自由度が格段に高まることだ。岸に三脚を立てて撮影する場合と、水中に三脚を入れて撮影する場合では、まったく表現の世界が変わってしまうが、そのあたりの劇的変化を見てみよう。
まずは、三脚が水中に没しないように岸に設置して撮影してみた。滝は過不足なくとらえているが、手前の流れが目の前を横切るように表現されている。これだけを見れば、何も問題はないように見える。ただ、水に入って撮影したカットと比較すると、明らかに迫力不足だ。
流れがこちらに向かってくるような位置、つまり水に入り三脚を設置して撮影。滝の本体は岸から撮影したカットとほぼ同じだが、手前の流れの入り方がまったく異なる。こちらは流れが向かってくるように表現され迫力が出ている。好きな場所を撮影ポジションとして選べること、これが防水三脚の便利なところで、他の三脚と一線を画す部分だ。
まとめ:広がる撮影のバリエーション
これまで三脚に対して、防水であるか否かということはあまり考えてこなかったと思うがいかがだろう。それは、防水三脚が少なかったから選択の余地がないということも影響したかもしれないが、今後は防水対策が施された三脚を使うことを視野にいれることができる。カメラやレンズが防水仕様であれば、雨の中や水際でも安心して撮影ができることと同じように、三脚も防水仕様ならばどんな悪条件でも撮影できるし、そのうえ人とは違うアングルを狙うことが可能になる。
もちろん、水場で使ったあとは、一般的な三脚と同じように水気をふき取ったり、乾かすといったメンテナンスはしたほうがベターだが、そういったことに強い配慮をしなくても済むのはありがたい。三脚も防水か否かを購入の判断材料に加えることができる時代になったのである。