新製品レビュー

OLYMPUS STYLUS TG-4 Tough

沖縄の海でレジャーカメラとしての実力をチェック!

オリンパスの「STYLUS TG-4 Tough」は、防水、防塵、耐衝撃、耐荷重、耐低温とアクティブなレジャーにぴったりのコンパクトデジタルカメラです。F2.0の明るいレンズを有し、画像処理エンジンはOM-D E-M1と同じTruePic VIIを搭載したタフシリーズ最高峰の機種と言えます。

主な仕様は前機種のTG-3とあまり変わらず、有効画素数は1,600万画素、撮像センサーは1/2.3型の裏面照射型CMOSセンサー、レンズの焦点距離は35mm判換算25-100mm相当で開放F値はF2.0(広角端)~F4.9(望遠端)、液晶モニターは3.0型、ISO感度は100~6400。カメラ本体の大きさと重さ、撮影可能枚数、Wi-FiおよびGPS機能を搭載している点もTG-3から変更はありません。

特筆すべき変更点としては、スーパーマクロの撮影範囲が0.01m~0.1mから0.01m~0.3mになってより広い範囲が撮れるようになったこと、水中モードに水中HDRが、シーンモードに星の軌跡などを写せるライブコンポジットが加わったことなどがあります。

また、AFの位置を十字キーで選択できるAFターゲット選択機能が搭載されて、三脚での撮影が容易になりました。RAWでの記録が可能になったことも含め、レジャーシーンだけでなく、三脚でじっくりと昆虫などを撮るのにさらに適したカメラになったという印象を受けました。

今回は、水深15mの防水性能と細かい砂にも負けない防塵機構、少々岩場にぶつけたくらいでは壊れない耐衝撃性能を沖縄の海で実験してきました。

水中モードが独立して水中の撮影がさらに便利に!

撮影モードも前機種からは大きな変更はありませんが、筆者が特に重要な改良点だと感じたのは、モードダイヤルからフォトストーリーがなくなって、代わりに水中モードが設置されたことです。前機種では水中モードはシーンモードの中の機能でした。

本機の水中モードも前機種のシーンモードも、ダイヤルを合わせた後にさらにどのモードを使用するかを選択する画面が出てくるのは同じなので、手間としてはそんなに違いはないだろうと実際に潜る前は思っていたのですが、その真価は特に頻繁に使う水中ワイド1、水中ワイド2、水中マクロをモード内で切り替えるときに発揮されました。

なぜかというと、ダイビングと違ってライフジャケットを着て水面に浮かんでいるシュノーケルの場合、筆者は水中の写真を撮る合間に顔を上げて周りの島々や一緒にいる人のスナップを撮っています。その時にモードの切り替えが発生します。水中は言わずと知れた水中モードを使用しますが、水上ではプログラムオートか絞り優先を使用して撮影をします。このモード間の切り替えが頻繁にあるシュノーケルで、水中モードが独立してモードダイヤルに設置されたありがたさを体感することができました。

TG-4(左)とTG-3(右)のモードダイヤル

筆者はシュノーケルでの撮影時、通常は狙った魚に向けてシャッターを切るだけで水中の色合いを最適な鮮やかさで撮影してくれる「水中ワイド1」を使用していますが、水中を縦にも横にもさらに広い範囲で撮影したいときはピントの固定される「水中ワイド2」を使用します。また、人懐っこい魚がカメラに近付いてくるようなラッキーな状況では「水中マクロ」を使用します。そしてそんなモード変更時に困ってしまうのが誤操作です。

モードダイヤルを回して撮影モードを選択した後は、十字キーの左右で更に細かなモードを選ぶのですが、水中で泳ぎながらでは陸上ほどスムーズにはいかず、水中ワイド2にしようとしたのに行き過ぎて水中マクロになってしまったり……ということがあります。本機の独立した仕様なら水中モードに搭載されている内訳は5種類なので、たとえ選択が行き過ぎてしまっても、そのまま進めるか戻るかの操作は容易です。

というのも、前機種TG-3ではシーンモードの中に水中ワイド1、水中ワイド2…と入っていたのですが、このシーンモードの内訳がなんと22種類! たくさんあるのは嬉しいのですが、ちょっと行き過ぎてeポートレートモードなどになってしまった時には水中モードまで戻るのがとても大変でした(笑)。ですので、この変更はとてもありがたいものです。

