新製品レビュー
キヤノンPowerShot G7 X Mark II(実写編)
作品撮りも楽しめる、高い完成度の1型コンパクト
2016年6月10日 12:21
先般、外観・機能編をお届けしたキヤノン「PowerShot G7 X Mark II」(以下G7 X Mark II)。1インチ裏面照射タイプのCMOSイメージセンサーに大口径光学4.2倍ズームレンズ、最新の映像エンジン「DIGIC 7」など搭載する。さらにレンズ付根にあるコントローラーリングはクリックの有無を選ぶことができ、EOSシリーズ同様仕上がり設定機能にピクチャースタイルを採用するなど密度の高いコンパクトデジタルに仕上がる。今回は実写編としてその描写を隅々まで見てみたい。
解像・周辺
ワイド端8.8mm(24mm相当)とテレ端36.8mm(100mm相当)、そして中間域の50mm相当で遠景描写の比較撮影を行っている。絞り値はいずれもF5.6、フォーカスはAFとしている。画面中央部の写りはいずれの画角でも不足をまったく感じないものである。特にエッジのキレは文句のないもので、いわゆる線の細い尖鋭度の高い描写だ。
焦点距離100mm相当と50mm相当に関しては画面周辺部の描写も上々。解像感の低下はわずかにあるものの、色のにじみやディストーションもほとんど気にならないレベルと述べてよい。ワイド端24mmでの画面周辺部の描写は、さすがに厳しいようで像の流れによる解像感の低下が見受けられる。ただし、その範囲はわずかで、ノートPCのモニターほどの大きさで閲覧する程度であればほとんど気になることはないだろう。またディストーションもよく抑えており、画面周辺部に水平線や垂直線があっても神経を使う必要はさほどない。
なお、周辺減光に関しては、開放絞りから良好に抑えており、2段ほど絞るとほぼ解消する。光学系は先代「PowerShot G7 X」から変更は無かったが、その理由のよく分かる描写といえる。階調再現性など仕上がりに関しても作例を見るかぎり欠点らしい欠点は見当たらず、隙のない描写。光学系も含めコンパクトデジタルであることを考慮すると、文句のない写りと述べてよい。
感度
G7 X Mark IIの感度の設定可能範囲はISO125からISO12800までとする。作例では高感度ノイズリダクションをデフォルトの標準に設定し撮影を行っている。掲載した写真を見るかぎりISO800までなら、ノイズの発生や解像感の低下はほとんど気にならないレベル。色のにじみなども皆無といって問題ないものだろう。ISO1600およびISO3200ではわずかにザラザラとしたノイズが発生し、エッジのキレもISO800と比べるとやや甘く感じられるようになる。ただし、階調再現性などに大きな変化はなく、画質に強いこだわりがなければスナップ撮影などの使用では気になることはないだろう。
ISO6400では輝度ノイズ、色ノイズとも目立ちはじめ、最高感度であるISO12800はノイズの発生が顕著に。解像感も低下し、色調もややベタッとした感じに仕上がる。とはいえ、コンパクトデジタルとしてノイズの発生はよく抑えているほうであり、総合的に見れば高感度特性は秀でているといって過言ではない。
マクロ
最短撮影距離はレンズ先端からワイド端5cm、テレ端で40cmとする。近接撮影時も通常時と同様、選択したフォーカスポイントと重なった被写体に速やかにピントを合わせる。合焦速度は比較的速く、ストレスを感じることはない。
描写に関しては、開放絞りの場合、条件によっては弱いフレアが発生することがある。絞り込むことで解消されるが、むしろオールドレンズのごとく淡い描写を楽しんでみるのもありそうだ。ボケ味については暴れるようなことは少なく、ズームレンズとしてはナチュラルなほうといえる。
まとめ:Gシリーズを代表する1台
一昔前は高画質コンパクトの代名詞だった1/1.7インチセンサーの3倍近い受光面積を持つ1インチCMOSセンサーと、開放F1.8-2.8の光学4.2倍ズームレンズ、さらに最新の映像エンジン「DIGIC 7」による写りは、コンパクトデジタルとして考えるなら圧倒的だ。高感度特性はAPS-Cサイズのデジタル一眼レフに迫るものがあるし、階調再現性や解像力など不足を感じるようなことがない。日常的なちょっとした記録用から、本格的な作品撮影までG7 X Mark IIの活動領域は極めて広い。
EVFが備わっていないのが難点のように思えるかもしれないが、コンパクトデジタルの場合液晶モニターによる撮影が普通だし、俊敏で正確なAFや強力な手ブレ補正機構も備わっているので、カメラを信頼して撮影に臨んでも失敗するようなことはないだろう。現行のPowerShot Gシリーズは全て1インチ以上のセンサー搭載し、いずれも高品質な仕上がりが得られるものばかりである。そのなかでG7 X Mark IIは、その完成度の高さから同シリーズのスタンダードに相応しい資質を持つカメラのように思える。
作品集
AFフレームは液晶モニターへのタッチ操作で移動が可能。もちろんタッチシャッター機能も備える。写真は手前のコンテナにタッチでピントを合わせ、シャッターを切っている。左手のみでカメラを構えているが、強力な手ブレ補正を搭載していることもありシャープな描写が得られた。
実焦点距離12.8mm、絞りはF8としている。エッジがやや過剰気味に効いているが、不自然さのようなものはさほど感じない。画面左下に解像感の低下が見受けられるのがやや気になる。
テレ端、絞り開放での撮影。35mm判に換算して100mm相当の画角となるが、ボケの大きさは見てのとおり。1/1.7インチクラスのセンサーを搭載するカメラと比較すると、当然のことながらボケは大きい。
作例のような望遠での撮影の場合、正直に言えばやはりEVFが欲しい。PowerShot G5 Xという選択肢もあるが、ライバルであるソニーサイバーショットRX100 IVのようなポップアップ式EVFを備えていたらと思うのは私ばかりではないだろう。
明るい背景でも、被写体(この場合自転車)のコントラストは良好。エッジのキレもよい。テレ端、開放絞りでの撮影だが、AFも正確だ。背景のボケがわずかに暴れ気味なのがちょっと気になる。
白い船に露出を合わせているが、ハイライトおよびシャドーともよく粘っている。順光での撮影のため、液晶モニターに太陽の光が直接当たっていたが、視認性が大きく低下することはなかった。
ピクチャースタイルの採用もこのカメラの新しい部分。EOSシリーズユーザーならこれまでの感覚で仕上がりが楽しめ、さらに同シリーズと色調を完全ではないまでも揃えることができる。パラメーターの調整も可能だ。