感謝ついでにもうひとつ要望を出せるのでしたら、モードダイヤルの水中モードとプログラムオート、絞り優先の位置を隣接してもらえるともっとありがたいです。ほぼ真逆にあるので、希望のモードに辿り着くまでが長かったです。

やっぱりうれしいF2.0の明るいレンズ

アウトドアタイプのコンパクトデジタルカメラに明るいレンズを求めてはいけないのは、一昔前のお話なのでしょう。本機はF2.0の明るいレンズを搭載しているので、絞り優先モードでボケを活かした作画をすることも可能ですし、絞りを開けてより速いシャッタースピードを得られるので、アクティブなシーンで起こりがちなブレを抑えてくれます。

たとえば海でぷかぷかと浮き輪に乗って遊んでいるとき。被写体と同様、自分も波に動かされているので、手ブレも被写体ブレもしまくりの状況です。そんなときにブレずに写真が撮れるのは、カメラに欲しい当たり前の性能ですよね。

また、シュノーケルやダイビングで水中にいるとき、深く潜れば潜るほど太陽の光が届きにくくなるので周囲は暗くなります。夜景と同じで、暗い状況であればあるほど明るいレンズの恩恵を受けたくなります。そんなときに、本機の明るくて描写性能の高いレンズが活躍してくれました。

ズームの画角変化

広角側が35mm判換算25mm相当と広いのは、景色を広く写したい旅行で重宝します。

広角端(25mm相当)
望遠端(100mm相当)

ISO感度

ISO感度設定は100~6400で、800までは頑張ってねばっている印象。徐々にディティールがつぶれてきますが、コンパクトデジタルカメラとしてはここまで写れば合格でしょう。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400

海の中の色を美しく再現してくれる水中モード

本機を語る上で外せないのがこの水中モードです。「水中スナップ」は浅めの水中で人や魚などを撮るのに適したモード、「水中ワイド1」は被写体に向けてシャッターを切るだけで最適な色味を再現してくれる一番ポピュラーなモード、「水中ワイド2」はフラッシュ撮影を行わず自然光のみで撮影するモードで、フラッシュの発光が禁止されているシチュエーションや、水中で浮遊物が多くてフラッシュ撮影が適さない場合などにお勧めです。

このモードではズーム操作ができなくなり、ピントも固定されます。水中マクロは小さな魚に接近して撮影する場合にぴったりのモードで、ズームが自動的に望遠側になるので目当ての被写体をより大きく写すことができます。フラッシュも自動的に発光されます。本機から搭載された水中HDRは、露出を変えて連続撮影した画像を合成してくれるモードです。

これらのモードすべてに共通して言えるのは、浅い所でも深い所でも水中の生物の色味をとても綺麗に描き出してくれるということです。今回はシュノーケルなので浅瀬での撮影に向いている水中スナップを使ってもよかったのですが、水面よりも水深の深いほうに向けてカメラを向けることが多かったり、ズームして魚のアップを捉えることが多かったので水中ワイド1と水中マクロを多用しました。

水中撮影の経験が少ない方は水中ワイド1でズームを使って魚のアップを狙ったり、広角側で海の青さと広さを写し取ったりするのが楽しいと思います。水中撮影に慣れている方は自分なりのモードの使い分けを編み出すとさらに水中撮影が楽しくなると思いますよ。

本気のマクロシステム

本機の売りともいえるマクロシステムは4つのモードが搭載されています。顕微鏡モードは被写体に1cmまで近付いて接写することができます。ズームを使用すればさらに被写体を大きく捉えることができます。「顕微鏡コントロールモード」では背面液晶モニターの表示倍率を変えることができます。「深度合成モード」はピントをずらした画像を複数枚撮影・合成して、被写界深度の深い画像を作り上げてくれます。

顕微鏡モードと深度合成モード

顕微鏡モードは被写界深度が浅いのでムードのあるマクロっぽい画になりますが、深度合成モードは被写界深度が深い図鑑のような写真を撮ることができます。

顕微鏡モード
深度合成モード

「フォーカスブラケットモード」はピントの位置を少しずつずらした画像を連写で撮影します。合成はされません。被写界深度の浅い画像でどこにピントを置くか迷うようなシーンで便利な機能です。撮影枚数は10、20、30コマから選ぶことができ、ピントの位置の移動量も狭い、標準、広いの3種類から選ぶことができます。

顕微鏡モードとフォーカスブラケットモード

フォーカスブラケットモードは連写で撮影するので、できれば三脚を使用したほうがいいでしょう。

顕微鏡モード
フォーカスブラケットモード

ここで本機から搭載された機能で便利なのがAFターゲット選択です。これはOKボタンの長押しでAFターゲットの選択が可能になる機能で、十字キーの上下左右でAFポイントを移動させることができます。マクロのような三脚を使う繊細な撮影の時にはなくてはならない機能です。

ただこのAFターゲット選択は、撮影モードを変更するとその撮影モードの初期設定のAF方式に戻ってしまうため、顕微鏡モードでAF方式をAFターゲット選択にして撮影して、次に深度合成モードに変更して撮影しようとすると初期設定(撮影モードによってAF方式の初期設定は違います)のスポットになっています。そこで再度設定をして、また撮影モードを顕微鏡モードに戻すとAF方式はまた初期設定のスポットに戻ってしまっています。

ここをプリセットできないかとメーカーの広報に問い合わせたところ、コンパクトデジカメという多くの方に使っていただく機種なので、安全面を考えて画質モードを変えるとリセットがかかるようになっているとのことでした。

確かに、一眼レフでの撮影に慣れている人は撮影の前後に絞りや露出補正の数字を確認したりリセットする癖がついているかも知れませんが、誰もが使いやすいほうがいいコンデジという性質を考えれば納得はできます。ただ、「上位機種ということも踏まえて、今後リセットがかからないようにすることも検討はしている」との回答をいただきました。ちょっとマニアックなマクロシステムでだけでもいいので、設定をプリセットできると便利かもしれませんね。

ライティングアクセサリーやRAW対応など、作画に広がる可能性

マクロシステムでぜひ使っていただきたい別売アクセサリーが「LEDライトガイドLG-1」です。被写体にくっつくほど近付いて撮影できるのはいいのですが、カメラや撮影者の手がその肝心の被写体に影を落としてしまうことがあります。そんなときに便利なのがこのアクセサリーです。マクロ撮影時に一方向ではなく全体に光を回したいときにも大変重宝します。ぎらついた不自然な光ではないのでマクロ撮影をされる方には必須アイテムだと思います。

LEDライトガイドの装着イメージ。内蔵ストロボに隣接するLEDライトの光を、レンズの周囲に導く

LEDライトガイド使用例

一方向からの光も趣があるのですが、全体に光をまわしたいときはこのLEDライトガイドが重宝します

LEDライトガイドあり
LEDライトガイドなし

また、本機からはRAWでの記録ができるようになりました。本気のマクロシステムを使って撮影した画像をパソコン上でRAW編集して仕上げることができるので、特に花や昆虫を撮影される方にはぴったりのカメラにブラッシュアップした感があります。

撮ってすぐ楽しいWi-Fi機能・後からも楽しめるGPS機能

本機は前機種同様にWi-FiとGPS機能が内蔵されています。最近は当たり前のように搭載されているWi-Fi機能ですが、オリンパスのカメラのWi-Fi機能はとても使いやすく色々なことができます。本機もスマホ用のアプリ「OLYMPUS Image Share」を使って撮影した画像のシェアはもちろん、スマホの画面にライブビューを表示してリモコンとして使用することができます。

また、スマホアプリ「OLYMPUS Image Track」では、カメラで記録したGPSログをスマホで確認することができます。旅行から帰ってきたらPCアプリの「OLYMPUS Viewer 3」に取り込んで、行動の軌跡と写真を見ながら思い出を振り返ることができます。

ただ、GPS機能をオンにしたまま電源を確保できないビーチで一日を過ごすと、電池の減りが速くてドキドキすることになります。大きな移動がないときはオフにしておくと、安心して午前、午後と2ダイブできると思います。

「OLYMPUS Viewer 3」画面。沖縄本島の青の洞窟ツアーに参加したので、その辺りのログを見てみました。船での移動中に数枚撮影したため海中にもログが残っています

まとめ

沖縄のビーチで砂と波に揉まれた本機ですが、問題なく作動して楽しい旅行のお供をしてくれました。一眼レフでじっくりと写真を撮るのも楽しいですが、このようなレジャーシーンではタフカメラはなくてはならないものですね。

筆者は7~8年前から夏場は防水のカメラを持って海に行っていますが、ここ数年の防水カメラの進化には目も見張るものがあります。重いカメラを旅行に持っていくのを躊躇してコンデジを買おうと思っている方、今なら絶対にレジャーシーンでも日常でも文句なく活躍できるタフカメラがお勧めですよ!

撮影例

ジオラマはミニチュア画像を作るだけでなく、ポップな色合いになるので派手な画にしたいときにお勧めです。

ISO100 / F8 / 1/80秒 / 4.5mm(25mm相当)/ ジオラマ

カメラを向けたら引っ込んでしまったヤドカリですが、ちょこっと出た足がかわいらしかったのでそのまま撮りました。

ISO100 / F6.3 / 1/400秒 / 18mm(100mm相当)/ 顕微鏡モード

南の島はポップアートが似合いそうですが、逆に色合いをやさしくして滲んだようなムードを醸し出してくれるファンタジックフォーカスが一番似合うような気がします。

ISO100 / F8 / 1/640秒 / 4.5mm(25mm相当)/ ファンタジックフォーカス

水中撮影時は視線の先にくるような位置で両手でカメラを構えて撮影しています。水中では液晶画面が見難いことがあるのですが、構えている位置をいつも同じ辺りにしておくと勘でもシャッターを切ることができます。

ISO100 / F2.8 / 1/640秒 / 4.5mm(25mm相当)/ 水中ワイド1

シュノーケルでもダイビングでも通常はこの水中ワイド1を使って撮影しています。広く撮影しながら、気に入った魚を見つけたらズームしてアップを狙います。

ISO100 / F2.8 / 1/640秒 / 4.5mm(25mm相当)/ 水中ワイド1

こちらに向かってくる魚と水深の深い所にいるダイバーの両方を撮りたかったので水中ワイド2で撮影しました。フラッシュの光を使いたくないとき、広い範囲を撮りたいときは水中ワイド2を使うことが多いです。

ISO100 / F2.8 / 1/640秒 / 4.5mm(25mm相当)/ 水中ワイド2

沖縄の海水浴場では個人のシュノーケルはライフジャケット着用が義務付けられていることが多いです。深く潜ることはできませんが、泳がなくても浮いていられるので水上の写真が撮りやすいです。

ISO100 / F10 / 1/160秒 / 6.4mm(35mm相当)/ プログラム

離島にいたこの魚はとても人懐っこい魚でした。エサを持っているわけでもないのにカメラに突進してくるほど。カメラに体当たりされましたが、もちろんカメラは無事でした!

ISO100 / F8 / 1/320秒 / 4.5mm(25mm相当)/ 水中マクロ

望遠端にズームして撮影しました。群れを見てこちらに向かって来そうな魚がいたらアップを撮るチャンスです!

ISO160 / F6.3 / 1/400秒 / 18mm(100mm相当)/ 水中ワイド1

この魚はカメラにはぶつかりませんでしたが何度もカメラの前を往復していました。撮ってアピール?

ISO125 / F6.3 / 1/400秒 / 18mm(100mm相当)/ 水中マクロ

このビーチでもクマノミの巣を見つけることができました。個人シュノーケルで楽しいのはこういうスポットを探すことでもあります。

ISO160 / F6.3 / 1/400秒 / 18mm(100mm相当)/ 水中ワイド1

水咲奈々

(みさき なな)東京都出身。知り合いの写真家の作品撮りにモデルとして関わったことがきっかけで写真に興味が沸き独学で写真の勉強をし、作品を持ち込んだ出版社に編集として入社。2010年独立。現在はカメラ雑誌の編集やWebでのカメラレビュー、写真講座の講師として活動中。「Pentax+」でも記事を連載。 Twitter:@cosaruruブログ:http://misakinana.com